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捨てられる命ゼロの社会を目指して・読書『命がこぼれおちる前に―収容された犬猫の命をつなぐ人びと』

2012-07-06 07:04:48 | 読書
命がこぼれおちる前に―収容された犬猫の命をつなぐ人びと (感動ノンフィクションシリーズ)
今西 乃子,浜田 一男
佼成出版社


 愛玩動物という言葉がある。この字を見ると、おもちゃのように犬を飼うというイメージが湧いてしまう。
命を持った存在というよりも、おもちゃとしてペットの犬や猫を買う人が少なくないようだ。実際に、公的施設で、毎日のように殺処分される犬と猫の数は、全国で一体どれほどいるのだろうか。飼い主の勝手な都合で、捨てられたり、そうした施設に飼い主に連れられて、何も知らずに収容されるペットも後を絶たない。本書に書かれているケースでは、高い金を払って買った柴犬が、病気だと判明するとすぐに施設に連れてきたケースが書かれていた。手術は高額だし、毎月の治療費は払いたくないという。では、何故安くないその犬をかったのか。飼い主に連れられて、喜び勇んで施設に入ってきた犬は、そのままだと1週間後には「殺処分」されてしまう。

 著者は、学校の子どもたちに殺処分される犬や猫の事を話すことにより、「命の学習」を続けている。本書は、子どもたちのために書かれたノンフィクションであるが、大人たちにも読んで欲しい。実際にペットの命を絶つのは、大人たちによることがほとんどであるのだから。
 街を歩いていたり、いろいろなところで犬を連れた人を見かける。ちょっと前まではミニチュアダックスフンド、そしてチワワ、最近はトイプードルが多い。流行があるのである。テレビやマスコミに接して、「可愛い」から飼うものの、シベリアンハスキーの流行の時はひどかった。飼育環境や犬の特性を知らずに、テレビ番組の影響で飼い主は増えたが、最終的施設に収容される結末も少なくなかったようだ。飼わないことも、動物愛護であるという本書で語られる言葉も大切なことである。

 施設に収容された犬や猫を個人的に引き取ったり、里親探しを行なっているボランティア団体の活動がある。また、引き取った犬をセラピードッグに育成している団体も存在する。今回の出版では、千葉市動物保護センターで新たな飼い主探しに協力する譲渡事業協力者と、殺処分に関わってきたセンターの獣医師の、一歩踏み込んだ活動が紹介されている。行政組織が、ボランティア活動を行なってきた私人の熱意に動かされて、彼らと協力して殺処分される命の数を減らそうという活動は先駆的である。二酸化炭素の充満する部屋での殺処分はもうそこでは行われていない。しかし、殺処分ゼロは達成するのは難しい。新たな飼い主を探すために、獣医が紹介した環境庁の譲渡適性検査を行なった犬や、捨て猫の飼い主が見つかっても、センターに持ち込められる命は後を絶たない。収容された猫たちも、ストレスや病気で飼い主を見つける前に施設内で死んでいる。
 下半身不随の瀕死の犬や、障害や病気を持った犬や猫の飼い主探しも行われている。どの命にも生き残るチャンスを与えるためである。そうしたケースのエピソードも感動的だった。

 最終的な目的は、殺処分ゼロから「捨てられる命ゼロ」への我々の意識の変換である。「命はめぐらない……。たったひとつだけ――」という本書からの声に子どもたちと一緒に耳を傾けよう。

 なお、この本に登場するボランティアの方が、捨てられた命を引き受ける人を探すために使っているブログ等の情報は、本書の記載を参照してください。
 


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