天地わたるブログ

ほがらかに、おおらかに

山本山を知っていた

2024-06-26 09:18:05 | 俳句




きのうのKBJ句会、病欠者が3人も出て出席者は4人であった。
1人はコロナ感染でまだ8日目、ぎりぎりだがまだ危ない、お断りした。もう1人は動脈瘤手術後の検診。もう1人は当日どこかが傷み病院へ直行した。仔細は知らない。
病欠者3人のうち2人が句を誰かに託した。
それに山梨県甲斐市からますみさんが初参加したことでトータル48句の句会になった。メンバーがみなそうとうの年齢に達しており句会に出られることが健在の証。それを痛感した。
メンバーの中でますみさんは60代なかごろと若い。それでも先月何かあって入院したらしい。予後がいいらしく遠路はるばる来てくれた。凄い熱意である。土産に信玄餅を持って。

彼女は4月20日東京競馬場吟行ではじめて句会というのも知り、興奮したらしい。
短冊に俳句を書く、それを別の紙に清記するという手作業も新鮮らしい。去年小生のメンバー募集にこたえてひこばえネットに参加したとき甲斐市在住と聞き、おやっと思った。
当地には飯田龍太の築いた俳句文化があり、現在「郭公」主宰で毎日俳壇選者の井上康明氏ら有力な指導者がいるはず。なぜ遠くのわけもわからぬ小生の門を叩いたのか……。
わけを聞くと派閥の確執を見たことと井上先生の選句を古臭いと思っているとのこと。さて小生の作句、選句が新鮮か。ますみさんは先月ひこばえネットでわがはいの句をまったく採らなかった。
しかし昨日は、
汗拭くやカーブミラーに間延び顔 わたる
を1人採った。ほかの3人が無関心ゆえ、愛い奴、許すぞという心境だった。鷹主宰選に出す候補の1句になぜ鷹の2人が反応しないのか。
ますみさんが来ていろいろ楽しかった。

茅花流し馬の眼に地平線 わたる
この句に対して鷹のベテランFが「山本山じゃないですか」と言った。「山本山」をますみさんは理解していた。鷹でない人、鷹でも湘子時代の人でないと知らない「山本山」を知っているとは……。上五が名詞、下五は名詞だと一句の流れが生まれない。濠の水のように停滞する。それを湘子は「山本山」と指摘した。
小生に「山本山」の意識はあったが「流し」で若干切れるから致命傷ではないと考えた。
そのあたりもまゆみさんFと言葉が飛んで対面句会の醍醐味を感じたのではないか。

夏来れば土間でお茶する爺と婆 治子
どうしようもない句、むろん点が入らなかった。まず「土間に茶を汲む爺と婆」と流れとリズムがある韻文にもっていく。「夏来れば」とつなぐ意識もどうしようもない。「や」を考えるべきで、「三伏や土間に茶を汲む爺と婆」とすれば当句会に出せるレベルになる。
変な内容だが暑いから暗くて涼しいところに茣蓙を敷いている老人かと思う。
もっといえば季語にもう少し色が欲しい。季語に戸外の花を配したらどうか。

凌霄や土間に茶を汲む爺と婆
ここまで来て小生はやっとリリースする。
湘子の『20週俳句入門』を基本にして、添削というか改作というか、本人にとっては推敲の道筋を語ることができた。
『20週俳句入門』はたんに俳句作りのノウハウを書いてあるだけではない。
俳句は季語至上主義の詩である、と湘子は主張している。上五を「や」で切ってそれが季語ならば同然季語が輝く。ほかの言葉は無駄なく働いてこれに奉仕すればいい。
この意識と意義を奥坂まやは「神棚の季語に対するお供え物」と表現した。
『20週俳句入門』を一人で読んでいても気づかないこと、奥義のようなことを優秀な新人に語ることができた。それが対面句会のよさである。

まゆみさんにとって俳句というツールが死ぬまで遊べるほど奥があるものということがわかったとしたら、おカネを使って来た意義がある1日だったであろう。彼女の表情からそのことは十分感じ取った。小生にとってもいい日であった。
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2 コメント

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Unknown (伊勢史朗)
2024-06-26 14:11:42
汗拭くやカーブミラーに間延び顔 わたる

作者の師である藤田湘子は何かに映る俳句はだめと指導したのでは?最近こちらのブログで拝見した気がしますが。
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史朗くんよく覚えていましたね (わたる)
2024-06-26 15:16:39
誤解したいます。
「映る」という言葉で表現したら浅い句になるという教えです。たとえば「水面に映る逆さ富士」のたぐいです。「あるときはおたなじやくしが雲の中 龍太」を小生は長い間理解できず、あっこれは映った雲なのかと思ったとき「映る」を言わない芸がやっとわかりました。
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