碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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「あなたにとって放送とは何か」

2010年03月27日 | テレビ・ラジオ・メディア

番組出演の合間に、札幌の古書店を歩く。

いつもの石川書店で、油井正一:編『モダン・ジャズ入門』(荒地出版社、1967年)、佐田稲子『夏の栞~中野重治をおくる』(新潮社、1984年)など10冊を入手。宅配便で送ってもらうことにした。

北大前の南陽堂書店では『放送の自由は死滅したか』(社会思想社、1972年)を発見。

この本は、「あなたにとって放送とは何か」と題した<ワイド・ティーチイン>を軸に構成されている。

「ティーチイン」という言葉自体が、ひどく懐かしい。討論会とシンポジウムを混ぜたようなもの、だったろうか。

出席者:
山口敏夫(自民党)、田英夫(社会党)、麻生良方(民社党)、
塩出啓典(公明党)、小笠原貞子(共産党)、
和田勉(NHK)、牛山純一(日本テレビ)、大山勝美(TBS)、
森川時久(フジテレビ)、秦豊(NET=現・テレビ朝日)、
田原総一朗(東京12チャンネル=現・テレビ東京)、
村木良彦(テレビマンユニオン)、斉藤基(ニッポン放送)、
片山善治(工学博士)、志賀信夫(放送評論家)、
高瀬広居(放送評論家)、青木貞伸(放送評論家)、
稲葉三千男(東大)、堀川直義(成城大)、
ばばこういち(インタビュアー)

このティーチインが行われたのは1971年10月22日。

メンバーでいえば、和田勉(NHK)、牛山純一(日本テレビ)、大山勝美(TBS)、森川時久(フジテレビ)、秦豊(NET)、田原総一朗(東京12チャンネル)、村木良彦(テレビマンユニオン)、という名前と所属が、大いに時代を語っている。

また、取り上げられた課題には、権力の介入、テレビ番組における署名性、言論の自由、客観批評、スポンサーの介入、自己規制等々がある。

これは熱くなりそうだ、と思う。

実際、読んでみると、随所で興味深い遣り取りが展開されている。

現在との違い、逆に今も変わらないことなど、いろんな発見もある。

にもかかわらず、どこか噛み合わないというか、賑やかなんだけど空回りというか、つまり議論のヘソが見えないのだ。

それが単純に多すぎるパネラー(笑)や人選のせいなのか、時代状況のせいなのか、放送というものの本質によるものなのかは、よく分からない。

分かるのは、この時、放送をめぐって、これだけの人たちが、それなりに真剣に語り合った(主張し合った)という事実だ。

むしろ今、このティーチインが掲げたのと同じ問いかけに、私自身を含め、テレビに関わる人間がどう答えるのかの方に興味がわいた。

「あなたにとって放送とは何か」