森の中の一本の木

想いを過去に飛ばしながら、今を見つめて明日を探しています。とりあえず今日はスマイル
  

家から巣立つ子供

2014-09-23 16:48:36 | 梢は歌う(日記)

≪なんでだか、9月20日の夕日にはみんな心惹かれるものがあったようです。いつもは夕日などをアップしないブログなどにもアップしていたのが印象的でした。私も夕日の画像を久し振りに載せてみました≫

※         ※          ※

私の母があれやこれや未だに子供たちに言うような細かいことの注意を言い、既に中年真っ盛りの私達姉妹が思わずニヤニヤしてしまうと
「いいの。あなた達はずっと私の子供たちなんだから、私はずっと言い続けるの。」と言います。

このブログを始めた頃、ラッタくんは大学生でした。あれから何年もこのブログを続けているわけですから、彼はもういい歳の大人です。でも私は彼とルートくんのことを子供たちと呼びます。いい歳の大人なのに「子供」と呼ぶのはどうなのかと時々思ったりもするのですが、そんな時私は母のその言葉を思い出すのです。「息子」という言い方もあり、時々そう書いていますが、はっきり言って好みではないのです。

それにいくつになってもその母と子の関係は変わらないのですから。

ラッタ君。

あなたは私の子供です。

 

だけれどとうとうその子供が家を出て行くことになりました。

家から遠い学校も経済的な理由で自宅から通わせました。

仕事場も家から近く、ロードバイクにハマっていた彼はチャリ通。

だから私の家から子供が出て行くのははじめての経験です。

それにそれは子供がもし学生時代に通学のために別の所に住まわせたとしても、それとは若干というかかなり意味が違うと思いました。

つまり巣立ちです。

 

それはいきなりやってきたのだけれども、その前にその時までの私の中にあったモヤモヤしていた部分を聞いてくださいね。

 

私は若い時、そして子供たちがもっと小さな子供だった時に、友達が言う所の

「結婚は30ぐらいまでにして欲しいけれど、もししていなくても、そのくらいになったら家から出て行ってもらうわ。」と言う考えには共鳴するものがありました。この考えは特殊な考えではなく意外と昔の一般的な考えだったのではないでしょうか。

なぜならこの夏に一緒にお食事した方の御子息は、いまだに独身貴族だと言いましたが、ずっと昔に30になった時に家から独立させたのだと言っていました。

珍しい考え方ではなかったのです。

だけれど、私はこの5,6年の間に考えが変わりました。

今の世は、私たちが歩んできた道とは違うのです。

終身雇用は夢幻になり、高学歴ワーキングプワが巷にあふれているのが今の現実なのですよ。

 

私たちの時代にも不運な人はいました。何がいけなかったのかは知りませんが、やたら見えないレールがいろいろ敷かれていた世の中で、そのレールから逸脱し、好きな言い方ではありませんが所謂「負け組」になってしまった人たち。

そういう人たちに、私はいつも優しい眼差しをしていられたか、今となっては疑問です。

だけど今の世の中でたまたま自分の子供たちがすこぶる順調に行き、自分たちの過去の時代をなぞるように生きている子供たちの親が、私たちの時代にはあった見えないレールなどがとっくにぶっ壊れていることも知らないで、右に左に大きく揺れながら進む子供たちに辛口な事を言うのを聞くと、

「少し黙ってろよ。」と言う気分になるのは正直な本音です。

 

3.11以降は家に対する価値観なども変わってしまいました。

そんなこんなで、私の中でも何かが変わっていき、

「こうであらねばならない」と言う考えだけは捨てる勇気が持てたように思うのです。

 

だけどだからと言って、気持ちは結構複雑です。

単純に、したくないのならまたは縁がないのなら結婚もしなくても良いし、家にいたいなら世間の人がなんと言おうとも、30になろうが40になろうが、または50になっても居ればいいじゃないと思う反面、やはり親は先に死ぬもので老いていくばかりです。そうなればいつの間にか世話をする立場が逆転し負担をかける事は目に見えているのです。

「みんなで肩寄せ合って生きていこう。」と思いつつ

「親なんか姥捨て山に捨てて、自分の人生を生きろ。」とも思うー。

ああ、そうですね。この「親なんか姥捨て山に捨ててー。」は少々の解釈付きでないと誤解を招くかもしれません。

この場合の親とは、自分の子供たちから見た親、つまり私たちの事であって自分たちの親は含まれてないのですよ。自分の親に対してそんな風に思ったことなんかないのです。でも私たちの親だって、こんな「姥捨て山」なんて言いまわしはしないけれど、私たちの事はどうでも良いから、自分たちの事を一番に考えてって思っていたと思います。

今思うと、そのような親たちだからこそ、私たちも彼らを大事に思っていたし、今も思っているのかもしれないとも思います。

と、ここまでがつい最近までの親の、つまり私の心の中のモヤモヤしていた気持ちの部分です。

 

ところが私は私でいろいろ考えていたけれど、彼は彼でいろいろ考えていたのです。

大人ですから。

そして家から出ていくことが決まってから、たった二十日しかありませんでした。ちょっと蛇足ですが、やっぱり日記は大事です。それがいつの事だったのか、「ええと」と思っても書いてあるのですから。

今回はここに書いてありました。→「果樹園のティータイム/きっと、良いこと!

 

ほとんど彼は全部自分でやっていましたが、怒涛の買い物には付き合いました。付き合っただけなのにドドドと疲れました。

引っ越しの時は

「えっ、来なくていいんじゃん。」とか言っていたけれど、どんなところかも見たかったので夫と一緒に引っ越しの車が出てから少し遅れて追いかけるように行きました。

因みに新しく買った大型家電や寝具、大きな家具ははそのまま配達でその他は便利屋さんをラッタ君は選択しました。かなり一人の引っ越しには便利でした。

 

便利屋さんと言っても、荷物を置いて帰ってしまったので、場所をもっと確認しないと決められないと言っていた食器戸棚などは、近くのホームセンターに夫とラッタで買いに行き組み立てたりしたのですが、なんと部品が足りなかったりで朝出かけていき、夕方近くに帰ることになってしまいました。

私は食器を洗ったり、その辺を拭いたり、一番頑張ったのは段ボールだたみです。

これ、昔から夫は絶対にやらないー・・・。

何回も引越ししたのに、やってきたのは私ばっかり。

段ボールはみんな持って帰ってやることにしたのですが、大きな机が届いたときは、そんなダンボールは持って帰れないなんて事を思わず夫が言ってしまったのは知らないからだなと思いました。

こういう大きいやつのダンボールはへなちょこが多くて、コンパクトに折れるんだよと紐でくくりながら思いましたが、だからと言って段ボールをたたまない夫に今回ばかりは不満なんかありません。

食器戸棚の組み立てが、結構大変だったのです。それに往復の車だって運転しなくちゃならないのですから。

―ああ、私たち本当に若くないなーって、これ、実感です。

 

帰りの駐車場で段ボールを積み込んで、私は思わず言いました。

「私、今日結構働いた。」

 「うん、そうね。」と余計な言葉挟まずそう素直にうなずくラッタ君。

母と子供の会話は時には呪文。私にはその「そうね。」が「ありがとう。助かったよ。」に聞こえてくるのです。

だけどー。

「あのおじさんも結構働いたな。」

おじさんとは夫の事です。

「うん。そうね。」

「私は、いいからさ。あの方には一言言って頂きたいな。」

「ああ、うん・・・」

それから彼は、少し離れたところにいた夫に言いました。

「あっ、今日はどうも・・・ありが。。。。」

「おっ、じゃな。」とそっけない夫。

 

だけれど帰りの高速を少し走ったところで

「ああいう時、あいつはいつもちょっと照れるんだよなあ。」

と嬉しそうに言いました。

 

 私はにんまりとほくそ笑んで窓の外を見ると、スカイツリーの向こう側の空が夕日に染まっていくのが見えました。

その時友達に電話をかけた時の事を思い出しました。他のおしゃべりと一緒に子供の独立の事を言うと、

「じゃあ、今は寂しくて泣いてしまっていたりするんじゃないですか。」

「いやいや、泣いたりしませんよ。涙は無縁です。一つ親としての仕事が終わると言うか、しっかり見届けたいと思います。」

こんな風にはちゃんと言わなかったけれど、そんな気持ちでいました。

 

 

けれど、窓の外の夕日の風景を見ていたら、私は「ALWAYS三丁目の夕日64」の最後のシーンを思い出してしまいました。

茶川と淳之介の別れのシーン。

「いいから早く行けよ。」と冷たく突き放す茶川の背中に

「おじさん、全部わかっていますから。今までありがとうございました。」と涙ながらに去って行く淳之介。

ああ、いいシーンだな。思い出すだけで泣けちゃうわ。

 

思わず私は「ふっ」と息を漏らして笑いました。

なんで、何で今この映画を思い出しちゃうわけ。勘違いしちゃうじゃない。

そう思いながら、さり気なく横を向き夫に悟られないように涙をそっと拭ったのでした。

 

 

 トップ画像の夕焼けの反対側の窓には虹がー。

 

にほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へ
にほんブログ村

共鳴するものがどこかにありましたら、ちょこっと押してみてください。またクリックしていただけると他の人のエッセイなどにたどり着けると思います。

コメント (5)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする