『ラモックス ザ・スタービースト』 ロバート・A・ハインライン (創元SF文庫)

タイトルを見ると、なぜか家電量販店のジングルが頭に鳴り響く。
岩崎書店から出ていた『宇宙怪獣ラモックス』(福島正実 訳)の完訳版。あまのよしたかの挿絵があまりにもかわいくて、まったく気付かなかったよ! 気付いたのは、ラモックスの肩が腫れてきた時だ(笑)
この話、好きだったけど、ラモックスのイメージは完全にトカゲだったからな。描写を読むと、こんなプニプニだったのか。
表の主人公は少年、ジョン・トマス・スチュアート11世と彼女のベティなんだが、裏の主人公というべきヘンリー・グラッドストーン・キク氏の活躍が見もの。解説で訳者の大森望が書いてある通りなのだが、実はこの小説の肝はキク氏やグリーンバーグといった宙務省の役人たちだったのだな。
子供の頃に読んだ記憶だと、少年と少女が機転を利かせて、大人たちからラモックスを守って宇宙へ返すというE.T.みたいなイメージだったんだけど、全然違ってた。
当初、融通の聞かないお役人の風刺レベルで終わるかと思われた宙務省が、フロシー星人とのギリギリの交渉で地球の危機を切り抜けていく様が秀逸。このエピソードに比べれば、ジョンとベティの冒険など、まさしく子供のお遊びにすぎない。
こうやって、少年少女の側と、大人の側の両方から読ませるジュブナイルというのは珍しい上にすばらしい。
主人公が草食系ナードで恋人が元気な肉食系だったり、普通に携帯電話が出てきたりと、現代的な設定は古びていない。ジョンを自分の思い通りのレールに乗せようとする母親と、高校生ながらそんな親からとっくに縁を切ったベティという対比も、現代日本のコンテキストから見ても興味深い。
ところで、ジョンの計画通りにラモックスをウラン鉱山へかくまっていたら……きっと放射能を吐くようになったに違いない。ちなみにこの小説が出版された1954年は映画『ゴジラ』の公開された年だそうな。

タイトルを見ると、なぜか家電量販店のジングルが頭に鳴り響く。
岩崎書店から出ていた『宇宙怪獣ラモックス』(福島正実 訳)の完訳版。あまのよしたかの挿絵があまりにもかわいくて、まったく気付かなかったよ! 気付いたのは、ラモックスの肩が腫れてきた時だ(笑)
この話、好きだったけど、ラモックスのイメージは完全にトカゲだったからな。描写を読むと、こんなプニプニだったのか。
表の主人公は少年、ジョン・トマス・スチュアート11世と彼女のベティなんだが、裏の主人公というべきヘンリー・グラッドストーン・キク氏の活躍が見もの。解説で訳者の大森望が書いてある通りなのだが、実はこの小説の肝はキク氏やグリーンバーグといった宙務省の役人たちだったのだな。
子供の頃に読んだ記憶だと、少年と少女が機転を利かせて、大人たちからラモックスを守って宇宙へ返すというE.T.みたいなイメージだったんだけど、全然違ってた。
当初、融通の聞かないお役人の風刺レベルで終わるかと思われた宙務省が、フロシー星人とのギリギリの交渉で地球の危機を切り抜けていく様が秀逸。このエピソードに比べれば、ジョンとベティの冒険など、まさしく子供のお遊びにすぎない。
こうやって、少年少女の側と、大人の側の両方から読ませるジュブナイルというのは珍しい上にすばらしい。
主人公が草食系ナードで恋人が元気な肉食系だったり、普通に携帯電話が出てきたりと、現代的な設定は古びていない。ジョンを自分の思い通りのレールに乗せようとする母親と、高校生ながらそんな親からとっくに縁を切ったベティという対比も、現代日本のコンテキストから見ても興味深い。
ところで、ジョンの計画通りにラモックスをウラン鉱山へかくまっていたら……きっと放射能を吐くようになったに違いない。ちなみにこの小説が出版された1954年は映画『ゴジラ』の公開された年だそうな。