碓井広義ブログ

<上智大学教授のメディア時評> 見たり、読んだり、書いたり、話したり、時々考えてみたり・・・

「僕キセ」は今期一番のハートフルドラマ

2018年12月13日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評


高橋一生らが好演
「僕キセ」は今期一番のハートフルドラマ

高橋一生主演「僕らは奇跡でできている」(フジテレビ系)が今夜、最終回を迎える。主人公の相河一輝(高橋)は、恩師(小林薫)に招かれた大学で動物行動学の専任講師を務めている。家では住み込みの家政婦(本当は生みの母だった)、山田妙子(戸田恵子)と2人暮らしだ。

そしてストーリーは……という具合に説明しようとすると困ってしまう。研究者の仕事ドラマではない。事件が起きるサスペンス物でもない。歯科医の水本育実(榮倉奈々)との交流はあるが、恋愛物とも違うのだ。

一輝は幼い頃から好きな動物や生き物には夢中になれるが、それ以外のことには興味を持てない。他者と折り合いをつけることも苦手だ。

それは大人になっても変わらず、礼儀正しいけれど、世間の価値観に合わせることは眼中にない。

少年の頃、周囲の期待に応えようとして苦しくなった時、祖父(田中泯)が「やりたいならやればいい。やらなきゃって思うならやめればいい」と言ってくれたことが救いになっている。そんな一輝に影響されて、育実も学生たちも、学習困難の少年と母親も少しずつ変化していく。

というわけで、これは“生きづらさ”を抱えながら生きている人たちへの、静かな応援歌みたいなドラマなのだ。高橋の好演と相まって、地味ながらも今期一番のハートフルドラマとなった。

(日刊ゲンダイ 2018.12.12)

福田演出をひたすら楽しむドラマ「今日から俺は!!」

2018年12月06日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評


賀来賢人「今日から俺は!!」は
福田演出をひたすら楽しむ

日曜夜10時30分の「今日から俺は!!」(日本テレビ系)の舞台は、80年代の千葉の私立高校。脚本・演出は「勇者ヨシヒコ」シリーズなどの福田雄一監督である。

主人公は転校を機に金髪のツッパリへとキャラ変した三橋(賀来賢人)だ。同じツッパリ転校生の伊藤(伊藤健太郎)やマドンナ的存在の理子(清野菜名)らと繰り広げる、おバカな高校生活……といったストーリーはどうでもよろしい。

随所で展開されるコントなのかギャグなのか、どーにもバカバカしく、なんともおかしい福田演出をひたすら楽しむドラマなのだ。

何しろ三橋たちのクラス担任がムロツヨシだ。三橋の父親は吉田鋼太郎。そして理子の父親が佐藤二朗である。彼らが登場するシーンだけで十分見る価値がある。

たとえば第6回の冒頭はソープランドの待合室だった。客のムロがわくわくしながら待っていると、そこに吉田が現れる。大慌てのムロは、さっきまで「俺のバズーカは暴発寸前だぜ!」とか騒いでいたくせに、生徒指導の見回りだと言い張る。

さらに店の黒服が山田孝之で、ムロが高校の先生であることをバラすのだ。そこからのムロと吉田と山田の掛け合いは爆笑と苦笑の連打だった。

毎回、何が飛び出すのかわからないビックリ箱仕様。1週間を笑って終わりたい人、日曜の夜に思い切り脱力したい人に断然おススメだ。

(日刊ゲンダイ 2018年12月05日)

「ハラスメントゲーム」は社会派エンタメの佳作

2018年11月30日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評


「ハラスメントゲーム」は
起伏に富んだ社会派エンタメの佳作だ

唐沢寿明主演「ハラスメントゲーム」(テレビ東京系)は、社会派エンタメの佳作と言っていい。主人公の秋津渉(唐沢)は、大手スーパー「マルオーホールディングス」のコンプライアンス室長だ。パワハラ疑惑で地方に左遷されて7年目、いきなり本社に呼び戻されて室長となった。

これまで、社内で発生した「パワハラ」「セクハラ」はもちろん、リストラにまつわる「リスハラ」や精神的な暴力にあたる「モラハラ(モラルハラスメント)」などの問題を解決してきた。しかも正攻法だけではない。時には危ない橋も渡るし、清濁併せのむことも辞さない。会社や組織の理不尽さも知り尽くしているし、単純な「正義の人」でもない。そんな秋津を、唐沢がアクセントの効いた演技できっちりと具現化している。

背景にあるのは丸尾社長(滝藤賢一)と脇田常務(高嶋政宏)の権力闘争だ。コンプラ室は社長直轄の部署であり、秋津は脇田のスキャンダルを探る密命を帯びている。また脇田は、出世のために上司だった秋津を左遷へと追い込んだ男だ。

この辺り、同名の原作小説も手がけた、井上由美子の脚本がうまい。パワハラやセクハラが一筋縄では対処できないことを踏まえ、毎回リアルで起伏に富んだストーリーを編んでいる。個々の事案をどう解決していくかと同時に、秋津と脇田の静かな戦いにも注目だ。

(日刊ゲンダイ 2018年11月28日)



小野莉奈&吉田羊が好演 「中学聖日記」支える“裏ヒロイン”

2018年11月22日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評



TBS系「中学聖日記」
ドラマを支える裏ヒロイン

有村架純主演「中学聖日記」(TBS系)が、ようやく落ち着いて見られる内容になってきた。物語が「3年後」へと移ったからだ。

何しろ、これまでは設定にやや無理があった上に、「禁断の恋」だ、「純愛」だと宣伝した分、「淫行か?」などと予想以上の反発をくらった。

結局、ヒロインの聖(有村)は中学校を辞め、生徒の晶(岡田健史)とも、また婚約者だった勝太郎(町田啓太)とも離れることになった。

そして3年後、聖は小学校の先生になっている。このあたり、なかなかしぶとい。

さっそく聖に思いを寄せる若手教師(渡辺大)がいたり、勝太郎が現れたりと大忙しの聖。だが、町で高校3年生になった晶を見て逃げ出してしまう。うーん、まだ気持ちがあるわけだ。

それにしても聖という女性は自分の意思があまりないのか、恋愛における“受け身体質”は相当なものだ。それがさまざまなトラブルの遠因となっている。まあ、そういうヒロインのドラマだと思うしかないのだが。

一方、ずっとブレていないのが、中学時代から晶を思い続けてきた、るな(小野莉奈、好演)だ。

ぼやけたキャラクターの聖と比べ、いじらしさが半端じゃなく、見ている側もせつなくなってくる。るなこそは、勝太郎の上司・原口(吉田羊)と共にこのドラマを下支えしている、大事な“裏ヒロイン”かもしれない。

(日刊ゲンダイ 2018.11.21)



ドラマ「大恋愛」 ムロツヨシの底力発揮はこれから

2018年11月14日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評


ドラマ「大恋愛」で好評
ムロツヨシの底力発揮はこれから

ドラマ「大恋愛」(TBS系)は、若年性アルツハイマーのヒロインと彼女を支える男の物語だ。下手をしたら陳腐なドラマになるはずだったが、違った。

決定づけたのは、長く筆を折っていた小説家、間宮真司(ムロツヨシ)の“受けとめ力”である。彼の作品の大ファンだった女医の北澤尚(戸田恵梨香)。その情熱を真司が受けとめた。また病気が発覚し、尚が身を引こうとした時も、真司は「病気だなんて屁でもなんでもない。(中略)俺は一緒にいたいんだ!」と丸ごと受けとめる。

それでも尚の元婚約者で、主治医でもある井原侑市(松岡昌宏)の存在や、尚を支え切ることができるのかという不安や迷いもあり、真司から別れを告げる事態に陥った。

しかし先週、2人の間の誤解が解消され、ついに尚はウエディングドレスに身を包んだ。いやはや、ベテラン脚本家・大石静の手練手管によって、陳腐なドラマどころか、タイトル通りの大恋愛に進化しつつある。

功労者はやはりムロツヨシで、「勇者ヨシヒコ」シリーズ(テレビ東京系)の魔法使いとは真逆の役柄でありながら、どこか不穏な雰囲気を残しているのだ。予測不能なムロに敏感に反応した戸田が、ふだん以上の演技を見せるという相乗効果も生まれている。

結婚はしたが病状は進む。ヒロインはもちろん主演女優をも受けとめる、ムロツヨシの底力が発揮されるのはこれからだ。

(日刊ゲンダイ 2108.11.14)

「黄昏流星群」中山美穂の“自分探し”は、ツッコミどころ満載

2018年11月08日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評


「黄昏流星群」中山美穂の“自分探し”は
ツッコミどころ満載

ずいぶん懐かしい素材を持ち出したものだ。フジテレビ系「黄昏流星群」である。弘兼憲史の原作漫画は20年以上前の作品だが、基本的な物語はあまり変わっていない。リストラされた元銀行マンが旅先(スイス!)で出会ったすてきな中年女性に恋をして、帰国後に偶然再会した2人が接近していくナイスなお話だ。

なんじゃ、それ! と言うなかれ。主人公の瀧沢完治は佐々木蔵之介。ひと目ぼれした相手、目黒栞が黒木瞳。そして完治の妻・真璃子には中山美穂を導入。リストラ世代の願望をかなえる「不倫ドラマ」というより、ほろ苦な「自分探しドラマ」として成立している。

特に佐々木の誠実な演技が見ものだ。組織から切り捨てられたことへの憤り。出向先で煙たがられ、孤立することの悲哀。妻には言えない思いを栞に語るうちに、これまでの自分を見直し始める。

また完治の出向先で「食堂のおばちゃん」として地道に働く栞も、母親の介護に費やしてきた人生から一歩踏み出したいと思い始めている。そんな2人が、これからどんな選択をしていくのかが、このドラマのキモだ。

一方、ちょっと困ったのが中山演じる真璃子。娘(石川恋)の婚約者(藤井流星)に心引かれる、一人の女性と化している。中山の見せ場をつくるために原作を変更した「妻の自分探し」だが、こちらはツッコミどころ満載の展開と言うしかない。

(日刊ゲンダイ 2018.11.07)



トリッキーな設定が真骨頂の「リーガルV」

2018年11月01日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評


米倉涼子「リーガルV」は
トリッキーな設定こそが真骨頂

ドクターXこと大門未知子先生が、副業で弁護士事務所を始めたのかと思った。米倉涼子主演「リーガルV~元弁護士・小鳥遊翔子~」(テレビ朝日系)だ。

まあ、毎回大きな目をさらに見開いての手術続きじゃ、天才外科医も疲れるのだろう。そこで制作側の提案。今度は医者ではなく弁護士の話です。ただし手術室、じゃなくて法廷に立つ必要なし。だってヒロインの小鳥遊翔子(米倉)は弁護士資格、ないんだもん!

しかし、このトリッキーな設定こそが「リーガルV」の真骨頂だ。

法律事務所の「管理人」として、所長の京極(高橋英樹)、ヤメ検の大鷹(勝村政信)、若手の青島(林遣都)などの弁護士や、現役ホストの茅野(三浦翔平)、元ストーカーの馬場(荒川良々)といったパラリーガルたちをコキ使って裁判に臨む。

そこには、“チーム小鳥遊”という集団の活躍を見せることで、スーパーヒーロー型の「ドクターX」や、バディー型の「相棒」との差別化を図る効果も織り込み済みだ。それでいて小鳥遊、大事な局面ではきっちり仕事をしている。

先週も裁判の行方を左右する重要証人、被告の恩師(岡本信人)の偽証を見事に覆した。夫の浮気に気がついていた妻(原日出子)の応援を得たのだ。

加えて小鳥遊の鉄道オタクという遊び心的キャラも、ドラマにユーモアと余裕をもたらしている。

(日刊ゲンダイ 2018.10.31)

「下町ロケット」の小さな不安

2018年10月25日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評


古舘やイモト起用の是非は…
「下町ロケット」に小さな不安

日曜劇場「下町ロケット」(TBS系)は3年ぶりの続編だ。ロケットに搭載するバルブから一転して、今度はトラクターのトランスミッションの開発だという。ヒットメーカー「チーム半沢」による“骨太なドラマ”が一番のウリだ。

また続編のメリットだが、佃航平(阿部寛)をはじめ、技術開発部長の山崎(安田顕)、エンジニアの立花(竹内涼真)、そして経理部長の殿村(立川談春)といった面々には、「久しぶり!」と声を掛けたくなるような親近感がある。それは帝国重工の財前(吉川晃司)や社長の藤間(杉良太郎)も同様だ。

一方、やや心配な点もある。まず、「宇宙から大地へ」というキャッチコピーはすてきだが、農機具であるトラクターはロケットと比べると明らかに地味だ。しかも、いきなり「特許侵害」をめぐる攻防戦に突入した。かつての技術開発合戦とその逆転劇が与えてくれた快感が得られるかどうか。さらに新たな登場人物のキャスティングだ。ダイダロスの代表取締役に古舘伊知郎。ギアゴーストのエンジニアにイモトアヤコ。ケーマシナリーの知財部長に内場勝則などが起用されている。

しかし、いずれもこのドラマの重要人物だ。話題性はもちろん、健闘しているのもわかるが、本当に彼らでよかったのか。物語も配役も、小さな不安を吹き飛ばすような今後の展開を期待している。

(日刊ゲンダイ 2018年10月24日)


「獣になれない私たち」の新垣結衣、役柄を自分のものに 

2018年10月20日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評



「獣になれない私たち」新垣結衣
初回から役柄を自分のものに

脚本は「逃げるは恥だが役に立つ」(TBS系)、「アンナチュラル」(同)の野木亜紀子。主演は「逃げ恥」の新垣結衣。注目の「獣になれない私たち」(日本テレビ系)が始まった。

ヒロインの深海晶(新垣)はECサイト制作会社の営業アシスタントだ。仕事がよく出来る分、ストレスも多い。社長はやり手だが、せっかちで強引。晶は同僚や後輩の尻ぬぐいに奔走している。私生活では会社員の花井京谷(田中圭)という4年越しの恋人がいる。優しい男ではあるが、本当は晶をどう思っているのか、読み切れない。

そんな肉体的にも精神的にも、ちょっと疲れ気味の晶がビアバーで出会うのが、会計士の根元恒星(松田龍平)だ。仕事にも女性にもシニカルな男で、付き合っていたはずのデザイナー、呉羽(菊地凜子)も別の男と結婚することに。晶に軽くアプローチするが、微妙な距離でかわされる。

仕事とも恋愛とも、しっかり向き合ってるはずなのに、どこか手詰まり状態に陥っている30歳独身女性。こういうキャラクターを書かせたら、やはり野木はうまい。

また新垣も初回から役柄を完全に自分のものにしている。「誰かに恋をして、すごくすごく好きになって……。新しい恋ができたら何か変わるのかな?」なんて言われたら、次回も見るしかないではないか。ビールの苦味を持ったラブコメだ。

(日刊ゲンダイ 2018.10.17)

森川葵&城田優「文学処女」 2人の恋はこれから!?

2018年10月11日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評



ドラマイズム「文学処女」 TBS系
不器用な2人の恋愛はこれからが佳境!

いかにも今どきだなあと思う。森川葵&城田優のダブル主演「文学処女」(毎日放送制作、TBS系)の原作は中野まや花の同名漫画(絵が美しい)。しかし、この作品は書店で売られていない。ネットだけで読める「LINEマンガ」として、初めてのドラマ化なのだ。

ヒロインの月白鹿子(森川)は文学少女のまま成長した26歳。初恋の相手も小説の主人公で、恋愛経験はまったくない。

出版社に入って数年後の鹿子は、待望の文芸編集部に異動し、そのハンサムぶりと女癖の悪さで知られる売れっ子作家、加賀屋朔(城田)の担当を命じられる。

鹿子は恋愛を知らない女だが、加賀屋もまた過去の出来事が原因で恋愛ができない男になっていた。徐々に互いのことが気になっていく2人が、もどかしくもいじらしい。

第4話まで放送されたが、高い演技力を持つ森川がこのドラマでも本領発揮だ。純粋に小説が好きで、「抱きしめたくなるような作品を作りたい」と必死の鹿子。ときに妄想が暴走し、「文学処女、なめんなよ!」とタンカを切ってしまう鹿子。シリアスとコメディー、両方の領域を森川は軽々と、楽しげに行き来している。

またイケメン作家の城田もいい。普段のドラマだと嫌みになったり、浮いたりするルックスが、陰影のある映像と相まって物語に生かされている。不器用な2人の恋愛は、これからが佳境だ。

(日刊ゲンダイ 2018.10.10)


テレ東「インベスターZ」のチャレンジ精神

2018年10月04日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評


得意技を応用
「インベスターZ」に
テレ東のチャレンジ精神

インベスターとは投資家のことだ。「インベスターZ」(テレビ東京系)は高校生が主人公の投資ドラマである。

舞台は札幌にある名門進学校、道塾学園。新入生の財前孝史(清水尋也)は秘密の「投資部」に勧誘される。校舎内の奥まった部屋で、藤田美雪(早見あかり)たち5人の部員が学園の資産を運用していた。投資の知識など皆無の財前だったが、仲間たちに助けられながら学んでいく。

先週最終回を迎えたが、直前の数回、財前が学園創始者の子孫に投資部の存続を懸けて挑んだ、投資3番勝負が熱かった。

1つ目の「5000万円不動産対決」は1日で物件を探して購入して評価を受ける。財前は名門小学校近くの中古マンションを選んで勝利した。

次の元手1億円の「FX対決」では負けたものの、東証1部上場企業を何社か選び、時価総額を100兆円に近づける「時価総額バトル」を制して投資部を守った。

このドラマは、投資の仕組みや一種の極意などを図解や解説などで視聴者にわかりやすく伝授してくれるところがキモだ。

原作は、「ドラゴン桜」で知られる三田紀房の同名漫画。「受験」の本質や対処法と同様、FXも含む「投資」に関する知識とスキルをエンタメ化した点が見事だ。何より、「経済」という自社の得意技を、深夜ドラマにも応用・投入するチャレンジ精神が光った。

(日刊ゲンダイ 2018年10月03日 )

高橋克典主演「不惑のスクラム」が描く、男たちの事情と幸福

2018年09月27日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評



NHK土曜ドラマ「不惑のスクラム」
男たちの「人生のトライ」はいかに?

NHK土曜ドラマ「不惑のスクラム」の主人公は、かつて傷害致死事件を起こした丸川良平(高橋克典)だ。5年間服役して出所したが、仕事も家庭も失った自分に絶望していた。

河川敷で死のうとした際に出会ったのが、宇多津(萩原健一、好演)という初老の男だ。高校時代にラグビー部だった丸川は、宇多津が率いる草ラグビーチーム「大坂淀川ヤンチャーズ」に引っ張り込まれる。

このドラマの特色は、丸川だけでなくチームに所属する男たちにもしっかりスポットを当てていることだ。たとえば陣野(渡辺いっけい)は、会社では窓際部署に送られ、自己主張ばかりの若手社員に閉口している。13年前に妻が男と蒸発した家庭では、高校生の娘がろくに口をきいてくれない。

また宇多津の元部下である緒方(徳井優)は、ヤンチャーズの雑用を一手に引き受けているが、家では妻と介護を要する母親が待っている。彼らにとって週末のラグビーは日常を支える、心のオアシスのような存在だ。いや、そういう存在をもつ男たちの幸福を描くドラマだと言っていい。

一度は丸川の過去が明らかになったことでチームの和が乱れたが、再びスクラムを組むようになる。ところが先週、「誰ひとり、不要な人などいない」と言っていた宇多津が病没した。

精神的支柱を失った男たちの「人生のトライ」はいかに?

(日刊ゲンダイ 2018年09月26日 )

テレ朝ドラマの“大関クラス”に成長した「遺留捜査」

2018年09月21日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評


上川隆也「遺留捜査」は
テレ朝ドラマの“大関クラス”に成長

13日、「遺留捜査」(テレビ朝日系)が終了した。主人公の糸村(上川隆也)が、東京から京都府警特別捜査対策室へと異動したのは昨年の第4シリーズでのことだ。

今期、佐倉(戸田恵子)は室長代理に出世していたが、同僚の神崎(栗山千明)との珍コンビや、科学捜査係官・村木(甲本雅裕)との笑えるやりとりは変わらない。

この「変わらない」ことがシリーズものでは大切で、その最たるものが糸村の観察眼と遺留品に対する並外れたこだわりだ。

たとえば第8話では、古びた空き缶1個が突破口になった。30年前の事件に関係した男の死体発見現場にあったものだ。糸村は、男が病気の息子のために、空き缶にアルミホイルを巻いてロウ管式録音機を作っていたことをつきとめる。

また最終回では、ガス管に使われる黄色い円筒だった。殺人を犯した姉(観月ありさ)の罪をかぶった弟(三浦涼介)が、姪(山口まゆ)の誕生日に手作りの万華鏡を贈ろうとしていたのだ。簡易録音機にも万華鏡にも作った人が抱える事情や込められた思いがあり、糸村がそれをすくい上げていく。このドラマが支持されるのは、遺留品を通じて人間の情や絆を丁寧に描いているからだ。

同じく定番の「相棒」や「ドクターX」などがテレ朝ドラマシリーズの横綱なら、「遺留捜査」も堂々の大関クラスに成長したと言っていい。

(日刊ゲンダイ 2018年09月19日)



「透明なゆりかご」 で、難役に挑む清原果那

2018年09月13日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評


NHKドラマ10「透明なゆりかご」
難役に挑む清原果那に注目

NHKドラマ10「透明なゆりかご」の舞台は、由比(瀬戸康史)が院長の産婦人科。そこに看護師見習いとして来たのがアオイ(清原果耶)だ。

産婦人科といえば、最近だと綾野剛主演の「コウノドリ」(TBS系)がある。こちらは「チーム医療」がウリだが、個人病院では無理だ。その代わり、由比は個々の妊婦に可能な限りコミットしていく。いや、そのためにこそ独立したのだ。

妊婦たちはそれぞれの事情を抱えている。受診歴のないまま来院し、出産後に失踪する人。自らの持病のために出産を断念しようとする人。中には出産後の血圧低下で命を落とす妊婦もいる。

このドラマは死産や中絶といった重いテーマも果敢に取り込んでおり、14歳の中学生が妊娠し、出産するという回もあった。その判断に至るまでの本人と家族をきちんと描き、さらに出産から9年後の母子も見せていた。

好感がもてるのは、どのエピソードでも、わかりやすい結論を下していないことだ。理想や倫理だけでは白黒つけられない、グレーの部分で悩んだり、傷ついたりする妊婦や家族を見つめていくのがアオイである。

16歳の清原はドラマ初主演ながら、アオイが憑依したかのような熱演を続けている。自身もADHD(注意欠陥・多動性障害)と診断された過去をもつヒロイン。そんな難役に挑戦する清原の姿だけでも見て損はない。

(日刊ゲンダイ 2018年9月12日)

フジ月9「絶対零度」 失踪した上戸彩の謎は?

2018年09月06日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評


フジ月9「絶対零度」
失踪した上戸彩の謎は解明されるのか

刑事ドラマの月9「絶対零度~未然犯罪潜入捜査」は、そのユニークな設定が光っている。

個人情報から監視カメラの映像までを集めたビッグデータを解析。過去の犯罪データと照合することで、殺人など重大犯罪に走る可能性の高い人物を割り出していく。ただし警視庁内の極秘プロジェクトであり、「ミハン(未然犯罪捜査チーム)」は総務部資料課を隠れみのに活動中だ。

リーダーは元公安の井沢範人(沢村一樹)。若手の山内徹(横山裕)、小田切唯(本田翼)などと共に、ミハンシステムがリストアップする危険人物をマークしていく。

先週は、大学病院で亡くなった恋人の復讐を遂げようと、顔を整形して別人になりすます女性を、乃木坂46の白石麻衣が演じて話題になった。ターゲットである大学理事長の息子との結婚式当日、「最愛の息子」を殺害する計画だったが、井沢たちの活躍で未然に防ぐことができた。

このドラマでは、毎回の未然犯罪捜査もさることながら、底流にある謎も大きなテーマとなっている。それがシリーズの前作・前々作の主人公だった、特殊班捜査員・桜木泉(上戸彩)の消息だ。

かつては山内とコンビで捜査に当たっていたが、突如失踪してしまった。一体、桜木に何があったのか。その生死も含め、彼女の現在がどこまで明かされるのか。最終回に向けて注目だ。

(日刊ゲンダイ 2018年9月5日)