碓井広義ブログ

<上智大学教授のメディア時評> 見たり、読んだり、書いたり、話したり、時々考えてみたり・・・

「香川照之の昆虫すごいぜ!」は、子供向けという既成概念を超えたインパクト!?

2017年08月31日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム


この夏、テレビ界随一の“珍種”がオンエアされました。不定期放送(!)のEテレ「香川照之の昆虫すごいぜ!」です。

タイトル通り、俳優・香川照之さんによる昆虫番組なのですが、子供向けという既成概念を超えるインパクトがありました。香川さんが、カマキリの着ぐるみ(その監修も香川さん自身)を着用して「カマキリ先生」となり、原っぱや河川敷で昆虫採集にまい進するのです。

聞けば、香川さんが民放のトーク番組で昆虫好きを表明し、「Eテレで昆虫番組をやりたい!」と望んだことがきっかけだとか。ですから、この番組での香川さんはひたすら楽しそう。その“昆虫愛”を爆発させていました。

前回の「モンシロチョウ」編でも、そのテンションはすでにMAXでした。カマキリ姿のまま、まるで座頭市の仕込み杖のような速さで補虫網を切り返し、次々とチョウを捕獲していく香川さん。同時に「モンシロチョウは春を呼ぶ一番バッター。昆虫界のイチローだあ!」などと絶叫、いえ解説も忘れません。

またモンシロチョウを指でそっと押さえながら、「うーん、この動き。伝わってくるチカラ。堪らないです」と子供のように感動していました。そして、すぐにチョウをリリース。香川、なかなか、いいヤツじゃん!

最新作のテーマは「タガメ」でした。昆虫少年の頃に一度触っただけで長いご無沙汰となり、なんと40年ぶりの再会だったそうです。

きれいな水にしか生息しないにも関わらず、小魚やカエルを食べてしまうという、どう猛なタガメ。香川さんはタガメを「殺人犯」に、自らを「タガメ捜査一課長」に見立て、全国の子供たちにも応援をお願いして、大追跡を敢行しました。

そして有力な目撃情報に導かれて、香川さんは栃木へ。結局、4時間をかけて全長7センチの大物を、見事「現行犯逮捕」します。最後は疲労で声も出ず、腰が痛いと正直に告白する、51歳の名優がいました。いいヤツな上に、香川すごいぜ!

この番組、なにしろ「不定期放送」なので、次回はいつになるのか、わかりません。Eテレには、早めの再々放送をお願いするばかりです。

【気まぐれ写真館】 空も変わってきたような・・・  2017.08.30

2017年08月31日 | 気まぐれ写真館
名残の暑さは続いていますが・・・

星野源 最新主演ドラマ、WOWOW「プラージュ」が面白い

2017年08月30日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評



日刊ゲンダイに連載中のコラム「TV見るべきものは!」。

今週は、WOWOWの連続ドラマW「プラージュ」について書きました。


WOWOW 連続ドラマW
「プラージュ~訳ありばかりのシェアハウス~」
星野源が生み出す絶妙の劇的空気感

ヒット作「逃げるは恥だが役に立つ」の後、出演作が注目された星野源。最新主演ドラマが「プラージュ~訳ありばかりのシェアハウス~」(WOWOW)だ。物語の舞台は、オーナーの潤子(石田ゆり子)が営むカフェ&シェアハウス「プラージュ」。ここに訳ありの住人たちがいる。

美羽(仲里依紗)は路上で誘われた男と一夜を共にして稼いでいる。紫織(中村ゆり)はコカイン所持の容疑で逮捕歴がある。中原(渋川清彦)は恋人を守るために人を殺めた過去をもつ。

さらに加藤(スガシカオ)は殺人の罪で5年間服役し、現在は再審公判中。その加藤を題材に記事を書いている、覆面ライターの野口(眞島秀和)もプラージュの住人だ。

そこに加わったのが、思わぬことから覚せい剤がらみで「前科者」となった吉村(星野)である。再就職しようと動くが、前科者にはハードルが高い。だが、それ以上に他の住人たちはヘビーな経験を重ねていた。

集まった芸達者が演じる、“生きづらさ”を抱えた人たち。また野口が書いた記事の見出し、「日常に潜む殺人鬼」の文字にもリアリティがある。

「犯罪者は社会に受け入れられるのか」は重いテーマだ。しかしこのドラマ、決して重くて暗いわけではない。星野源ならではの“おかしみ”が、絶妙の劇的空気感を生み出しているからだ。

(日刊ゲンダイ2017.08.30)

【気まぐれ写真館】 小さな薔薇、咲く  2017.08.28

2017年08月29日 | 気まぐれ写真館
花の直径、わずか3センチ

書評した本: 『日本の覚醒のために~内田樹講演集』ほか

2017年08月29日 | 今週の「書評した本」



「週刊新潮」に、以下の書評を寄稿しました。

内田 樹 
『日本の覚醒のために~内田樹講演集』

晶文社 1836円

著者の思考がより分かりやすく伝わってくる講演集だ。日本はアメリカの属国だという現実から逃げないこと。宗教的感受性が必要な時代であること。コミュニケーションとはいつもと異なるモードで話してみることなど、目からウロコ的知見が満載の一冊になっている。


文化放送「大竹まことゴールデンラジオ!」:編
『人の数だけ物語がある。』

扶桑社 1512円

人気のラジオ番組から生まれた朗読CDブックだ。市井の人たちの体験を大竹まことが語っている。江ノ電の運転士を夢見た少年。車いすのラグビー選手。自主夜間中学で教える先生の話。淡々とした大竹の朗読には、テレビでは伝えられない温かさと滋味がある。

(週刊新潮 2017年8月31日号)


浅田次郎 『竜宮城と七夕さま』
小学館 1512円

機内誌の連載エッセイ、昨年までの3年分だ。浦島太郎や牽牛織女の物語から、人間の想像力の話に至る表題作。小説の取材で訪れた中国東北部。自他ともに認める「いわゆるギャンブル依存症」のこと。書斎でも旅先でも、作家の好奇心と自由な精神は変わらない。

(週刊新潮 2017年8月10日号)

「真木よう子ツイッター騒動と視聴率」についてコメント

2017年08月28日 | メディアでのコメント・論評



真木よう子ツイッター騒動の真相と
テレビ界にはびこる視聴率の闇

今週初め、一部マスコミが真木よう子(34)について「女優生命の危機」と報じた一件。その舞台裏が明らかになってきた。

記事の内容はというと、真木が主演ドラマ「セシルのもくろみ」(フジテレビ系、木曜22時)について〈視聴率3.8%。こんなに視聴率が低いから是非、ドラマを見てください〉などと具体的な数字と視聴を誘導するような内容を自身のツイッターに投稿。1時間足らずで削除されたものの、この行為が視聴率調査を行うビデオリサーチ社(以下=ビ社)に対する営業妨害、権利侵害にあたる可能性があり、フジの幹部らがビ社を訪れ、謝罪したというものだった。

ところが、だ。「あの記事は事実誤認です。出向いたのはフジではなく、ビ社側の人間。しかも報じられたつぶやきとは別の内容が問題となり、ビ社が真木サイドに説明しに行った。これがコトの真相です」(事情通)。

その問題視された真木の投稿はすでに削除されているが、こんな内容だったという。

〈あれ?何か「内緒にしといて下さいね」って言われて黒い機器を突然家に置いていかれたけど、これって本当に視聴率に反映しているのか。試したいから明日の10時、フジテレビ付けてみよう。て思う人とそうしてくれよ!てゆう人RT〉

しかもそれに反応し、〈その機器を見たことありまーす!!友達の家にありまーす!!とりあえず言っとけばいい?〉(現在は削除)などと返信するフォロワーも出てきたというのだ。

これはたしかにマズい。思い起こせば2003年、当時、日本テレビのプロデューサーだった人物が視聴率アップを目的とし、ビ社のモニター世帯の割り出しを画策。視聴を承諾した世帯に商品券などを渡して視聴率を買収し、プロデューサー自身も電話で依頼するなどの不正操作が発覚したため大事件となった。事件当時、再発防止として視聴率のあり方を考える諮問機関が設置され、コンマ数%の違いに一喜一憂しないよう業界内外に広く啓発するなどの提言がなされたが、あれから14年。今回の件ひとつとっても視聴率の問題は改善されたとは言い難い。

民放は企業からのCM出稿料が自分たちの飯のタネとなる。大事な出稿料の価格を決める視聴率の信憑性が揺らぐような事態はあってはならないが、そもそも視聴率は標本誤差があるデータ。調査対象世帯数900世帯で視聴率10%だった場合、プラスマイナス2.0%の誤差があるとされているのだ。

上智大教授の碓井広義氏(メディア文化論)はこう言う。

「視聴率の中でもリアルタイム視聴は番組そのものの存続を左右しかねない数字として重視されていますが、そもそもザックリと算出されたものであることが広く周知される必要があるように思います。その動向に出演者が振り回され、主演女優がひとり矢面に立つような状況は非常事態ともいえる。業界全体が本気で旧態依然としたシステムを見直す時期が来ているのではないでしょうか」


数字がすべてじゃないことは分かっているだけに、根が深い問題である。

(日刊ゲンダイ 2017.08.26)

【気まぐれ写真館】 北海道千歳市「柳ばし」で特製ランチ!  2017.08.26

2017年08月27日 | 気まぐれ写真館
あなご&チーズささみのフライ、ビーツのボルシチ風など

HTB北海道テレビ「イチオシ!モーニング」 2017.08.26

2017年08月27日 | テレビ・ラジオ・メディア
「イチオシ!モーニング」土曜日のメンバー














【気まぐれ写真館】 札幌 2017.08.26

2017年08月27日 | 気まぐれ写真館
朝5時30分の札幌

HTB北海道テレビ「イチオシ!」 2017.08.25

2017年08月26日 | テレビ・ラジオ・メディア
藤尾さん、森さん、ヒロさんと・・


ヒロ福地画伯が描いた大谷選手










今週の「森さやかアナウンサー」






【気まぐれ写真館】 札幌での定番 2017.08.25

2017年08月26日 | 気まぐれ写真館
「まる山」 鴨せいろ

【気まぐれ写真館】 札幌 2017.08.25

2017年08月26日 | 気まぐれ写真館
札幌 豊平川を渡る

配信中止! 壇蜜主演「宮城県観光PR動画」とは何だったのか!?

2017年08月25日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム


先日、宮城県のテレビ局から取材依頼がありました。壇蜜さんが出演した、宮城県の「広報動画」をめぐる騒動について話を聞きたい、とのことでした。全国広報コンクール「映像部門」の審査員を、もう10年以上も務めさせていただいていることから、こうしたオファーがあったのだと思います。

ただ残念ながら、この時はタイミングが合わず、取材に応じることが出来ませんでした。

今週、宮城県の村井嘉浩知事が、近々動画サイトから削除すると明言した、宮城県の観光PR動画とは、そもそもどのような内容で、何が問題だったのでしょう。あらためて、この広報動画について考えてみたいと思います。


壇蜜主演 観光PR動画
「涼・宮城(りょうぐうじょう)の夏」


●日本家屋の廊下

着物姿の壇蜜、歩いてくる。

N(ナレーション)「仙台藩主・伊達家 家臣の末裔といわれている、お蜜」

●座敷 

現在の伊達家主人と思われる着ぐるみのキャラクター、畳に寝そべっている。

壇蜜「この暑さにまいってしまったのですねえ」

頷く、キャラ。

壇蜜「涼しい宮城へ お連れいたしましょう」

N 「お蜜の使命、それは家臣の末裔として殿方に涼しいおもてなしをすること」

壇蜜「みやぎ、イっちゃう?」 *この時、「う」のところで唇のアップとなる。

着ぐるみ、鼻血が出る。

●天空

壇蜜が白い衣装で天を舞っている。

壇蜜「こちらですよお~」

キャラクターに、ずんだ餅を食べさせる。

壇蜜「はい。ふっくり、ふくらんだ、ず・ん・だ」 *「だ」で唇のアップになる。

壇蜜「肉汁、とろっとろ。牛の、し・た」 *「た」で唇のアップ。

壇蜜「え?おかわり? もう、欲しがりなんですから~」

●空をゆっくりと飛ぶ壇蜜とキャラ

壇蜜「気持ちいい~」

●伊達正宗の像

壇蜜「450歳、おめでとうございます」

正宗像の肩に、ほほを寄せる壇蜜。

壇蜜「むねりん・・」

正宗像が照れて顔が赤くなり、鼻の下が伸びる。

●空を飛ぶ壇蜜とキャラ

前方から巨大な「亀」が空中を泳いでくる。

壇蜜「あ、亀さ~ん」

亀の頭を手のひらで撫でながら、

壇蜜「上、乗ってもいいですか?」

亀がにんまりして、赤くなった顔がアップに。

●亀の背中に乗って飛翔する壇蜜とキャラ

壇蜜「気持ちいいですかあ? 涼しいですかあ?」

●玉手箱が飛んでくる

壇蜜「あ、あれは宮城からのお土産かもしれません」

キャラが箱を開けると、一気に白い煙が出る。

●元の座敷 

きりっとした顔になったキャラ。

壇蜜「涼しげで、す・て・き」

キャラの頬にすりすりする壇蜜。

N 「宮城の玉手箱には、こんな効果もあるらしい。めでたし、めでたし」

●フリップ風の画面

「夏でも涼しい仙台・宮城の旅。涼・宮城(りょうぐうじょう)の夏」と表示。

N 「夏でも涼しい仙台・宮城の旅 涼・宮城(りょうぐうじょう)の夏」

●座敷の2人 

正座して、正面に向かって頭を下げる。

壇蜜「お待ちしております」

唇がアップになって、

壇蜜「あっ!」

●フリップ風の画面

壇蜜「という間にイケちゃう・・」

画面には「という間にイケちゃう」&「東京―仙台 約90分」の文字。

●松島の空撮

壇蜜「りょう・ぐう・じょう」


・・・以上、2分36秒。

「(宮城に)イっちゃう?」

「ふっくり、ふくらんだ(ずんだ餅)」

「(牛タンの肉汁)とろっとろ」

「(牛タンのおかわり)もう、欲しがりなんですから~」

「(亀の頭をなでて)上、乗ってもいいですか?」

「気持ちいいですかあ?」

「あっ、という間にイケちゃう・・」

いやはや、何とも(笑)。よくぞこれだけストレートな性的イメージを連打したものだと、逆に感心してしまいます。この企画にゴーサインを出した県の担当者も含め、「これ、ウケるよなあ」という制作側の皆さんのニヤニヤ笑いが見えるようです。

もちろん、セクシーな要素を盛り込むことも表現方法の一つではあります。ただし、「TPO」みたいなものは、ありますよね。何しろ「行政機関が作って流す、観光客誘致のための広報映像」なのですから。

ひねりも、工夫も、芸もあらばこそ。見ている側が赤面してしまうようなレベルの表現であり、ひと言で評するなら、品が無さすぎ(笑)。

観光客誘致と言いますが、これを全国のフツーの市民が見て「ああ、仙台・宮城って素敵だなあ。行ってみたいなあ」と思うに違いない、と判断すること自体が、フツーの市民の感覚を読み違えている、というかナメているのではないでしょうか。

というのは、全国広報コンクールに入選する映像作品を見る限り、各地の地方自治体は、もっと真剣に「広報動画」の制作に取り組んでいるからです。


地方自治体の「広報動画」は・・・

全国広報コンクール「映像部門」では、全国各地の地方自治体(県や市町村)が制作した広報番組、広報ビデオ、広報動画などを扱っていますが、各都道府県で第1位になった広報映像が集められ、審査の対象となります。

ここ何年かの間に、映像作品の傾向がずいぶん変わってきました。以前は数本だった「広報動画」が徐々に増え、現在はかなりの割合を占めるようになったのです。

しかしこれは、全国各地で放送されている広報番組自体が減少したわけではありません。広報番組と並行して、広報動画が当たり前のように制作されるようになり、また映像作品としての質やレベルが飛躍的に向上したことの結果なのです。

ちなみに動画の内容に関して言えば、「シティプロモーション」と呼べるものが多くなっています。今年の入賞作の中から、印象に残ったものを数本、紹介してみましょう。

■ 『室蘭市広報動画「砂がおしえてくれた街」』室蘭市(北海道)

中学3 年生の鈴美は、ある日、路地裏にある小さなアンティークショップに入ります。棚に並ぶ古めかしい瓶の中に、手紙のようなを見つけます。女主人から「それは買った人だけが読める」と言われた鈴美は・・・。

室蘭の街を熟知した、市内在住という映画監督の起用が成功しています。まず映像が美しい。そして物語に街のイメージを喚起する、好ましい風情があります。“霧の街”室蘭の面目躍如。小道具の使い方も巧みで、瓶の中の詩、地図、タクシー…。見ているうちに、ふと室蘭に行ってみたくなるのは、作品のシティプロモーションとしての狙いが的中した証拠です。

■『世界一の豪雪地帯』青森市(青森県) 

豪雪地帯・青森市。市民の除雪や、青森空港除雪隊「ホワイトインパルス」について、西部劇調で紹介しています。「青森市ならでは」の魅力を、映画の予告編のような3 分動画にまとめました。

北国にとって、雪は一種の宿命とも言えます。この作品が優れているのは、宿命である雪との暮らしを、嫌ったり嘆いたりするのではなく、割り切って笑い飛ばしていること。「いっそ楽しもう!」という逆転の発想です。映像も編集も凝っていて、実にスタイリッシュ。

ウエスタン(西部劇)に見立てるしゃれっ気、リンゴという青森を象徴するアイテムの使い方、そして「ドカ雪三兄弟」のネーミングにニヤリとさせられました。

■『てなんど小林プロジェクト サバイバル下校』小林市(宮崎県)

小林市のまち並みを、ひたすら駆け抜けていく女子高校生。彼女は何に怯え、何から逃げているのか? このまちに一体何が起きたのか・・・。

「うらぎり」をテーマに高校生たちが企画し、制作した作品です。小林市の地域資源は「人」だと結論づけた高校生が、「人」をモチーフに、視聴者を裏切る形で表現しました。

昨年も、移住促進PR ムービー「ンダモシタン小林」が全国的に話題となりましたが、今回の新作はよりパワーアップしています。動画制作ワークショップとの連動。ドラマのような映像と編集。そして登場人物たちの動きも、よく計算されています。

さらに“サバイバル下校”が、「人なつこい住民」を象徴するものだったというオチも見事でした。移住者増加の狙いはともかく(笑)、地元を知ってもらうコンテンツとしての効果は大きいと言えます。

・・・これらの「広報動画」には、壇蜜さんのような有名人は登場しません。有名人を起用しなくても、見る人の興味を引く広報動画は作れるのです。

もちろん、今回の宮城県の広報動画に関しては、壇蜜さんに罪があるわけではありません。またその起用自体が悪いわけでもありません。せっかくの壇蜜さんを生かす内容、生かす表現になっていなかったことが残念なのです。

もっと言えば、作った人たちの「価値観」がズレていたのではないでしょうか。宮城県の関係者の皆さんには、広報動画を何のために作り、誰に見せるのか。そして、動画を見た人たちに何を感じてほしいのか。そんな当たり前のことを、もう一度考えてみていただきたいと思います。


ヤフー!ニュース連載「碓井広義のわからないことだらけ」
https://news.yahoo.co.jp/byline/usuihiroyoshi/

Eテレ「香川照之の昆虫すごいぜ!」の衝撃度

2017年08月24日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評



日刊ゲンダイに連載中のコラム「TV見るべきものは!」。

今週は、Eテレ「香川照之の昆虫すごいぜ!」について書きました。


Eテレ「香川照之の昆虫すごいぜ!」
いいヤツな上に、すごいぜ香川!

この夏随一の“珍種”が出現した。不定期放送(!)のEテレ「香川照之の昆虫すごいぜ!」だ。

子供向け番組だが、想像を超えたインパクトがある。香川がカマキリの着ぐるみ(その監修も香川)を着用して「カマキリ先生」となり、原っぱや河川敷で昆虫採集にまい進するのだ。

前回の「モンシロチョウ」編でも、そのテンションはMAXだった。まるで座頭市の仕込み杖のような速さで捕虫網を切り返し、次々とチョウを捕獲していく香川。同時に「モンシロチョウは春を呼ぶ1番バッター。昆虫界のイチローだあ!」と絶叫解説も忘れない。

またモンシロチョウを指でそっと押さえながら、「この動き、伝わるチカラがたまらない」と子供のように感動していた。香川、いいヤツじゃん。

そして12日放送の最新作のテーマは「タガメ」だ。昆虫少年のころ以来、なんと40年ぶりの遭遇だった。

きれいな水にしか生息しないにもかかわらず、小魚やカエルを食べる、どう猛なタガメ。香川はタガメを殺人犯に、自らをタガメ捜査一課長に見立て、全国の子供たちの助けを借りた大追跡を敢行する。目撃情報が届いたのは栃木県からだ。

結局、4時間をかけて全長7センチの大物を「現行犯逮捕」。最後は疲労で声もかれ、腰が痛いと正直に告白する51歳の名優がいた。いいヤツな上に、香川すごいぜ! 

(日刊ゲンダイ 2017.08.23)

戦後72年の夏に、「戦後史」について考える

2017年08月23日 | 本・新聞・雑誌・活字



孫崎 享:著『戦後史の正体 1945-2012』(創元社)の主旨は極めて明快です。戦後の日本は、常に存在(君臨?)する米国からの圧力に対して、「自主」路線と「対米追随」路線の間で揺れ動いてきた、というのです。

しかも著者は、外務省国際情報局長や駐イラン大使を歴任した、日本外交の内幕を知る人物。政治家や官僚がすべて実名で登場する刺激的な一冊となっています。

記述は編年体であり、敗戦・占領の時代から始まっています。敗戦後、吉田茂の「対米追随」路線と、重光葵の「自主」路線が激しく対立していました。重光は当然のごとく追放されます。また自主路線派だった芦田均も、わずか7カ月で首相の座を追われました。

そして冷戦の開始、朝鮮戦争の勃発により、アメリカの対日政策が変化します。アメリカは、日本に経済力をつけさせ、その軍事力も利用することを狙ったのです。

やがて安保条約が結ばれましたが、それはひたすら米国側に都合のいい内容でした。講和条約は安保条約成立のためであり、その安保条約は米軍を日本に駐留させる行政協定を結ぶために必要だったのです。

「日本の最大の悲劇は、占領期の首相(吉田茂)が独立後も居座り、占領期と同じ姿勢で米国に接したことにある」と著者は言います。読み進めるうち、その後の日本が、いかに敷かれたレールを走ってきたかが、はっきりとわかってきます。