日々雑感

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左手だけのピアニスト7-5

2012年05月23日 | Weblog
左手だけのピアニスト

常識に反して、左手だけでピアノ演奏するピアニストのことがNHKで放映された。65歳で病にかかり。右手の自由を奪われ、恐らく絶望の淵に立ちながら、2年間の空白を過ごことだろう。その間、心の底から音楽に飢えていたそうだ。
もともと、世界を演奏旅行で駆け巡る有名なピアニストであった彼が、脳梗塞によって、右手の自由を奪われたのである。この時点で、医者はもうピアニストとして活躍はできないといった。ところが、医学の常識を破って、彼は右手は使えないが左手で、ピアノを弾くことができた。

厳しい訓練の後、再度、ピアニストに復帰したのである。彼はそれによって音楽の本質に迫るといった。こういうことを成し遂げた人しか言えない台詞である。75歳になって左手ピアニストとして復活し、コンサートを始めた。僕は、ここに彼の音楽に対する飽くなき執念を見る。このように「音楽に飢える」と言うのは、まさにピアノ=音楽は彼の生命そのものだ。その執念があったからこそ、どんな困難にも打ち勝って左手ピアニストとして復活を成し遂げたのである。

僕の師匠の山田耕筰先生も同じく60才代で脳梗塞をわずらい、言葉と左手がやられた。ろれつが回らないし、左手は内側に向かって曲がっていた。足も不自由で、杖なしでは歩行も困難だった。
当時、先生はグランドオペラ「香妃」の作曲中で、左手が使えなくなったから、その作曲は弟子の團さんが引継ついた。一つの作品を先生と弟子が作ったのである。戦後の混乱期で、リハビリもできなかっただろうから、病状はそのまま固定されてしまったのだが、先生は右手を使って生涯最高の歌曲。美しいというよりは神々しいとさえ感じる名曲。「バラ花に心をこめて」を作られた。
片や左手のピアニスト、片や右手だけの作曲家。両者は執念で音楽を追及された。意欲のある人間には障害も年齢も関係ない。唯ただすごいの一言である。

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