お宅どちらさんですか
頭がボケて、妻や家族など親しい人に、こーゆーのがいちばん嫌で恐ろしい。
先輩は飲みにいくたびに、こうなることを真剣に恐れていたらしく、同じことを何回も力を込めて言った。彼に限ってそんなバカなと僕は思ったが、結果的には80歳を超えたある日から徐々に進行は進んだらしい。そしてまったく人を識別できないようになってこの世を去った。
僕は彼を尊敬していた。僕が平社員の時、彼はパリパリの重役で、会社や仕事にかける情熱は、半端ではなかった。
特に先輩後輩と言うことで、かわいいがってもらったし、僕は彼のいつも心の中に燃えたぎる青春に憧れていた。
酒が入ると上下関係は吹っ飛んで、思っていることを正直に言ったから、多分気分の悪いこともあっただろう。それについては彼は嫌な顔をしなかった。
もともと太っ腹で、ものに動じない人柄だったので、僕も心を許して、図にのって失礼は多々あった。
中でも、彼の夢はサラリーマンになることではなくて、医者になることだったと聞いた。
父の強い勧めもあって経済学部を選んだということで、心の底には医者になるための哲学があった。特にその哲学が好きで、僕も先輩のような哲学を持っていっぽん筋を通して生きたかった。そーゆーことにも惹かれていて、話はよく合い、尊敬の念はますます高まった。
そんな人となりを思っていたのに、最後は彼が最も嫌がっていた「お宅さん誰ですか」になってこの世を去っていった。
人生って分からないものだ。
頭がボケて、妻や家族など親しい人に、こーゆーのがいちばん嫌で恐ろしい。
先輩は飲みにいくたびに、こうなることを真剣に恐れていたらしく、同じことを何回も力を込めて言った。彼に限ってそんなバカなと僕は思ったが、結果的には80歳を超えたある日から徐々に進行は進んだらしい。そしてまったく人を識別できないようになってこの世を去った。
僕は彼を尊敬していた。僕が平社員の時、彼はパリパリの重役で、会社や仕事にかける情熱は、半端ではなかった。
特に先輩後輩と言うことで、かわいいがってもらったし、僕は彼のいつも心の中に燃えたぎる青春に憧れていた。
酒が入ると上下関係は吹っ飛んで、思っていることを正直に言ったから、多分気分の悪いこともあっただろう。それについては彼は嫌な顔をしなかった。
もともと太っ腹で、ものに動じない人柄だったので、僕も心を許して、図にのって失礼は多々あった。
中でも、彼の夢はサラリーマンになることではなくて、医者になることだったと聞いた。
父の強い勧めもあって経済学部を選んだということで、心の底には医者になるための哲学があった。特にその哲学が好きで、僕も先輩のような哲学を持っていっぽん筋を通して生きたかった。そーゆーことにも惹かれていて、話はよく合い、尊敬の念はますます高まった。
そんな人となりを思っていたのに、最後は彼が最も嫌がっていた「お宅さん誰ですか」になってこの世を去っていった。
人生って分からないものだ。