実相寺昭雄監督が
生まれたのは、
1937年(昭和12年)3月29日。
今日は、
生誕85年。
監督、
誕生日
おめでとうございます!
岡田恵和脚本「ファイトソング」
不器用な生き方へのエール
冬ドラマが続々とエンディングを迎えている。今期は「ミステリと言う勿れ」(フジテレビ系)が大いに話題となったが、隠れた佳作も存在した。たとえば「ファイトソング」(TBS系)だ。
注目ポイントは2つあった。まず、岡田恵和によるオリジナル脚本であること。もうひとつは、ヒロインが民放ドラマ初主演の清原果耶だったことだ。
児童養護施設で育った花枝(清原)は、空手の有力選手だったが挫折。しかも聴神経腫瘍で数カ月後の失聴を宣告されてしまう。そんな花枝が出会ったのが、自分の大好きな楽曲を手掛けたミュージシャン、芦田(間宮祥太朗)だ。
当時、どん底状態だった芦田はマネジャーから「恋愛でもして人の気持ちを知りなさい」と言われ、花枝に交際を申し込む。耳が不自由になる前の「思い出づくり」を決意する花枝。互いに期間限定の「恋愛もどき」のはずだった。
脚本の岡田は物語を大仰なエピソードで飾らず、2人のキャラクターと日常をじっくりと見せていく。その積み重ねが見る側の共感を呼びこんでいった。
また同じ施設で育った慎吾(菊池風磨)が花枝を好きで、その慎吾をやはり施設仲間の凛(藤原さくら)が好きだったりするのだ。
自分の恋ごころにブレーキをかける2人の姿がいじらしい。それがドラマ全体に漂う、もどかしさと切なさを倍加させていた。そして何より、登場人物たちに共通の不器用な生き方を見つめる、岡田の眼差しが温かい。
最終回、岡田が仕掛けたのは、互いに自分の思いを語る約8分間の長丁場だ。すでに音が聴こえなくなった花枝のために、芦田は音声を文字化していく。
「恋って、しなきゃいけないものではなくて。でも、やっぱり、人が人を好きになるのは素敵なことだと思う/自分が好きな人が、自分を好きになってくれるなんて、それはもう奇跡みたいなもので/俺は待ってる、花枝が俺を必要だと思ってくれるまで/今までで今日が一番好きです」
この静かで熱い言葉を受けて、花枝も本音を伝える。恋をすることで相手に甘え、弱くなっていく自分が怖いというのだ。さらに芦田が創り出す音楽を、自分は聴くことができない悲しさも。
もともと“ピュア度”の高い清原だが、今回のような「生きづらさを抱えたヒロイン」は最適解。病を背負ったこと、人を好きになったことで成長していく一人の女性を丹念に演じていた。
それはまた女優・清原果耶の成長のプロセスでもあり、見る側として立ち会えたことは小さな幸運だ。
(毎日新聞「週刊テレビ評」2022.03.26)
猥雑性とわくわく感
ドンキ劇場の吸引力を探る
『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』
谷頭和希(集英社新書)
チェーンストアのドン・キホーテ、通称ドンキが苦手だという人は少なくない。
ヤンキー系家族がドヤ顔のワンボックスカーで乗り付けるイメージ。「♪ドンドンドン、ドンキ、ドン・キホーテ」と歌う強烈なテーマソングが流れる店内。無秩序に見える商品配置。全体のごちゃごちゃした雰囲気も落ち着かない。
その一方で、あの猥雑性と、わくわく感が堪らないという人も多い。店内をエンターテインメントの劇場に見立てることも可能だ。
他のチェーンストアやデパートにはない吸引力があり、時々無性に行きたくなる場所かもしれない。
谷頭和希『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』は、ドンキの不思議な魅力に迫る一冊だ。
新たな地域に進出する際、既存の建物を「居抜き」で使う。地域に溶け込むと同時に「ドンキらしさ」をアピールするには、ペンギンの巨大なオブジェが必要となる。
またジャングル感を生み出すのが「圧縮陳列」だ。予期せぬ商品との出会いを演出している。さらに重要なのが店舗のありかたを店長に一任するシステムだ。チェーンストアの常識を打ち破る「権限委譲」が最大の武器となっている。
結果的にドンキは地域の多様な文化を侵食する存在ではなく、むしろ「地域と連続性を持った祭り的な異空間」だと著者。
社会学から人類学までを導入しながら、ドンキやチェーンストアを介することで見えてくる、現代日本の深層を捉えようとした意欲作だ。
(週刊新潮 2022.03.24号)
NHK「バラエティー生活笑百科」
番組全体はマンネリかもしれないけれど…
NHK「バラエティー生活笑百科」の放送が始まったのは昭和60年(1985年)4月。これまで37年も続いてきた。
しかし最近は、民放もNHKも一種の長寿番組終了ブームだ。2月に幕を閉じた「ガッテン!」に続き、4月早々にはこの番組もテレビから消えることになっている。
番組の基本構造はシンプルで、開始当初からほぼ変わっていない。扱われるのは、日常生活で発生しそうな法的トラブル。漫才コンビの相談に乗るという形で相談員が意見を述べ、最後に弁護士が解説してくれるのだ。
19日の放送分では、漫才の相方が自分たちの活動費を勝手に借金した揚げ句、コンビは解散。個人に全額返済の義務があるかで盛り上がっていた。
特別相談員である桂吉弥たちの無理筋な持論展開も“お約束”であり、番組名物だ。視聴者は笑いながら見ているうちに、実は夫婦や友人との間でも起こり得る、身近な話であることに気づくのだ。
確かに、番組全体はマンネリかもしれない。しかし、長年この「定食」の味を愛してきた、たくさんの視聴者がいるのも事実だ。その多くが中高齢者であることをもって、ばっさり切り捨てるのはもったいない。
TBSは、同じく中高齢視聴者が多い「噂の!東京マガジン」を、地上波からBS-TBSへと移動させている。そんな配慮が「皆さまのNHK」にあってもよかった。
(日刊ゲンダイ「テレビ 見るべきものは!!」2022.03.23)
「コバトパン工場」の缶入りクッキー
面白くないけれど
タメになるということはない。
面白いから
タメになるのである。
開高健『知的経験のすすめ』
路上で
音楽っていいですね。
そこには常に理屈や論理を超えた物語があり、
その物語と結びついた深く優しい個人的情景がある。
村上春樹 『村上ラヂオ』
木ドラ24
「真夜中にハロー!」は
深夜のプチオアシスだ!
木ドラ24「真夜中にハロー!」(テレビ東京系)は、深夜のプチオアシスだ。仕事で疲れた夜など、ちょうどいい。
舞台は、ハロプロ(ハロー!プロジェクト)のファンであるマリコ(菊池桃子)が運営するゲストハウス。人生に迷っている宿泊客を、マリコは不思議な扉へと導く。
その扉の向こうは、なんとハロプロの楽屋だ。驚く宿泊客の目の前で、ハロプロのメンバーが歌とダンスを披露する。
しかも、その曲が宿泊客たちの悩みにマッチしているところがミソだ.
彼氏との結婚に踏み切れないキャリアウーマン(徳永えり)は、アンジュルム「大器晩成」に背中を押される。
また、誰かを好きになることに臆病な英会話講師(剛力彩芽)は、Juice=Juice「ロマンスの途中」から勇気をもらった。
歌もさることながら、そのダンスパフォーマンスの迫力はハロプロならでは。
聴く者の気持ちを揺さぶる音楽の力と同時に、アイドルという「ひとを元気にする仕事」を再認識させてくれる。
さらに、菊池桃子の存在感が凄い。アイドル雑誌「Momoco(モモコ)」が創刊されたのは1983年。
表紙を飾ったのは誌名の由来でもある菊池で、当時15歳の新人アイドルだった。元祖、和み系の笑顔とほんわかとした雰囲気は、今も変わらない。
アイドル界のレジェンドに会えるこのドラマ、今週は最終回を迎える。
(日刊ゲンダイ「テレビ 見るべきものは‼」2022.03.16)
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