碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

産経新聞で、消費税増税の「政府広報」について解説

2014年03月31日 | メディアでのコメント・論評

カウントダウンとなった消費税増税。

3月30日付けの産経新聞に、「政府広報」に関する記事が掲載されました。

その中で、解説をしています。


「引き上げ分5兆円 すべて社会保障に」
政府 必死の駆け込み広報 

「増税分5兆円はすべて子育て・医療・介護・年金といった社会保障のために使われます」-。4月からの消費税率引き上げを目前にして、政府がこんな“駆け込み広報”を活発化させている。企業が商品値上げなど増税対応を強める一方、増税の目的に関する消費者の理解が不十分との懸念からだ。広報活動の成否は、税率10%への移行にも影響を与えかねないだけに、必死のPRを展開している

23日付の新聞各紙には消費税広報のチラシが一斉に折り込まれた。A3版カラーの4ページ構成で発行部数は計約3600万部。税の使途から、負担軽減のための給付金の説明まで、内容は盛りだくさんだ。投じた費用は約2億9千万円。製作を担当した内閣府政府広報室は「国民に納得して増税分を負担してもらいたいため」と説明する。

政府は平成25年度当初予算と補正予算に、消費税関連の広報費として計約12億6千万円を計上した。昨年は新聞広告による啓発中心だったが、今月に入って、利用媒体も主婦向け雑誌やインターネットサイトのバナー広告、コンビニエンスストア内の有線放送にまで急拡大。26日には内閣府職員自ら、都内の駅前でチラシを配った。

政府が駆け込み広報を加速させる背景には、消費税増税の目的が、国民に十分に理解されていないことへの危機感がある。

「消費税増税は、どうしても家計負担が重くなるイメージが先行する」。政府関係者は口をそろえる。増税に伴う税負担が、社会保障の原資になるということには結びつきにくい。カルチュア・コンビニエンス・クラブが今月実施した調査では、2割近い消費者が、10%への再増税について「何がなんでも反対」と回答した。

内閣府は4月以降も、テレビCMを企画。小売りの店頭で増税分が価格転嫁されることへの理解を求めるなど、切れ目のない広報活動を展開する予定だが、これで国民の理解が進むかは未知数だ。

広報活動に詳しい上智大学の碓井広義教授(メディア論)は「政府広報には世代や地域、関心の有無を問わず、痛みを伴う政策を周知させる難しさがある」とした上で、「今回の消費税に関する広報は、『社会保障に使われます』という弁明に終始しすぎで、露出量よりも質の向上が求められる」と指摘している。(佐久間修志)

(産経新聞 2014.3.29)

「親の年収・学歴」と「子どもの学力」が正比例する時代に

2014年03月30日 | 日々雑感

教育社会学の第一人者、お茶の水女子大学の耳塚寛明教授は、
母校である松本深志高校の一年先輩です。

現在は、お茶大の副学長でもあります。

その耳塚先輩が研究リーダーを務めたのが、文科省の「全国学力調査」。

「親の年収や学歴」と「子どもの学力」が“正比例”する実体が明らかになっています。

以下は、29日の朝日新聞の記事・・・・

「本・新聞」「親子の会話」学力のカギ 
環境不利でも工夫の余地 全国学力調査分析

全国学力調査の詳細な分析結果が28日公表され、親の年収や学歴の高さに子どもの学力が比例する傾向が明確になった。一方、不利な環境でも学力を伸ばすために、親や学校が工夫すべき要点も見つかった。かぎは、「読書」や「親子の会話」などだ。

研究班は、年収と両親の学歴の高さから4グループに分けて分析。それによると、年収水準・学歴が高く、学校外の学習時間が長い子ほど学力が高かった。年収・学歴が最も低いグループで学校外学習が「1日3時間以上」という子の平均正答率が、年収・学歴が最も高く学校外学習を「全くしない」という子を下回る、という結果も出た。「単に学習時間を延ばす以外の工夫が必要」と研究班は指摘する。

一方、学力には「読書活動」の影響が強い、との結果も出た。「本や新聞を勧める」「一緒に図書館に行く」「小さいころに読み聞かせをした」などだ。「言語の価値を理解したり、新しいことを学んだりする力を習得している」とみる。勉強や社会の出来事について親子で話したり、規則正しい生活を整えたりする家庭ほど、「自ら学び、学校に楽しく行く傾向が強いことを示唆」とも指摘した。

年収・学歴が最も低いグループで、算数(数学)Bの成績上位25%に入る子は小6で17%、中3で12%いた。特徴を分析すると、「読書」「親との勉強に関する会話」「規則正しい生活」のほか、宿題をしっかりしていたり、親が学校行事に積極的に参加したりする傾向があったという。

学校は家庭の「格差」をどう抑えるか。小6算数Aの成績を基に分析すると、放課後の補充学習や習熟の遅い子に対する少人数指導を頻繁にしたり、小中が連携して指導をしたりする取り組みが効果的だった。

格差縮小の成果が表れた小中7校を調べると、子どもに自分の課題を意識させるきめ細かな宿題の指導▽教師同士で見合う授業研究▽地域独自の学力調査結果の活用▽基礎学力習得の徹底――などの特徴的な取り組みがみられたという。研究班代表の耳塚寛明・お茶の水大副学長は「社会経済的な学力格差の動向は国が定期的に監視する必要がある」と指摘した。(岡雄一郎)

◆キーワード
<全国学力調査と結果分析> 2007年から小6と中3を対象に文部科学省が実施。教科は国語と算数(数学)で、基礎知識中心のA問題と活用力をみるB問題がある。今回の分析は、お茶の水女子大の研究班が、昨春の学力調査について公立学校778校で保護者約4万人へのアンケートと子どもの結果を調べた。年収などと学力の関係について、国が委託して全国的な分析をしたのは初。

(朝日新聞 2014.03.29)



・・・・まあ、実感としては、ずいぶん以前からその傾向はありましたが、あらためてデータで示されると、「格差社会」のエグイ一面を見る思いです。

多分、大学生の保護者の平均年収で一番高いのは東大でしょう。

こんなバカ話を聞いたことがあります。

近年、東大の女子学生に、美人が多い、と。

本当かどうか、知りませんよ(笑)。

そういう、話です。

まず、東大などの高偏差値大学を出た高学歴・高収入の男が、高学歴にして美しい妻をめとる確率(可能性)が高いのだ、と。

両者の間に生まれた子は、親に似て頭脳優秀にして眉目秀麗である確率(可能性)が高い。

しかも幼少時より、塾だろうが、お受験だろうが、名門私立だろうが、とにかく経済的に余裕があるから、教育にお金をかけられる。

で、東大には、高学歴・高収入の親をもつ美人女子学生が多い、と。

そしてまた、自身も高学歴・高収入の親となり、子どもが生まれ・・・という話でした。

もはや立派な「階層社会」です。

記事にある「環境不利でも工夫の余地」というのも分かりますが、
そう簡単じゃないことも想像できます。

かつては「貧家の秀才」の出世物語は普通に存在したけど、それが通用しない社会になりつつあるってこと?

そりゃ、辛いよ。

ホントにどうしたらいいんでしょうね、耳塚先輩。



フライデーの「ごちそうさん」絶品メニュー記事でコメント

2014年03月30日 | メディアでのコメント・論評

発売中の「フライデー」最新号に、「ごちそうさん」の特集記事が掲載されました。

テーマは、このドラマにおける「料理」です。

以下のようなコメントをしています。


記事タイトル:
『ごちそうさん』の絶品メニュー 本誌が選んだベスト7品レシピつき

上智大学文学部教授(メディア論)・碓井広義氏はこう言う。

「め以子はプロの料理人ではなく、あくまでも主婦です。“家庭の食”を中心にしたことがドラマの大きなポイントになっていると思います。

登場する料理は特別な食材や技術は必要なく、どこの家庭でも作れそうなもの。なのに料理シーンは楽しそうで、食事のシーンはおいしそう。家庭の食をこれほど素敵に見せてくれたドラマは過去にありませんでした」



・・・・そして、番組に登場した「絶品メニュー」7品が選ばれています。

・スコッチエッグ
・がわがわ(冷や汁)
・夜鳴きうどん
・おから入り半助鍋
・ハモニカ
・焼氷
・牛すじカレー


前出の碓井氏は『焼き氷』(左ページ右下)が食べてみたくなったという。焼き氷は明治時代後期に実在したスイーツ。が、当時の作り方が不明で、ドラマスタッフがオリジナルのレシピで再現した。

「熱いのに冷たいのか、冷たいのに熱いのか、気になります(笑)。『ごちそうさん』は想像力で料理を楽しむ……そんな見方ができます。料理ができ上がるまでの背景がドラマになっており、食の豊かさを感じさせてくれます」(碓井氏)


(フライデー 2014.04.11号)



29日(土)朝7時、HTB「イチオシ!モーニング」生出演

2014年03月29日 | テレビ・ラジオ・メディア






今週の「木村愛里さん」



野球解説の「がんちゃん」こと岩本勉さん



MCの依田英将アナ、ニュースの西野志海(もとみ)アナ



今週の「西野志海アナウンサー」



HTB「イチオシ!」で、レジェンド葛西選手と

2014年03月29日 | テレビ・ラジオ・メディア


今週の「国井美佐アナウンサー」

【気まぐれ写真館】 札幌大通公園 2014.03.28

2014年03月29日 | 気まぐれ写真館

【気まぐれ写真館】 東京上空春霞 2014.03.28

2014年03月29日 | 気まぐれ写真館

サンデー毎日で、「花子とアン」吉高由里子についてコメント

2014年03月28日 | メディアでのコメント・論評

発売中の「サンデー毎日」最新号に、朝ドラ「花子とアン」の主演
女優・吉高由里子さんについての記事が掲載されました。

この中で、コメントしています。


吉高由里子の“アン”にそびえる
「ごちそうさん」杏の壁

NHK朝の連続テレビ小説「花子とアン」が、3月31日からスタート
する。

主人公・村岡花子は戦後、『赤毛のアン』を翻訳し日本に紹介した実在の人物。貧しい生い立ちながらも給費生として女学校に入学し、西欧的な思考や生活習慣を身に着ける。英語教師になり、翻訳家としても活躍する女性の波乱の半生を描いたのが今作である。

ヒロイン・花子役に抜擢されたのは映画「蛇にピアス」(蜷川幸雄監督)で主演し、ヌードを披露した吉高由里子(25)。朝ドラのヒロインといえば、清純派が定番。この選択、果たしてどう出るか。

「吉高さんは男と酒の話題が絶えず、スキャンダラスなイメージが強い。NHKにとっては結構、大胆な賭けに出たなと思います。ただ、この知的な役柄で成功すれば、女優としての評価は上がるでしょう」(上智大の碓井広義教授=メディア論)。

確かに、吉高は自由奔放で男性関係も派手。何度も写真週刊誌に男性とのツーショットを撮られるなど、浮いた噂が絶えなかった。

「中目黒の寿司屋のカウンターで、飲んだくれている姿が何度も目撃されています」(女性誌記者)

キャラそのままに等身大の小悪魔系の役柄を演じることが多かった吉高だが、今回は明治、大正、昭和を生き抜いた知的で清楚な女性役。しかも、超人気の前2作の後、である。

社会現象になった「あまちゃん」の後を継いだ杏主演の「ごちそうさん」は、フタを開けてみれば平均視聴率21%を超える勢い。25%を超えた回もある。「あまちゃん」の平均視聴率20.6%(最高27%)を思えば、十分すぎる合格点だ。となれば、今作にかかるプレッシャーは想像に難くない。

女性誌記者はこう読む。

「最も心配なのは、吉高のあの独特の声です。毎朝この声を聞かされると思うと、辟易してしまう。朝ドラのヒロインは無色透明で、ここから色がついていくのですが、吉高には既にクセがあります。必ず賛否両論が起きてくるでしょう」

良くも悪くも個性派の吉高。一方で「蛇にピアス」のオーディションでは自ら脱ぎ、体当たりで役をもぎ取ったという逸話もある。重圧を跳ね返すことができれば、“アンチ”が一転してファンになる可能性もある。

夜のイメージが強い吉高が、朝の光の中でどんな“化学反応”を起こすのか。

(サンデー毎日 2014.04.06号)


28日(金)夜、BSジャパン「金曜オトナイト」はナイツさんと・・・

2014年03月28日 | 金曜オトナイト




今週の「繁田美貴アナウンサー」

28日(金)午後、HTB「イチオシ!」に生出演

2014年03月28日 | テレビ・ラジオ・メディア


生出演するのは、私だけではありません(笑)。

ソチ銀メダリストのレジェンド、葛西紀明選手もスタジオ生出演です。

卒業、おめでとう!  その②

2014年03月28日 | 大学


























卒業、おめでとう! その①

2014年03月28日 | 大学













読売新聞の「明日、ママがいない」検証記事で解説

2014年03月27日 | メディアでのコメント・論評

26日の読売新聞夕刊に、『ドラマ「明日、ママがいない」検証』が
掲載されました。

全国児童養護施設協議会の武藤素明・副会長と、私の話を併記したものです。


ドラマ「明日、ママがいない」検証

舞台となった児童養護施設の描写などをめぐり、物議を醸したドラマ「明日、ママがいない」(日本テレビ系)の放送が終わった。最終回まで見て、果たして、その表現をどう評価したのか。全国児童養護施設協議会関係者と、放送批評の専門家に話を聞いた。(大木隆士)


許容の幅を大きく逸脱

全国児童養護施設協議会副会長
武藤 素明氏

1~3話に比べ、中盤以降は変わったように感じる。愛をテーマにした人間ドラマにするように努め、評価できる部分はあった。すべてがとんでもないとは思わない。子役たちの演技は素晴らしく、引き付けられた。

ただやはり前半は行き過ぎだった。テレビだから「分かりやすく」と言われるが、当事者からすると「なぜあんな場面にするのか」と違和感が強かった。

フィクションだから、現実と違う部分があるのは承知している。ただ今回は、それが多すぎた。マイナスイメージを助長し、子供がいじめの対象となる可能性もあった。子供をペット扱いするようなセリフもあったが、もっと表現を工夫できたはずだ。

現実を100%再現してほしいと求めているわけではない。しかし、許容されるフィクションの幅というのはあると思う。このドラマは、それを大きく逸脱していた。取材をしたと言われるが、まずストーリーありきで、それから取材をしたようにも感じた。

もちろん自分の考えを代弁してくれたと感じる子もいた。ただ、ドラマを見ただけで深く傷つく子もいる。子供たちはそれぞれに事情を抱え、育った環境も経験も違う。今の状況を、きちんと知ってほしかった。

社会に児童養護が知られていないことも、今回の問題の要因だったと思う。テレビを通じて、子供たちの実情を知ってもらうのは重要だ。積極的に取材、報道していただけたらと願っている。(談)

+++++++++++++++++++++++


視聴者の感じ方は自由

上智大教授・メディア論
碓井 広義氏

半ば予想通りの結末だったが、ようやく最後で、ドラマが伝えたいことを視聴者は感じ取れたのではないだろうか。

施設にいた4人の子供はそれぞれ、違った道を進んでいった。大人ではなく、自らが選択した道を。子供たちも自己決定しなければいけない時代になったことを示しているように感じた。

また現代的な親と子の断面も切り取って見せた。親子関係に正解はない。子供が幸せになればいいという主張も含んでいたと思う。

今回、施設長の発言などが、児童養護の実態と異なると批判された。だが、特定の個人を傷つける場合を除き、フィクションの表現は、目を背けたくなるようなものも可能な限り許されるべきだ。誇張して表現することで、本質を浮かび上がらせることもある。

ただし当事者への配慮は必要で、それもまた表現の一部だろう。今作の脚本は「分かりやすさ」を優先させ、児童養護というデリケートな問題に対し、稚拙だった。その意味で、制作者の責任は大きい。

ただ制作者の狙いとは別に、視聴者の受け止め方は自由だ。極端に言えば、「誤読」する楽しみもある。誰も見向きもしない一言に、感動する人もいる。「こう感じるはずだ」という決めつけはよくない。

今回はインターネットなどでの世論形成過程で否定の同調圧力を感じた。ある流れと方向ができると、異論を挟むことが難しくなる。その点も現代を象徴していたのではないか。(談)

(読売新聞夕刊 2014.03.26)

ドラマ「LEADERS リーダーズ」と“強いリーダー”

2014年03月26日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

日刊ゲンダイに連載している「TV見るべきものは!!」。

今回は、TBSの2夜連続大型ドラマ「LEADERS リーダーズ」を
取り上げました。


社会の閉塞感が安易に強いリーダーを
求める傾向を生んでいないか

先週末、TBSが「半沢直樹」の福澤克雄ディレクターと伊與田英徳
プロデューサーを投入して、2夜連続大型ドラマ「LEADERS リーダーズ」を放送した。

トヨタ自動車を興した豊田喜一郎(豊田佐吉の息子)がモデルの
「史実に基づいたオリジナル作品」だ。主演は佐藤浩市。

まず、大作であり、力作であることは確かだ。「国産自動車づくりに
人生を賭けた男」を正面から描いていた。

戦前に、やがて日本が自動車社会になることを予見し、敗戦後も
自動車産業が国の復興の中核になると信じて歩み続ける。

特に印象に残ったのは、主人公の「社員は家族」という姿勢だ。戦死した社員、病没した社員に涙する“熱い家父長”がそこにいた。

ただ、見ていて不思議に思ったことがある。

なぜこんなにいい会社が、70年代にはノンフィクション作家の鎌田慧が「自動車絶望工場」で描いたような姿に堕したのか。

「工程を細分化し再構成した合理化は、人間の能力を細分化させ、人格さえ企業に都合のよいように再構成する。それはロボトミーの
手術にも匹敵する」という過酷な現場を見ないで亡くなった喜一郎は幸せだった。

百田尚樹『海賊とよばれた男』もそうだが、過去のリーダーを称揚する作品が目につく。社会の閉塞感が安易に強いリーダーを求める
傾向を生んでいないか、気になる。

(日刊ゲンダイ 2014.03.25)


・・・・ずらっと並んだスポンサーですが、さすがにトヨタ自動車は加わっていませんでしたね。

メインバンクの三井住友FGは、しっかりありましたが(笑)。


日刊ゲンダイで、安倍首相「いいとも!」出演について解説

2014年03月25日 | メディアでのコメント・論評

日刊ゲンダイに、安倍首相が「笑っていいとも!」に出演した件に
関する記事が掲載されました。

その中で、解説をしています。

ネットには、この記事に関連して、「タモリは犠牲者」の文字も。

確かに、そうかもしれません。

番組の終了間際という、最後の“いいところ”で、安倍首相とフジに
ミソをつけられた感じですね。


「笑っていいとも!」を政治利用した
フジテレビの大罪

3連休の昼下がりに違和感たっぷりであった。21日放送のバラエティー「笑っていいとも!」(フジテレビ系)のテレフォンショッキングに生出演した安倍首相。情報番組でもニュース番組でもない。現職総理大臣が「初の生出演」とうたっていたが、60年続くテレビ史上でも“前代未聞”の出来事である。

ゲストの安倍は「国民的な番組」を連呼し、放送開始から32年間、司会を務めたタモリ(68)を「無形文化財」と褒めそやした。90年代初めにタモリの冠番組としてスタートした「ボキャブラ天国」(フジテレビ系)のファンだったことも告白。「タモさんは本当に人間国宝になるかも」(テレビ関係者)と囁かれるぐらいの持ち上げぶりだった。

■現場は“寝耳に水”だった?

今回の首相出演は「日枝久会長主導によるもの。制作現場とタモリさんは寝耳に水だった」(フジ関係者)という。安倍の甥っ子のフジ入社が取り沙汰されたばかりだが、今度は公共の電波を使ってフジと現政権の蜜月ぶりが露呈。新宿アルタ前では反政権のシュプレヒコールが巻き起こった。長年、業界をウオッチしてきた芸能評論家の肥留間正明氏もこう不信感を募らせる。

「番組終了前のお祭り騒ぎにかこつけた作為的なキャスティングでしたが、その最も身近な犠牲者はタモリさんではないでしょうか。漫画家・赤塚不二夫さんの、権威をコケにする“赤塚イズム”を引き継ぐアウトサイダーな人。政治とは距離を置くスタンスでお笑い界をもり立ててきた。放送中、気丈に振る舞うタモさんの姿がふびんで仕方ありませんでした」

■ネクタイ着用の意味

普段はラフな衣装の多いタモリだが、この日は同コーナー終了まで桃色のネクタイを着用(その後はセーターに着替え、ノーネクタイで出演)。身なりにも気を配ることで有名なだけに、安倍の出演は“会社都合”と達観していたのかもしれない。

上智大学の碓井広義教授(メディア論)がこう言う。

「4月からの消費増税を前に国民に親しみやすさをアピールしたい安倍首相のイメージ戦略にフジは加担した――出演までにどんな経緯があったにせよ、視聴者に不信感を与えた一場面でした。今後、同局が増税をニュースで取り上げる際、視聴者は一体どんな印象を持つのか。見る側にはバラエティーと報道の垣根はありません。私利私欲な番組づくりをしてジャーナリズムの機能を果たせるのか。貧すれば鈍するとはこのこと。見る側の不安をあおる結果になったのではないでしょうか」


国民的バラエティーを政治利用したフジの罪は重い。

(日刊ゲンダイ 2014.03.24)