天地わたるブログ

ほがらかに、おおらかに

西條奈加『隠居すごろく』

2024-05-24 05:27:14 | 
                   


 読書メーターでheslkstさんが以下のようにあらすじを紹介する。
仕事ばかりで家族からも浮きまくっていた主人公が孫可愛さゆえ、孫に翻弄されているうちに人の温かみや優しさを取り戻す物語。孫は優しさ溢れる人情の人でありながら、納得できるまで考え続けることができる8歳の少年。
主人公が隠居するところから物語はスタート。隠居しても話し相手もおらず寂しさを募らせていたところ、孫がやってくる。孫が様々な相談事を主人公に伝えてくる。主人公にとっては厄介事なのだが、孫のしつこさを知っているので、どうにかしようと解決策を探っていくうちに、感謝される喜びなどを知る。心が優しくなる本。
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隠居した徳兵衛は商売に明け暮れした人生にて、趣味がなかった。女性への興味もなくすぐ時間を持て余した。そこへ登場した孫は最初は厄介で面倒な存在でしかない。けれどその面倒と厄介へ対処するうちに、いままでと違った人生の味わいが見えてくる。気持ちが温かくなる。それに関しては以下にYUUUUMIさんも言及する。

素敵な作品と出会えるのが読書の醍醐味もであるが、この作品はとても温かい気持ちとほっこりした気分を味わえる作品だ。隠居して静かに余生を過ごそうと思っていた主人公・徳兵衛であるが、孫である千代太が訪ねて来てから、今まで築くことのなかった人との関わりという、面倒な事に巻き込まれながらも充実した毎日を過ごすという、日常の穏やかながらも慌ただしくもある姿が描かれていく。物事を解決するよりもその過程を孫と考えたり導いたり教えられたり、素敵な関係を垣間見る事ができた。
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徳兵衛にとってそっけなかった妻が意外な変化を見せて徳兵衛の「事業」に加担するのもおもしろい。作者は作品をおもしろくする手を次々に繰り出す。運動会の大玉送りを見るかのようにテンポよく話が進み、心地よい。
コメント
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