サーカスな日々

サーカスが好きだ。舞台もそうだが、楽屋裏の真剣な喧騒が好きだ。日常もまたサーカスでありその楽屋裏もまことに興味深い。

130日目「柴田是真の漆×絵(三井記念美術館)」三越前

2009年12月11日 | 姪っ子メグとお出かけ
姪っ子メグ おじさん、話題のNHKの「坂の上の雲」を見てるの?
キミオン叔父 ああ。原作を読んだのは、ずっとずっと昔なんだけどね。司馬遼太郎は、同じ頃に執筆された「街道をゆく」シリーズが好きでね。歴史小説のほうは、そんなに熱心な読者じゃなかった。年をとってね、司馬さんがなにに怒りを感じて、なにに異義を申し立ててていたのか、だんだんわかるようになってきたんだけどさ。やっぱり、一時期、経営者なんかの雑誌で、「組織論」とか「人間観」でいつも司馬遼太郎が持て囃されていたから、そういうものに、反発していたことはあった。
あたしは、「坂の上の雲」は読んでいないの。だから、新鮮な思いで、NHKスペシャルドラマを見始めているんだけどね。明治っていう時代がなにか、わかんないものね。学校時代の歴史の時間も、もう明治以降、近代以降というのは、駆け足になっちゃうのよね。
白紙で感じれば、いいんじゃないかな。まあ、いま本屋でゴマンと関連ムックが出ているけどさ、もし読むとしたら、ドラマの監修・考証もしてるけど、関川夏央さんの「坂の上の雲と日本人」(文藝新書)が一番いいよ。
関川さんって、いち早く「ソウルの練習問題」などで韓国文化をとりあげたり、谷口ジローさんと組んで「坊ちゃん」シリーズなどの漫画原作を書いておられる人でしょ。向田邦子さんなんかもとりあげて昭和の家族にも焦点をあてているよね。
そうそう。明治の頭から日露戦争の40年ぐらいの間の日本人には、ある種の合理性や開明性があったし背筋も伸びていたんだね。でも、まあ運に恵まれたこともあって、日露戦争には勝利するんだけど、その後、変に自信を持ってしまったのかどうか、愚かしい衆愚の時代に入っていく。一方で、大衆的なデモクラシーは起こって来るんだけどさ、結局、アジア侵略から太平洋戦争に、国民が一丸となってなだれ込んで行くようになる。
でも、あたしの家には、まだ録画機がなくてさ、今度一体型を買おうかな、と思ってるんだけど、裏番組の「日曜美術館」が見れなくて、困ってるの。
不人気のNHKアーカイブズで有料で見るしかないんじゃないの(笑)。



絶句!
空前絶後!
驚愕!
超絶技巧!
圧巻よねェ。柴田是真。
明治の職人さんというか、工芸アーチストだけど、アメリカのテキサス州のエドソン夫妻のコレクションが中心で、里帰りしたんだな。ちょっと美術品流出は悔しくもあるけど、そのおかげで、こうやってまとまって見ることが出来るんだから感謝しなくちゃね。
資産家なんでしょうけど、財閥でもなし、美術館のコレクションでもなし、国家の略奪でもなし。ある縁で日本の工芸作品に出会って、だんだんコレクションを拡大していったようね。
柴田是真は、江戸末期の生まれだけど、やっぱり親父さんが職人さんで浮世絵もものする文化人だったんだな。で、息子是真の才を見出して、11歳で絵の修行に出すんだ。
四条派ね。で、十代にして絵師として頭角を現す。この人は、その後、漆絵技法をどんどん開発していって、第一人者となるのね。漆工の下絵としても絵の能力は必要なわけだけど、是真は漆工芸だけではなく、和紙に漆を用いて絵を描く「漆絵」というジャンルを切り開いていくのね。
それにしても、受付で漆工用語解説を渡されたけどさ、技法の種類がすごく多いね。安土・桃山時代以来の蒔絵の基本技術の伝統の継承も含めて、加飾技術のひとつである「螺鈿」もそうだけど、まあ、細工が細かいこと!
「金貝」だったっけ、文様に切った金・銀・錫などの金属の薄板を貼ったり、「切貝」とか「割貝」とか、薄貝をうまく利用してるのね。
「漆」でこんなに多様な表現ができるなんて、びっくりするね。で、この人の面白さは、どこかモダンも入ってるんだ。「騙し」技法もいろいろあって、わざと「ひび割れ」なんかを、自分で作りこんでいたりする。
「鳥獣戯画」以来の漫画絵みたいな下絵もあるし、漆絵画帖では、さまざまな技法を1冊にコレクションしている。
印籠なんかの細工は、細かすぎて見えないけどさ、これ、手にとって見たいよなぁ。
目録もよかったけど、別冊「太陽」特集もこの里帰りに合わせて、出されたのかな。うん、これいいな、拡大写真がたくさんついていて、お買い得よ。あたし、ゲット!
今年もメグといろいろ美術館散策したけど、今年はこの柴田是真展がベストだな。

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