サーカスな日々

サーカスが好きだ。舞台もそうだが、楽屋裏の真剣な喧騒が好きだ。日常もまたサーカスでありその楽屋裏もまことに興味深い。

399日目「TOKYO1970 時代を挑発した9人の写真家たち(アルマーニ銀座タワー)」銀座

2013年10月20日 | 姪っ子メグとお出かけ

姪っ子メグ おじさん、東京に住まいを移したのはいつなのよ。
キミオン叔父 大阪にあった大学に5年間在籍していたからね。別にろくに就職活動なんてしなかった。
もともと大学の新聞会関係の 先輩たちがやっていた会社があってね、まあ学生時代から出入りしたり、バイトしてたりもあって、なんとなくリクルートされた。確固として、面接あってということより、まあフリーターみたいなもの。東京と大阪でやってたけど、メンバーは数人で周囲にまあ出入りしていたのが10人ぐらいいたんじゃないかな。ちょっとそこのある企画を任されて、最初はときどき東京には行くけど、基本は大阪の事務所に出入りしていた。だから東京に引っ越したのは1977年か78年ぐらいじゃないかなぁ。23歳か24歳ぐらいの時か。
で、下赤塚のアパートを借りたって言っってたよね。
そう。大学時代から本だけはたくさんあったから、3DKのアパート。金もないから田んぼの中にあるようなオンボロなアパートでさ。風呂なんてついてないしさ。あとから聞いたけど、何年か前に殺人事件があったって(笑)。大阪ではオヤジさんの関係で結構なマンションで留守番役をやって、周囲に羨ましがられていたから、住環境としては天と地の違いだな。
お給料は他に比べてどうだったの。
なんか、2,3年給料制度なんてなかったんじゃないかなぁ。結構、学生運動やってた連中多かったから、国の制度にはしたがいたくない!なんて青臭いこと言って、厚生年金なんてものもなかったし(笑)
じゃあ、生活はピーピー?
そりゃそうさ。でも毎日のように新宿のゴールデン街なんかに行って、出世払いのよいうなかたちでツケで飲ませてもらって。不思議な時代だったな。
その頃、東京のあちこちを巡ってたの?
うん、田舎者だもの。とにかく足で歩こう、と。金ないからさ、よくバスに乗ってね、都内循環とかで、町の顔を覗いて回って、名画座や下北あたりの地下演劇に通ったり、ほとんど汚い東武電車の最終で、ゲロを吐いてる人がいつもいて(笑)。電車なくなったら、そのまま朝までゴールデン街にいて、会社のロッカーで着替えたりとかさ。
でも、それから35年間、東京にいるわけよねぇ。


今日は、銀座アルマーニ。おじさん、こんなところで洋服買ったりしないでしょ。
しないしない。基本的に若いときから洋服には無頓着でさ。でもファッション関係の業界のお客さんも担当したし、周囲のクリエーター含め、おしゃれな子は多かったけどね。今日はイケメン店員さんになるべく顔あわさないようにして、展覧会場まで。勝手に自意識過剰になったりして。
今回の写真展は、寺山修司を座標軸にしながら、65年から75年ぐらいまでのTOKYOを撮った9人のカメラマンの作品を配置している。みんな有名な人ばっかりで。おじさんとよく行く、東京都写真美術館でも見かける大家ばかりよね。
大家だけど、結局半世紀前の作品だからね、フォトグラファーたちも時代を駆け抜ける青年たちだった。細江英公、沢渡朔、森山大道、内藤正敏、立木義浩、有田泰而、須田一政、渡辺克己に寺山修司。もちろん、全員、個展には何度か行ってる。オジサンはこの写真が撮られた頃は小学校から大学時代。三重の松阪から大阪に越して。でもまあ雑誌は好きだったから、雰囲気はそういうものを通じては知っていたけどね。でもやっぱり、TOKYOで生活したわけではないから、これらの写真を見て、現場にいないのに懐かしさがあふれたり、田舎や大阪とは違うな、と思ったり。
あたしの世代だと、もうこういう風景のかけらも残ってないような時代なんだけどさ、でもどこかすーっと入っていける感じもある。なぜなんだろう。実際はこの時代を体験していないのに。おじさんとか親を通じてのものなのかしら。
結局、被写体で移ってる人間たちがさ、だいたい当時の自分と同じような年なんだ。死んだ人間も多いだろうし、いまは孫をあやしているかもしれない。半世紀だからね。写真の中にその時の「青春」が写っていて、ああ、自分もこのひとりだったかもしれないな、と思うわけじゃない。そこがね、面白い。時間の経過がこういう企画展のなかで再認識させられる。
この作品群、全部プリントを買えるらしいわね。みんな値段ついてたし。
まあでも、半世紀前の9人を並べた意味はあるけど、もうひとつ企画の意図が伝わってこない。これで800円の入場料かよ、と思う。たとえば、この中のひとりの須田一成なんて大好きなんだけど、いま東京都写真美術館で個展をやっている。今回のチケットの半券を持っていけば600円が480円に。きっと行くと思うけど、絶対そちらの方がじっくり見れて、いいなと思うよ。 


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