碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

サンデー毎日に、「昭和のおじさんドラマ」について寄稿

2024年02月29日 | メディアでのコメント・論評

発売中の「サンデー毎日」2024年3月10日号

 


【気まぐれ写真館】 散歩中に見かけた、木瓜(ボケ)の花

2024年02月28日 | 気まぐれ写真館

2024.02.28


日曜劇場 「さよならマエストロ」音楽は人の心を救うことができる

2024年02月28日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 

 

「音楽は人の心を救うことができる」

日曜劇場

「さよならマエストロ

 ~父と私のアパッシオナート~

 

早い。もう2月が終わろうとしている。日曜劇場「さよならマエストロ~父と私のアパッシオナート~」(TBS系)も第7話まで放送された。

夏目俊平(西島秀俊)は世界的指揮者。娘の響(芦田愛菜)は、かつて有望なバイオリニストだった。

しかし彼女は5年前の「事件」でバイオリンを捨て、以来、俊平を拒絶し続けている。俊平も音楽から離れた。

しかも、俊平は妻で画家の志帆(石田ゆり子)から離婚を迫られている。音楽に没頭するあまり、自分や家族を顧みない夫に愛想をつかしたのだ。

「あなたが指揮棒振ってる間、私は人生棒に振ってた」と手厳しい。このドラマ、父娘を含む家族再生の物語なのだ。

最近、ようやく5年前の出来事の真相がわかってきた。「(父と)共演するには、私は(力が)足りなかった。そんなつまらないことで、私は家族を壊したんです」と響。沈む彼女を、市役所の同僚である大輝(宮沢氷魚)が支えていく。

音楽に愛された指揮者と不器用すぎる父親の両面を巧みに演じる西島。思春期から脱出できないもどかしさを抱えた娘を、丁寧に見せる芦田。終盤に向って、2人の更なる化学反応が楽しみだ。

今月6日、指揮者の小澤征爾さんが亡くなった。享年88。小澤さんは、「音楽は人の心を救うことができる」という俊平の言葉を体現する、真のマエストロだった。合掌。

(日刊ゲンダイ「TV見るべきものは!!」2024.02.27)

 


新作CM「わたしオン、気持ちいい春」篇の伊藤沙莉さん

2024年02月27日 | 「日経MJ」連載中のCMコラム

 

 

新たな日常へ、伊藤さんと切り替え

エスエス製薬 アレジオン20

「わたしオン、気持ちいい春」篇

 

一昨年の特集ドラマ「ももさんと7人のパパゲーノ」(NHK)で、文化庁芸術祭テレビドラマ部門「放送個人賞」を受賞した伊藤沙莉さん。

昨年は「シッコウ‼~犬と私と執行官~」(テレビ朝日系)で主演を務めた。シリアスとユーモアのバランスが抜群で、千変万化する表情も含め、画面から一瞬も目が離せない。

そんな伊藤さんの新作CMが、エスエス製薬のアレジオン20「わたしオン、気持ちいい春」篇だ。

花粉の季節、伊藤さんも「外、出たくない」とソファに横たわっている。しかし、「頼むぞ、アレジオン」の掛け声と共にスイッチ・オン! ドアを開けて飛び出せば、そこは花咲く草原だ。

思い切り走った後は、草の上に大の字になって深呼吸する。それは花粉症で悩む人たちが熱望する光景だ。見る側も伊藤さんにならって、新たな日常へと切り替えたくなる。

4月には、伊藤さん主演のNHK朝ドラ「虎に翼」が始まる。日本初の女性弁護士をモデルとした物語が、どんな“気持ちいい春”を運んでくれるのか、楽しみだ。

(日経MJ「CM裏表」2024.02.26)

 


【気まぐれ写真館】 雪のない「2・26」

2024年02月26日 | 気まぐれ写真館

2024.02.26

 


【新刊書評2024】『挿絵画家 風間完』ほか

2024年02月25日 | 書評した本たち

 

 

「週刊新潮」に寄稿した書評です。

 

風間研

『挿絵画家 風間完

 ~昭和文学を輝かせ、美人画を描き続けた人生』

平凡社 2970円

五木寛之『青春の門』、池波正太郎『真田太平記』などの挿絵で知られる風間完。本書は息子でフランス文化研究者の著者による評伝だ。油絵画家だった風間は、生計のために挿絵の仕事を始めた。やがて多くの作家に認められ、第一人者となっていく。「挿絵画家は職人」を信条とし、作家との緊張状態を保ち続けた風間。著者にしか語れない、吉行淳之介や山口瞳たちとのエピソードも貴重だ。

 

難波祐子『現代美術キュレーター10のギモン』

青弓社 2200円

キュレーターとは、美術館や博物館などの展覧会の企画・構成・運営などに携わる専門職だ。東京藝大准教授の著者も国内外で展覧会企画に関わっている。では、現代美術はどこで展示されるのか。何を展示するのか。そもそも現代美術の「作品」とは何を指すのか。本書は、そんな素朴な疑問に答えてくれる。キュレーターの仕事を知ることで、現代美術への理解がより深まっていく構成が見事だ。

 

佐高信、高世仁

『中村哲という希望~日本国憲法を実行した男』

旬報社 1760円

35年もの間、アフガニスタンで医療活動を行い、用水路建設に携わった医師・中村哲。2019年に現地で何者かに銃撃され、無念の死を遂げた。各地で続く紛争を踏まえ、中村の行動をめぐって評論家とジャーナリストが語り合ったのが本書だ。平和とは戦争がないことではなく、「一番大事なのは生存する権利だ」と言った中村。彼を支えていたのがバックボーンとしての「憲法九条」だったことを知る。

 

梶山三郎『トヨトミの世襲 小説・巨大自動車企業』

小学館 1980円

2016年、経済記者で覆面作家の著者は『トヨトミ野望』を上梓した。物語の舞台は実在の会社を思わせる世界的自動車メーカーだ。本書はシリーズ3作目。軸となるのは創業者の孫で社長の豊臣統一だ。EV開発の遅れ。息子への事業継承。そこにディーラー再編や不正車検問題も加わる。国の経済全体を左右する企業のトップである、統一に対する著者の目は一層厳しい。

(週刊新潮 2024.02.22号)

 


【気まぐれ写真館】 晴天の土曜日

2024年02月24日 | 気まぐれ写真館

2024.02.24

 


【新刊書評2024】『正義はどこへ行くのか ~映画・アニメで読み解く「ヒーロー」』

2024年02月23日 | 書評した本たち

 

 

多様性時代の悩めるヒーロー像

 

河野真太郎

『正義はどこへ行くのか

  ~映画・アニメで読み解く「ヒーロー」』

集英社新書 1056円

 

クリストファー・ノーラン監督『ダークナイト』が公開されたのは2008年。「ヒーローも大変だなあ」と思った。なぜなら、悪を倒しているはずのバットマン自身が、「無法者」と呼ばれてしまうのだ。

ゴッサム・シティでは、「正義の暴力」と「悪の暴力」の境界線が崩れ、バットマンとジョーカーがコインの裏表のような存在となっていた。戦闘シーンの迫力が凄まじい分、一人になったときのバットマンの孤独も深いように見えた。

ヒーロー物語が、なぜこんな風になってしまったのか。河野真太郎『正義はどこへ行くのか映画・アニメで読み解く「ヒーロー」がその謎を解明している。

著者によれば、『ダークナイト』は21世紀アメリカの「孤立した正義」を表現する作品だった。

そして、「法の外にいるからこそ正義をもたらしうる」伝統的なヒーロー像は、「右と左のポピュリズムの区別がつけがたくなった」トランプ時代に維持不能となる。

さらに著者は、ポストトランプ的な社会状況に応答する作品として『スパイダーマン』の最新シリーズなどを挙げ、「多様性」が一般化した時代における「正義」とヒーローの行方を考察していくのだ。

もちろん、日本のヒーローも登場する。超越的なヒーローが正義をもたらす『ウルトラマン』。より等身大なヒーローである『仮面ライダー』。近年の『シン・ウルトラマン』や『シン・仮面ライダー』が表象するものも興味深い。

(週刊新潮 2024.02.22号)

 


【気まぐれ写真館】「2・22」の冬空

2024年02月22日 | 気まぐれ写真館

2024.02.22


反町隆史主演「グレイトギフト」クセが強くて先が読めない

2024年02月21日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 

 

反町隆史主演

「グレイトギフト」

クセが強くて先が読めない!

 

反町隆史主演「グレイトギフト」(テレビ朝日系)は、かなりクセの強い医療ミステリーだ。

藤巻達臣(反町)は大学病院の病理医。コミュニケーションが苦手で、院内での存在感も薄い。ところが、未知の殺人球菌「ギフト」を発見したことで運命が変わる。

人間の体内に入ったギフトは瞬時に死をもたらし、その後消滅する。症状は心不全にしか見えず、完全犯罪が可能だ。

病院教授の白鳥(佐々木蔵之介)も、藤巻の同僚で心臓外科医の郡司(津田健次郎)も、ギフトを利用して巨大な権力を握ろうとしている。

一方、藤巻は入院中の妻(明日海りお)を盾に取られ、白鳥の命令に従ってギフトの培養を続けるばかりだ。いわば悪に加担しているわけで、正義のヒーローではない。

しかも妻と郡司は不倫関係だったりする。その優柔不断ぶりも含め、「藤巻どーする?」とツッコミを入れながら見るのがこのドラマの醍醐味だ。

また、藤巻の相棒的な検査技師・久留米(波瑠)も相当の変わり者。藤巻を恋愛対象ではなく「人間として好き」と言うが、敵か味方か不明だ。

さらに高級ラウンジのオーナーである杏梨(倉科カナ)や、病院事務長の本坊(筒井道隆)など、クセ強系の人物ばかりが並ぶ。

脚本は「ラストマン―全盲の捜査官―」などを手がけた、黒岩勉のオリジナル。先が読めないことがありがたい。

(日刊ゲンダイ「TV見るべきものは!!」2024.02.20)

 


言葉の備忘録352 常識を・・・

2024年02月20日 | 言葉の備忘録

 

 

 

 

常識を問い直すということは、

それまでなぜ正しいのか

分からなかった常識が、

なぜ正しいのかを考えることです。

そのとき私たちは、はじめて、

常識に対して能動的な態度を

取ることができるようになります。

つまり、常識について

自由に思考できるようになるのです。

 

 

戸谷洋志『哲学のはじまり』

 

 

 


「セクシー田中さん」もっと調整必要だったのでは

2024年02月19日 | 「毎日新聞」連載中のテレビ評

 

 

ドラマ「セクシー田中さん」プロデューサー 

もっと調整必要だったのでは

 

昨年の秋クールに放送されたドラマ「セクシー田中さん」(日本テレビ系)。派遣社員の朱里(生見愛瑠)は、会社の同僚、田中京子(木南晴夏)の秘密を知る。仕事は完璧で、見た目は地味で暗いが、セクシーなベリーダンサーという別の顔を持っていた。

田中が言う。「ベリーダンスに正解はない。自分で考えて、自分で探すしかない。私は自分の足を地にしっかりつけて生きたかった。だから、ベリーダンスなんです」。それは彼女が自分を解放する魔法だったのだ。

朱里は誰からも好かれるが、特定の誰かに「本当に好かれた」という実感がない。また不安定な派遣の仕事を続ける中で、リスク回避ばかりを意識してきた。他人にどう思われようと気にしない田中さんと出会ったことで、朱里は徐々に変わっていく。

このドラマは2人の女性の成長物語として秀逸だった。ところが、原作者の漫画家・芦原妃名子さんは脚本の内容に違和感を覚え、最後の2話の脚本を自ら書いていたと明らかにした。そして経緯をSNSで説明した後、亡くなってしまう。

これに対し、日本テレビは番組サイトで「映像化の提案に際し、原作代理人である小学館を通じて原作者である芦原さんのご意見をいただきながら脚本制作作業の話し合いを重ね、最終的に許諾をいただけた脚本を決定原稿とし、放送しております」と説明。

出版元の小学館は「編集者一同」名義で、「個人に責任を負わせるのではなく、組織として今回の検証を引き続き行って参ります」とコメントを発表した。

ドラマの根幹は「どんな人物が何をするのか」にある。小説や漫画など原作があるものは、創造の核となる部分を原作から借りていることになる。特に漫画原作はビジュアルのイメージが既に完成している場合が多い。

難しいのは、原作をそのまま脚本化すればいいドラマになる、とは限らないところだ。制作サイドは通常、さまざまな要素を考慮し、ドラマ的なアレンジを加える。

芦原さんは日本テレビに対し、ドラマ化の条件として「漫画に忠実」であることを提示し了承を得ていたというが、思うように進まなかったようだ。

いずれにせよ、原作者である漫画家が脚本を執筆する事態になったことは極めて異例だ。やはり、ドラマの責任者であるプロデューサーが、原作者と脚本家の間に立ってもっと丁寧に調整する作業が必要だったのではないか。日本テレビの正確な経緯の公表を待ちたい。

(毎日新聞 2024.02.17 夕刊)


【気まぐれ写真館】 如月(きさらぎ)の夕陽

2024年02月18日 | 気まぐれ写真館

2024.02.17


【新刊書評2024】『寺山修司 ぼくの青森ノオト』ほか

2024年02月17日 | 書評した本たち

 

 

「週刊新潮」に寄稿した書評です。

 

久慈きみ代『寺山修司 ぼくの青森ノオト』

論創社 3300円

昭和29年、早大に入学した寺山修司は「チェホフ祭」で第二回「短歌研究」新人賞を受賞する。それ以前の青森時代の作品を解読したのが本書だ。たとえば、自筆ペン書きの歌集『咲耶姫』は高校一年の時だった。「逢わぬ日は胸に満たらぬ思いあり 哀しからずや十六の恋」などを収録。中学時代の父や母といったテーマに代わり初恋が浮上する。創作活動の基本スタイルを知る貴重な手がかりだ。

 

国立映画アーカイブ:監修『和田誠 映画の仕事』

国書刊行会 3520円

2019年に83歳で永眠した、イラストレーターの和田誠。膨大な仕事の中から映画関係を厳選したのが本書だ。3月24日まで国立映画アーカイブで開催中の同名展覧会の公式図録でもある。1960年代に描いた日活名画座のポスター、『キネマ旬報』の表紙、装丁を手がけた映画書、収集した米国映画ポスター等が並ぶ。さらに映画『麻雀放浪記』をはじめとする、自身の監督作品の軌跡も辿ることが出来る。

 

ハルノ宵子『隆明だもの』

晶文社 1870円

漫画家の著者は吉本隆明の長女である。妹は作家の吉本ばななだ。全集の月報に連載した文章が一冊になった。家族だからこそ知る、素顔の吉本隆明が興味深い。節約をしない。贅沢はしないがケチらない。「何か善いことをしているときは、ちょっと悪いことをしている、と思うくらいがちょうどいいんだぜ」などと呟く。著者が父から刷り込まれたのは、「群れるな。ひとりが一番強い」だった。

 

淡谷のり子:著、早川茉莉:編

『生まれ変わったらパリジェンヌになりたい』

河出書房新社 1760円

放送中のNHK朝ドラ『ブギウギ』。主人公・福来スズ子(趣里)の盟友でもある先輩歌手、茨田りつ子(菊地凛子)のモデルが淡谷のり子だ。本書は淡谷のエッセイをテーマ別に編んだ、オリジナル・アンソロジーである。クラシック音楽からポピュラー歌手への転進。戦時中も自身のスタイルを通した反骨精神。「演歌なんてケチくさい歌は、油かけて燃やしたい」とブルースの女王は意気軒昂だ。

(週刊新潮 2024.02.15号)

 

 


【気まぐれ写真館】 「春一番」が吹いた日の多摩川

2024年02月16日 | 気まぐれ写真館

2024.02.15