碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

書評した本: 松田 純 『安楽死・尊厳死の現在』

2019年02月28日 | 書評した本たち


「死」を自己決定するために見つめ直したい「生」

松田 純 
『安楽死・尊厳死の現在
  ~最終段階の医療と自己決定』

中公新書 929円

どうしたら「安らかな老後」を過ごせるか。それは切実な課題だが、健康と年金にだけ気を配ればいいとは思えない。その先にある死についても、目をそらさず考える必要があるのではないか。松田純『安楽死・尊厳死の現在 最終段階の医療と自己決定』が参考になるのは、イメージに過ぎなかった安楽死の実相が見えてくるからだ。

著者はまず先進国の事例を示していく。世界で初めて安楽死を合法化したオランダ。各州で広がりを見せるアメリカ。また法制化はせずに自殺介助を容認しているスイスなどだ。様々な議論も含め、そこに至る過程を明らかにしながら、対象の拡大や認知症をめぐる問題も指摘する。

そして日本では「安楽死」と区別して、生命維持装置を止めることを「尊厳死」としている。だが世界的には安楽死や自殺介助も尊厳死と呼ぶそうだ。現在、「尊厳死法案」が用意されているが、”死の医療化”ともいうべきその運用にはいくつもの難問が存在すると著者は言う。

自分の身体を処分する権利は自分にあるとする「自己決定権」。それを根拠とした安楽死の肯定もしくは正当化が現代安楽死論の基本だ。だが、そこには自発的ではない安楽死の強制という危うさも潜んでいる。

また自己決定の判断をするためには「自律」が鍵となる。つまり、ある種の「健康」が必要なのだ。本書を読みながら、死よりもむしろ生について考え始めている自分に気づく。

(週刊新潮 2019.02.07号)



安楽死・尊厳死の現在-最終段階の医療と自己決定 (中公新書)
松田 純
中央公論新社

『ドラマへの遺言』秘話 「大河降板」が「北の国から」を生んだ 

2019年02月27日 | テレビ・ラジオ・メディア


「大河ドラマ降板」が「北の国から」を生んだ 
倉本聰が明かした秘話

現在放送中のNHK大河ドラマ「いだてん」の脚本家は宮藤官九郎。一般に大河ドラマの脚本を担当することは一種の名誉、あるいはステイタスだと見なされている。

そんな大河ドラマの脚本を担当したにもかかわらず、途中降板した脚本家がいることを、年配のドラマ好きならばご存知だろう。

倉本聰(そう)。「前略おふくろ様」「北の国から」「やすらぎの郷」等々、テレビドラマ界に金字塔を打ち立ててきた巨人である。
倉本氏はまだ30代の時に大河ドラマ「勝海舟」の脚本を依頼される。母親は赤飯を炊いて喜んだ、という。それなのになぜ降板することになったのか。

新著『ドラマへの遺言』(碓井広義氏との共著)では、倉本氏を師と仰ぐ碓井氏を前に、その当時の秘話をたっぷり語っている。

以下、同書をもとに見てみよう。

「勝海舟」は1974年の大河ドラマ。主役の勝海舟には渡哲也、坂本龍馬に藤岡弘、、岡田以蔵には萩原健一、といったキャスティングだった。

倉本氏は、このドラマのために当初、脚本家の域を超えて貢献ぶりを見せていた。たとえば収録がはじまってまもなく、主演の渡哲也が病気のために降板するという緊急事態が発生したのだが、その際、代役のキャスティングのために奔走したのも倉本氏である。代役は松方弘樹。前年には「仁義なき戦い」も公開され、人気も高まっていた頃だ。

「でも最初、NHKは松方をキャスティングできなかったんです。当時は売出し中で、大阪のコマ(梅田コマ劇場)に出ていた。“俺、口説いてこようか”って聞いたら、“口説ける?”って言われて“分かんないけどやってみるよ”。それで東映の本社に乗り込んで、岡田茂さん(東映社長)に直談判したんです。かくかくしかじかで“非常に困ってるんです”って言ったら、本人次第だと。岡田さんが“今から大阪行けるかい?”って言うから“行けます”って。“じゃあ俺電話入れておくから本人を口説いてくれ”と。それで、すぐ新幹線に飛び乗って大阪へ」

面識はあったのかといえば――

「全くないけど、コマへ行ったら松方が待っててくれた。僕が入っていくと“岡田社長から聞きました”って。僕が岡田さんを知ったのは京都の撮影所長時代だけど、その頃はもう社長だったな。それで松方は“やらせていただきます”と即答。僕が新幹線に乗っている間に岡田さんがいろいろクリアしてくれて、松方の返事も早かった」

この時点では、大河ドラマを救った功労者だったのだ。このドラマで、松方は結婚相手も見つけることになる。

「渡と代わったばかりの松方と、こともあろうに仁科明子(現・亜季子)がくっついちゃった(笑い)。明子のおふくろさんがうちに来てね、“お恨み申し上げます。何で松方さんを使ったんですか”と迫る。そんな恨まれたって僕が別にあれしたわけじゃないんだけど、“先生のせいです”ってえらい恨まれて。マスコミに騒がれて明子は行方不明になっちゃうし。僕もあれには参った」

それにしても、ここまで貢献していたのになぜ降板することになったのか? この疑問に、倉本氏はこう答える。

「それを出過ぎだっていうふうに若いディレクターはとったんでしょうね。つまり、僕に何かを頼むのはプロデューサーたちでしょ。プロデューサーは管理職で、現場はみんな組合員なんですよね。組合員と外部の倉本聰、どっちを大事にするんだって、プロデューサーが詰め寄られちゃった。しかも当時は力のあった民青(日本民主青年同盟)が組合を牛耳ってたから、本当に大変でしたよ」

現場で不興を買ったのは、キャスティング問題だけではなかった。

倉本氏は、自分が書いたドラマのホン読み(台本の読み合わせ)に参加することで知られている。一般的にホン読みに脚本家は呼ばれないのだが、自ら参加してセリフの言い回しやトーン、緩急や間の取り方などを確認するのが、倉本氏の流儀だった。しかし、これが「演出の領域に踏み込む行為だ」とディレクターの反発を買ったのだ。

さらに、女性週刊誌に「大河脚本家がNHK批判」というインタビュー記事が掲載されたことで、対立は決定的なものに。記事を読んだスタッフから総攻撃を受けた倉本氏は、羽田から札幌に飛んでしまう。

「1974年の6月ですね。記事が載った週刊誌『ヤングレディ』が出た日だから、よく覚えています。札幌にいたのは結局3年かな。2年目くらいから本気で居場所を探して北海道中を歩き回った」

ただ、この段階では倉本氏は降板していない。北海道でも脚本を書き続けていたという。

「でもね、NHKがもう代役の作家を立ててるって話は聞きました」

さらに、札幌での不摂生が祟り、肺炎を患い、東京の病院に入院することになってしまう。

「札幌じゃ、ひとりで飲み歩いてたからなあ。結局NHKからは、病気降板という形で大河を降りたことにしましょうという話がありました。制作側と喧嘩したのが6月ですよね。でもそのあと9月くらいまでは書いてたんです」

従って、巷間伝えられていたように倉本氏が自ら降板したのではなく、正確にはNHK側の都合で降板させられた、というのが真相のようだ。さて、病気から快復した倉本氏は再び北海道に戻る。1977年には富良野に移住。

そしてあの「北の国から」が生まれるというわけだ。大河ドラマのトラブルが、結果的には歴史的名作を生むきっかけになったのである。

(デイリー新潮 2019年2月27日)



ドラマへの遺言 (新潮新書)
倉本聰、碓井広義
新潮社



ポストセブンで、GACKT「豪邸公開」番組について解説

2019年02月26日 | メディアでのコメント・論評


GACKTの豪邸企画 
TVで何度も“初公開”されるのはなぜか?

主演映画『翔んで埼玉』が2月22日に公開される音楽アーティストで俳優のGACKT(45)。彼が最近バラエティー番組に出演すると、必ずと言っていいほどあがる話題は、7年ほど前から移住しているマレーシア・クアラルンプールにある豪邸だ。今月だけでも、『しゃべくり007』(日本テレビ系)、『今夜くらべてみました』(日本テレビ系)、『ダウンタウンなう』(フジテレビ系)でGACKT邸が紹介された。なぜいくつもの番組がGACKTの豪邸を放送したがるのか。

GACKT邸は敷地面積1700平米で、25mプール5個分ほどの広さ。周囲は森に囲まれ、玄関を開けると目の前に広いプールが広がっている。そのプールを囲むように、壁のないオープンなリビングやバーなどが配置されている。開放感のある空間は、高級リゾートホテルのように豪華だ。

上智大学文学部教授(メディア文化論)の碓井広義さんはGACKT邸の印象についてこう語る。

「単に立派な家というだけではなく、バブル感があります。GACKTさんはビジュアル系のアーティストですが、まさにビジュアル系の豪邸でテレビ映えします」(碓井さん・以下同)


各局の番組は、全く同じ情報を流すわけではない。4日放送の『しゃべくり007』では室内の写真、15日放送の『ダウンタウンなう』では外観写真と過去の別のGACKT邸の写真、13日放送の『今夜くらべてみました』では室内にカメラが入り「GACKT豪邸の全貌テレビ初公開」と紹介していた。

しかしこのGACKT邸、すでに何度もメディアに登場している。2017年4月放送の『人生で大事なことは○○から学んだ』(テレビ朝日系)では“豪華自宅を初公開”とし、GACKT本人が自宅を紹介(豪邸の映像は外観のみ)。昨年のキリンビールのCMでもカメラ初潜入とうたわれた。ちなみに2015年7月放送の『ダウンタウンDX』(日本テレビ系)では、“テレビ初公開”として、こことは別の海外の豪邸でのGACKTの暮らしぶりに密着している。

「少しずつ内容を変えて“初公開”にしているのは、違った情報を盛り込みながら全く同じ内容にならなければいいという判断があるのでしょう。1度放送したものを“初公開”としてまで何度も取り上げるのは、視聴者から大きな反響があるからと考えられます」

◇GACKTのミステリアスなキャラクター性

高級品と安物を見分けるバラエティー番組『芸能人格付けチェック!』(テレビ朝日系)では個人58連勝を記録。CGのような美しさとセレブ感があり、肉体をキープするためにトレーニングは欠かさず、食事は1日1食とストイック。決してメディアへの露出が少ないわけではないのに、その私生活は謎に満ちている。

「クアラルンプール以外にも海外に複数の家を持っていると放送で言っていましたが、なぜそんなに資産があるのか、視聴者のみなさんも気になりますよね。音楽だけではなく、30才過ぎから貿易で収益を得ているそうですが、具体的に何をしているのかわからない。だからこそ、気になって見てしまうわけです。

それに、中途半端なタレントさんが豪邸を持つと自慢げになってしまいますが、GACKTさんは当たり前のようにさっそうと見せるのがいいのでしょうね。バカラのグラスが100個あるよ、カスタマイズの高価なスポーツカーもあるよ、とサラリと」


番組では邸宅中央のプールに友人を落として喜んでいるやんちゃな姿も公開された。

「おちゃめで飾らないキャラを見せるのもセルフプロデュースの1つでしょう。全てパーフェクトだと視聴者と距離ができちゃうじゃないですか。ときどきおバカなことを言って、あえて隙を作っているのだと思いますよ」

◇自宅を公開する芸能人の減少

数年前に比べると、芸能人の自宅を紹介する番組が減ってきているようだ。

「SNSの普及によって、一億総ジャーナリストのような時代になっています。知らないうちに撮影されてネットにアップされ、私生活が明るみに出る時代ですよね。外観を公開すると、場所を特定されるリスクが出てきた。GACKTさんの家は海外なので、見物に行きにくいのも、公開しやすい理由の1つでしょうね。

高級マンションが増えた影響もあるでしょう。一軒家なら自由に公開できますが、マンションでは他の住民に迷惑がかからないようにと露出を控えるかもしれません。

また、一部の起業家やスターだけでなく、今は会社員だって億単位で稼ぐ人が多くいます。人気YouTuberのヒカキンさんが最近引っ越し、ランボルギーニが余裕で買える引っ越し費用だと公開して話題になりました。YouTubeなどでも手軽に豪邸を見られるので、テレビ番組がそれを上回る豪邸を探すのは至難の業。ちょっとした豪邸では驚かれないので、GACKT邸はテレビとしてありがたい素材なのだと思います」


次に「GACKT豪邸、初公開」をやるのはどの番組か――。

(ポストセブン 2019.02.22)

かつての教え子たちが、「出版と誕生日を祝う会」を・・・

2019年02月25日 | 大学



慶應義塾大学SFC(湘南藤沢キャンパス)の教壇に立っていた頃の、碓井ゼミOB・OGたちが、私の「出版と少し早い誕生日を祝う会」を開いてくれました。

卒業からほぼ20年の一番忙しい年代。

当時のSFCで、まだ正式なゼミが始まる前の「非合法碓井ゼミ」から参加してくれたメンバーもいます。

今回集まった面々は現在、NHK、TBS、読売テレビ、テレビ西日本、電通、博報堂、NTTなどに在籍し、それぞれ組織の中核で仕事をしています。

わざわざ福岡や大阪から来てくれたメンバーもいるわけで、ありがたく、嬉しい会になりました。

会場は、浅草橋ベルモントホテル。参加OGの一人がホテルの経営陣です。

居心地のいいステーキハウスで、歓談しつつ、美味しいフルコースを楽しみました。

みんな、本当にありがとう!



















中川淳一郎さんが、「ドラマへの遺言」の書評を・・・

2019年02月25日 | 本・新聞・雑誌・活字



中川淳一郎さんが、日刊ゲンダイ「週末オススメ本ミシュラン」で、「ドラマへの遺言」を取り上げてくださいました。ありがとうございます。


「ドラマへの遺言」
師匠の言葉を残しておきたい弟子の迫力

「北の国から」「やすらぎの郷」などのドラマ脚本で知られる倉本聰氏に、「弟子」であるテレビ制作会社出身で現在は上智大学教授の碓井広義氏が話を聞き、戦後最大のメディアとなったテレビに関し、論を展開する。日刊ゲンダイの連載をまとめたものだ。

書かれる内容は、ドラマやテレビの歴史や裏話など非常に歴史的価値のあるものが多いのだが、私自身が本書で感じたのは「親分・子分」関係の尊さである。現在84歳の倉本氏は碓井氏に対し、非常に丁寧に接するし、敬意を持っているのがよく分かる。当然ご自身は碓井氏のことを「子分」だとは思っておらず、あくまでも「碓井さん」だ。だが、20歳年下の碓井氏は還暦を過ぎたものの、倉本氏の前では学生のごとき姿勢で何かを学ぼうと前のめりでインタビューをしている“書生”的感覚が本書を読むと伝わってくるのである。

本書は本当にテレビやドラマがいかにつくられてきたかや、役者との関係など芸能界のドロドロした話が克明に描かれているのに加え、倉本氏の怒りを含めた各種感情が描かれている良作である。

〈そういえば、『やすらぎの郷』の中で「昭和48、9年以前のテレビ作品は消却されて殆ど残っていないンです!」というセリフがあった。倉本にしては珍しくセリフにビックリマークが付いている。相当な怒りがあったことがうかがえるが、かつてのドラマの映像が残っていないという事実は重い〉

碓井氏のこうした解説を受け、倉本氏のコメントが出るのだが、この流れが心地よい。

〈これはもう誰か訴訟を起こしてもおかしくない犯罪だと思っています。誰も起こしませんけどね〉

このように、テレビやエンタメ業界に関し実のある話をしつつも、本書からひしひしと伝わってくるのは、「弟子」と「師匠」の美しくも羨ましい関係性である。新書というジャンルの書籍は、一つのテーマについて短時間でサッと読み、知識を深める本だとこれまでは理解していたのだが、不意打ちだった。

倉本氏は「終活」をしているという。つまり、残りの人生の長さもある程度考えているということだろうが、そこに弟子が斬り込んで「とにかく師匠であるあなたの言葉を私は残しておきたい」という迫力を感じるのである。

倉本氏は4月からテレビ朝日系で放送される「やすらぎの刻~道」の脚本を書き終えた。1年間にわたり全235話が放送されるが、本書を読んだうえで臨むとなお楽しめることだろう。 ★★★(選者・中川淳一郎)

(日刊ゲンダイ 2019.02.25)



ドラマへの遺言 (新潮新書)
倉本聰、碓井広義
新潮社


【気まぐれ写真館】 いつもの、千歳市「柳ばし」で・・・

2019年02月24日 | 気まぐれ写真館

桜マス&チーズささみのフライ定食




『家売るオンナの逆襲』  課題発見&「生き方」提案するヒロイン

2019年02月23日 | 「毎日新聞」連載中のテレビ評


<週刊テレビ評>
家売るオンナの逆襲 
課題見つけ「生き方」提案

決めゼリフ「私に売れない家はありません!」も変わっていない。一度は地方で小さな不動産屋を開いていたヒロイン、三軒家万智(北川景子)が夫となった屋代課長(仲村トオル)を従えて、古巣のテーコー不動産新宿営業所に帰って来た。まさに「家売るオンナの逆襲」(日本テレビ系)である。

今クールでも、「それが私の仕事ですから!」と難しい物件を売りまくっている万智。その驚異的な実績の秘密はどこにあるのか。たとえば、夫の定年退職を機に、住み替えを計画している熟年夫婦がいた。しかし、長年の専業主婦暮らしにうんざりし、離婚したいとさえ思っている妻(岡江久美子)が、どんな物件にも難癖をつけるため、なかなか決まらない。

万智は、この夫婦の自宅を訪問した際に、妻が発揮している生活の知恵と合理的精神に着目する。その上で、妻自身の「自活」に対する甘い認識を指摘し、夫に対する不満の解決策を提示。それによって夫婦は墓地に隣接する一軒家を購入し、今後も2人で暮らすことで一件落着する。

またトランスジェンダーの夫を持つキャリアウーマン(佐藤仁美)も登場した。彼女は夫の気持ちを頭で理解しながらも、感情的にはかなり複雑な思いをしている。万智は、娘を含む家族3人が互いに自分を押し殺すことなく住める家を探してきた。

そして1人暮らしの口うるさい女性客(泉ピン子)。万智は彼女が胸の内に隠していた「孤独死」への不安を察知する。しかも、それを解消すると同時に、彼女が愛用してきた閉鎖寸前のネットカフェを守り、それぞれに事情のある利用客たちも救ってしまった。

こうした万智の仕事ぶりを見ていると、単に家を売っているのではないことに気づく。顧客たちが、どんなことで悩んでいるのか。何に困っているのか。彼らが個々に抱えている問題を発見し、それを解決しているのだ。そのためには徹底的なリサーチを行う。時には探偵まがいの行動にも出る。相手を観察し、課題を見つけ、情報を集めて分析し、顧客に合った解決法を見つけるのだ。これを単独で行っている三軒家万智、やはり天才的不動産屋かもしれない。

しかも万智が見抜くのは顧客自身も気づいていない問題点や課題だ。家はその解決に寄与するツール(道具)に過ぎない。つまり万智は新しい家を提案するのではなく、家を通じて新たな「生き方」を提案しているのだ。このドラマの醍醐味(だいごみ)はヒロインによる問題発見・解決のプロセスにある。脚本は大石静のオリジナル。北川景子の代表作になりそうな勢いだ。

(毎日新聞 2019.02.23 東京夕刊)

HTB「イチオシ!モーニング」 2019.02.23

2019年02月23日 | テレビ・ラジオ・メディア
今日も、にぎやかな土曜日
























書評した本: 『フェイクニュースを科学する』ほか

2019年02月23日 | 書評した本たち



週刊新潮に、以下の書評を寄稿しました。


笹原和俊 
『フェイクニュースを科学する』

化学同人 1620円

フェイクニュースはなぜ生まれ、いかに拡散し、私たちの脅威となるのか。その仕組みを解明しようという試みだ。計算社会科学を専門とする著者は、情報の生産者と消費者の関係を「情報生態系」の中で考察。「見たいものだけ見る」時代の危うさが見えてくる。


小谷野敦 
『近松秋江伝~情痴と報国の人』

中央公論新社 3240円

この評伝から浮かんでくる人物像は、文学以外ほぼ社会的失格者だ。妻は愛想をつかして家出。おかげで出世作『別れたる妻に送る手紙』が書けた。また著者が「ストーカー」と呼ぶ、女性に対する執着ぶりも、『黒髪』などの作品を生む。実践=表現の作家だった。

(週刊新潮 2019年2月14日号)


なかにし礼
『がんに生きる』

小学館 1404円

著者は二度のがん闘病を経験した。切らない選択をし、珍しかった陽子線治療に挑んだ。しかし最も大きいのは、「善き人」から「正直な人間」へと意識が変わったこと。その上で、がんを理想的な病と捉え、自身を成長させようとしてきた。これは生き方の指南書だ


図書館さんぽ研究会
『図書館さんぽ』

駒草出版 1512円

週末に一日楽しめる場所として、図書館と学校と博物館を兼ねたような日比谷図書文化館、子どもたちと本をつなぎ、町の産業も支援する岩手県の紫波町図書館などを紹介する。また全国の注目すべき105館のリストも充実。図書館が目的の旅も悪くない。


小谷野敦
『とちおとめのババロア』

青土社 1512円

純次は38歳になる仏文学の准教授。ネットお見合いで知り合った相手は、なんと皇室の一員だった。ラブホテルの外でSPならぬ側衛が待機するデート。奇にして貴なる恋愛の一部始終を描いた表題作が秀逸だ。他に風俗遍歴を淡々と語る「五条楽園まで」など全5編。

(週刊新潮 2019年2月7日号)



フェイクニュースを科学する 拡散するデマ、陰謀論、プロパガンダのしくみ (DOJIN選書)
笹原和俊
化学同人


近松秋江伝-情痴と報国の人 (単行本)
小谷野敦
中央公論新社


がんに生きる
なかにし礼
小学館


図書館さんぽ -本のある空間で世界を広げる-
図書館さんぽ研究会
駒草出版


とちおとめのババロア
小谷野敦
青土社

HTB北海道テレビ「イチオシ!」 2019.02.22

2019年02月22日 | テレビ・ラジオ・メディア
ゲストはスケートの八木沼純子さん












【気まぐれ写真館】 今月も、札幌「まる山」の鴨せいろ

2019年02月22日 | 気まぐれ写真館

“隠れオタク女子”に勇気を与える、NHK「トクサツガガガ」

2019年02月22日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評


NHK「トクサツガガガ」は
全国の“隠れオタク女子”に勇気を与えた

仲村叶(なかむら・かの=小芝風花)は商社に勤めるOLで、筋金入りの「トクオタ(特撮オタク)」だ。ただし周囲から特別な目で見られることを恐れ、秘密にしている。「トクサツガガガ」(NHK)はそんな彼女の日常をコミカルに描いたドラマだ。

叶が偏愛しているのは戦隊モノの「獅風怒闘ジュウショウワン」。休日に寝そべったままポテチを口に入れ、録画しておいたこの番組を見るのが至福の時だ。当初は孤独だった叶だが、同じトクオタの吉田久美(倉科カナ)や、同僚で「ドルオタ(アイドルオタク)」の北代優子(木南晴夏)らの仲間もできた。

このドラマ、いわゆるオタクの心情を見事にすくい上げているのが痛快だ。好きなことに没頭するのは楽しい。でも他人から誤解されたり、学校や職場で浮いた存在になるのは面倒くさい。以前ほどではないにしろ、オタクならではの迷いを抱える人は少なくないのだ。

また小芝風花がコメディエンヌとしての才能をフル稼働させている。トクサツから元気をもらい、それゆえに悩み、そしてトクサツに救われてもいる叶は、全国の“隠れオタク女子”に勇気を与える存在かもしれない。

さらに、ドラマ内ドラマともいうべき「獅風怒闘ジュウショウワン」もよく出来ている。このまま放送してもいいくらいだ。エンドロールに並ぶ「特撮協力 東映」の文字が光っている。

(日刊ゲンダイ 2019年02月20日)

北海道から、中学生の取材陣が大学に・・・

2019年02月21日 | 大学
北海道教育大学附属函館中学校2年生の皆さん



メディアに関する論文を作成中だそうです。


東京は、あいにくの天気でしたが、中学生たちは元気でした。



追伸:

函館中学校取材陣と保護者の皆さまへ

22日(金)HTB「イチオシ!」
23日(土)HTB「イチオシ!モーニング」

生出演しますので、
どうぞよろしく
お願いいたします。

AMAZONのレビューで・・・

2019年02月21日 | 本・新聞・雑誌・活字




アマゾンに、
「ドラマへの遺言」のレビューが
アップされていました。

「いち読み手」さん、
どなたかは存じませんが、
しっかり読んでくださり、
きちんと感想を述べてくださったことに、
感謝いたします。


「いち読み手」さんのレビュー

5つ星のうち5.0

「対談集」なのに、どの逸話も、文句なしに面白い!


倉本聰氏のドラマを「リアルタイムで見たことがない」世代が、今となってはほとんどだろう。もしかしたら「なんか、えらい人らしいけど過去の人」と思われてさえいるかもしれない。そんな世代にでも、シルバー世代にでも、文句なしに面白いと思う。

この冊子は発売当日に購入した。脚本家倉本聰、という人物が一種の「どこでもドア」、博覧強記の人物であることがよくわかる一冊だった。いくつも登場する「とんでもない出来事」に対する氏の物事の捉え方が、実に柔軟でユーモラスで、大変失礼ながら、見直した。聞き手の大学教授も、自身がTVプロデューサーであったことから、知識も、聞く力もあることから、対談集なのに面白い(笑)。

この冊子の基になる日刊ゲンダイでの長期連載は、破天荒な内容で抜群に楽しく、周囲のメディア関係者は、ほぼ読んでいた、というか気にして話題にしていた。当然本になるだろうと、期待していたが(ハードカバーではなく)手軽な新書として登場させたのも、新潮社、粋だ。

2019年2月17日



ドラマへの遺言 (新潮新書)
倉本聰、碓井広義
新潮社


言葉の備忘録 76  「もっと、もっと」・・・

2019年02月20日 | 言葉の備忘録



「もっと、もっと」
という気持ちを
なくすのです。

 

樹木希林 『一切なりゆき』

 

一切なりゆき 樹木希林のことば (文春新書)
樹木希林
文藝春秋