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【高校数学のツボ】n進法に関するある問題。

2017-02-28 21:39:59 | mathematics
<どんな問題なのか>

高校でよく使われている数研出版の『4STEP』という問題集を見る機会があった。科目は数Aで,n進法の単元に興味があったのでその話題を取り上げる。この単元は私が現役の高校生の時には学習指導要領になかった分野であったのが興味を抱いた理由である。

ページや問題番号までは覚えていないが,7進法で3桁の数が,桁の数を適宜並べ替えた5進法3桁の数と一致するようなものを求める問題2問が特に気に入った。

問題は2つであるが,ここではまとめて考察する。

7進法で abc と表される数を5進法で表したとき,

abc
acb
bac
bca
cab
cba

のいずれかになることはあるだろうか。

初めに,大前提として,この数は7進法で3桁であることから,a は1以上の整数であると仮定しておく。ただし b と c は一応 0 であってもよいものとするが,例えば5進法で bca と表せるかどうかを考える際には,b も1以上の整数である場合だけを解とみなすことにする。

この問題を一括して取り扱う統一的かつエレガントな手法は思いつかないので,泥臭く地道に個別に調べていくことにする。


<一番上の位の数が一致する場合>

まず,一番上の位が一致する

abc(7)=abc(5)



abc(7)=acb(5)

の2つの場合は起こりえないことを示そう。中途半端に10進表示もまぜつつ記せば,

abc(7)=49a+7b+c

となるが,b と c は非負の整数であるから,

49a+7b+c≧49a

である。そして a は 1 以上の整数であると仮定したから,

49a=25a+24a≧25a+24

である。

一方,5進法で abc もしくは acb と表される数においては,b と c は4以下の整数でなければならないので,

abc(5)=25a+5b+c≦25a+5・4+4=25a+24

となる。したがって,必ず

abc(7)≧abc(5)

および

abc(7)≧acb(5)

が成り立つわけだが,

49a=25a+24

となるのは a=1, b=c=0 のときのみであり,

abc(5)=25a+24

または

acb(5)=25a+24

となるのは,いずれも b=c=4 のときのみであるから,これらの等号が同時に成立することは不可能である。

例えば基数の異なる n 進数表示で全く同じ形になるはずはないことは感覚的に明らかであろう。


<一番上の位の数が b になるとき>

次に,

abc(7)=bac(5)

となることがあるかを検討する。

この等式は

49a+7b+c=25b+5a+c

を意味する。すなわち,

22a=9b

が成り立たなければならないが,b は5進法による表示に用いられているため,0以上4以下の整数でなければならない。22 と 9 は互いに素であるから,b は 22 の倍数でなければならない。したがって b=0 でなければならず,それに伴い,a=0 となり,最初の大前提である a≠0 に反してしまう。

したがって,abc(7)=bac(5) となることはありえない。

では,

abc(7)=bca(5)

となることはあるだろうか。これは

49a+7b+c=25b+5c+a,

すなわち

24a=9b+2c

と同値である。この等式からは次の二つのことが読み取れる。

まず,b は偶数でなければならないこと。したがって b=0, 2, 4 の3通りの可能性がある。

また,c は3の倍数でなければならないこともわかる。ゆえに c=0, 3 のいずれかである。なお,b と c はいずれも5進数表示の桁数であることから,ともに 0 以上 4 以下の整数でなければならないことを考慮した。

c=0 のときは 8a=3b であり,1≦a≦4 であることを考え合わせると,b=0, 2, 4 のいずれも適さない。

c=3 のときは 8a=3b+2 であり,b=2 のときのみ a=1 という望ましい解が得られる。


<一番大きい位の数が c であるとき>

abc(7)=cab(5) となることはあるだろうか。これは

49a+7b+c=25c+5a+b

が成り立つということだが,

22a+3b=12c

と同値である。b は偶数で,a は 3 の倍数でなければならないことが直ちにわかる。a≠0 と仮定したので,可能性としては a=3 しかない。

このとき

12c-3b=66

となるが,12c-3b≦12c≦12・4=48 であるから,この等式を満たし,かつ 0 から 4 の範囲に収まる整数 b と c は存在しない。


では最後に

abc(7)=cba(5)

となることがあるかを調べよう。ちょうど各位の数を逆順に並べたもの同士が等しいかどうかという,特徴のある場合である。

49a+7b+c=25c+5b+a

を整理すると

24a+b=12c

となるが,b は 12 の倍数でなければならないことになり,b=0 と確定する。このとき

2a=c

となるが,(a,c)=(1,2) もしくは (a,c)=(2,4) のいずれも解として認められる。


<まとめ>

長々と書いたが,abc(7) の各位の数を並べ替えた6種類の順列がちょうどこれと同じ値の5進数表示になっている場合は,

abc(7)=bca(5) の 123(7)=231(5) (10進法で表すと66),

abc(7)=cba(5) の 102(7)=201(5) (10進法では 51),204(7)=402(5)(10進法では102)

の3通りしかないことがわかった。

元ネタの問題集には,確か「10進法で表すと3桁の自然数で,x0y(7)=y0x(5) を満たすものを求めよ」といったものと,[abc(7)=bca(5) となる a, b, c を求めよ」といったものの二種類があったように思う。6種類の順列のうち,上手くいく場合のみを取り上げて問いに採用しているのだということが今回の考察で判明したわけである。

基数として 7 や 5 と異なるものにしたり,桁数を増やすといった一般化も考えられるだろうが,見通しの良いエレガントな議論が難しそうなので,本問についてはここで筆を擱くことにしたい。
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