15歳の寺子屋 ペンギンの教え小菅 正夫講談社このアイテムの詳細を見る |
動物たちの「行動展示」で、日本中で有名になった人気動物園の旭山動物園名誉園長の小菅正夫氏による、15歳の寺子屋シリーズの中の命の授業。
6時間の授業を通して、小菅氏の生き方が語られていく。
人間は何故生きているのだろうという哲学的疑問を動物に聴く氏の話。回答は、う余命少ないカバの最後の繁殖の機会に教えられた。
また、将来の進路は性急に決める必要はないという、氏の体験談。その時に打ち込めるものがあれば打ち込むこと。勉強をする機会が来たらば、無我夢中で自分の力を最大限に生かした勉強すること。聴くべきことがたくさんある。
旭山動物園の経営難で、閉園の危機を仲間たちとどう乗り越えたかというエピソードも多くの事を教えてくれる。
また、動物園の役割も再認識させてもらえる。動物は決して「かわいくない」。彼らの生存が人間により脅かされている今、動物園で、動物を繁殖させていつかは自然に帰したい。多様な生き物が共存している環境こそが、人間にとっても望ましい環境であるという、小菅氏の思いが15歳を中心にした青少年に伝わることができれば、本書の目的の一つは達成できるだろう。
題名に関しては、動物園で行われているペンギンの行進では、フンボルトペンギンが参加していないことに由来するのだろう。フンボルトペンギンは、まったくの人嫌いだそうだ。動物園で孵化したヒナでさえ、動物園の人間が近づいても逃げていく。これは、かつて、自生地で受けた人間からの迫害の歴史が、負の記憶として世代を超えて受け継がれていったのかもしれないと小菅氏は指摘する。我々人間が、今までにしてきた動物への仕打ち。北海道の自然も、アイヌの生活ではおかされることなく共存できた。それが、明治以降の人間に都合のよい「開発」の名の下に環境が破壊されたいった歴史も忘れることができないのである。