天地わたるブログ

ほがらかに、おおらかに

藤岡陽子『空にピース』

2024-01-10 06:31:34 | 
                    
                           2022/幻冬舎

【大まかな内容】公立小学校教諭のひかりは、都内の赴任先で衝撃を受ける。立ち歩き、暴力、通じない日本語……。強くならなければ、子どもたちは守れない。
公立小学校の教師になって5年目のひかりは、都内の赴任先で出会った人々に衝撃を受けていた。日本語が話せないベトナム国籍のグエン・ティ・ロン、授業中に教室を出て行く今田真亜紅、不登校気味で給食だけ食べに来る佐内大河、クラス分けに抗議をしにくる児童の母親……。
ひかりの前任者は鬱で休職中。さらに同僚からは「この学校ではなにもしないことです。多くのことを見ないようにしてください」と釘をさされてしまう。
持ち前の負けん気に火がついたひかりは、前向きな性格と行動力で、ひとりひとりの児童に向き合おうとするが……。
 虐待、貧困、性暴力――。過酷な環境で生き延びる子らに、悩みながら寄り添うひかりが最後に見た希望とは。
1学級のそれぞれの子どもの背後に大人たちがいる。本書は子どもたちを通して大人たちのこと、つまり今の社会の問題に切り込んでいる。若い情熱あふれる教師の奮闘記である。
同じ経験を持つkanさんが、読書メーターで、
「貧困、虐待、性暴力、日本語理解に課題がある外国籍の子ども等に私も対応した経験があるが、医療や福祉の専門家や日本語取り出し指導を待たずに担任個人が直接指導するのは無謀だ。複雑な現況に奔走する主人公のような教員を賛美するのだとしたら教育と行政の崩壊であり、美談ではない。子どもの幸せは熱血教師の介入で得られるほど単純ではないと思う。」
と懸念するように作中のひかりが東奔西走する。ひかりだってkanさんの懸念はわかっていて動かざるを得ないのだ。
本書のことを書いていてネタバレように問題は起こりにくいと思った。次々問題が起きてまとめられないのである。それも困ったことばかり。しかし作者は根が明るい人で文章のテンポがよく運動会の大玉送りを見ている気分になる。
スイッチさんは「最後はハッピーエンドになると期待しながら読むことも辛くなる序盤」と言うがさてハッピーエンドと言っていいか。あさみさんは「逃げないことを教わった気がする」と言う。
chujiさんが言う「ハートウォーミングノベル」は本書にふさわしく、「空にピース」はこれ以上ない題名であろう。作者の向日性が救いとなっている。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 犬を愛でたり走ったり | トップ | 梅の花が咲きました »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

」カテゴリの最新記事