サーカスな日々

サーカスが好きだ。舞台もそうだが、楽屋裏の真剣な喧騒が好きだ。日常もまたサーカスでありその楽屋裏もまことに興味深い。

mini review 07208「チェケラッチョ!!」★★★★☆☆☆☆☆☆

2007年02月17日 | 座布団シネマ:た行

透、暁、哲雄は高校3年生。進路も決まらないまま、退屈な日々を送っていた。ある日、バイト先の水族館で年上の美女、渚と出会った透は、ひと目で恋に落ちた。同じ頃3人は、幼なじみの唯に連れられていったライブで、人気バンド「ワー... 続き

若い役者たちを見ているのは、楽しみなものだ。

企画・プロデュースが大多亮、製作が亀山千広とくれば、またまたフジテレビである。嫌だな、という感じがついてまわる。
でも、今回は、見なくてはならない。
ふたつ理由がある。
ひとつは、原作・脚本の秦建日子と監督の宮本理江子という二人の有名人を親に持った子どもの作品に興味が惹かれたからだ。
ドラマ「ドラゴン桜」などで売り出し中の秦建日子の父親は元東工大教授で文学者の秦恒平。
本作が映画初監督の宮本理江子は、脚本家の山田太一の娘である。

作品自体のテンポは悪くないし、特に序盤の結婚披露や夜の水族館あたりのカメラワークはなかなかで、コメディ・タッチも無理がない。深みなどなにもない作品だが、いまどきの元気づけ爽やか青春物語としては、及第点をあげてもいいだろう。



もうひとつの理由は、主役のドジな高校生仲良し3人組の透(市原隼人)、暁(柄本祐)、哲男(平岡祐太)の3人は、初出演作品がどれも印象深かったからだ。そして、いまも乗っている若手役者たちだ。

市原隼人はデヴューが岩井監督の「リリィ・シュシュのすべて」。僕はDVD含めて10回以上見た大好きな作品であるが、内向的で繊細な少年をよく演じていた。2006年には「天使の卵」「虹の女神」と主演が相次いだ。

柄本祐のデヴューは、故黒木監督の「美しい夏キリシマ」。ヌーボーと独特のリズムで歩く少年は、米軍の爆撃で死んでしまった友人を見捨てて逃げてしまったという罪悪感が拭えない黒木監督の少年時代をモデルとしているが、無表情のなかに哀しみを湛えた演技は絶賛された。柄本明の息子である。僕は2005年の「疾走」で優等生であったが徐々に狂っていく兄を演じた姿がとても印象に残っている。2006年には「夜のピクニック」「初恋」など多く出演している。



平岡祐太は大ヒット映画である「スウィングガールズ」で、高校生JAZZ楽団の唯一の男子生徒を演じて、デヴュー。この作品でアカデミー賞新人賞を受けている。2006年には「幸福な食卓」「僕は妹に恋をする」などで主演している。

まだまだ作品を自分で選択することはできないかもしれない。だから、世間的には評価が高かったようではあるが、「偶然にも最悪な少年」に出演している市原や柄本をみて、僕個人は、目をそむけた。(たとえ、この作品でアカデミー賞新人賞をとっていようが)。個人的には、まったく何を持って評価していいか、わからない作品である。
また、平岡が主演した「イツカ波ノ彼方ニ」などは、僕のレヴューでは10点満点中、堂々の1点という評価である(笑)

「チェケラッチョ!!」というある種軽快な作品をぶち壊しているのはマドンナ役の伊藤歩である。1993年の大林監督の「水の旅人」でデヴューだから役者としては中堅なのだが、僕はことごとく相性が悪い(笑)。この作品でも彼女は沖縄の人気ラップバンド「ワーカホリック」のMJ涼太(玉山鉄二)の恋人役渚で登場するのだが、どうにももさもさしていて、彼女の出番では映像が失速してしまうのだ。せっかく、陽気な音楽の師匠役であるkONISHIKIや沖縄出身のお笑いコンビであるガレージセールやドラマ「花より男子」で人気急上昇のどこか安達祐美の何年か前の面影がある映画初出演の唯(井上真央)が、結構、頑張っているのに・・・。



ドジな高校生仲良し3人組としては、村上龍原作で60年代末の佐世保の高校生を描いた「69 sixty nine」が出色であり、映画としての評価も本作より数段上だ。これはやはり時代の差なのかもしれないなと思ったりもする。「69 sixty nine」の3人組のお馬鹿は、もっともっと本気であり、また社会も緊張に満ちていたからこそ、お馬鹿もなにほどかの痛快なところがあったのだろう。「チェケラッチョ!!」では、怒り役の教師もお間抜けだし、3人組の親たちもなんのかんのいっていい人ばかりだ。だから、憎むべき相手や、悪人、立ちはだかる壁が登場しない。

つまるところ主人公たちの冒険はどーんとスケールが縮小して、「チェケラッチョ!(おいらを見てくれ!)」というノリになってしまうのである。いいも悪いもこれが現在であるのかもしれない。


 



 



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14 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
チェケラッチョ (tom)
2007-02-18 13:31:42
大作ではありませんが、元気をもらえる映画でした。
「リリィシュシュ・・・」
みなさんお勧めですね。
今度観てみます。
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tom (kimion20002000)
2007-02-18 15:05:07
こんにちは。
爽やかで、元気がちょっとでる映画でしたね。
コメディタッチって、意外と難しいものなんですよ。
うまく、まとめてありましたね。
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アゲハちゃん・・・。 (Ageha)
2007-02-21 16:35:48
同じ岩井俊二作品の「スワロウテイル」が
大好きなAgehaさんでして。

・・・とはいえ、
ミステリアスな年上の女性を演じるはずだった彼女が
どうもラップや沖縄の空気、映画の雰囲気から
ちょい浮いてた感じはいなめなかったかなと。
楽しんでみてるときって気がついてないんですが
冷静になってみればそうだったかもと・・・。
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Agehaさん (kimion20002000)
2007-02-21 22:04:04
こんにちは。
彼女になんの恨みもないんですけどね。
いま、お酒のCMでも出ているけど、ダメですねぇ。
「カーテンコール」は主役でしたが、ずっと、ため息をついていました(笑)
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こんにちは♪ (ミチ)
2007-02-25 10:08:57
爽やかな3人組とか沖縄弁の温かさは良かったのですが、それ以上の感動とかは無かったです。
ちょっとテレビ的っていうのかしら、浅い気がしました。
若手の男優がたくさん出ていましたが、柄本くんは個性派俳優としてお父さんの跡を継ぐような予感~?
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伊藤歩 (もじゃ)
2007-02-25 11:05:13
こんにちは。TBありがとうございます。
伊藤歩は確かにガッカリでしたねぇ。
井上真央は元気いっぱいで好感が持てました。
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ミチさん (kimion20002000)
2007-02-25 13:20:37
こんにちは。
柄本君は、あの表情がいいですね。
親の七光りじゃなくて、食べていける役者だと思っています。
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もじゃさん (kimion20002000)
2007-02-25 13:22:15
こんにちは。
水槽で泳いだりしているときとか、スタイルはいいんですけどね。
なんか、表情がいつも、こわばっているような気がするんですよ。
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セオリー通りの青春映画 (skywave)
2007-02-26 22:16:20
コメントありがとうございました。
若者の変わらないテーマ、初恋。定石どおりのストーリ展開、安心して楽しめる青春映画でしたね。
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skywaveさん (kimion20002000)
2007-02-27 01:37:39
こんにちは。
青春映画でも、定番ですけど、ちょっとほろ苦さがあるところが、いいんじゃないでしょうか。
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