碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

報道・情報番組とジャニーズ・タレント

2010年03月31日 | メディアでのコメント・論評

新聞社から取材を受けた。

テーマは「なぜジャニーズのタレントたちが報道・情報番組に起用されるのか」だ。

確かに、嵐・桜井翔の「NEWS ZERO」をはじめ、NEWS・小山慶一郎が「ニュースエブリィ」、そしてV6のイノッチこと井ノ原快彦はNHKの朝の情報番組「あさイチ」のキャスターとなっている。

今や、ドラマやバラエティーだけでなく、報道・情報番組もジャニーズ時代なのである。

ほんと、すごい(笑)。

取材のほうは、そもそも“報道番組”って何だろうね、“キャスター”ってどういうものなんだろうね、といった話から始まった。

なんだかよく分からない状況になっている時は、そんなふうに原点までさかのぼってみるといいのだ。

その上で、現在のテレビ、特に報道番組と「ジャニーズのタレントたち」の関係を考えてみた。

途中、“報道とジャニーズ”のパターンは新聞にはないのか、といった話も飛び出して、いやあ、なかなか刺激的な取材でありました(笑)。

この記事、数日後には紙面に出るそうです。

10万人の皆さんに、感謝です。

2010年03月30日 | テレビ・ラジオ・メディア

木曜からは、もう4月。

駅前の桜並木も、我が家の周囲の桜も、間もなく満開だ。

このブログを見て下さった方の総数が、9万人を超えたのが3月3日のひな祭だった。

今日、それが10万人を超えていた。

2008年4月の開設から丸2年。

1万人台からみれば、ひとケタ違う(って当たり前か)。

うーん、10万人。何やら大変な数だ。

次にケタが変わるのは100万人。そりゃ、当分は来ない(笑)。

ならば、今回の“ケタ違い”を、十分に味わっておこう。

10万人の皆さんに、感謝です。

テレビ東京『のりものテレビ』の楽しさ

2010年03月30日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

『日刊ゲンダイ』の連載コラム「テレビとはナンだ!」。

今週の掲載分では、テレビ東京の期末特番「のりものテレビ~働くのりもの、ヘンなのりもの37連発SP」について書いた。

“働くのりもの、ヘンなのりもの”って、まるで絵本のタイトル(笑)。

でも、そのシンプルでストレートな攻め方がいいのだ・・・


見出し:
企画で勝負したテレ東の“のりもの特番”は楽しめた

コラム本文:
期末の特番ウイークが続いている。

番組表には派手な長時間スペシャルが並ぶが、実状はレギュラー番組の拡大版ばかり。

新規企画を考える手間はいらず、視聴率の歩留りが読め、何よりリーズナブルだからだ。

そんな中、テレビ東京が思わずニヤリとしたくなる特番を流した。

「のりものテレビ~働くのりもの、ヘンなのりもの37連発SP」だ。

登場するのは文字通り異色の乗り物。

バックできない飛行機を牽引するクルマがある。

新幹線輸送車の後輪はリモコンで別の動きをしてカーブを見事に曲がっていく。

「青いタカアシガニ」と呼ばれる巨大クレーン車の運転席は高さ20メートルの位置にある。

かと思うと、坂の町・長崎の住民用モノレールは高齢者の足となっている。

高知の土佐神社では移動式の賽銭トロッコが大活躍だ。

この特番には大物司会者はいない。スタジオのひな壇芸人もいない。

ナレーションの大竹まことと南海キャンディーズの山崎亮太がいるだけ。主役は、あくまでも乗り物たちなのだ。

そう、最近すっかり人気番組となった「空から日本を見てみよう」の成功パターンである。

特番もタレントに頼らず企画で勝負。その心意気や良し、としたい。

実際、親子はもちろん、大人の男が一人で見ても十分楽しめた。

「サンダーバード」のテーマ曲が繰り返し流れていたのもご愛嬌だ。


・・・基本的に、男はいくつになっても乗り物が好きだ(笑)。

最近は、若者がクルマに無関心になったといわれるが、それはデザインをはじめ魅力的なクルマが少ないことも影響している。

この番組の乗り物は珍しいものが並んだが、同じような形でいいから、内外のクルマばかりが出てくる、怒涛のクルマ特番が見てみたいなあ。

研究室OB・OG懇親会

2010年03月29日 | 大学

昨年3月に卒業した研究室のOB・OG有志が集まって懇親会。

社会人となって1年が過ぎたわけだ。

通信系、放送系、映像系など、あちこちの“現場”の状況を、ナマで聞けるのが面白かった。

まだ新人といわれる彼らが一種の皮膚感覚で認識している会社や各業界の“現在”は、新人だからこそ意外と的を射ているかもしれないのだ。

久しぶりの渋谷は十分賑やかだった。

店の外に出てから、急きょ撮ることになった記念写真。

その時、さっと駆け出して、通行人に声をかけていた(仕事中の)“呼び込みのお兄さん”に頼み込んだのは、テレビ映画の製作部門で修業中のOBだった。

普段、撮影現場でのクルマ止めなどで鍛えた、そのフットワーク、その気合い、お見事(笑)。

というわけで、上の写真のシャッターを押してくれたのは、親切な呼び込みのお兄さんです。

小説『ガラスの巨塔』が描くNHK

2010年03月28日 | テレビ・ラジオ・メディア

小説『ガラスの巨塔』(幻冬舎)を読了した。

著者の今井彰さんは、NHK『プロジェクトX』のプロデューサーとして知られた人だ。

08年に退職しているが、その際、万引き事件だか容疑だかが関係していた。

この小説は、「元NHK看板プロデューサーが書き下ろした問題小説」ということになる。

主人公の西悟は、人気番組の敏腕プロデューサーだ。

番組タイトルは「チャレンジX」となっているが、内容は『プロジェクトX』そのものであり、当然、西は今井さん本人を思わせる。

物語としては、強烈な個性ではあるが“やり手”の主人公が、巨大放送局の中で、ワンマン会長の援助を受けて成功の階段を駆け上がり、やがて追い落とされる、というものだ。

会長は、これまた元会長の海老沢さんと重なる人物で、他にもNHK内部を知る人が読めば、「ああ、これはあの人ね」とすぐに分かるような書き方をしている。

つまり、これはNHKとそこに棲息する人々を描いたモデル小説であり、同時に「内幕はこうだ」という暴露小説であり、「実は私は悪くない」という弁明小説(?)でもある。

ただ、申し訳ないけど、小説全体の“出来”は、そんなに良くはないように思う。

前述のように、この小説の出版自体に様々な“狙い”があるため、主人公の描き方や物語展開に、著者の“都合”や“事情”を感じてしまうのだ。

とはいえ、NHKにおける番組作りの様子や、組織の内幕に関しては、権力闘争、嫉妬、陰謀などを含め、「ふ~ん、そうなんだあ」と思わせるリアリティがあるのも事実。

いっそノンフィクションとして書いたほうが良かったのかもしれません。でも、それだと訴えられちゃうか(笑)。


「あなたにとって放送とは何か」

2010年03月27日 | テレビ・ラジオ・メディア

番組出演の合間に、札幌の古書店を歩く。

いつもの石川書店で、油井正一:編『モダン・ジャズ入門』(荒地出版社、1967年)、佐田稲子『夏の栞~中野重治をおくる』(新潮社、1984年)など10冊を入手。宅配便で送ってもらうことにした。

北大前の南陽堂書店では『放送の自由は死滅したか』(社会思想社、1972年)を発見。

この本は、「あなたにとって放送とは何か」と題した<ワイド・ティーチイン>を軸に構成されている。

「ティーチイン」という言葉自体が、ひどく懐かしい。討論会とシンポジウムを混ぜたようなもの、だったろうか。

出席者:
山口敏夫(自民党)、田英夫(社会党)、麻生良方(民社党)、
塩出啓典(公明党)、小笠原貞子(共産党)、
和田勉(NHK)、牛山純一(日本テレビ)、大山勝美(TBS)、
森川時久(フジテレビ)、秦豊(NET=現・テレビ朝日)、
田原総一朗(東京12チャンネル=現・テレビ東京)、
村木良彦(テレビマンユニオン)、斉藤基(ニッポン放送)、
片山善治(工学博士)、志賀信夫(放送評論家)、
高瀬広居(放送評論家)、青木貞伸(放送評論家)、
稲葉三千男(東大)、堀川直義(成城大)、
ばばこういち(インタビュアー)

このティーチインが行われたのは1971年10月22日。

メンバーでいえば、和田勉(NHK)、牛山純一(日本テレビ)、大山勝美(TBS)、森川時久(フジテレビ)、秦豊(NET)、田原総一朗(東京12チャンネル)、村木良彦(テレビマンユニオン)、という名前と所属が、大いに時代を語っている。

また、取り上げられた課題には、権力の介入、テレビ番組における署名性、言論の自由、客観批評、スポンサーの介入、自己規制等々がある。

これは熱くなりそうだ、と思う。

実際、読んでみると、随所で興味深い遣り取りが展開されている。

現在との違い、逆に今も変わらないことなど、いろんな発見もある。

にもかかわらず、どこか噛み合わないというか、賑やかなんだけど空回りというか、つまり議論のヘソが見えないのだ。

それが単純に多すぎるパネラー(笑)や人選のせいなのか、時代状況のせいなのか、放送というものの本質によるものなのかは、よく分からない。

分かるのは、この時、放送をめぐって、これだけの人たちが、それなりに真剣に語り合った(主張し合った)という事実だ。

むしろ今、このティーチインが掲げたのと同じ問いかけに、私自身を含め、テレビに関わる人間がどう答えるのかの方に興味がわいた。

「あなたにとって放送とは何か」

UHB「みちゅバチ」新作ポスター

2010年03月26日 | テレビ・ラジオ・メディア

札幌に来ている。

昨夜は霙まじりの雨から一時は雪になったりしたが、今日は晴天だ。

午前中、UHB北海道文化放送『のりゆきのトークDE北海道』に生出演。

春に向かって、札幌の新しい飲食店が登場していた。

特に、若いシェフたちによる、独自のカラーを出したお店が印象的だった。

UHBのロビーで、局キャラクター「みちゅバチ」の新作ポスターを目撃。

“着ぐるみ”なのかな? 結構な迫力だ(笑)。


午後の出演は、15時45分からHTB北海道テレビ『イチオシ!』です。

『週刊新潮』で後藤謙次キャスターについてコメント

2010年03月26日 | メディアでのコメント・論評

発売中の『週刊新潮』(4月1日号)に、TBS「総力報道!THE NEWS」の後藤謙次キャスターに関する記事が載っている。

タイトルは<三顧の礼「後藤謙次」キャスターに、無理やり卒業証書のTBS>。

あの番組が終了したことで、後藤さんは心ならずも「フリーター(本人の言葉)」となってしまった、というお話だ。

記事の前段では、、後藤さんがTBSの“三顧の礼”に応える形で参加したこと。それが、わずか1年で撤退したことなどが書かれている。

そして、私のコメント部分は・・・


番組の敗因について、碓井広義・東京工科大学教授はこう分析する。

「キャスターに必要なのは、この人の意見なら信用できると感じさせる“説得力”と、視聴者を引き付ける“表現力&キャラ”です。

後藤さんの政治記者としての知識・経験は抜きん出て高く、90点くらい付くでしょう。

でも、後藤さんがどのくらい凄い記者なのか視聴者は知らないので、残念ながら説得力に繋がらなかった。

一方、筑紫哲也や古舘伊知郎のようなカリスマ性やしゃべりのうまさが不足していたことは否めませんね」


・・・この後、政治評論家の「後藤さんの売りは現場取材なのに、担当コーナーで紹介されたのは政局の読み方のようなものばかりだった」というコメントがあり、記事は続く・・・


だが、そんな(後藤さんの)キャラを知りながら、主婦やティーン、高齢者しか観ない時間帯にキャスティングしたTBSこそが最大の戦犯、という点では、碓井氏も政治評論家も意見が一致している。


・・・もっと別の後藤さんの生かし方はあったはずなのに、ホントもったいなかった。

記事の中には、TBS関係者の「今後は局内の報道情報番組にコメンテーターとして出ていただく方向」という言葉がある。

これから普天間問題や参院選などで出番がありそうだ、と。

まあ、そうなればいいなあ、と祈るしかない。

そして、記事の最後は「夕方ニュースで、グルメ特集に作り笑いを浮かべるより、よほど良いかも」。

はい、確かにそうです(笑)。

卒業おめでとう!

2010年03月25日 | 大学

昨日(24日)、大学の卒業式が行われた。

生憎の冷たい雨となったが、1千数百名の学生たちがキャンパスを巣立っていった。

まずは、卒業おめでとう!


式典が終わると、各研究室に分かれて、それぞれの担当教員から学位記(卒業証書)を受け取る。

我らが研究室でも、佐々木先生と私が、一人一人に直接手渡した。

卒業生も、来週の入社式を待つ者、大学院に進学する者、フリーのカメラ助手として現場に入る者など、様々だ。

これまで当たり前のように誰かが作業をしていた卒研室も、新たなメンバーに入れ替わるんだなあ、などと感傷的になっていたら、「最後に、ひと言」と促された。

大層なことを言ったわけではない。

自分の新入社員時代を思い出したりしながら・・・


新人の頃だけは、誰に何をどれだけ訊いても許される。

知らないこと自体は恥じゃない。

どんどん尋ねよう。

でも、一度教えてもらったら必死でアタマやカラダに叩き込むこと。

こういう時代だから、やがて職場が変わることもあるはず。

しかし、動く前に「これは、ここで体得したぞ」というものを持っていること。持てるくらいには頑張ること(笑)。

自分以外は、みんな先生(師匠)だと思って謙虚に学んでください。


・・・といった話をした。

それから、夜になって、大学近くの居酒屋へ移動。

笑い声や、泣き上戸の声(笑)やらが交差し、にぎやかな宴だった。

そんな”いつも通り”の光景を眺めながら、「みんな、元気で。とりあえず、元気で」と、サントリーのCMコピー(懐かしい)みたいなことを繰り返し言っている私でした(笑)。


卒業、おめでとう! 

そして、ありがとう。

4月改編とTBS『CBSドキュメント』の終了

2010年03月23日 | テレビ・ラジオ・メディア

民放各局の4月改編を整理しておく。

『産経新聞』(2010.03.21)の記事によれば・・・


<TBS>
今春の改編では、夜7時台はバラエティー中心となる。月曜は、木曜午後7時55分から放送中の「関口宏の東京フレンドパークII」が、以前の時間帯に復帰。水曜午後7時55分からの「時短生活ガイドSHOW」も、7時からの放送開始に繰り上がる。火、木、金曜にはそれぞれ、新番組が投入される。

<テレビ朝日>
苦戦が続いていた「報道発 ドキュメンタリ宣言」(月曜午後7時)を土曜午後5時に移動する。「ゴールデンタイム(午後7~10時)で視聴率が取れないと判断したわけではないが、視聴率が2けたを超えないテーマが多い現状では厳しい」と平城隆司編成制作局長。代わって、深夜の人気番組「もしものシミュレーションバラエティー お試しかっ!」が放送される。

<日本テレビ>
平日午後7時から放送中のバラエティー「SUPER SURPRISE」を火、木、金曜だけの放送に変える。代わりに月曜は「不可思議探偵団」、水曜には「密室謎解きバラエティ 脱出ゲームDERO!」のバラエティーを投入する。テレビ東京では、平日午後6時半から30分枠で放送中の人気子供番組「ピラメキーノ」が、金曜は午後7時からも「ピラメキーノG」として登場する。

<フジテレビ>
こうした各局の動きに対して、平日午後7時台の変更を行わなかったのがフジテレビだ。同局ではすでにバラエティー番組中心で編成されており、中でも各局がこぞって改編に踏み切った月曜は、バラエティー番組「ネプリーグ」が常に視聴率20%台を維持している。


・・・ざっと眺めて分かるのは、完全な“バラエティー・シフト”だということ。

報道番組やドキュメンタリー番組は、ますます圧迫(迫害?)されていく。

この記事には出ていないが、TBSは『CBSドキュメント』を、今月17日の放送を最後に打ち切った。

アメリカのCBS『60 Minutes』の日本語版ということになるが、ピーター・バラカンさんの解説が視聴者との見事なインターフェイスになっていた。

放送開始が1988年の秋だから、20年を超える長寿番組だ。

昨年暮れには、毎週だった番組を、隔週に変更している。2週に1回の放送で、しかも深夜25時29分から。

にもかかわらず、支持する視聴者は確実に存在していた。

TBSの全ラインナップの中で、良心的番組、高価値(有意義)番組と呼べる1本だったことは確かだ。

『CBSドキュメント』を打ち切って、この枠をどうしたいのか。

恐らく、バラエティー的なものを始めるのだろう。これだけ深い時間帯もまた“商売の場”として使っていくのだ。

失ってみて、ようやくその価値に気づくことはよくある。しかし、この番組の価値は、失わなくても十分に分かる。

TBSは、また一つ、大きな誤りを犯したとしか言いようがない。残念だ。

一日遅れで加藤和彦さんの誕生日を祝う

2010年03月22日 | 舞台・音楽・アート

昨日(3月21日)は、昨年秋に亡くなった加藤和彦さんの誕生日だった。

1947年生まれの団塊世代。

お元気であれば63歳になっていたはずだ。

KAWADE夢ムック文藝別冊『<総特集>追悼・加藤和彦~あの素晴らしい音をもう一度』(河出書房新社)を入手した。

加藤さんへのロングインタビューやエッセイ、小田和正や細野晴臣との対談、何人もの追悼文、論考などが集められている。

インタビューが行われたのは6年前の今日(3月22日)だ。

その中で、「常々、僕言ってるんだ。全部任せられるプロデューサーがいたら任せたいって。いないから自分でやってきたわけで」と語っているのが印象的。

確かに、加藤和彦をプロデュースできるプロデューサーは、探すのが難しい。

というか、加藤和彦を加藤和彦以上にプロデュースできるプロデューサーは、なかなかいないだろう。

それくらい音楽に関して“一筋縄のひと”じゃなかったわけで。

「世の中は音楽なんて必要としていないし。私にも今は必要もない。創りたくもなくなってしまった。死にたいというより、むしろ生きていたくない。生きる場所がない、という思いが私に決断をさせた」(一般向け遺書)

加藤さんは、ずっと自分の「場所」は自分で創ってきたから、やはり誰かが用意したそれではダメだったかもしれないなあ。

自分の仕事、生活に関して、細部に至るまで“完璧主義のひと”だったと思うが、自身の「これから」についても完璧であろうとしたのかもしれない。わからないけど。


一日遅れですが、加藤さん、誕生日おめでとうございます。

『井上ひさし全選評』の眼力(がんりき)

2010年03月22日 | 本・新聞・雑誌・活字

なんという厚さ、そして重さ(笑)。

いや、そんなことより、この本の“企画”自体がすごい。

『井上ひさし全選評』(白水社)である。

各種文学賞の選考委員を務めている井上ひさしさんの、まさに「選評」だけを集めて一冊にしたのだ。

井上さんが出席した選考会は、昨年までの36年間で、370を超える。

候補に残った作品たちの、何を、どう評価し、受賞作を選んだのか。

実は、受賞作を決めることは、選ぶ側もまた自身の力量や文学観・演劇観を問われることでもある。

たとえば、ここに集録された選評を読んでいて面白いのは、選ばれた人たちがその後どうなったか。

一番の印象を言わせてもらうなら、「新人賞は、取った後が難しい」(笑)ということだ。

キャリアを積んでいる作家が対象となる直木賞などは別だが、新人賞を与えられた人たちの名前の中には、知らないものが非常に多い。

つまり、受賞後、期待通りの“活躍”が見られなかった人たちが大量にいるのだ。

もちろん逆のケースもたくさんある。

1979(昭和54)年の「オール読物新人賞」は、佐々木譲さんの『鉄騎兵、跳んだ』が受賞作だ。

選評のタイトルは「脱帽するのみ」。

井上さんは、それまでの6年にわたる選考委員活動の中で「これだけよく出来た小説が、そして豊かな将来性を窺わせる作家があったかどうか」と書いている。

先ごろ直木賞を受賞した佐々木譲さんのデビューに関して、見事な“産婆役”となったわけだ。

新人の作品を真っ先に評価するのも大変なら、直木賞のようにプロたちを評価するのも、これまた大変な気苦労だろう。

いずれにせよ、この本全体が文学・演劇の紛れもない“現代史”となっており、資料としても一級品の価値をもつのは確かです。

本当に“最後の試合”

2010年03月21日 | 日々雑感

駅からタクシーで郊外のキャンパスへと急ぐ。

“最後の試合”に間に合うためだ。


息子の中学校は昨日が卒業式(なぜか父母は出席不可)だった。

今日は、バスケ部の中1から高3までが集まって、最後の合同練習試合。

中高一貫のため、高1を4年生と呼んだりするが、1年生から6年生までの部員が一堂に会したことになる。

息子たち中3チームは、中1から3年間一緒にやってきた5人のうち、2人は高校ではバスケをしないことが決まっている。

サッカーなど他の部に移るそうなのだ。

したがって、この5人が一つのチームとして試合をするのは、今日が最後。

そう思って眺めていると、3年間に、応援に行ったいくつもの試合を思い出してしまった。

試合は淡々と進み、淡々と終わった。

試合終了後、いつものように応援席まで走ってきて、全員で「ありがとうございました!」の挨拶。

3年前、中1の春に比べたら、それぞれ別人のように大きく逞しくなった彼ら5人に、「おつかれさま」と、こちらも最後の声をかけた。

3年間、朝夕の厳しい練習を一緒にくぐってきたメンバーだ。

部活は違っても、仲間であり友人であり続けてくれるといいな、と思った。

しばし、“乗り鉄”気分

2010年03月21日 | 日々雑感

久しぶりで、小田急線・片瀬江の島行きに乗った。

一番利用していたのは、大学の授業で往復していた頃だ。

今日は運手席の真後ろに陣取った。

運転士さんの手元、そのレバー操作はいくら見ていても飽きない。

しばし“乗り鉄”気分(笑)を味わっていたら、あっという間に湘南台へと到着してしまった。

演出家・今野勉のチカラワザを見よ

2010年03月21日 | テレビ・ラジオ・メディア

横浜に行ってきた。

「放送人の世界 今野勉 ~人と作品~」が、横浜情報文化センター内の放送ライブラリーで行われたのだ。

このシリーズは、放送史に残る番組を制作・演出した放送人を取り上げ、作品を鑑賞し、本人の解説を聞くというもの。

今野さんはテレビマンユニオンの大先輩であり(70年の創立メンバー)、「ドラマ、ドキュメンタリー、ドキュメンタリードラマと、分野を超えてテレビの可能性を追求してきた」優れた制作者だ。

昨年、『テレビの青春』を出版した今野さんのもとに、多くの読者から「同書の中で言及されている番組を見たい」という要望が届いたそうだ。

会場では、4本の演出作が上映されたが、いずれも放送史の上では知っていても、ほとんど見る機会はないものばかり。まあ、これらが見られるだけでも、横浜まで行く価値は十分にあったのだ。

4本のプレビューの後、ゲストの堀川とんこうさん(テレビ演出家)と今野さんのライブトークも行われた・・・


1.土曜と月曜の間(TBS/1964年、53分)
 ◎イタリア賞大賞
 <脚本:大津皓一、演出:今野勉/出演:高松英郎、南田洋子>
東京オリンピックを背景に、ある精神科医の記憶の空白に潜む「沖縄」が暴かれていく。

2.七人の刑事「ふたりだけの銀座」(TBS/1966年、53分)
 ◎放送作家協会賞演出者賞、シリーズに対しギャラクシー賞大賞
 <脚本:佐々木守、演出:今野勉/出演:堀雄二、芦田伸介、
  寺田農、吉田日出子、高橋長英>
銀座を舞台に手持ちカメラのオールロケーションで描く都会と田舎の青春、そして悲劇。

3.遠くへ行きたい「伊丹十三の日の出撮影大作戦」(読売テレビ/1972年、25分)
 ◎ギャラクシー賞期間選奨<演出:今野勉/出演:伊丹十三、岡田紅陽>
富士山専門の写真家・岡田紅陽とともにめぐる撮影の旅。言葉と音楽と映像と…。

4.天皇の世紀「パリの万国博覧会」(朝日放送/1973年、25分)
 ◎シリーズに対しギャラクシー賞大賞
 <構成:岩間芳樹、演出:今野勉/出演:伊丹十三、朗読:高橋昌也>
大仏次郎の原作を基に、さむらい姿でパリに乗り込む伊丹十三の遊び心と歴史観を描く。


・・・「土曜と月曜の間」では沖縄が強烈に描かれているが、放送から46年経っても、沖縄の置かれた立場がほとんど変わっていないことに驚く。

「ふたりだけの銀座」では16㍉フィルムカメラが銀座を駆け巡っている。無許可撮影(笑)。当時、若くて無名だった“あの俳優、この女優”の、なんとキラキラしていることか。

「日の出撮影大作戦」と「パリの万国博覧会」では、あらためて伊丹十三という稀有な才能に拍手したくなった。たとえ少しではあっても、生前の伊丹さんに接することが出来たことを嬉しく思った。

この「今野勉 ~人と作品~」は、この後も3月27日、4月3日と連続して行われる予定だ。