碓井広義ブログ

<上智大学教授のメディア時評> 見たり、読んだり、書いたり、話したり、時々考えてみたり・・・

「倉本聰 ドラマへの遺言」  第14回

2018年01月31日 | 日刊ゲンダイ連載「倉本聰 ドラマへの遺言」


倉本聰 ドラマへの遺言 
第14回

八千草薫から電話
「私のおならの音、分かりません?」


碓井 浅丘ルリ子さんが先生と一緒に仕事されたのは、「2丁目3番地」(71年、日本テレビ系)が最初だったんですね。当時、石坂浩二さんとの初共演が話題となりました。

倉本 当時のルリ子は小林旭のような力強い男のほうがタイプだったから、兵吉(石坂の本名)みたいにナヨナヨしたのは嫌だったんじゃないですか。でも、兵吉がルリ子に告白した時も僕はその場にいましてね、よく覚えているんですが。打ち上げの熱海の大野屋っていう旅館で兵吉は泣いちゃったんですよ。泣き口説きで「離れるのが寂しい」って。僕はその脇にいて、森みっちゃん(光子)の上に馬乗りになって腰を揉んでましたよ。で、ルリちゃんが「兵ちゃんかわいそう~」って抱きしめたんですね。僕は知らんぷりして腰を揉んでいたっていう。

碓井 歴史的瞬間ですねえ。

倉本 家族みたいなものですね。役者の世界とライターの世界は違う。演出家と役者の関係は近くても、ライターと役者の間には距離がある。「2丁目3番地」の時は制作側の方からもお願いされてホン読みに参加したと思うんですけれど、ライターは基本、孤独の作業。現場にあんまり顔も出さないわけですが、俳優さんとは深く付き合うようにしていた。その人の性格を掴んでからじゃないと書かないっていうのを鉄則にしていたんですね。

碓井 それはまた大変なことだ。

倉本 八千草(薫)さんは1年半、付き合いました。一番長かったのは、若尾(文子)ちゃんかなあ。女優さんって鎧をつけてるんですよ。その鎧を外さないと欠点が見えない。欠点を書いてあげないと個性にならない。長所が見えたところでなんにもならない。恋愛って普通、長所を見ちゃうじゃないですか。だから、わりと破綻するでしょう。それと似たようなもので、欠点から入って書くといい。

碓井 マイナス面が見えないと、人物像として立ちあがってこないってわけですね。

倉本 口のデカい女優さんがね、それを欠点だと思っていると、隠そうとして口が小さく見えるようメーキャップする。逆なんですよ。大きくしてやったほうが個性につながってくる。岸田今日子がひとつの例ですけれども。

碓井 目に見えるならまだしも、内なる欠点を見つけ出すのはかなり難しいかと。

倉本 ですからね、八千草さんの場合は、1年半かかった。マネジャーに聞いてもさっぱりなんだから。

碓井 八千草さんの倉本ドラマ初主演といえば、TBS系の東芝日曜劇場「おりょう」(71年、制作は中部日本放送)でしょうか。

倉本 あのときだって、本当は「あの人のおならの音が分からないと書けない」って一度断ったんです。ですが、そのあと、八千草さんから電話がかかってきて、「私のおならの音、分かりません?」って言われて、慌てちゃって。

碓井 それはまた凄い。

倉本 そうしたら、八千草さん、ふっとまじめな声になって「でしたら、新珠さんのおならの音も分かりませんでしょう?」って。僕はちょっとドキッとして。この人は、新珠三千代さんに対して嫉妬心を持っているんだっていうのが分かって、それからですね、書けたのは。(つづく)

(聞き手・碓井広義)

▽くらもと・そう 1935年1月1日、東京都生まれ。東大文学部卒業後、ニッポン放送を経て脚本家。77年北海道富良野市に移住。84年「富良野塾」を開設し、2010年の閉塾まで若手俳優と脚本家を養成。21年間続いたドラマ「北の国から」ほか多数のドラマおよび舞台の脚本を手がける。現在は、来年4月から1年間放送されるテレビ朝日開局60周年記念ドラマ「やすらぎの刻(とき)~道」を執筆中。

▽うすい・ひろよし 1955年、長野県生まれ。慶大法学部卒。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年間、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。現在、上智大学文学部新聞学科教授(メディア文化論)。笠智衆主演「波の盆」(83年)で倉本聰と出会い、35年にわたって師事している。



日刊ゲンダイ連載「倉本聰 ドラマへの遺言」 
https://www.nikkan-gendai.com/articles/columns/3212

週刊朝日オンラインで、「フジテレビ」について解説

2018年01月30日 | メディアでのコメント・論評

 


深キョン、亀梨、芳根京子ら“討死” 
どうにも止まらないフジテレビの8ブランド低下


フジテレビの低迷はいつまで続くのか--。

芳根京子主演の月9ドラマ「海月姫」は、初回視聴率8.6%(ビデオリサーチ調べ・関東地区)の月9史上ワースト2位でのスタート。1月22日放送の2話は、6.9%にさらに下降した。火曜放送の亀梨和也主演「FINAL CUT」も23日放送の第3話が6.5%、深田恭子の「隣の家族は青く見える」は18日放送の初回視聴率が7.0%で、25日放送の第2話視聴率はさらに下がって6.2%になるなど、のきなみ苦戦中。今年に入っても復権の兆しは見えてこない。

「もちろん芳根さんはいい女優さんですし、『FINAL CUT』も骨太でいい作品。しかし、たとえ内容が面白くても、チャンネルを合わせてもらえない。そこに困っている状況だと思います」

と、上智大学の碓井広義教授(メディア文化論)は語る。


ドラマばかりではなく、1月からスタートした、山崎育三郎がMCをつとめるバラエティー「世界の村のどエライさん」は、22日放送の第2回でわずか3.3%の大苦戦を強いられている。もはや内容うんぬんというよりも企業のブランドイメージの低下が視聴率に響いているようなのだ。

「フジテレビという名前自体がかつてはブランドでした。しかし、今は『フジでやってるからつまらないんじゃないか』というところまできています。たとえは悪いかもしれませんが、事故や不祥事を起こしたメーカーの商品が売れないような状態なんです」(碓井教授)

先日、碓井教授が若い人たちから、こんな“冗談”を聞いたという。

「テレビのリモコンをいじっていてフジテレビが映ったときに、『あ、間違えた』と感じてしまったことがあったと。これが笑える失敗談のようになっている感覚が、今のフジの置かれている状況を象徴していると感じました。チャンネルを選ぶ埒外になっているわけです」


ある放送作家によれば、チャンネルごと視聴習慣がなくなってしまうと、フジテレビの局番(8)にも不利な面があるという。

「面白い番組をやっているというイメージがあれば、無意識にそのチャンネルからリモコンのボタンを押す。かつてはまずフジをつけてみて、そこから他局をチェックする流れになっていた人は多かった。今は、一番強い日テレからつけて、そこから5、6と順番に回して、面白そうなところで止まる。7チャンネルのテレ東も、池の水を抜いたりなど、見逃せない番組をやってますからね」

つまり、8チャンネルまでたどり着きにくいのだ。負のスパイラルに陥っているかのようなフジテレビ。低迷を脱却する鍵は何か。

「『バイキング』や『めざましテレビ』などが好調で、さらに4月にスタートするニュース番組に元NHKの登坂アナを起用する予定が、スキャンダルで降板など、いろんな意味で早くも話題です(笑)。『ザ・ノンフィクション』などの評価も高いですから、報道・情報系に力を入れていく方針もあるようです」

と前出の放送作家。

碓井教授もエールを送る。

「ブランドの信頼を回復するのも、一晩でイメージ回復というのはできないので、あせらず地道にいい作品を作っていくこと。そこを真剣に考えませんかと言いたいですね」


【本誌・太田サトル】


(週刊朝日オンライン 2018.1.28)


書評した本: 小路幸也 『駐在日記』ほか

2018年01月30日 | 今週の「書評した本」



「週刊新潮」に、以下の書評を寄稿しました。

小路幸也 『駐在日記』
中央公論新社 1620円

物語の舞台は神奈川にある山合いの集落。昭和50年、前任地では刑事だった蓑島周平が、妻の花を伴い駐在所にやってきた。穏やかな人々が暮らす、のどかな田舎に、駐在夫婦の心を震わす不思議な事件が発生する。人情とノスタルジーに満ちた連作短編集だ。


コロナ・ブックス編集部 
『牧野富太郎~植物博士の人生図鑑』

平凡社 1728円

77年前に刊行され、現在も売れ続けている『牧野日本植物図鑑』。稀代の植物博士の人物像と業績にスポットを当てたビジュアル版自叙伝だ。学歴は小学校中退。自らを「植物の愛人」と称した牧野。精緻にして美しく、また温もりのある植物図にその人柄が窺える。


林 香里 
『メディア不信~何が問われているのか』

岩波新書 907円

著者はジャーナリズムが専門の東大大学院教授。今やメディア不信は世界同時多発の社会現象だと言う。新聞の信頼度がネットよりも低い英国。「おまえは、フェイク・ニュースだ」と大統領が叫ぶ米国。本書では豊富な海外事例を基に問題の本質に迫っていく。

(週刊新潮 2018.01.18号)

週刊朝日オンラインで、「松岡修造」について解説

2018年01月29日 | メディアでのコメント・論評


平昌五輪の影の主役は松岡修造?
 「“言葉力”がすご過ぎ」と注目

元プロテニス選手の松岡修造の「“言葉力”がすごすぎる」と話題になっている。

1月24日に東京都・大田区総合体育館で開かれた、平昌オリンピック日本選手団の壮行会イベントで、松岡はフリーキャスターの平井理央、タレントの小島瑠璃子と共に登場した。会場には都内の小学生、長野県の小学生など約5千人が、オリンピック選手たちの勇姿を見に集まった。

イベント冒頭から松岡節が全開だった。選手が入場する前、松岡ら3人が会場に登場したのだが、その瞬間の声援と熱気が足りないと感じるや、松岡は「ちょっ!ちょっ!待って!今日はすごい重要な日なんだよ!『頑張れ!』と言ったら『ニッポン!』と(会場の)皆が言わなければ始まらないんだよ!もう一度やり直す」と会場入り口に走って戻り、わざわざ登場し直すというまさの展開。ただ、今度は会場中から「ニッポン!」という元気な声を引き出した。

さらにこんなシーンがあった。イベントが押していたこともあり、選手たちへのエールの練習をする時間が、当初の20分からわずか6分に短縮された。

そんな状況の中、松岡は多くの小学生たちを相手に、振り付けと「冬を!燃やせ!頑張れ!ニッポン!」という掛け声を覚えさせる必要があった。しかし、そこでも松岡はすごかった。子供達にもわかりやすく、短い言葉で説明し「思ったより皆できる!」「素晴らしい!」「皆にとってのオリンピック本番と思ってやって!」「皆だったら(練習)1回できるぞ!」と力強く声をかけ続け、最後には会場内が一体となって見事に揃っていた。その間わずか6分。その後の本番では、会場が一体となって、現れた選手たちに盛大なエールを送った。

約5千人を短時間でまとめた、松岡の言葉力。本能のなせる業なのか、計算づくなのか。

松岡修造の言葉に着目した日めくりカレンダー「(日めくり)まいにち、修造!」などを発売してるPHP研究所の制作担当者は、松岡の言葉力についてこう話す。

「松岡さんと商品を作る際に何度も打ち合わせしましたが、伝える言葉一つ一つを考えられています。話す言葉を自室で何度もシミュレーションされ、こういうスピードなら伝わるとか理論的です」

また、松岡が主催する子供向けテニス塾「修造チャレンジ」の影響も指摘する。

「子供たちにテニスの指導する時に、いかに子供たちにわかりやすく、心に伝えるかを大切にされています」(前出の制作担当者)

そして、松岡の言葉の選び方にも驚かされたという。

「人が傷つく言葉を選ばないように徹底されています。例えば、『家族』を思い起こさせる言葉を使うとすると、もしかしたら両親が離婚していたりする子供もいて、暗い気持ちにさせてしまうかもしれない」

ここまで考え抜かれているとは正直、驚きだった。

メディア文化論が専門の上智大学教授の碓井広義さんは、こう指摘する。

「既にテニス選手としてのキャリア、引退後もタレントとして活躍されていましたが、注目されたきっかけは、松岡さんのテニス教室の映像がテレビで結構流れた時ではないでしょうか。子供たち相手に真剣にぶつかっていく姿に、メディアが“松岡修造”という逸材を再発見したんだと思います。ゲストや司会というプレイヤーとして立つ時の“松岡修造”を」

碓井さんは同時に松岡の持つ品にも注目した。

「東宝の元社長の父親と宝塚歌劇団のスターだった母親を持ち、ある種、究極のお坊ちゃんですが、嫌味がない。品がある。一般大衆は金持ちの嫌味な部分が少しでもあれば敏感に反応するのですが、松岡さんにはそれがない。逆に子供たちに厳しい言葉を浴びせようが、消せない品の良さを感じさせる。そして、松岡修造がここにいるという贅沢感が生まれていて、今は旬の人になってます」


松岡は平昌オリンピック・パラリンピックが近いこともあるが、関連イベントに引っ張りだこ。壮行会と同日に行われたWOWOWのパラリンピック・ドキュメンタリーシリーズ「WHO I AM」のイベントでも俳優・西島秀俊らと登場して、西島に鋭い質問をして場を盛り上げた。

2月に開幕する平昌五輪。これからますます、松岡修造の熱い言葉がお茶の間に届くに違いない。【本誌 大塚淳史】

(週刊朝日オンライン 2018.1.27)


毎日新聞で、「吉本興業の動画配信」について解説

2018年01月28日 | メディアでのコメント・論評


トレンド観測
Theme 
有料動画配信のオリジナル番組 
吉本興業が本腰

一昨年、又吉直樹さんの芥川賞受賞作「火花」の映像化を、米配信大手ネットフリックスと手がけて注目された吉本興業が、“本職”のお笑いでも、有料動画配信向けのオリジナル番組作りに力を入れている。

アマゾン・プライム・ビデオの昨年の視聴者数(アマゾンランキング大賞2017)では、吉本興業が制作した番組がトップ10のうち4番組を占めた。

1位を獲得したのは「ドキュメンタル」。ダウンタウンの松本人志さんが審判役を務め、人気芸人10人が密室で互いを笑わせ合う。

一昨年11月に始まった配信は現在シーズン4まで公開され、2、3作目もトップ10入りを果たした。笑わせ方に規制はなく、中には過激な行動に出る芸人もおり、冒頭には「一部不適切と感じられる場合」に了承を求めるテロップが流れる。3位に入った「戦闘車」は、芸人らが高級車をぶつけ合い戦う激しいアクションが売りだ。

「配信ならめちゃくちゃできるわけではないが、表現の自由度が上がるのは確か」と話すのは、デジタルコンテンツ事業を担当する神夏磯秀(かみがそしゅう)氏。スポンサーの意向や短時間の視聴率変動を気にせず、「1回ボタンを押せば基本的に最後まで見てもらえるので、しっかり構えて作ることができる」と話す。

自主規制が進み、テレビ番組が「窮屈になった」と評される昨今。上智大学の碓井広義教授(メディア文化論)は「『臆病なテレビ』に『大胆な動画』という対比で、『ネットでは面白いことをやっているらしい』という気配が漂い始めている」と指摘する。

  ■  ■

番組に所属タレントを出演させるだけでなく、制作にも早くから参加してきた吉本だが、これまでと異なるのは作品の著作権が手元に残ることだ。

「火花」はネットフリックスでの配信後、NHKに販売。「ドキュメンタル」は、番組演出方法などのフォーマットを海外に輸出する準備を進める。関西のお笑い番組が見られる有料動画配信サービス「大阪チャンネル」ではサービス運営にも乗り出すなど、コンテンツを直接供給する手段を広げている。

「『わろてんか』(創業者の吉本せいをモチーフにしたNHK連続テレビ小説)の時代から、吉本にとって面白いものに木戸銭を払うのは当たり前。受け取り手とダイレクトにつながる動画配信事業は親和性が高いのでは」と碓井教授。

事業規模では依然テレビ部門が圧倒的に大きいという同社だが、今後も配信向けに多様なコンテンツを用意しているという。【山田夢留】

(毎日新聞 2018.01.27)

【気まぐれ写真館】 冬晴れの多摩川

2018年01月28日 | 気まぐれ写真館

2018.01.27

「倉本聰 ドラマへの遺言」 第13回

2018年01月27日 | 日刊ゲンダイ連載「倉本聰 ドラマへの遺言」


倉本聰 ドラマへの遺言 
第13回

元嫁・浅丘ルリ子と
元カノ・加賀まりこが「全然平気よ」


碓井 先生から、初めて「やすらぎの郷」の企画についてうかがった時、石坂浩二さんが演じる主人公・菊村栄の履歴書も見せていただきました。そうしたら、基本的には倉本聰と重なっているんですよ。まんま倉本先生の履歴かと思った(笑い)。かなりご自身を投影させたのではないですか。

倉本 年齢は合わせましたが、それは僕を知っているからそう思うわけで。菊村には、阿久悠も入っていますよ。それに若干、久世光彦(TBS系「時間ですよ」などの演出家)も。同世代の複数の人間の要素によって形成されるわけで、菊村を僕だと思われると迷惑な話でね。女房も生きてますし、駆け出しの女優と浮気したなんて言われちゃうと困っちゃう。

碓井 なるほど。若い女優さんとの色恋沙汰は、久世さんと思えばいいのか(笑い)。

倉本 そうです。冗談じゃないですよね、どんな顔してカミさんに会えばいいのか。

碓井 石坂さんは「僕が演じる菊村栄は、倉本先生そのままだ」とおっしゃったとか。

倉本 それは違うんですね。そこがあいつの浅いところですね。

碓井 主演に石坂さんをキャスティングした決め手はなんだったんですか。

倉本 兵吉(石坂浩二の本名)の良さは品格があること。それから常識的な人間であること。今回、前もって浅丘ルリ子と加賀まりこと話していた時から兵吉の名前は出ましたよね。「あなたたち平気なの?」って聞いたら、「全然平気よ」って。じゃあ、気は合ってんだからっていうんで、あとはとんとん拍子に。

碓井 確か、倉本先生が書いた「2丁目3番地」(1971年、日本テレビ系)での共演がきっかけでしたよね。夫婦役が本物になって、その後、約30年も夫婦でした。結婚から46年、また離婚から17年の元夫婦が倉本ドラマで再び共演したわけで。カサブランカ(「やすらぎの郷」内にあるバー)でのスリーショットはドキドキというか、見ていておかしかったです。何しろ元ヨメ(浅丘)と元カノ(加賀)が両側にいるんですから。まさに虚実皮膜の面白さでした。

倉本 僕の身になってみれば、兵吉がルリ子にプロポーズした時に現場にいましたしね。お台場に移転する前の、河田町にあったフジテレビで兵吉から「一緒に行ってくれ」って言われて、僕の車で浅丘家に。おまけにフジの局舎前には感づいたマスコミが張っていたんで、裏口に回ろうって画策したりね。駐車場で大の大人たちがあれやこれやと。彼らはそんな経験も経ているんですよ。(つづく)


▽くらもと・そう 1935年1月1日、東京都生まれ。東大文学部卒業後、ニッポン放送を経て脚本家。77年北海道富良野市に移住。84年「富良野塾」を開設し、2010年の閉塾まで若手俳優と脚本家を養成。21年間続いたドラマ「北の国から」ほか多数のドラマおよび舞台の脚本を手がける。現在は、来年4月から1年間放送されるテレビ朝日開局60周年記念ドラマ「やすらぎの刻(とき)~道」を執筆中。

▽うすい・ひろよし 1955年、長野県生まれ。慶大法学部卒。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年間、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。現在、上智大学文学部新聞学科教授(メディア文化論)。笠智衆主演「波の盆」(83年)で倉本聰と出会い、35年にわたって師事している。



日刊ゲンダイ連載「倉本聰 ドラマへの遺言」 
https://www.nikkan-gendai.com/articles/columns/3212

女性セブンで、「不倫報道」についてコメント

2018年01月27日 | メディアでのコメント・論評


小室哲哉不倫報道論争 
逃げ場を残すのは報じる側の矜持

「TM NETWORK」デビューから35年。音楽界のレジェンドが、あっけなく引退した。最近、数多あった不倫報道の中でも、「小室ショック」はちょっと違って、とにかく世間に不愉快な後味を残したようだ。その理由はどこにあるのだろう。

「不倫だ!」「ゲスだ!」と書き立てたわけではない。『週刊文春』が報じたのは《これからもKEIKOを…懺悔告白40分 小室哲哉“裏切りのニンニク注射”》と題した記事だった。しかし、その記事が大きな物議を醸している。「今回の不倫騒動はちょっと違う」「やりすぎだ」という声が大きくあがっているのだ。

1月18日、看護師との不倫疑惑が報じられると、小室哲哉さん(59才)は翌19日に都内で1時間半の長い会見を開き、音楽活動からの引退を唐突に表明した。

疑惑を報じた文春の公式ツイッターには数千件の書き込みが殺到し、その多くが《小室さんを返して》《なんて不愉快な話》《悲しい気持ちにしかならない記事》などと報道を批判し、文春編集部にも苦情電話がかかり続けたという。

一般読者からの批判だけではない。堀江貴文さん(45才)は「クソ文春」といい、《自殺者を出しても罪の意識を持たない、検察や特捜部と同じ》と声を荒らげた。

ベッキー(33才)のゲス不倫から2年間、本誌・女性セブンも含め週刊誌によって多くの不倫報道が行われたが、小室さんのケースほど“拒否反応”が強かったものはなかった。

上智大学教授の碓井広義さん(メディア文化論)の話。

「一昨年の1月のベッキーさんの騒動以来、不倫報道が急増したのは、週刊誌という活字メディアがネタを作り、テレビはそれを追いかけるだけでラクに視聴率が取れたから。一昔前なら“不倫は下世話”と躊躇したはずが、視聴率を稼げるコンテンツと見たテレビはワイドショーのみならず報道番組でも扱うようになった。この2年間は、“不倫報道バブル”といえる状況でした。しかし、小室さんの件で、このバブルも天井にさしかかり、冷静になりつつあるように感じます」


◆KEIKOの気持ちは誰にもわからない

「KEIKOさんはホッとしてるかもわからないよ」。情報番組でそう語ったのは演出家のテリー伊藤だ。

小室さんの妻で、『globe』のボーカル・KEIKO(45才)は、2011年10月にくも膜下出血で倒れ、現在もリハビリ中。小室さんは会見で、KEIKOが音楽に関心を持たず、小学4年生の漢字ドリルを楽しんでいる様子や、会話や集中力が続かないことなどを明かし、介護で心身ともに疲れ果てていると告白した。

テリー伊藤はこう続けた。

「奥さんが倒れたとか、ご主人が倒れたとか、その時に旦那がまだ若いから“ちょっと他の人と遊んでもいいわよ”という気持ちを持っている可能性もありますよ。(中略)私、倒れているから、あなた浮気していいわよ、みたいなね(中略)それはもう、その夫婦にしかわからない」

小室さんは今回の騒動をKEIKOに説明したが、どれだけ理解できているかわからないと語った。夫ですらそうなのだから、KEIKOが今思っていること、感じていることは、他人の誰にとっても想像にしかすぎない。

「不倫」とは結局、夫婦の問題だ。もし他人やメディアが不倫を糾弾できるとしたら、それは“夫(妻)の立場に立つ”という建て前があってはじめて、“不倫は許せない!”と怒ることができるはずだ。

たとえば、渡辺謙(58才)の妻・南果歩(54才)は、発覚から半年以上経っても怒り心頭で夫に自宅の敷居をまたがせていない。上原多香子(35才)の夫・TENNさんは妻の不倫を知って自死を選んだ。夫婦の信頼を裏切った──それが周囲が不倫を追及する根拠だったのだ。

しかし、今回の場合はテリー伊藤が言うように、KEIKOの気持ちは誰にもわからない。小室さんへの信頼も揺らいでいないかもしれない。文春が「裏切り」と書いても、“裏切っているかどうか”は誰にもわからないところに、今回の不倫騒動の特徴がある。

ロンブー淳も自身のラジオ番組でこう話している。

「KEIKOさんの今の気持ちを誰も推し量れないことを考えたら、他人が人の不倫をいいとか悪いとかジャッジを下すのはどうなのか」

ジャーナリストで、元週刊文春記者の中村竜太郎さんが指摘する。

「日本で介護が必要な人は現在640万人で、小室さんと同じような立場の家族やお世話をする人はその何倍にもなります。だから、小室さんの苦労も、KEIKOさんの置かれた状況も身に染みてわかる。もしKEIKOさんに判断能力があって、小室さんと大人同士の会話ができる状態であれば、ここまで“報道が悪い”とならなかったのではないでしょうか」

小室さんが早々に引退したことも、他の不倫騒動とは一線を画す。ベッキーは最初の会見で“不倫していない”と嘘をついたし、今井絵理子議員(34才)は「一線を越えていない」という言い訳をして炎上した。

「小室さん自身が会見で、60才を手前に音楽活動の限界を感じていたと話しているのだから、不倫疑惑だけが引退の理由ではない。しかし、小室さんの引退があまりにショッキングだったので、短絡的に“週刊誌が追い込んだ”となってしまっているところがある」(前出・中村さん)

◆最後の逃げ場を残す 報じる側の矜持

フリーアナウンサーの高橋真麻は情報番組でこう問うた。

「『もう書かなくていいのに、かわいそうだよ』という感情がこんなに出たのは久しぶり。税金で暮らしているとかじゃないから、政治家の汚職ならちゃんと暴いてほしいけど、芸能人の不倫をここまで書いちゃってどうなのかな」

宮崎謙介元議員(37才)や山尾志桜里議員(43才)、今井議員など、人格まで含めて有権者から判断されるべき公職の政治家と、複雑な恋愛事情さえ、時に“芸の肥やし”になるようなアーティストを同列に並べて断罪することに疑問を投げかける声も多い。

もちろん、小室さんに厳しい意見もあり、テレビでは、「介護疲れをしてたら不倫していいとは絶対ならない」(ジャーナリスト・木村太郎さん)、「引退がすべてのけじめにならないと思う」(坂上忍)という声も上がった。

『週刊現代』元編集長の元木昌彦さんはこう言う。

「週刊誌は創刊以来、不倫を含む『スキャンダル』と『メディア批判』は大きな柱。けしからんという声は昔からあるが、そこは揺るがない。文春だって引退させたいと思っていたわけではないだろうし、多少の批判で撤退するほど週刊誌はやわじゃない。これだけ不倫報道が注目されるニュースならば、今後も情報が手に入れば不倫報道は続くだろう」

とはいえ、週刊誌のスキャンダル報道にも“一線”があるはずだ。介護で追い詰められた小室さんの精神状態は、行き場をなくし、引退に至った。人間臭いスキャンダルを追うからこそ、人間の気持ちを理解し、最後の逃げ場は残しておく──それも報じる側の矜持だ。

高橋みなみの次のコメントが多くの人の心情を代弁するのかもしれない。

「小室さんの会見を見てたら涙が出てきた。誰がこの会見を見て言葉を聞いて、責められるのだろうか。何が正義なのかわからない」

(女性セブン2018年2月8日号)

【気まぐれ写真館】 庭の梅、咲く

2018年01月26日 | 気まぐれ写真館


2018.01.25

「倉本聰 ドラマへの遺言」 第12回

2018年01月26日 | 日刊ゲンダイ連載「倉本聰 ドラマへの遺言」


倉本聰 ドラマへの遺言 
第12回

ドラマは履歴書を作らないと
“根っこのない木”になる


碓井 八千草薫さんが演じていた大女優・九条摂子が、若い頃、特攻隊員の前で一緒に食事をしたというエピソードも印象的でした。

倉本 森みっちゃん(森光子)だったか高峰三枝子さんだったか、木暮実千代だったか。誰から聞いたか記憶の中で定かではないんですが、「たまらなかった」っていうのはおっしゃってましたね。普通の慰問とは違う形で飛行機だかトラックだかに乗せられ、何も言われないままテントの中に入ったら、20代の特攻隊員がズラーッといて。隊員たちもビックリしている中で一緒に食事をして。ただ、この話は世の中に史実として残っていない。

碓井 史実から消された事実、見ている側もいろいろなことを考えさせられました。最近は戦争の実相に触れるドラマってなかなかないんですよね。

倉本 戦争経験者で存命の多くは昭和から生きてきて、戦後もバブルも体験し年老いてきた人間の集合体です。当たり前ですが、芸能界に入る前にそういう何かを背負った過去があってしかるべき。だから僕は履歴書を丹念に作るんです。

碓井 いつ、どこで生まれ、どんなふうに育ち、ドラマにおける「現時点」までに何をしてきた人物なのか。

倉本 登場人物ひとりずつの履歴書を作ると、どこでAとBが会うのか。これまでにそれぞれが形成してきた履歴やキャリア、はたまた、Aという性格とBという性格が出会った時に起こる化学反応こそがドラマだと思うんですね、僕は。履歴書をしっかり作らないとドラマが湧きようもなく、“根っこのない木”になってしまう。根っこがなければ木は立つわけがないのに、強引に立たせたフリをして、花を咲かせたり、葉を茂らせたり、実をつけたりしている書き方っていうのは違いますよね。

碓井 登場人物の履歴は演じる側にとっても大事な足場になるんじゃないでしょうか。

倉本 その通りです。履歴には大履歴、中履歴、近履歴っていうのがあって、それぞれ、大過去と中過去と近過去をさすわけですが。大過去は生まれた時から社会に出るくらいまで、中過去はいまの境遇をつくった時、そして、近過去はこの舞台でカメラの前に立つ前にあなたは何をやっていたかってことなんですよ。

碓井 それを役者も考えるわけですね。

倉本 たとえば、駆け出しの役者なら喫茶店でお茶を出すような小さなキャリアから始まりますね。その時に昨日からお茶を出すまでに何があったのか。恋人から別れの電話があった状況でお茶を出すのと、結婚を申し込まれた状況で出すのとでは違いますでしょう。演技だって変わってくるはず。そういう足場、少なくとも近過去は、個々の役者が組み立てなくちゃいけませんよ。でも、日本の役者はやらないから、お茶を出しながらのインナーボイスが見えない。外国の役者にはそれが見え、ロバート・デ・ニーロやアル・パチーノには確実にあるし、一番凄いのは、アンソニー・ホプキンス。内面で何をいっているのか分かりますよ。(つづく)


▽くらもと・そう 1935年1月1日、東京都生まれ。東大文学部卒業後、ニッポン放送を経て脚本家。77年北海道富良野市に移住。84年「富良野塾」を開設し、2010年の閉塾まで若手俳優と脚本家を養成。21年間続いたドラマ「北の国から」ほか多数のドラマおよび舞台の脚本を手がける。

▽うすい・ひろよし 1955年、長野県生まれ。慶大法学部卒。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年間、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。現在、上智大学文学部新聞学科教授(メディア文化論)。笠智衆主演「波の盆」(83年)で倉本聰と出会い、35年にわたって師事している。



日刊ゲンダイ連載「倉本聰 ドラマへの遺言」 
https://www.nikkan-gendai.com/articles/columns/3212

紀伊国屋ホールで、ラッパ屋「父の黒歴史」

2018年01月25日 | 舞台・音楽・アート



年に一度のお楽しみ。

「ラッパ屋」の公演です。

いつもの新宿・紀伊国屋ホールへ。

新作「父の黒歴史」。

いつものメンバーに加え、客演の皆さん、オーディションでの若い方々が参加しています。

ニヤリ、ワハハと笑って、ちょっとしみじみする、ラッパ屋テイストの舞台を楽しんできました。

今度の日曜まで、やってますので、ぜひ!


ラッパ屋公演
紀伊國屋書店提携
「父の黒歴史」

■日程  2018年1月20日(土)~28日(日)

■会場  紀伊國屋ホール

■脚本・演出  鈴木聡

■出演
福本伸一 おかやまはじめ 木村靖司 俵木藤太
岩橋道子 弘中麻紀 大草理乙子 三鴨絵里子   
松村武 谷川清美  ほか

■ストーリー
東京郊外。資産家である齢九十になろうとする父。過去には愛人をたくさんこしらえて腹違いの息子・娘が何人もいる。その父が、こともあろうか選挙に出ると言い出した。金に糸目をつけぬ選挙戦。群がる有象無象。財産目当ての子供たち。足を引っ張ろうとするライバル。そしてある日、ひょんなことから父が隠していた黒歴史が暴かれそうになり・・莫大な資産の秘密が露見する?・・そして父は黒歴史を白歴史に変えられるのか・・!?

■チケットに関するお問い合わせ 
 サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(10:00~18:00)

■公演に関するお問い合わせ   
 ラッパ屋 080-5419-2144(12:00~19:00)



脚本・演出の鈴木聡さんと


「倉本聰 ドラマへの遺言」 第11回

2018年01月25日 | 日刊ゲンダイ連載「倉本聰 ドラマへの遺言」


倉本聰 ドラマへの遺言 
第11回

「処女喪失」は五月みどりさんに
書いてくれと頼まれた


オトコには理解しがたい女性特有の悩みや心情にも“タブー”を恐れず斬り込んだ「やすらぎの郷」(テレビ朝日系)。倉本氏が着想を得たのは、ある女優のひと言だった。

碓井 菊村栄(石坂浩二)が三井路子(五月みどり)から、女性の3つのターニングポイント(処女喪失、男に金で買われる、男を金で買う)を盛り込んだ芝居の台本を依頼される、というエピソードが話題になりました。

倉本 あれなんか、五月(みどり)さんに本当に書いてくれと頼まれた話ですからね。いつぞや聞いて、仰天して。その数日後、たまたまある料理屋のカウンターで飲んでいたら、山田五十鈴さんと一緒になっちゃって、五十鈴さんとは特別親しい間柄ではなかったんですが、この話をしたら、大飲んべえの五十鈴さんのグラスを持つ手が止まっちゃって、「五月さんて、凄い方ねえ」と言った。あれだけ男遍歴の多かった五十鈴さんが驚かれたのは、ものすごく心にしみましたね。

碓井 あれが実話だったとは……。

倉本 実話じゃないとあんなこと、僕、思いつかないですよ。

碓井 これは一度うかがってみたかったんですが、先生は女性が主人公の作品は、あまり積極的にお書きにならないような気がして。

倉本 書きづらいというか、女性の心理が分からない。女っていうのは、まず、みんな、年上に見えちゃうんですよ。いまだに15、16歳ぐらいの女の子を見たら、もう年上だって感じ。なんだか見透かされている気がして。自分の思考が12歳ぐらいで停止しているんですかね。若いときからダメですね。だから、恋をするのにも苦労します。

碓井 恋の話といえば、菊村が「シナリオを書く際には疑似恋愛までする」と言っていましたが、これって先生の実体験ですか。

倉本 そうですね。やっぱり、ある種、しないとダメですよ。ライターは常に疑似恋愛しています。疑似恋愛してラブレターを書くような気持ちなわけですが、男の登場人物でもある種、そうなんですよ。ただし、男に対しては、相手役の女の子の身になる。そう考えると、無数のラブレターを書いています。相手の女優さんから自宅に電話がかかってこようものなら、女房がいると、内心、ドキッとしたりしますよ。なにがあるわけでもないのに。

碓井 脚本が完成したら失恋した気持ちに?

倉本 書き終わると、疑似恋愛も終わる。ときには振られたって感じで失恋に終わることも。得恋にはならないですよね。なかなか。(つづく)

(聞き手・碓井広義)

▽くらもと・そう 1935年1月1日、東京都生まれ。東大文学部卒業後、ニッポン放送を経て脚本家。77年北海道富良野市に移住。84年「富良野塾」を開設し、2010年の閉塾まで若手俳優と脚本家を養成。21年間続いたドラマ「北の国から」ほか多数のドラマおよび舞台の脚本を手がける。

▽うすい・ひろよし 1955年、長野県生まれ。慶大法学部卒。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年間、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。現在、上智大学文学部新聞学科教授(メディア文化論)。笠智衆主演「波の盆」(83年)で倉本聰と出会い、35年にわたって師事している。



日刊ゲンダイ連載「倉本聰 ドラマへの遺言」 
https://www.nikkan-gendai.com/articles/columns/3212

「FINAL CUT」は、テレビの抱える“闇”にどこまで迫るか

2018年01月25日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評


亀梨和也「FINAL CUT」
テレビの抱える“闇”にどこまで迫るか

フジテレビ系「FINAL CUT(ファイナルカット)」は復讐劇だ。家族の命を奪われた少年が恨みを忘れずに成長し、復讐を果たす物語。主人公の中村慶介(亀梨和也)は母親の恭子(裕木奈江)を失っている。

12年前、恭子が経営していた保育園の園児が殺害された。百々瀬塁(藤木直人)がキャスターを務めるワイドショー「ザ・プレミアワイド」は、恭子を“犯人あつかい”して追いつめる。その結果が恭子の自殺だった。

第1話でのターゲットは当時のディレクターで、現在は「ザ・プレミアワイド」のプロデューサーである井出正弥(杉本哲太)。そして第2話では、味方を装って恭子に近づき、恭子犯人説の放送を行ったフリーディレクターの真崎久美子(水野美紀)が狙われた。

このドラマの見どころは慶介の復讐と12年前の事件の犯人捜しだが、実はもうひとつある。ワイドショー、ひいてはテレビが持つ“暗部”を描いていることだ。ワイドショーの場合、報道番組なら常識である裏取り(事実確認)や取材手順の順守が十分ではないことが多い。「疑惑」という形で放送することが可能だからだ。

キャスターの百々瀬が言う。

「情報には2種類ある。知る価値のあるものと、人が見たいもの」

視聴率につながるのは後者であることを熟知しているのだ。今後、慶介がどこまでテレビの闇に迫るのか、注目したい。

(日刊ゲンダイ 2018年01月24日)

「倉本聰 ドラマへの遺言」 第10回 

2018年01月24日 | 日刊ゲンダイ連載「倉本聰 ドラマへの遺言」


倉本聰 ドラマへの遺言 
第10回

「知的財産奪取は
訴訟を起こしてもおかしくない犯罪だ」


昭和40年代以前のドラマの映像が残っていない

碓井 「やすらぎの郷」の中で、よくぞ言ってくださったと思ったことのひとつは、「かつてのドラマの映像が残っていない」という事実でした。倉本先生にしては珍しく、「昭和48、49年より以前の映像は全部ないんです!」とセリフにビックリマークが付いている(笑い)。相当な怒りがあったってことですね。

倉本 それはもう僕らの知的財産を奪ったわけですから。僕は一昨年の16年、終活っていうのをやったんですね。不動産やら遺産やらわずかながらあるわけですが、その中でも最も大きな割合を占めているものは、知的財産権といっても過言ではありません。作品を創作した著者に帰属する著作権をはじめ、作品の再放送、付随する出版物に対する印税など、創作者の矜持として認められるべきものが、驚くことに、昭和48年以前の作品は映像が一切消えてしまっているわけです。

碓井 TBS出身の実相寺昭雄監督も生前、「放送局側に管理保存の意識がなく、その手間や費用を惜しんだんだよ」と憤慨していました。著作権者に断りもなく、作品を処分していたんですから乱暴な話です。

倉本 これはもう誰か訴訟を起こしてもおかしくない犯罪だと思っています。誰も起こしませんけどね。

碓井 もちろん視聴者も見ることができないわけで、大損害です。また、それと同じくらい先生の憤りを感じたのが、シナリオについての指摘。第63回で、「今のホン屋(脚本家)は人を書くことより筋を書くことが大事だと勘違いしている。視聴者は筋より人間を描くことを求めているんだけどな」と、菊村(石坂浩二)に言わせています。これは実感ですか。

倉本 実感ですね。筋と呼ばれる、いわば、おおまかな展開から描いてしまうと、人のことを考えていないから、化学反応が期待できない。

碓井 登場人物たちによる化学反応ですか。

倉本 AとBが出会った瞬間からしか考えないで、とりあえず、都合よく出会わせてしまえっていうね。役者でたとえるなら……最近の役者の名前知らねえからな。ええっと、昔の役者でいえば、ショーケン(萩原健一)と桃井かおりが出会うのと、草刈正雄と大原麗子が出会うのでは、役者同士だけ見ても違うと思うんですね。そこにおのおののキャラクターを考え、ぶつけ合った時にどんな出会いになるのか、化学反応が起きるのか。そこを考えるのがドラマ作りの中で一番面白い。まさにドラマ作りの醍醐味でもあるって僕は思っているんですけれど。そういう脚本家、今はどれだけいるんでしょうか。(つづく)

(聞き手・碓井広義)

▽くらもと・そう 1935年1月1日、東京都生まれ。東大文学部卒業後、ニッポン放送を経て脚本家。77年北海道富良野市に移住。84年「富良野塾」を開設し、2010年の閉塾まで若手俳優と脚本家を養成。21年間続いたドラマ「北の国から」ほか多数のドラマおよび舞台の脚本を手がける。

▽うすい・ひろよし 1955年、長野県生まれ。慶大法学部卒。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年間、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。現在、上智大学文学部新聞学科教授(メディア文化論)。笠智衆主演「波の盆」(83年)で倉本聰と出会い、35年にわたって師事している。



日刊ゲンダイ連載「倉本聰 ドラマへの遺言」 
https://www.nikkan-gendai.com/articles/columns/3212

「倉本聰 ドラマへの遺言」 第9回

2018年01月23日 | 日刊ゲンダイ連載「倉本聰 ドラマへの遺言」


倉本聰 ドラマへの遺言 
第9回

役者の仕事はインナーボイスを
どれだけさらけ出せるか

〈倉本脚本は一言一句変えてはならない〉という業界伝説は今も根強く残っている。だが、正しくは「俺が書いたホン(脚本)以上にしてくれるなら変えてくれ」だと倉本氏。それは脚本家としての矜持であり、役者や演出家への熱い挑発でもある。

倉本 シナリオライターにも2つの仕事があると話しましたが、テレビの演出家の仕事にも2つある。ひとつは役者に演技をつけて動かす、〈演技演出〉と呼ばれるものです。もうひとつが〈中継演出〉という仕事。

碓井 演技演出は芝居に関することで、中継演出というのは役者が演じている「場」を映像化するということでしょうか。テレビ草創期はドラマも全部生放送でしたから、まさにスタジオからの中継だったわけです。

倉本 演劇の知識もあまりない助監督たちが監督のカット割りにならって、役者の演技を合わせちゃう。これは嘘ですよね。

碓井 どういうことですか。

倉本 たとえば、この打席でイチローがメジャー通算3000本安打を打つからアップを撮ったり、カット割りを多用したり、揚げ句の果てにヒットの飛んでくる箇所にカメラを構えていて、球が飛んできた途端に音楽をかぶせたとするでしょう。すると、その途端に野球中継ってのは面白くなくなってしまいます。何が起こるか予測不能だから面白いわけですから。芝居も同じで、あくまで演技演出が先にあって、その次に事態が起こって、それを中継演出するのが本来のあるべき演出の仕事だと思うんですね。

碓井 ドラマの生命線は演技であり、芝居であると。それをどんな映像で、つまりどんなカット割りで見せるかということ以前に、しっかりと芝居を演出することが重要なんですね。ところが、演技をつけることに関して、演出家自身が素人だったりすることが多い。

倉本 僕も富良野塾というのをやって、26年間、役者を指導してきましたが、苦労の連続でした。スタニスラフスキー(ロシア・ソ連の俳優、演出家)から米国のメソッドをベースに教えたつもりなんですけれど。

碓井 スタニスラフスキーというのは、ロシア革命やレーニンの時代に、役者が役柄の内面や感情を追体験することを提唱した人ですよね。教育法が「スタニスラフスキー・システム」と呼ばれた。

倉本 例を挙げれば、役者がものをしゃべらないでいるときに何を考えているか、頭の中をどう見せるか。役者はインナーボイスをどれだけさらけ出して見せてくれるかっていうのが仕事なんですね。それができてこそ演技の幅が出てくる。それを演出してくれないんですよね、演出家も。正直いうと、それが90年代に入ってからの「もうドラマはいいかな」っていうのにつながってきて。舞台をやると直接自分が演出できるから、舞台に専念しようっていうふうに思いましたね。当時、それがテレビ離れの一番の理由ですね。(あすにつづく)

(聞き手・碓井広義)

▽くらもと・そう 1935年1月1日、東京都生まれ。東大文学部卒業後、ニッポン放送を経て脚本家。77年北海道富良野市に移住。84年「富良野塾」を開設し、2010年の閉塾まで若手俳優と脚本家を養成。21年間続いたドラマ「北の国から」ほか多数のドラマおよび舞台の脚本を手がける。

▽うすい・ひろよし 1955年、長野県生まれ。慶大法学部卒。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年間、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。現在、上智大学文学部新聞学科教授(メディア文化論)。笠智衆主演「波の盆」(83年)で倉本聰と出会い、35年にわたって師事している。