西洋音楽歳時記

旧称「A・Sカンタービレ」。07年には、1日1話を。その後は、敬愛する作曲家たちについて折に触れて書いていきます。

偉大なるベートーベン-心を酔わせるバッカス-

2006-12-29 11:14:20 | 音楽一般

「のだめ」のオープニングにはベートーベンの第7交響曲が使われています。ベト7などと呼んだりしていますね。まだクラシック入門当時は第1番とか第2番とか番号だけで言うのを何か殺風景な感じがしたのを思い出します。今ドラマを見てクラシック音楽の良さがわかってきた人もそう思っている人がいるのでは。いつまでも番号だけで呼ぶことは変わりません。今クラシック音楽の多くの曲を聴いてきて、全くそんなイメージはないです。誰の何番の交響曲、あるいはピアノ協奏曲といえば、その曲の持つ雰囲気、曲想、あるいは哲学的思索模様、などが浮かんできます。まだまだ十分内容を掴んでいるとは言えないですが。

ベートーベンの第7交響曲は、1812年彼が42歳のときに完成されました。全部で9曲あるうちの7番目の交響曲です。この曲については、ワーグナーの「舞踊の聖化」などという言葉が有名です。リズム的躍動感が支配する曲ということです。オープニングでは、第1楽章のやや長い導入部の後にソナタ形式を構成する主部に入るが、その第1主題(88小節目から)が使われている。リズム感溢れる主題で、このあたりがこの青春群像のドラマとぴったり合うのだろう。全体では40分弱くらいの演奏になるので、演奏シーンは、第1楽章の主題と、第4楽章の最後の部分だけが出てくるが、全体を通して聴けば、よりこの曲の持つ躍動感がわかるだろう。もしこの曲でベートーベンの交響曲の世界に入った人は、他の8つの作品も聴くといいでしょう。9つのうちの最高峰である第9は有名ですが、他にも「英雄」「運命」「田園」とニックネームのついたのもあれば、番号だけの1・2・4・8番の交響曲もありますが、それぞれがベートーベンの生涯のその時の思想的結実であり、現代の私たちに決して古いなどとは感じさせないものを持っています。

このころベートーベンは次のような言葉を述べています。
「目を開けば、私はため息をもらさねばなりません。私の見るものは、私の信仰とは反対のものばかりだからです。そして、音楽が、あらゆる知恵や哲理よりも、はるかに高い啓示であることを知らない世間を軽蔑せざるを得ないからです。音楽は新たなるものを創り出す力を与える酒であり、私は、人間のために、このすばらしい酒をしぼり、彼らの心を酔わせるバッカスなのです。そして、人間は再び、その酔いからさめた時には、その渇きを医するための、あらゆるものを求めるのです。私には一人の友達もなく、一人で生きていかねばなりません。だが、私は、私の芸術が、他の芸術家よりも、はるかに神に近いものであることを、十分に知っています。私は、何の恐れもなく神と交わり、常に神を認め、神を理解しています。また、私は、私の音楽が決して不幸な目にあうだろうとは思いません。このことを理解できる人は、そうでない人が悩む、あのすべての惨めさから解放されるに違いないのです。」

ベートーベンの作品がどのような背景のもとで産み出されるのか、そのようなことを知ればまた聴き方も変わるかも知れません。何年も前に読んだ、『ベートーベンの言葉』という本から抜粋してみました。

次回は、同じベートーベンの「スプリング・ソナタ」について書きます。