碓井広義ブログ

<上智大学教授のメディア時評> 見たり、読んだり、書いたり、話したり、時々考えてみたり・・・

テレ朝ドラマの“大関クラス”に成長した「遺留捜査」

2018年09月21日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評


上川隆也「遺留捜査」は
テレ朝ドラマの“大関クラス”に成長

13日、「遺留捜査」(テレビ朝日系)が終了した。主人公の糸村(上川隆也)が、東京から京都府警特別捜査対策室へと異動したのは昨年の第4シリーズでのことだ。

今期、佐倉(戸田恵子)は室長代理に出世していたが、同僚の神崎(栗山千明)との珍コンビや、科学捜査係官・村木(甲本雅裕)との笑えるやりとりは変わらない。

この「変わらない」ことがシリーズものでは大切で、その最たるものが糸村の観察眼と遺留品に対する並外れたこだわりだ。

たとえば第8話では、古びた空き缶1個が突破口になった。30年前の事件に関係した男の死体発見現場にあったものだ。糸村は、男が病気の息子のために、空き缶にアルミホイルを巻いてロウ管式録音機を作っていたことをつきとめる。

また最終回では、ガス管に使われる黄色い円筒だった。殺人を犯した姉(観月ありさ)の罪をかぶった弟(三浦涼介)が、姪(山口まゆ)の誕生日に手作りの万華鏡を贈ろうとしていたのだ。簡易録音機にも万華鏡にも作った人が抱える事情や込められた思いがあり、糸村がそれをすくい上げていく。このドラマが支持されるのは、遺留品を通じて人間の情や絆を丁寧に描いているからだ。

同じく定番の「相棒」や「ドクターX」などがテレ朝ドラマシリーズの横綱なら、「遺留捜査」も堂々の大関クラスに成長したと言っていい。

(日刊ゲンダイ 2018年09月19日)



「透明なゆりかご」 で、難役に挑む清原果那

2018年09月13日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評


NHKドラマ10「透明なゆりかご」
難役に挑む清原果那に注目

NHKドラマ10「透明なゆりかご」の舞台は、由比(瀬戸康史)が院長の産婦人科。そこに看護師見習いとして来たのがアオイ(清原果耶)だ。

産婦人科といえば、最近だと綾野剛主演の「コウノドリ」(TBS系)がある。こちらは「チーム医療」がウリだが、個人病院では無理だ。その代わり、由比は個々の妊婦に可能な限りコミットしていく。いや、そのためにこそ独立したのだ。

妊婦たちはそれぞれの事情を抱えている。受診歴のないまま来院し、出産後に失踪する人。自らの持病のために出産を断念しようとする人。中には出産後の血圧低下で命を落とす妊婦もいる。

このドラマは死産や中絶といった重いテーマも果敢に取り込んでおり、14歳の中学生が妊娠し、出産するという回もあった。その判断に至るまでの本人と家族をきちんと描き、さらに出産から9年後の母子も見せていた。

好感がもてるのは、どのエピソードでも、わかりやすい結論を下していないことだ。理想や倫理だけでは白黒つけられない、グレーの部分で悩んだり、傷ついたりする妊婦や家族を見つめていくのがアオイである。

16歳の清原はドラマ初主演ながら、アオイが憑依したかのような熱演を続けている。自身もADHD(注意欠陥・多動性障害)と診断された過去をもつヒロイン。そんな難役に挑戦する清原の姿だけでも見て損はない。

(日刊ゲンダイ 2018年9月12日)

フジ月9「絶対零度」 失踪した上戸彩の謎は?

2018年09月06日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評


フジ月9「絶対零度」
失踪した上戸彩の謎は解明されるのか

刑事ドラマの月9「絶対零度~未然犯罪潜入捜査」は、そのユニークな設定が光っている。

個人情報から監視カメラの映像までを集めたビッグデータを解析。過去の犯罪データと照合することで、殺人など重大犯罪に走る可能性の高い人物を割り出していく。ただし警視庁内の極秘プロジェクトであり、「ミハン(未然犯罪捜査チーム)」は総務部資料課を隠れみのに活動中だ。

リーダーは元公安の井沢範人(沢村一樹)。若手の山内徹(横山裕)、小田切唯(本田翼)などと共に、ミハンシステムがリストアップする危険人物をマークしていく。

先週は、大学病院で亡くなった恋人の復讐を遂げようと、顔を整形して別人になりすます女性を、乃木坂46の白石麻衣が演じて話題になった。ターゲットである大学理事長の息子との結婚式当日、「最愛の息子」を殺害する計画だったが、井沢たちの活躍で未然に防ぐことができた。

このドラマでは、毎回の未然犯罪捜査もさることながら、底流にある謎も大きなテーマとなっている。それがシリーズの前作・前々作の主人公だった、特殊班捜査員・桜木泉(上戸彩)の消息だ。

かつては山内とコンビで捜査に当たっていたが、突如失踪してしまった。一体、桜木に何があったのか。その生死も含め、彼女の現在がどこまで明かされるのか。最終回に向けて注目だ。

(日刊ゲンダイ 2018年9月5日)

ドラマ「恋のツキ」徳永えりの女優魂

2018年08月30日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評


テレ東「恋のツキ」
濡れ場も躊躇しない徳永えりの女優魂

深夜ドラマ「恋のツキ」の主演は徳永えりだ。とはいえ名前を聞いて、すぐに顔が浮かぶ人ばかりじゃないと思う。

たとえば朝ドラ「わろてんか」。ヒロイン・てんの世話をする女中さんで、後に「北村笑店」の番頭・風太(濱田岳)の妻になったトキを演じていた。かなりの演技派だが、ふだんは脇役が多い。

このドラマの主人公・平ワコ(徳永)は、30歳を越えたばかりのごくフツーの女性。映画館でアルバイトをしながら、同い年の彼氏・ふうくん(渡辺大知)と3年越しの同棲中だ。ワコは結婚を意識しているが、ふうくんは煮え切らない。

近々両親のところに2人で行こうというタイミングで、ワコの前に伊古ユメアキという別の男性が現れる。しかも彼は16歳年下の高校1年生だ。ワコは彼氏のことを隠すが、ふうくんにユメアキのことがバレると同時にユメアキもふうくんの存在を知ってしまう。さあ、どうする、どうなる?

原作は新田章が現在も連載中の同名漫画。ずっとツイてない自分が選ぶべき恋はどれなのか。1人になることを恐れて揺れる“適齢期オンナ”の心情は、ドラマでもきめ細かく描かれていく。

特筆すべきは徳永の体当たり演技だろう。いや正確に言うなら、体当たり的な濡れ場も躊躇せず、自然かつ濃厚かつリアルに演じてみせる女優魂だ。この夏、見逃すには惜しい一本となっている。

(日刊ゲンダイ2018.08.29)

NHK「満願」 安田顕の「鬱屈を抱えた警官」が絶品

2018年08月23日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評



NHKミステリースペシャル「満願」
映画3本分の見応えに匹敵

一年の中で、お盆ほど「死者」が身近になる時季はない。今月14日から3夜連続放送の「満願」(NHK)は、まさに好企画だった。原作は米澤穂信の同名短編集だ。

「万灯」の主人公は商社マンの伊丹(西島秀俊)。東南アジアでの天然ガス開発が頓挫していた。打開策は村を牛耳る人物の殺害。西島が、仕事のためなら何でもする男を淡々と演じたことで事態の怖さが倍化した。

また交番勤務の警察官・柳岡(安田顕=写真)が、部下である川藤(馬場徹)の“名誉の殉職”に疑問を抱くのが「夜警」だ。刃傷沙汰の夫婦ゲンカを止めようとした現場で突然、川藤が夫に発砲。しかも川藤は首を切りつけられて絶命する。この作品で安田が見せた、暗い表情の「鬱屈を抱えた警官」は絶品で、3作中で最も強い印象を残した。

最後の「満願」は弁護士の藤井(高良健吾)が手がける殺人事件を軸に、過去と現在が交差する物語だ。被告の妙子(市川実日子)は、藤井が学生時代に下宿していた畳屋の女房。夫がつくった借金を取り立てにきた、金貸しの男を刺殺したのだ。一本気な藤井と奥底の見えない妙子。2人の絶妙な距離感がドラマに陰影を与えていた。

制作はNHKと日テレアックスオン。萩生田宏治(第1夜)、榊英雄(第2夜)、熊切和嘉(最終夜)といった監督たちが力量を発揮し、映画3本分の見応えがあった。

(日刊ゲンダイ 2018年08月22日)

ドラマ「この世界の片隅に」が描く日常

2018年08月16日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評


平和であればこそ…
ドラマ「この世界の片隅に」が描く日常

ドラマ「この世界の片隅に」(TBS系)の背景は、戦前から敗戦にかけての「戦争の時代」だ。主人公は広島市の郊外で生まれ育った、すず(松本穂香)。普通以上にぼんやりしているが、誰に対しても優しい娘だ。

昭和19年、すずは呉の海軍に勤める公務員、北條周作(松坂桃李)と結婚した。それからは、早朝に坂を下って井戸の水をくんでくることから始まり、三度の炊事、洗濯、掃除、縫い物、さらに足の悪い義母(伊藤蘭)の世話と、一日中休む間もなく働いている。

家事の分担や、夫のサポートといった発想のない時代だ。現代から見たら過重労働と思えるかもしれないが、当時の嫁としては当たり前だった。すずもまた、自分が周作や北條の家に必要とされていることを素直に喜んでいる。それがすずの「日常」だったからだ。

しかし、戦争の進行とともに、そんなささやかな日常も変わってゆく。食糧や日常品が厳しく統制される。兄やその友達が兵隊として召集される。ましてや町の風景をスケッチしていただけで憲兵に引っ張られるなど普通の世の中ではない。

つまり、ごく当たり前の日常が、当たり前に存在すること自体、平和であればこそなのだと再認識させてくれるのが、このドラマなのだ。中には退屈と感じる視聴者がいるかもしれない。それでも、この夏、見るべき一本であることは確かだ。

(日刊ゲンダイ 2018年08月15日)


綾野剛版「ハゲタカ」  碇ゲンドウ似の鷲津政彦に好印象

2018年08月10日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評



綾野剛版「ハゲタカ」
碇ゲンドウ似の鷲津政彦に好印象

木曜ドラマ「ハゲタカ」の原作は、2004年に出版された真山仁の同名小説だ。舞台はバブル崩壊後の日本。「ハゲタカファンド」と呼ばれた外資系投資ファンドを率いる鷲津政彦を軸に、銀行や企業など当時の経済状況や世相も取り込んだ物語だった。

07年にNHKがドラマ化し、09年には映画にもなっている。その両方で主人公を演じたのが大森南朋だ。その印象は強く、今回の綾野剛も比較されることが多い。しかし結論から言えば、綾野の鷲津も悪くないどころか、かなりいい。綾野自身が過去の映像作品にとらわれず、自分なりの鷲津像をつくり上げているからだ。

エリートビジネスマン風だった大森版鷲津に対し、インテリヤクザ風の綾野版鷲津。寡黙で伏し目がち、何を考えているのかわからないところが魅力だった大森版に比べ、綾野版は喜怒哀楽を明確に表現する。そこから「あなたはまだ生きている!」などの決めゼリフも生まれてくるわけだ。

また鷲津が何かを考える際、机に両肘をつけ、顔の前で手を組む決めポーズがある。これがアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」の特務機関NERV(ネルフ)総司令であり、主人公・碇シンジの実父でもある、碇ゲンドウにそっくり。和泉聖治監督の遊び心かもしれないがうれしくなった。鷲津と、「使徒」ならぬ「腐った企業」の戦いが本格化するのもこれからだ。

(日刊ゲンダイ 2018年08月08日)


「義母と娘のブルース」 笑わない綾瀬はるかがクセになる

2018年08月02日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評


「義母と娘のブルース」
笑わない綾瀬はるかがクセになる

約10年前、業界トップの金属会社で、やり手の部長だった岩木亜希子(綾瀬はるか)。彼女が突然、ライバル社の宮本良一(竹野内豊)と結婚する。しかも夫には8歳の娘・みゆき(横溝菜帆)がいた。このドラマは成長したみゆき(上白石萌歌、現在はナレーション)が語る、「義母」と家族をめぐる物語だ。

最大の見どころは、やはり亜希子のキャラクターだろう。「キャリアウーマン」なる言葉自体がすでに懐かしいが、亜希子には「バリバリのキャリアウーマン」という当時の表現がよく似合う。何しろ初めてみゆきに会った時も名刺を差し出した人だ。家庭も含め、何でも会社や仕事に見立ててしまう。結婚後も、ここぞという勝負では紺のスーツと銀色のアタッシェケースで出撃だ。

先週のお話は、運動会の運営を通じてPTAのあり方を問うというもの。君臨する会長の矢野(奥貫薫)に向かって、自分ひとりで運動会を成立させると宣言し孤軍奮闘する。途中から保護者だけでなく子供たちも協力して、運動会は無事に終わった。

長いものには巻かれ、強いヤツには逆らわない親の背中を、「大事な一人娘に見せたくない」と亜希子。同時に、キャリアウーマンを目指しながら果たせなかった矢野を、そのトラウマから救う。このあたり、森下佳子の脚本の冴えだ。また、「笑わない綾瀬はるか」も結構クセになってきた。

(日刊ゲンダイ 2018.07.31)


ドラマ「高嶺の花」の今後 野島伸司の“仕掛け”に期待

2018年07月26日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評



日本テレビ系「高嶺の花」
脚本家・野島伸司は何をどこまで
描こうとしているのか

「また変わったことを始めたなあ」というのが第一印象だ。石原さとみ主演「高嶺の花」(日本テレビ系)である。

主人公の月島もも(石原)は華道家元の長女。実力と美貌の持ち主だが、婚約者の二股が判明し、結婚式当日にご破算となる。大きなショックを受けたももが出会ったのは、いわゆる3髙でもイケメンでもない、小さな自転車店の店主・風間直人(峯田和伸)。果たして高嶺の花は地上の花となるのか、という展開だ。

ももは直人やその仲間たちに、自分はキャバ嬢だと嘘をついている。石原のハイテンションなキャバ嬢ぶりは、凜とした次期家元の姿との対比も鮮やかで、その演技は自在な振れ幅を見せている。

このドラマでは、ももの今後が気になるのはもちろんだが、予想以上に直人という人間が興味深い。性格は温和で優しい。誰にでも親切。20年も介護してきた母親(十朱幸代)をみとったばかりだ。

しかし、直人は単なる「いい人」なのか。何しろ脚本が野島伸司である。直人の「無垢なる魂」をてこにして、人間の本性を暴くような仕掛けが待っているのではないかと期待してしまう。

さらに「家元」という背景の設定にも不穏なものを感じる。家元制は天皇制に通じているからだ。まさに高嶺の花の方々の結婚問題がワイドショーをにぎわせる昨今、野島は何をどこまで描こうとしているのだろう。

(日刊ゲンダイ「TV見るべきものは!!」 2018年7月25日)

TBS「チア☆ダン」は次代ヒロイン候補の“オーディション”

2018年07月19日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評


TBS「チア☆ダン」は
次代ヒロイン候補の“オーディション”

夏ドラマが始まった。刑事物や医療物はもちろん、さまざまなジャンルが並ぶ中、直球の青春ドラマといえるのが「チア☆ダン」(TBS系)だ。

昨年、同じタイトルで広瀬すず主演の映画が公開された。ドラマはその9年後という設定だ。ヒロインの藤谷わかば(土屋太鳳=写真)は、チアダンスで全米制覇の福井中央高校ではなく、福井西高校のチアリーダー部に所属している。だが、運動部を応援するだけの日々は面白くない。そこに転校生・桐生汐里(石井杏奈)が現れ、チアダンス部をつくろうと動き出す。

ゼロからチームをつくり、練習を積んで、やがては選手権大会に挑戦していく。オリジナルストーリーとはいえ大筋は予想がつく。見どころとなるのはチアダンス部メンバーの成長だろう。しかもそれはダンスだけでなく、女優としての成長という二重の意味を持っている。

初回で目についただけでも、映画「ソロモンの偽証」でブルーリボン賞新人賞の石井杏奈。朝ドラ「ひよっこ」でブレークした佐久間由衣。映画「桜ノ雨」で主演の山本舞香。アイスクリームのCMで注目の箭内夢菜。さらにチアダンス部ではないが、ポカリスエットのCMで踊っていた美少女、八木莉可子もいる。

次代のヒロイン候補たちにとって、このドラマはまるでリアルなオーディションだ。猛暑の中、思いきり競い合う彼女たちに声援を送りたい。

(日刊ゲンダイ「TV見るべきものは!!」 2018.07.18)


「部長 風花凜子の恋」 りょうが演じる“強さと弱さのバランス”

2018年07月12日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評


「部長 風花凜子の恋」
りょうが演じる“強さと弱さのバランス”

弘兼憲史の漫画「課長島耕作」の連載が始まったのは35年前。課長だった島も今やテコット(旧初芝電器)の会長だ。

35周年企画「部長 風花凜子の恋」(読売テレビ制作、日本テレビ系)は、特別編と完結編の2週連続放送。いわゆるスピンオフ作品で、主人公は国際本部北米部部長の風花凜子(りょう)。有力な役員候補の1人だ。

また凜子にはジャズ喫茶を経営する高澤(平山浩行)というパートナーがいる。そして彼女自身もプロのサックス奏者なのだ。そんなヒロインを、りょうは緩急のアクセントをつけながら1人の女性として魅力的に見せていく。特に強さと弱さのバランスがいい。

物語には2つの要素がある。1つ目は凜子がリーダーを務めるスマートビルの開発プロジェクト。つまり「仕事ドラマ」だ。先週の特別編では若手社員・吉田(竜星涼、好演)に対するパワハラや、社内の権力闘争にからむ情報流出問題などが発生。凜子は「同じ負けるなら最後まであがいたほうがいい」と粘り続けていた。

2番目は「恋愛ドラマ」の側面だ。ジャズという共通項も含め、良好だった凜子と高澤の関係が、高澤にがんが見つかったことでどう変化していくのか。加えて、部下の吉田が抱える凜子への思いも表面化するかもしれない。仕事とプライベートを五分五分で大切にする凜子だが、こちらも今週の完結編の行方に注目だ。

(日刊ゲンダイ 2018.07.11)

大人が楽しめるホームドラマ「バカボンのパパよりバカなパパ」

2018年07月05日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評


NHK土曜ドラマ
「バカボンのパパよりバカなパパ」
大人が楽しめるホームドラマ

漫画「おそ松くん」「もーれつア太郎」「天才バカボン」などで知られる赤塚不二夫。没後10年というタイミングでの放送が、土曜ドラマ「バカボンのパパよりバカなパパ」(全5回)である。

原作は赤塚の一人娘、赤塚りえ子が8年前に出版した同名エッセーだ。先週の第1話では売れっ子・赤塚不二夫(玉山鉄二)のもーれつな仕事ぶりと遊びっぷり、最初の妻・登茂子(長谷川京子)との結婚と離婚、そして2番目の妻・眞知子(比嘉愛未)との出会いと再婚などが描かれていた。

赤塚は離婚した後も先妻とは友だちのような関係で、なんと再婚の記者会見には新妻だけでなく、登茂子と娘・りえ子(森川葵)も同席。その後も登茂子やその再婚相手と家族ぐるみの付き合いが続いていく。

だが、いかなる天才も娘にとっては父親である。大好きなパパなのに、家庭という枠に収まり切らない困ったパパを見つめる、りえ子の心境は複雑だ。そのあたり、森川は繊細な演技できっちりと表現していてうまい。

朝ドラ「マッサン」の玉山鉄二と「どんど晴れ」の比嘉愛未もNHKの水が合うのか、他で見るより生き生きとしている。

脚本は大河ドラマ「花燃ゆ」などの小松江里子。希代のギャグ漫画家の評伝ドラマとして、また家族の既成概念を超えた「家族」を追ったホームドラマとして、大人が楽しめる一本になっている。

(日刊ゲンダイ 2018.07.04)

テレビ東京「宮本から君へ」池松壮亮に拍手

2018年06月27日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評


テレビ東京「宮本から君へ」
バリカンで髪の毛を刈り込んだ
池松壮亮の役者根性に拍手

懐かしいタイトルだ。テレビ東京系で放送中のドラマ25「宮本から君へ」。新井英樹の原作漫画が「モーニング」に連載されていたのは1990年代前半。まだバブルの余韻も残る時期に、汗くさくて泥くさくて暑苦しい新人営業マンの物語がヘンに新鮮だった。

主人公は文具メーカー「マルキタ」営業部の宮本浩(池松壮亮)。仕事も恋愛も不器用で、力が入りっぱなしの空回りばかりだ。仕事では結果が出ないし、受付嬢の美沙子(華村あすか)や先輩・神保(松山ケンイチ)の仕事仲間である靖子(蒼井優)との恋愛も一筋縄ではいかない。

しかしドラマの後半戦に入って、宮本は俄然仕事に燃え始めた。ライバル会社の益戸(浅香航大)や仲卸会社の島貫部長(酒井敏也)といった立ちはだかる壁の存在が効いて、一気に「仕事ドラマ」としてヒートアップしてきたのだ。

先週は原作でも話題となった名場面「怒涛の土下座」が満を持して登場した。必要な見積りを書いてくれない島貫に対し、街中で土下座する宮本。歩み去ろうとする島貫の前に回り込み、土下座を繰り返す姿は、はなはだみっともなくて、とてつもなくカッコいい。

アスファルトの路面にこすりつける宮本の頭は、仕事上の失敗を反省した丸坊主だ。原作通りとはいえ、電気バリカンで自分の髪の毛を刈り込んだ池松の役者根性に拍手である。その熱量を今週の最終回まで見届けたい。

(日刊ゲンダイ 2018.06.26)

WOWOW連ドラ「不発弾」は、大人に嬉しい社会派サスペンス

2018年06月22日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評


WOWOW連ドラ「不発弾」
凛として光る黒木メイサのまなざし

WOWOWの「不発弾~ブラックマネーを操る男~」は、大人に嬉しい社会派サスペンスである。

大手電機メーカー「三田電機」が、7年間で1500億円の「不適切会計」を発表する。ただし、あくまでも不適切な会計であり、「不正経理」でも「粉飾決算」でもないというスタンスだ。

これに疑いを持った警視庁捜査二課管理官・小堀弓子(黒木メイサ)は捜査を開始する。浮かんできたのが金融コンサルタントの古賀遼(椎名桔平)の存在だ。椎名は、一見クールだが重いものを背負って屈折した男を丁寧に造形している。

物語は主人公である古賀の過去と現在を交互に描きながら進む。九州の炭鉱町の貧しい家庭で育った若者が、東京でいかにして生き抜いてきたのかが見ものだ。また80年代から始まるいわゆるバブル期の金融界と、その裏側でうごめく人間たちの生態も興味深い。

原作は相場英雄の同名小説。読めば三田電機のモデルが「東芝」であることは明白で、発表当時も話題となった。ドラマ化に際しての大きな変更は、キャリア警視の小堀秀明を女性の弓子にしたことだ。黒木は凛とした佇まいと挑むような目で弓子になり切っている。

さらに若き日の古賀を演じる三浦貴大と妹役の入山杏奈(AKB48)にも注目だ。特に入山は、美少女から大人の女優へと転進する勝負所になるかもしれない。

(日刊ゲンダイ 2018年06月21日)

日テレ「正義のセ」 吉高由里子を支える安田顕の功績

2018年06月12日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評


日テレ「正義のセ」
吉高由里子を励ます安田顕の解毒作用

今期の連ドラが大詰めとなってきた。「正義のセ」(日本テレビ系)も今週が最終回だ。

主演は吉高由里子。近年は翻訳家(朝ドラ「花子とアン」)や脚本家(日テレ系「東京タラレバ娘」)などを演じてきたが今回は検事である。ヒロインの竹村凜々子は下町の豆腐屋で育った庶民派で、融通がきかない上に感情移入も激しい。

原作は阿川佐和子の同名小説だ。阿川の処女小説「ウメ子」は坪田譲治文学賞受賞作品だが、主人公のウメ子はいつも勇敢な行動で周囲を驚かす。そんな少女が正義感いっぱいの大人になったのが凜々子だと思えばいい。当初「検事に見えるか?」と心配した吉高も回を重ねるうちに凜々子をすっかり自分のものにした。

これまで様々な案件を扱ってきたが、先週は女子高生に対する痴漢事件だった。凜々子は被害者に取り押さえられた男(東幹久)を起訴するが、別に真犯人がいたことが判明。つまり冤罪だ。しかし粘りの捜査の結果、男は他の女子高生(AKB48の向井地美音)を狙ったことがわかる。

一度は検事を辞めようかと悩んだ凜々子を、「あなたはいつも被害者のために闘っています」と言って励ましたのは事務官の相原(安田顕)だ。このドラマでは安田の功績がとても大きい。時々パターンに見えてしまう吉高の表情や台詞回しを補う、解毒剤の役割を果たしているからだ。

(日刊ゲンダイ 2018.06.12)