碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

”鎮魂の月”最後の日に読む、いとうせいこう『想像ラジオ』

2017年03月31日 | 本・新聞・雑誌・活字


2011年以来、”鎮魂の月”となった3月も終わります。

今月最後の日に読むのは、いとうせいこうさんの小説『想像ラジオ』(河出書房新社)です。

これまでに、地震や津波を取り込んだ形の文芸作品がいくつも生まれました。

しかし、これほどのインパクトを持つものはないのではないでしょうか。


主人公は、ラジオパーソナリティであるDJアーク。

被災地から、不眠不休で放送を続けています。

しかし、そのおしゃべりや音楽を聴こうと、ラジオのスイッチを入れても無理なのです。

DJアーク自身が言うように、「あなたの想像力が電波であり、マイクであり、スタジオであり、電波塔であり、つまり僕の声そのもの」なのだから。

想像ラジオには、リスナーからのメールも届きます。

「みんなで聴いてんだ。山肌さ腰ばおろして膝を抱えて、ある者は大の字になって星を見て。黙り込んで。だからもっとしゃべってけろ」。

DJアークは話し続けます。

遠くにいる妻や息子を思い、聴いている無数の人たちの姿を想像しながら・・・。


オーバーなことを言えば、『想像ラジオ』は、日本で生まれた“21世紀の世界文学”といえる、問題作の一つだと思っています。

そしてこの作品で、言葉のチカラ、文章のチカラ、文学のチカラを、しっかりと示してくれた、いとうせいこうさんに感謝です。


ビジネスジャーナルで、Eテレ『おかあさんといっしょ』を解説

2017年03月31日 | メディアでのコメント・論評



「圧倒的人気番組」
Eテレ『おかあさんといっしょ』の真実
子供がピタッと泣きやむ
謎と膨大なノウハウ

現在子育て中の人はもちろん、子供がいない人も幼少時のなつかしい記憶として覚えているに違いない『おかあさんといっしょ』や『いないいないばあっ!』。まさに国民的といっていい、NHK Eテレが放送する幼児番組だ。

特に子育て中の家庭にとっては、Eテレを見せれば子供がピタッと泣きやむことから、非常にありがたい存在として重宝されている。『おかあさんといっしょ』や『いないいないばあっ!』は、なぜ長い間子供たちに支持され続けるのだろうか。

小栗旬、生田斗真もハマるEテレの魅力

1959年に放送が開始された『おかあさんといっしょ』は「2~4歳児向け」の番組として、実に60年近くも日本中の子供たちの成長を後押ししている。『いないいないばあっ!』はさらに下の「0~2歳児向け」で、こちらのスタートは96年だ。

いずれも幼児番組のなかで圧倒的な人気を誇っており、番組に登場するキャラクターのグッズや絵本、DVDに加え、地方を回るファミリーコンサートも大盛況だ。

子育て中の親同士の会話では、「どんなにギャン泣きしていても、大好きなキャラが登場したりお気に入りの歌がかかったりすると、ピタッと泣きやんでくれるので助かる」と、この2番組の名前が頻繁に出てくる。小さな子供を抱える家庭にとって、これほど生活に密着している番組はほかにないだろう。

Eテレの幼児番組には、多くの芸能人たちからもラブコールが寄せられている。昨年には、俳優の小栗旬がバラエティ番組で『おかあさんといっしょ』に関する「歌のお姉さんの交代劇」や「(人形劇の)ガラピコぷ~」について熱く語り、娘と一緒によく番組を見ているという俳優の大泉洋は14年に「会えるのなら『おかあさんといっしょ』の三谷たくみお姉さんに会いたい。ファンなんです!」と宣言している。

たくみお姉さんは16年3月に同番組を卒業したが、出演していた当時には俳優の生田斗真が「会いたい人」として名前を挙げたこともあった。

最新の研究結果を反映、色使いにも緻密な計算

Eテレの番組が人気な理由は、「子供も大人も見ていて楽しい」という高いエンターテインメント性だけではない。教育を目的としたEテレらしく、バックボーンも骨太だ。元テレビプロデューサーで上智大学文学部新聞学科教授(メディア文化論)の碓井広義氏は、以下のように解説する。

「NHKは、NHK放送文化研究所という放送研究機関を通じて、幼児のテレビ視聴に関するさまざまな調査・リサーチを行い、大学教授や育児・教育の専門家と連携して『児童心理学』や『児童文化論』といった分野の最新の研究成果を番組づくりに反映させています。基本的なフォーマットは変わらない長寿番組ですが、その意味では常に新しいものといえます」(碓井氏)

もちろん、理念だけでは子供たちの興味をひくことはできない。実際の画面では、乳幼児の視線を釘付けにするための工夫が施されている。たとえば、一見して気づくのが、画面にあふれる明るい“色彩”だ。

「スタジオ全体の色合いから出演者やキャラの衣装まで、色彩の設定はかなり細やかに練り込まれていますね。大原則は『明るいこと』『楽しげであること』『優しいこと』の3つ。使われる色も、原色を基本にパステルカラーまでで、暗い色や重たい色はほとんど使われていません。画面を見た子供たちが明るく楽しい気持ちになって、その場に参加したくなるような効果を生んでいます」(同)


また、06年に宇多田ヒカルが『みんなのうた』に楽曲を提供したことが話題になったように、Eテレは歌や音楽のクオリティの高さにも定評がある。制作にはかなりの労力を注いでおり、そのほとんどが番組オリジナルという力の入れようだ。半世紀以上にわたる蓄積は膨大で、歌のお兄さんに就任すると、1000曲近い歌を覚えなければならないという。

「いつも変わらない」からEテレは習慣になる

視聴者=子供の目線に合わせたEテレの細やかな配慮は、まだある。たとえば、『いないないばあっ!』では、ひとつのコーナーでカットが切り替わることはほとんどない。画面が切り替わってしまうと、仮に同じ人物やキャラを映していても「別の人が映っている」と認識してしまう恐れがあるからだ。

さらに、歴代最長の9年間にわたって歌のお兄さんを務めた横山だいすけが3月で番組を卒業するが、番組の進行役も兼ねるお兄さんもお姉さんも、近年は就任期間が長くなる傾向にあるという。また、彼らには、子供たちのイメージを守るために出演期間中は原則として「海外旅行」「結婚」「他番組への出演」が禁止という厳しいルールもある。

そして、碓井氏によると、実はこの「変わらない」ことが重要なポイントだという。

子供たちの環境はさまざまで、保育施設や幼稚園に通う子もいれば、家で親が面倒を見ているケースもある。そんな子供たちにとって、毎日決まった時間にテレビをつけると、必ず「同じ人やキャラが同じ歌や体操をやっている」というのは、非常に大きな意味を持つのだ。

「子供の教育で大切な要素のひとつが“生活の習慣化”です。生活のなかで、“朝8時になったから『おかあさんといっしょ』を見よう”というところから習慣化が始まるわけです。しかも、番組では同じお兄さんやお姉さんやキャラが、同じ世界観で画面のなかにいてくれる。そのため、子供たちは自然と親しみを感じるようになるのです。

番組で流れる歌や体操も同様で、番組を見た子供たちは同じことを真似して繰り返すなかで歌や踊りを覚え、その先に『もっと知りたい』という知的好奇心も生まれてくる。もちろん、長いスパンでは時代に合わせて変化はしますが、いいものは変えなくてもいいのです」(同)


Eテレの幼児番組は「子供が見るものだから、これくらいのレベルでいいだろう」ではなく、子供が見るからこそ時間も知恵も注ぎ込んで本気でつくられている。だからこそ、子供の気持ちを動かすことができるのだ。 文=常盤泰人/清談社

(ビジネスジャーナル 2017.03.28)

ドラマ『絆~走れ奇跡の子馬~』が描いた「3.11」

2017年03月30日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評



日刊ゲンダイに連載しているコラム「TV見るべきものは!!」。

今週は、NHKの特集ドラマ「絆~走れ奇跡の子馬~」を取り上げました。


NHK 特集ドラマ「絆~走れ奇跡の子馬~」
力ある役者が誠実に演じていた

23日から2夜連続で、NHKが特集ドラマ「絆~走れ奇跡の子馬~」を放送した。東日本大震災で牧場と家族を失った福島の一家が、震災の日に生まれた子馬を競走馬として育てていく物語だ。

松下拓馬(岡田将生)は震災の中で馬の出産に立ち会い、子馬を守る形で亡くなった。地元からGⅠ馬を生み出すという拓馬の夢を実現すべく、必死で踏ん張る父・雅之(役所広司)。看護師として働きながら牧場を支えてきたが、息子の死にショックを受ける母の佳世子(田中裕子)。震災を機に東京から戻って父を助ける拓馬の妹・将子(新垣結衣)。力のある役者が現地の人々の6年間を誠実に演じていた。

父と娘は北海道の生産育成牧場に子馬を預けようとするが、「あの馬、被ばくしていないと言い切れるのか」と断られる。また新たな牧場を作ろうとした土地は除染廃棄物置き場となって使えない。当人たちではどうにもならない悔しさ。そうした苦い現実が描かれる。

全体として抑制の利いた、ストイックともいえるドラマだ。しかし寡黙に徹した役所広司が被災者の憤りを、そして「あの子馬を見ると拓馬を思い出してつらい」と静かに語る田中裕子が被災者の悲しみをしっかりと代弁していた。新垣結衣の「立ち止まるのは簡単。苦しくても前に進む。そう決めたんです、父は」というセリフも印象に残る。

(日刊ゲンダイ 2017.03.29)

4分の1が過ぎた『おんな城主 直虎』を、どう評価するか!?

2017年03月29日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム


1月に始まったNHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』も、全体の4分の1が経過しました。雑誌と新聞から、「ここまでをどう評価するか」という取材があり、ざっと以下のような話をさせていただきました。

「題材選び」は正しかったのか?

直虎役の柴咲コウさん、熱演しているとは思います。けれど、そもそもの題材選びが悪かった、というほかありません。

主人公が女性だと、時代劇では立場上、主軸になれないんです。これまでの大河ドラマで言えば、『八重の桜』(2013年)は新島襄の妻で、『花燃ゆ』(15年)は吉田松陰の妹。歴史上の人物を支えた立派な女性たちですが、大河としては”不発”でした。

今回の直虎も同様で、井伊家と、そして後に「徳川四天王」の一人となる井伊直政を陰ながら支える存在、という位置づけでは、大河ドラマを1年間引っ張るには弱いのです。

柴咲さんの出番が少ない、活躍しない、という不満が出るのも当然だと思います。ここまでの直虎は僧だったのですから、大っぴらに動くことはできません。無理に歴史に関わらせようとしない方針から、お家騒動のちまちました話ばかりになってしまう。

知らない人が主人公だから見る側の関心は希薄だし、本人のエピソードが弱いからダイナミックにならない。歴史上マイナーだった女性を、大河の主人公にもってくるのは難しいのです。

しかも最近の大河は、きっちり1年おきの女性主人公です。安倍政権の“女性が輝く社会”に、どれだけおもねっているのか知りませんが、大河の主人公まで男女雇用機会を均等にする必要はないですよ(笑)。

“戦国大河”というより“恋愛大河”

もちろん、「女性でありながら武家の当主」という、当時としては稀有な存在だった直虎の活躍を見たいという人はいると思います。しかし、この3か月で視聴者の気持ちを最も揺さぶったのは、直虎、直親(三浦春馬さん)、小野政次(高橋一生さん)の“三角関係”ではないでしょうか。

「誰かを大切に思う」気持ちは、何百年昔の男女も変わらないということ。むしろ、自分の気持ちに従うことが困難な時代だったからこそ、視聴者には、より純粋な恋愛に見えるのかもしれません。“戦国大河”でありながら、主人公自身が戦場で戦うシーンを見ることができない分、ここまでは“恋愛大河”ともいうべき楽しみ方で支持されてきたのだと思います。

中でも主人公を超える注目を集めているのが政次であり、高橋一生さんです。この現象は、タイミングとして、大河と『カルテット』(TBS系)の放送が同時進行していたことが大きいですね。

『カルテット』で高橋さんが演じていた家森諭高。クールで、得体が知れず、しかも色っぽい。「ちょっと悪そうでいて色っぽい男」というのは、いわば“要注意物件”なんですよね(笑)。危うさがあるから魅かれるタイプ。

大河の高橋さんは、そんな家森のイメージとどこか重ねながら、見られているのではないでしょうか。小野政次の政治的な動きを見ていると、なかなかの策士であり、結構悪っぽい面がある。いや、直虎や井伊家を守るためにも、あえて悪の部分を引き受けているのかもしれません。自分を抑え、相手の幸せのためなら何でもするという生き方は、特に女性視聴者にとって堪らないはずです。

目が離せない「家康夫妻」

もう一組、サイドストーリーとして楽しめるのが、徳川家康”夫妻”です。家康役の阿部サダヲさんは、昨年の『真田丸』で演じた内野聖陽さんよりもタヌキぶりに愛嬌がある。

その家康を尻に敷いていたと言われる築山殿も、auの“三太郎”CMでS嬢ぶりを発揮する菜々緒さんを、キャラもそのままにして持ってきたようで、上手いキャスティング。この2人を起用して、家康が主人公の大河ドラマを作ったほうが面白くなりそうです(笑)。

とはいえ、高橋さんの政次も、阿部さんの家康も、今回はあくまでも“脇役”ですからね。直親が命を落とし(三浦春馬さん不在となるのは痛手)、4月からはいよいよ直虎が「おんな城主」となります。ここからは、ぜひ主人公が物語を引っ張っていって欲しいものです。

Yahoo!ニュースの連載「碓井広義のわからないことだらけ」
https://news.yahoo.co.jp/byline/usuihiroyoshi/


卒業、おめでとう!(3) 2017.03.27

2017年03月28日 | 大学






ゼミ生たちから贈られたアロハシャツで






卒業、おめでとう!(2) 2017.03.27

2017年03月28日 | 大学

























卒業、おめでとう!(1) 2017.03.27

2017年03月28日 | 大学








書評した本:今野勉『宮沢賢治の真実~修羅を生きた詩人』他

2017年03月27日 | 書評した本たち



「週刊新潮」に、以下の書評を寄稿しました。

今野 勉 
『宮沢賢治の真実~修羅を生きた詩人』

新潮社 2160円

放送界における今野勉は巨匠と呼ばれる演出家の一人だ。1959年、TBSに入社。64年のドラマ「土曜と月曜の間」でイタリア賞大賞を受賞。70年、仲間と共に日本初の番組制作会社「テレビマンユニオン」を創立する。以後、“ドキュメンタリードラマ”という手法を駆使して実在の人物を描いてきた。

戦争中に和平工作を担った軍人、藤村義朗(「欧州から愛をこめて」)。二・二六事件で暗殺された大蔵大臣、高橋是清(「燃えよ!ダルマ大臣 高橋是清伝」)。日本海軍の父、山本権兵衛(日本の放送史上初の3時間ドラマ「海は甦える」)。さらに「こころの王国~童謡詩人・金子みすゞの世界」、「鴎外の恋人~百二十年後の真実」などもある。共通するのは、その人物に関する事実の発見と新たな解釈の提示だった。

新著『宮沢賢治の真実~修羅を生きた詩人』もまた驚きに満ちている。一編の文語詩に見つけた言葉への疑問をきっかけに始まる探査行だ。賢治がいつ、どこで、何をしていたのか。その時、何を思い、何を書いたのか。今野はドキュメンタリー制作の場合と同様、資料を読み込み、ひたすら考え、仮説を立て、その上で現地に足を運んで調査を行い、また資料に戻って考察を続ける。

浮かび上がってくるのは妹・とし子の恋であり、賢治自身の恋だ。しかも、それぞれの恋に隠された苦悩があった。今野が明らかにしていく“事実”によって、誰もが知る「春と修羅」や「永訣の朝」などの詩、また「銀河鉄道の夜」の解釈がまったく変わってくる。いや、作品だけではない。賢治像の定説をくつがえすだけのインパクトがあるのだ。

この取り組みを可能にしたのは、今野がもつドキュメンタリー的緻密さとドラマ的想像力であり、その幸運な融合である。いわゆる研究者とは異なるアプローチでもあり、今後同意であれ反論であれ、国文学界の反応が楽しみだ。


藤田直哉 『シン・ゴジラ論』
作品社 1944円

この国はなぜゴジラという名の神を必要とするのか。気鋭の批評家がタブーと化した東日本大震災の「スペクタクル」の快にも触れながら考察する虚構と現実。フィクションであるはずの映画の中から、3・11、天皇、科学、宗教などのリアルが浮彫りになってくる。


大崎梢ほか『アンソロジー 隠す』
文藝春秋 1728円

女性作家11人が同じテーマで書き下ろした競作集だ。女性被疑者が隠す刺傷事件の動機(柴田よしき「理由」)。亡き祖母が箸と櫛に込めた過去(新津きよみ「骨になるまで」)。他人の物を欲しがる性癖の結末(近藤史恵「甘い生活」)。女は皆、秘密を持っている。

(週刊新潮 2017.03.23号)

【気まぐれ写真館】 北海道千歳市「柳ばし」でメンチ!

2017年03月26日 | 気まぐれ写真館

人気の「しょうが醤油でいただくメンチカツ」


HTB「イチオシ!モーニング」 2017.03.25

2017年03月26日 | テレビ・ラジオ・メディア




愛里さん、依田アナ


岩本さん


五十幡アナ


柳田アナ、藤尾さん、谷口さん


今週の「愛里さん」

HTB北海道テレビ「イチオシ!」 2017.03.24

2017年03月25日 | テレビ・ラジオ・メディア







高橋春花アナとヒロさん


オクラホマ藤尾さん




ヒロさんが描いた大谷選手


今週の「高橋春花アナウンサー」

【気まぐれ写真館】 札幌 気温1度 2017.03.24

2017年03月24日 | 気まぐれ写真館

慶應義塾大学 卒業式 2017.03.23

2017年03月24日 | 大学



慶應義塾大学の日吉キャンパスへ。

学部の卒業式でした。

OBでも、元教員でもなく、親としての参加です。

息子が、卒業しました。


付属中学に入ってから10年間、ずっとSFC(湘南藤沢キャンパス)でお世話になりました。

いわば10年分の卒業(笑)。

本人はもちろんでしょうが、親としても、それなりの感慨があります。


6年前、娘が卒業したのですが、東日本大震災の直後だったため、同じ日吉キャンパスで予定されていた卒業式は、行われませんでした。

彼女たちは、卒業式なしのまま、社会に出ていきました。


たくさんの学生たちが並木の坂道を上がっていく様子を眺めながら、40年前の自分たちの卒業式を思い出しました。

仲間とわいわい言い合いながらも、「学生じゃなくなるんだなあ」という、かすかな感傷。

それと数日後には、当たり前ですが、初めて「社会人なるもの」になってしまう自分。

そのことへの不安というとオーバーですが、少したじろいでいる感覚も、一緒によみがえってきました。


それでも、息子も含めた6千数百人の卒業生たちに、言ってあげたくなります。

「社会人になれば、それなりに大変なこともあるけど、結構面白いよ」と。


卒業、おめでとう!








































相楽樹は“主演作”でひと皮むけるか

2017年03月23日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評



日刊ゲンダイに連載しているコラム「TV見るべきものは!!」。

今週は、相楽樹の初主演ドラマについて書きました。


テレビ東京系「こんにちは、女優の相楽樹です。」
“主演作”で、ひと皮むけるか

もうすぐNHK朝ドラが「べっぴんさん」から「ひよっこ」へとかわる。昨年の「とと姉ちゃん」など、もはや懐かしの一本だ。その「とと姉ちゃん」で主人公・小橋常子を演じていたのは高畑充希(25)。では、次女の鞠子役を務めた女優の名前、言えますか?

正解は相楽樹(22)。背が高くて和風の顔だったという記憶はあるが、街ですれ違った時、「あ、相楽樹だ!」と気がつく自信はない。今期ドラマ「嫌われる勇気」や 「三匹のおっさん3」にも出ていたが、印象は希薄だった。

深夜ドラマ「こんにちは、女優の相楽樹です。」はタイトル通り相楽の初主演ドラマだ。「朝ドラに出たことで有名人気取りだったが、実はほとんど知られていない」女優・相楽樹を本人が演じているところがミソだ。

ある喫茶店ではメイド服姿の店員(ももいろクローバーZの佐々木彩夏)が、「マスクやサングラス、取りな。一般人が全員、芸能人見て興奮すると思ったら大間違いだ!」と一喝。また別の店でも、銀座のママの壇蜜に、「変なプライド捨てて、どんな仕事もちゃんとやりなさい」と諭されてしまう。

ちょっと自虐的なパロディードラマだが、かなり真実を突いている。「とと姉ちゃん」以降、ドラマの脇役も週刊誌のグラビア写真もどこか中途半端な出来だった相楽。

この“主演作”で、ひと皮むけることを祈りたい。

(日刊ゲンダイ 2017.03.22)

書評した本: 堀江敏幸 『音の糸』ほか

2017年03月22日 | 書評した本たち



「週刊新潮」に、以下の書評を寄稿しました。

堀江敏幸 
『音の糸』

小学館 980円

雑誌『クラシックプレミアム』の連載をまとめた、著者初の音楽エッセイ集。休日のFM放送に始まり、音楽教室で聴いたLPレコード、修道院の慈善コンサートで体験したプロの演奏など50のエピソードが並ぶ。著者の記憶の中から音楽が聴こえてくる静かな一冊だ。


高田 明 
『伝えることから始めよう』

東洋経済新報社 1728円

著者は「ジャパネットたかた」の創業者だ。会社勤めをしていたが、26歳で家業のカメラ店に入った。20年後にはテレビショッピングに進出。以降の発展ぶりは言うまでもない。著者の原動力はスキル、ミッション、パッションの3つ。そこから何かが伝わっていく。


武田 徹 
『なぜアマゾンは1円で本が売れるのか』

新潮新書 864円

副題である「ネット時代のメディア戦争」のほうが内容をよく表しているかもしれない。印刷本とデジタル本。スマホとジャーナリズムの関係。そして「ネットはコンテンツを殺すのか」という刺激的な命題。多くの取材を元に書かれた、奥行きのあるメディア論だ。

(週刊新潮 2017年3月16日号)