天地わたるブログ

ほがらかに、おおらかに

正月にふさわしいハッピーエンド

2024-01-14 07:45:42 | 
                  


宇江佐真理『卵のふわふわ八丁堀喰い物草紙・江戸前でもなし』(2004/講談社)のことである。
宇江佐真理を手に取るのは初めて。ぱらぱらと見て時代ものであり、「卵のふわふわ」はスクランブルエッグかなあと思いつつ読みはじめ、あっという間に読んでしまった。
内容は、うまくいかない夫婦(のぶと正一郎)とそれを支える義父義母の好意の織り成す物語。夫が北町奉行同心という職業のせいもあってユーモアが乏しくのぶと心が行き違う。このぎくしゃくした関係を食い道楽で心優しい舅が「のぶちゃん、何かうまいもん作っておくれよ」といつも助ける。彼の喰い物覚え帖には、黄身返し卵。はかない色と味の淡雪豆腐、別れの水雑炊、走りの食べ物としても乙な心太、無用の用のちょろぎなどさまざま書かれている。
読書メーターでtakayaさんが
「うまくいかない夫婦と、同居する夫の両親の物語。淡雪豆腐、ところてんなど江戸時代の食べ物がそれぞれの逸話に象徴的に登場します。物語としては予想通りの展開で、終わり方も予定調和的な感があり、もう一つでした。著者の物語にはもっと突き抜けたものがほしいと、感じてしまいます。」
と指摘するように、途中で、ああこの夫婦は離婚しないで仲良くなるなあ、と確信する。予定調和は俳句の批評によく使う言葉でtakayaさんの指摘は当を得ているが、しまいのハッピーエンドがわかっていてそこへ駆け込む展開も悪くないなあと思った。明るくて楽しいのであり、食べ物の出方とそれにまつわる人間模様が実に味わい深いのである。
gosukenさんが以下のように言う。
「同心の妻ののぶは舅姑とはいい関係なのに、子もいないせいか夫とは上手くいかず、一旦家を出ることに。 舅の忠右衛門の大らかな雰囲気がとても良い。 3人で卵のふわふわを食べるシーンが印象に残っています。 食べ物屋の話かと思っていたのですが、食べ物がまつわる家族再生のとても素敵なお話でした。」
読んで時間を無駄にしたと思わない内容。典型的なハッピーエンドストーリーを書けるというのも能力ではなかろうか。力のある作家である。
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