阿炎を圧倒する大の里(撮影:久冨木 修/スポーツニッポン新聞社)
新小結・大の里である。
きのう夏場所の千秋楽、阿炎をたやすく押し出して12勝3敗で優勝した。ほかに技能賞、殊勲賞も受賞した。初土俵から7場所目での幕内優勝をはじめ記録づくめの快挙である。
舞の海さんは来場所の成績次第では大関にしてもいいというし、八角理事長もラッキーの優勝ではない、実がある、と大きな期待を寄せる。
11勝11勝12勝なら次の場所10勝でも大関にしていいと小生は思う。4場所で44勝である。ついでに言うと、大関に上がる成績が直近3場所の勝星が31とか32とかで審査されるがそれがあてにならない状況。4場所で43勝みたいな基準に改めたらどうか。その初めを大の里にしてもいいだろう。
大相撲関係者また大相撲ファンは英雄の出現を待望している。
良くも悪しくも白鵬は英雄であった。彼が引退してから大相撲のピラミッドの上が欠けて落ちた感じがする。富士山のような大相撲ヒエラルヒーが崩壊してしまった。
大関に上がる力士が割に多いが横綱に上がるどころかその地位をキープすることさえ困難で落ちる力士ばかり。最近では霧島が落ちることが決まり、がっかりした。幕内力士の平均体重が161.7キロと大型化したせいかもしれないが、力士は大関になるまでにぶつかり合いで体ががたがたになっているのかもしれない。結果、大関になってからもはや発揮するエネルギーが残っていない。カド番大関ばかりでやがて落ちる。
けがをせず優勝をし続けた白鵬は凄かった。なぜかくも非難されなければならないのか世間の常識を疑う。大相撲はまず強くなければならぬ。少しくらい品性に欠けたにせよ強くあってほしい。だいたい大相撲に来る連中は常人のレベルを超えた猛者たちなのだ。変に道徳を押し付けたくない。荒ぶる神を見たいのだ。
白鵬級の強さをもつが大の里である。ほかの力士を圧倒する強さは本物だと思うが気は許せない。
逸ノ城の例がある。幕内に上がってきたとき来年は横綱だとみんな思った。評論家も言ったし小生もそう思った。けれど腰痛を理由に10年の力士生活で引退した。実はアルコール依存症であったと「週刊文春」がすっぱ抜いた。また、親方との不和で稽古拒否も伝えられた。心・技・体が正三角形になっていなかったのだ。
大の里に性格面の問題はなさそう。新小結でもそう緊張した素振りを見せずに3敗以後を闘い抜いた。勝負士として見事であった。立ち居振る舞いもよい。それは蹲踞、仕切り全般に見てとれる。最後の仕切りの前、塩を取りに行くときバタバタ走る力士がいて見苦しい。土俵を走るな! そんなところで気合を出さず、立ち合いのときに出せばいいじゃないかといつも思う。
大の里はどの局面でも悠然としている。
どっしりした大の里に横綱を期待する。
大の里の優勝に泣く父・中村知幸さん(撮影:藤山 由理/スポーツニッポン新聞社)