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「坂の上の雲」放映を前に/司馬史観の危うさ・批判書を読む①

2009-09-12 01:37:06 | 歴史
近現代史をどう見るか-司馬史観を問う (岩波ブックレット (No.427))
中村 政則
岩波書店

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 NHKで、近々、司馬遼太郎の「坂の上の雲」の放映があるという。司馬氏は、生前、この「坂の上の雲」のテレビ化、映画化を許可していない。何故、許可しなかったのか、また、何故遺族が許可をしたのかも、よくはわからない。ただ、内容に関しては、司馬史観の中でも特に問題とされるものなので、まずは、批判書を読んでから、番組を観ようと思っている。日本の台湾統治に関して、右翼からクレームが付いているNHKで、自由主義史観をとる二つに分解した「新しい歴史教科書とつくる会」の支持者が喜ぶような作品を制作することは何とも皮肉な話である。

 まずは、日本近現代史専攻の中村政則氏の「近現代史をどう見るか―司馬史観を問う」を読んでみた。

 『司馬氏の歴史観では、「明るい明治」と「暗い昭和」という歴史の把握をしている。本来、歴史は、多面的に解釈すべきものであるが、司馬氏はそのように単純化している。ということは、「明るい明治」を描くために、「暗い部分」を故意にか、切り捨てているのである。たとえば、日清戦争における旅順虐殺事件(外電は、非戦闘員・婦女子・幼児など数千人を殺害と報道)を無視して、日本兵士は「軍隊につきものの略奪事件を一件も起さなかった」と不正確な叙述をしていることなどである。日露戦争時の労働者・農民の苦しさなどにも触れないし、大逆事件などについても一、二行程度触れるだけである。他の作品に関する歴史叙述の歪みも本書では取り上げられている。

 こうした日本の近現代史を全体構造を的確につかむことのない司馬史観が、「自由主義史観」の藤岡信勝氏に与えた影響は大きく、本書でも、「自由主義史観」は、司馬史観の中の都合のよいところだけを取り出した「信奉史観」だと指摘している。
 ただし、司馬氏の「暗い昭和」の日本軍の統帥権への嫌悪は継承していないことが問題であるが。

 本書では、日露戦争と朝鮮の植民地化との関連についても言及している。司馬史観では、この不可分の関係を深刻に考えていないと指摘している。

 歴史を一面的にしかみない作品が、明治をいう時代を明るい時代と描く事のみになるかは、まずは、拝見ということか。

 本書は、特異な歴史観から無視された大正デモクラシーの時代の意義についても言及している。

 


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