碓井広義ブログ

<上智大学教授のメディア時評> 見たり、読んだり、書いたり、話したり、時々考えてみたり・・・

【気まぐれ写真館】 札幌 晴天 気温29度  2017.06.30

2017年06月30日 | 気まぐれ写真館

書評した本: 川本三郎 『「男はつらいよ」を旅する』

2017年06月30日 | 今週の「書評した本」


「週刊新潮」に、以下の書評を寄稿しました。

寅の軌跡をたどる
川本三郎 『「男はつらいよ」を旅する』

新潮選書 1512円

映画監督に関する書籍で点数の多いのは黒澤明やヒッチコックである。一方個別の作品では、「男はつらいよ」が圧倒的に多い。ガイドブック的なものから名言集、社会学的な研究書まで多彩だ。川本三郎『「男はつらいよ」を旅する』は過去に出版されたどの関連本とも似ていない。映画評論家の目と旅のエッセイストの感性が見事に融合しているからだ。読者は映画における寅の旅と、その軌跡をたどる著者の旅の両方を楽しむことができる。

山田洋次監督「男はつらいよ」第1作の公開は1969年8月。約半世紀前のことだ。“旅の映画”として確立されていくのは、寅が北海道の小樽とその周辺を歩いた第5作「望郷篇」(70年、ヒロインは長山藍子)あたりから。以降、「純情篇」(71年、若尾文子)で五島列島、「寅次郎恋歌」(71年、池内淳子)では岡山県備中高梁(びっちゅうたかはし)といった具合に全国各地が舞台となっていく。

中でも北海道は頻繁に登場する。たとえば、「寅次郎かもめ歌」(80年、伊藤蘭)のロケが行われた奥尻島。著者は映画の中で見たイカの加工場や事務棟が、大きな地震があったにもかかわらず健在であることに感動する。また「寅次郎相合い傘」(75年、浅丘ルリ子)で、寅とリリー(浅丘)と家出したサラリーマン(船越英二)がたどった、函館から小樽への鉄道旅を追体験するのだ。途中、3人が野宿した小さな駅舎(蘭島駅)に立ち寄ることも忘れない。

本書はもちろん旅行記だが、随所に挿入される作品分析も興味深い。寅のようなテキヤ、渡世人が、地方の人たちにとって福をもたらす「まれびと」でもあったこと。惚れやすい寅だが、女性に対して実にストイックであったこと。そして人物だけでなく、風景でもつながっているシリーズだったことなどがわかる。

この本をテキストにDVDなどで寅の旅を再見するもよし、鞄に入れて実際の旅に出るのも悪くない。

(週刊新潮 2017年6月29日号)

ドラマ「ブランケット・キャッツ」の天才猫軍団に脱帽

2017年06月29日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評



日刊ゲンダイに連載しているコラム「TV見るべきものは!!」。

今週は、NHKドラマ10「ブランケット・キャッツ」について書きました。


NHKドラマ10「ブランケット・キャッツ」
天才子役ならぬ天才猫軍団!

世の中には犬派と猫派がいるそうだが、最近のNHKはかなり猫派寄りだ。BSプレミアムで「岩合光昭の世界ネコ歩き」が放送され、Eテレ「2355」では毎週火曜が「猫入りチューズデー」という猫特集である。

そして新たな“猫物件”がドラマ10「ブランケット・キャッツ」だ。主人公は亡くなった妻(酒井美紀)が残した7匹の猫と暮らす家具職人・椎名秀亮(西島秀俊)。飼い主を探しているが、適性を判断する面談と3日間のお試し期間を設けている。

第1回では認知症で施設に入る祖母(佐々木すみ江)のために、以前の飼い猫と似た猫を探すヒロミ(蓮佛美沙子)がやってきた。しかも秀亮は、やはり祖母を喜ばせたいヒロミの依頼で、彼女の婚約者の「代役」まで引き受ける。結局、祖母は孫娘の“優しい嘘”に気づいており、ヒロミは本当のことを告げるのだ。

まず西島と猫たちが本物の家族のように見えることに驚く。この見事な「なつき方」は天才子役ならぬ天才猫軍団だ。また、お試し家庭が抱える悩みや心配事も特殊なものではなく、視聴者が自分たちに引き寄せて共感できる。これは重松清の原作の味を生かした、江頭美智留の脚本の力だ。

個人的には「和風総本家」(テレ東系)の豆助を応援する犬派だが、このドラマを見ていると、ふと「猫も悪くないか」と思えてくる。

(日刊ゲンダイ 2017.06.28)

「ファイブミニ」CMの是枝裕和監督×広瀬すずさん 

2017年06月28日 | 「日経MJ」連載中のCMコラム



日経MJ(日経流通新聞)に連載しているコラム「CM裏表」。

今回は、広瀬すずさんが出演している、大塚製薬「ファイブミニ」のCMについて書きました。


大塚製薬
「ファイブミニ 恋よりセンイ。」
覚悟決めた美しい横顔

是枝裕和監督の『海街diary』が公開されたのは3年前。当時15歳の広瀬すずさんが演じた、綾瀬はるかさんや長澤まさみさんの“腹違いの妹”が鮮烈だった。今年の春、高校を卒業したすずさんをヒロインにして、是枝監督が撮ったのがファイブミニの新作CMだ。

故郷である静岡の友達と携帯電話で話しながら、自分の部屋に入ってきたすずさん。どうやら仕事が忙しくて、卒業式にも出られなかったらしい。ふと鏡の中の自分を見る。そこに映っているのは「素の広瀬すず」か、それとも「女優の広瀬すず」か。是枝監督ならではのドキュメンタリータッチの演出が際立つ。

すずさんが部屋からベランダに出る。見えるのは東京スカイツリーではなく、東京タワーだ。飲みかけのボトルをかざし、並べてみる。ちょっと似た色。見つめるすずさんの横顔が美しい。何かしら覚悟を決めた女性の表情だ。もしかして恋より仕事? いえ、恋よりセンイだそうです。 

(日経MJ 2017.06.26)

ホウドウキョク「あしたのコンパス」で、小林麻央さんのブログについて解説

2017年06月28日 | メディアでのコメント・論評

佐々木俊尚さんと新美有加アナウンサー

















日刊ゲンダイで、NHKの「小出恵介問題」対応についてコメント

2017年06月27日 | メディアでのコメント・論評



小出ドラマお蔵入り
NHK異例“補償協議”の裏に猛クレーム

21日、NHKの定例の総局長会見で、小出恵介(33)主演の土曜ドラマ「神様からひと言~なにわ お客様相談室物語~」が放送中止になったことについて「重い事柄。所属事務所ときちんと協議していきたい」と異例のコメントが発表された。

受信料で制作しているNHKだけに民放以上に問題なのは確かだが、事件の全真相が明かされていない段階で事務所と補償協議に入っていると語るのは異例。

上智大学の碓井広義教授(メディア文化論)も「今までも出演者の不祥事で出演停止、本人側の自粛などはありましたが、NHKは比較的穏便に事を進めていました。今回の事件は影響が大きかったのでしょう」という。

「フライデー」に未成年女子との飲酒と淫行騒動が掲載され、今月8日に事務所は無期限活動停止を発表。それを受けてNHKも10日からの全6話放送中止を発表。「11日までの4日間で240件の視聴者の皆さまからご意見がありました」(NHK広報)という。

「今回のNHKの対応の早さは、視聴者に目を向けた結果。ドラマの内容が“モンスタークレーマーと闘うクレーム処理係の話″というのも皮肉な話です。いずれにしてもこの事例は今後のモデルケースとなるでしょう」(前出の碓井氏)

今回の一件で生じた損害額は億単位といわれている。小出は何をどう反省しても後の祭りだ。

(日刊ゲンダイ 2017.06.24)

AERA.dotで、小林麻央さんとブログについて解説

2017年06月26日 | メディアでのコメント・論評


小林麻央が命がけで綴ったブログが示した未来

歌舞伎俳優・市川海老蔵さん(39)の妻でフリーアナウンサーの小林麻央さんが22日に亡くなった。享年34。2014年10月21日に乳がんの診断を受けてから、2年8カ月の闘病生活だった。

23日午後、海老蔵さんは東京都内で会見を開き、麻央さんが2016年9月から更新していたブログ「KOKORO.」の話題に触れ、「ブログを始めて、同じ病いの人達で苦しんでいる人と悲しみや喜びを分かち合う妻の姿は、人ではないというか、すごい人だなというか」と語った。

麻央さんはブログで闘病を克明に記してきた。

ブログに登録する読者は7カ月で200万人という異例のスピードで増え、すぐにブログランキング1位に。2、3日ぶりに更新した際は、応援する声や同じく闘病中の人からの共感の声が1万件以上寄せられることもあった。

麻央さんが綴り続けたブログが私達に、そして麻央さん自身にもたらしたものはなんだったのか。

芸能界やメディア事情に詳しい智大学の碓井広義教授(メディア文化論)は語る。

「小林麻央さんのブログを巡る一連の動向は、まさに前例のない出来事だったといえます。幸福の絶頂にあった有名人ががんを告白し、その闘病の過程を綴り続け、亡くなる2日前まで発信していたという事実も然り。また現段階でフォロワー数は258万人にも達し、社会的な関心の高さも過去に類を見ないスケールです」

しかし、これは麻央さんが有名人で人気者だから、というだけの理由ではないという。

「麻央さんがブログを開設した当初、読者のなかには『どんな意図、目的があるのだろう』と興味本位で読んでいた人も少なくないはずです。ブログやSNSで自分の生活を発信する芸能人は大勢いますが、がんのような大変な病気を患ってからブログを開始するというケースはなかなかない。なかには『世間から忘れられるのが怖くて発信しているのではないか』といった邪推をする人がいてもおかしくありません。

しかし、麻央さんが綴る記事を一つひとつ読み進めていくと、ギリギリの状況のなかで発信を続けていること、発信を続けることが麻央さんにとって“生きる証”なのだということが伝わってきます。というのも、麻央さんは文章だけではなく写真も多用し、リアルな生活の様子を伝えていた。それも、体調が良いときも良くないときも、包み隠さずです。そんなブログを読み続けるうちに読者は「生きることとはどういうことなのか」と考えるようになったはずです。そして、当初は"かわいそうな人"のブログというような興味本位だった人々の認識も、“頑張っている人”を見るというものに変わり、熱心な読者になる人や、逆に麻央さんのブログに励まされる人が続出することになったのだと思います」

そして、麻央さん自身も発信を続けることで力を得ていたと碓井氏は指摘する。

「258万フォロワーという途方もない数の人が励まし、見てくれている。この『見てくれてる』という感覚はブログ著者にとって、応援してくれているという感覚に近い。また海老蔵さんが6月23日の会見でもおっしゃっていたように、麻央さんブログは麻央ださんだけではなく、海老蔵さんを始め、家族への励ましにもなっていたのです」

ブログが麻央さんの精神的な支えになりえたのは、その性質に起因するという。

「芸能人が病気をしたりすると、マスコミが追いかけ、憶測でものを書きます。これは世の中から隔絶した状態で闘病する人にとって、多大なストレスになる。芸能人の病気にまつわる報道は、こうしたことの繰り返しでした。

しかし、麻央さんはブログを開始するという選択をすることでこの状況を変えたのです。

ブログを書くということは、第一次情報を芸能人自身が発信しているということ。毎日記者会見をしているようなものです。これによってマスコミは無責任な報道をしなくなり、麻央さんは心を乱されることなく、闘病生活に向き合えたのだと思います。

麻央さんのブログを巡る出来事を一言で総括するならば、闘病という『プロセス』を人々が共有できたということです。普通は、病気をした、克服した、亡くなった、といった『結果』だけが報じられます。私達は日々麻央さんのブログを読むことによって、彼女が何を考え、どう人生に向き合っているかを共有できた。これはブログというメディアの可能性を示唆する出来事でもあります」


(AERA.dot 2017.06.23)

書評した本: 谷本真由美 『不寛容社会』ほか

2017年06月26日 | 今週の「書評した本」



「週刊新潮」に、以下の書評を寄稿しました。

谷本真由美 『不寛容社会』
ワニブックスPLUS新書 896円

タレントの不倫問題はもちろん、政治でも職場でも事あるごとにバッシングが展開されている。気がつけば、「一億総叩き社会」になっていると著者。その背景にある「ウチ」と「ソト」の意識や、煽動するメディアの実態などに迫る。特に海外の比較事例が効いている。


川上弘美
『東京日記5 赤いゾンビ、青いゾンビ。』

平凡社 1404円

「WEB平凡」での連載日記、昨年までの3年分だ。例によって大きな事件など起きない。それなのに時々不穏な空気が流れるところが著者ならではだ。「原稿が書けない」とか、「いちにち、ドラクエ」といった記述が連続するほど、読む側の想像力が刺激される。

(週刊新潮 2017.06.22号)

「あなたのことはそれほど」 共感できないヒロインに興味 

2017年06月25日 | 「毎日新聞」連載中のテレビ評



毎日新聞のリレーコラム「週刊テレビ評」。

今回は、ドラマ「あなたのことはそれほど」について書きました。


「あなたのことはそれほど」 
共感できないヒロインに興味

今期は、「小さな巨人」(TBS系)、「緊急取調室」(テレビ朝日系)、「CRISIS 公安機動捜査隊特捜班」(フジテレビ系)など刑事ドラマが林立していた。おかげで目立ったのが、今週最終回を迎えた「あなたのことはそれほど」(TBS系)である。

ヒロインは、優しい夫・涼太(東出昌大)との2人暮らしに物足りなさを感じていた美都(波瑠)。中学時代に憧れていた同級生・有島(鈴木伸之)と出会い、不倫関係に陥る。原動力は美都がこの再会を「運命」と感じたことだ。一方の有島は妻・麗華(仲里依紗、好演)の出産という、実にわかりやすいタイミングだった。

このドラマが異色なのは、主な登場人物である4人の誰にも「共感」できない、もしくはしづらいことだ。何よりヒロインである美都のキャラクターが乱暴で、既婚者意識や倫理観どころか、躊躇(ちゅうちょ)という文字さえほとんどない。

また不自然な笑顔で美都への愛情を主張する涼太。美都にとっては「運命の人」かもしれないが、夫としても愛人としても軽過ぎる有島。そして、じわじわと怖くなっていく麗華。いわゆる「共感」とは距離のある人物ばかりである。

美都の暴走や涼太の狂気には息苦しいコンプライアンス社会からの無意識の脱出、逃走という要素があったのかもしれない。結果的に多くの視聴者の関心を集め、特に若者たちの間で話題になった。

大学の二つの授業で、学生たちに「見ている人は?」と聞いてみて驚いた。ある授業では、なんと約60%の学生が、そして別の授業でも約50%の学生が手を挙げたのだ。過去20年、同様の“教室内視聴率調査”を行ってきたが、この数字はとびぬけて高い。同じ枠の「逃げるは恥だが役に立つ」や「カルテット」も遠く及ばない。

視聴理由については、「縛られないヒロインの行く末」「正常な人がいないドラマ」「罪悪感のない妻とサイコパスな夫」「普通に見えた人が徐々に変わっていく怖さ」などが並んだ。

全体として、ヒロインに対して一般的な「共感」を抱いているわけではなく、また単純な「反感」でもない。自分たちとは大きく異なるがゆえに気になる。むしろ共感できないからこそ見たい。いわば、のぞき見感覚で4人の様子を観察していたようだ。また制作側によるフェイスブックやツイッターなどSNSを活用した情報発信も有効だった。

若者のテレビ離れ、ドラマ離れがずっと言われてきた。今回の局地的調査によれば、「あなたのことはそれほど」は、この20年間で「大学生に最も見られたドラマ」ということになったのだ。

(毎日新聞 2017年6月23日)



産経新聞で、放送10周年の「和風総本家」についてコメント

2017年06月24日 | メディアでのコメント・論評



テレ東系「和風総本家」放送10年
「日本の良さ」丹念に発掘

伝統文化や最新技術を取り上げて日本の良さを再発見するテレビ番組が人気だ。その元祖ともいえるのが、放送開始から10年を迎えたテレビ東京系のクイズバラエティー番組「和風総本家」(木曜午後9時)。当初は内容が時流になじまない面もあり苦戦したが、今や他局も追随する一大ジャンルとして確立した。転機はどこにあったのか、番組の歩みを検証する。 【三宅令】

放送開始は平成20年。それ以前は、TBS系バラエティー番組「ここがヘンだよ日本人」など外国人が日本のおかしなところを指摘して討論する内容などが主流で、「和風-」の開始時にもそうした風潮が残っていた。

「当初は苦戦しました」と番組の庄田真人プロデューサー(テレビ大阪)は振り返る。

転機となったのは、23年の東日本大震災だ。「がんばろう日本」という復興の合言葉に象徴されるように、日本らしさが見直され、再評価されるようになった。さらに25年、2020年東京五輪の開催が決まり、和食がユネスコ無形文化遺産に登録されたことで機運も高まった。

「和風-」の視聴占拠率(テレビをつけていた世帯のうち、その番組を見ていた割合)を見ると、震災前の平均8・7%が、震災後には11・8%と大幅に伸びた。現在も11%台と高水準を保っている。

上智大の碓井広義教授(メディア文化論)は「当時の日本は、長く続く不景気とともにグローバル化という名の欧米ナイズを強いられて疲弊していた。震災が追い打ちをかけ、日本ならではのものが世界に通用することを示し、『日本はダメじゃない』と励ましてくれる番組が受けた」と指摘する。

番組内の企画「世界で見つけた Made in Japan(メード・イン・ジャパン)」は特に大きな反響を呼んだ。25年末に放送された回では、イタリアで楽器修復職人が愛用するミニのこぎりに着目。それを作った廃業寸前の新潟県の職人技術に光を当てた。放送後、注文が殺到し、伝統技術存続のきっかけを生んだ。

同番組の成功後、他局でも、「とっておき日本~外国人が見つけた素晴らしい日本の街~」(TBS系)、「世界が驚いたニッポン!スゴ~イデスネ!!視察団」(テレビ朝日系)など日本の良さを再発見する番組が目立つように。「和風-」の庄田プロデューサーは「長く続いた番組ならではのテーマの深掘りと発見感を今後も大事にしていきたい」と話している。

(産経新聞 2017.06.20)

「アメトーーク!」 偏愛芸人が教える豊かな人生のヒント

2017年06月23日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評



日刊ゲンダイに連載しているコラム「TV見るべきものは!!」。

今週は、テレビ朝日系「アメトーーク!」について書きました。


テレビ朝日系「アメトーーク!」
偏愛は生きる支えとなる

オトナの男が見たいと思うバラエティー番組はそう多くない。その意味で、「アメトーーク!」は貴重な一本だ。放送開始から14年。立派な長寿番組だが、がぜん面白くなってきたのは「○○芸人」という“鉱脈”を掘り当ててからだろう。

たとえば、つい商品を買いたくなってしまう、土田晃之などの「家電芸人」。細部へのこだわりに驚かされる、品川祐たち「ガンダム芸人」。また再現度がハンパじゃなかったのが、劇団ひとりや博多華丸の「海外ドラマ『24』芸人」だ。

「○○が好きだ!」という偏愛宣言と、「○○のここがスゴイ!」というウンチク披露。何より、いかにそれが好きかを語る彼らの偏愛は本物感に満ちている。しかもビジネスのためではない。好きなものと真摯に向き合い、突き詰めているのだ。

番組で語っているので、結果的にはビジネスになっているが、その本質は“無償の愛”だ。喜々として「○○愛」を語る彼らを見ていると、偏愛は人生を豊かにするだけでなく、時には生きる支えとなることがわかる。

物や趣味への偏愛ならば、自分だけの価値観で行動できる。また愛する対象から不当に傷つけられることもない。「○○芸人」はもちろん、「○○ビジネスマン」や「○○女子高生」も大いに結構。偏愛の井戸を深掘りすれば、人生はより楽しくなるはずだ。

(日刊ゲンダイ 2017.06.21)

産経WESTで、出演者の「番組降板&出演自粛」について解説

2017年06月22日 | メディアでのコメント・論評



【豊田昌継の甘辛テレビ】
“小出恵介問題”とどこが違う? 
番組降板&出演自粛の境界線は…
「ぷいぷい」だけじゃない放送業界のモヤモヤ感


“文春砲”も小出騒動の影に隠れ…

MBSテレビの看板番組「ちちんぷいぷい」(月~金曜午後1時55分)でニュース解説を担当する、同局の“ニュースのおっちゃん”こと石田英司さん(57)が、5億円の私的流用を国税局から指摘されたNPO法人会長への過度な取材便宜や不倫を、8日発売の「週刊文春」で報じられました。

MBSは同日放送分で便宜を否定。石田さんは不倫に関しては「不徳の致すところです」と、事実上認め謝罪したものの、番組降板などはなく、現在も出演し続けています。

このニュース、関西ローカルで、しかも、俳優の小出恵介さんの未成年女性との飲酒&淫行で無期限活動停止という話題と日が重なったこともあり、メディアで取り上げられることはほとんどありませんでした。今でも多くの人が「そんなことがあったの?」といった感じでしょう。

ただ、知っている人の中には「えっ、謝罪だけ?」と違和感を持った人もいるのではないでしょうか。実際、ネット上には〈降板すべき〉など批判の声が一時は少なからず寄せられたようです。そこで、今回は寝かかっている子を起こすようなテーマ「番組降板&出演自粛の境界線」について触れたいと思います。

あの人も、この人も

今回、NPO団体会長への便宜については同局の社内調査の結果を尊重したいと思います。ただ、降板などにならなかった点に関して内外で聞いた話を総合すると、こんな背景が浮かび上がってきました。

〈昨年6月、元MBSアナウンサーで、同ラジオの情報番組のメインパーソナリティーを務める子守康範さんが週刊誌で「不倫」が報じられたが、番組打ち切りは免れた〉

さらに-。

〈平成24年には、読売テレビ系「情報ライブ ミヤネ屋」の司会を務める宮根誠司さんがやはり週刊誌で「隠し子」が報じられたが、このときもほぼ無傷で乗り切った〉

だから-。

いささか強引かもしれませんが、前例からそう筋立てても決して不思議ではないと思います。

僕はあの日、豪快なキャラクターの石田さんなら思い切った発言があるかもしれないと注目していただけに非常に残念でした。ただ一方で、こうして指摘・批判して降板や出演自粛に追い込むだけでいいのか。そんなモヤモヤ感も僕の中には充満しています。

そこで、小欄でもおなじみ、元MBSプロデューサーの影山貴彦同志社女子大教授(メディアエンターテインメント論)を直撃しました。

身内に甘い放送業界

影山教授は「報道に携わる者だけに、局が降板させるべき」としたうえで、「不祥事の対応は以前よりも迅速になったが、事件ならアウトで、それ以外なら謝罪と反省で一丁上がりみたいな風潮はやがて組織の信用を失う。外へ出てよく分かるが、放送業界は身内に甘い体質がある。一方で視聴者の業界を見る眼は日々厳しくなっている。襟を正すことはやはり大事だと思う」。

非常に厳しい意見で、古巣への思い入れの強さが伝わってきます。

もう一人、碓井広義上智大教授(メディア文化論)にも意見を聞きました。東京から俯瞰(ふかん)で見ていただきたいと思ったのです。

碓井教授は、降板や出演自粛の境界線として、(1)その人が何をしたか(犯罪や反社会的行為から、今回のような倫理観、さらに人としての失敗に至るまで)(2)当事者の人物像やランク付け、キャラクターなど複合的要素でジャッジされる-としたうえで、こんな見解を示してくれました。

いろんな矢が飛んでくる“1億総文句言い”時代

「以前なら、それらをメディアが自分たちで判断していました。ところが、現代のような『1億総文句言い』の時代になると、降板させるさせないのどちらに判断してもいろんな矢が飛んでくる。なかなかきれいに裁けない。となると、最も影響力のある『ネット世論』を横目に、あいまいなままおずおずと模様眺めするしかない。でも、それはメディアだけではなく、政界や経済界でも同じことが言えます。豊田さんがいわれる『モヤモヤ感』とは、そんなところじゃないでしょうか」


なるほど。見事に言い当ててくれました。「ぷいぷい」は4年前の小欄スタートの際、いの一番に取材した、僕にとっても思い入れのある番組。「聖人君子たれ」と奇麗事は言いませんが、報道の世界に身を置く以上、覚悟を持って仕事に臨みたいものです。自戒も込めて。【豊田昌継】

(産経WEST 2017.6.19)

「アンアン」で、『アメトーーク!』が愛される理由について解説

2017年06月21日 | メディアでのコメント・論評



『アメトーーク!』には、
“とくめく人を見る喜び”が溢れてる。

なんとanan総研内視聴率70%超え!の人気バラエティ番組『アメトーーク!』。特に人気が高いのが、“何かを大好き”な人たちが登場し、その“偏愛ぶり”を語る通称<◯◯大好き芸人>の回。物事に熱い気持ちを抱くことを肯定した、この番組の魅力を、『アメトーーク!』演出、ゼネラルプロデューサー・加地倫三さん、上智大学教授・碓井広義さん、心理カウンセラー・塚越友子さんが解説する。

14年前の深夜に始まったこの番組。毎週異なるテーマの中で、何かを愛する芸人たちがその思いを熱く語る<◯◯大好き芸人>というシリーズは、“ときめく気持ち”が溢れる夢のような企画だ。スタートは、’06年に放送された<フリスク芸人>だった。

「ある収録のとき、スタジオの横にある前室にいた芸人たちが、揃ってフリスクを食べていて。ミントのタブレットが人気だったこと、そして“◯◯芸人”という言葉が出始めた時期だったこともあり、彼らを見て、“みんな、フリスク芸人じゃん”なんて話になったんです。その前から、一つのテーマについてしゃべる“くくりトーク”という形で番組を作ると、おもしろいし評判がいいという手応えはあったので、ならば“フリスクが好き”くくりで1回やる? ってことになり、制作してみたのが最初です。深夜にもかかわらず、10%を超える視聴率を獲りました。驚きましたね」(『アメトーーク!』演出、ゼネラルプロデューサー・加地倫三さん)

そこから始まった<◯◯大好き芸人>という切り口。以降、芸人たちからの“愛を語らせて!”というプレゼン企画を経て、ガンダム、BOOWY、家電、ドラえもん、キングダムなど様々な偏愛が語られ、いずれも高い視聴率を獲得。上智大学教授でメディア文化論が専門の碓井広義さんは、“恋愛以外の愛”を世間が肯定しだしたのは、この番組がきっかけだと語る。

「『アメトーーク!』に登場し、いかにそれが好きかを語る皆さんの“愛”は、本物感が強く、しかも“ビジネスとしての偏愛”が一人も登場しない。好きなものと真摯に向き合い、突き詰める。番組で語っているので結果的にはビジネスになってはいますが、その本質は“無償の愛”。それを楽しそうに語る彼らを見ていると、偏愛は、人生を楽しく豊かにしてくれ、人によっては、生きる支えになっていることがわかります。“何かを好きになるって、素敵だ”と、心の底から思うことができる」(碓井さん)


人は、好きなことについて思い切り語ることで達成感が満たされ、加えて聞き手が興味を持って聞いてくれることで、称賛欲求も満たされる、と言うのは、心理カウンセラーの塚越友子さん。

「偏愛について語る芸人の高揚感は、ある意味、ゾーンに入ったスポーツ選手と同じ。白熱した素晴らしい試合に観客が興奮するのと同じように、ゾーン状態の芸人さんを見るのは、視聴者にとっても非常に気持ちがいい体験です」

偏愛が素敵。世間の意識が変化する、そのトリガーを引く要因の一つは確かにこの番組だった。しかしそこには、時代の流れも大きく関わっていたのでは? 塚越さんと碓井さんはそう分析する。

「時代によって価値観は変わります。カウンセリングに来る人たちの悩みの傾向から見ると、恋や友情という“誰かと一緒にいること”に悩むくらいなら、個人主義であることを支持する、という人が増えつつあります」(塚越さん)

「恋愛は他者との関係の中で成り立つもの。だからこそ、相手と価値観をすり合わせる中で、ストレスや敗北感を感じることも。でも物や趣味への偏愛ならば、自分だけの価値観で行動でき、さらに人と自分を比べることもなく、極端に言えば愛する対象から傷つけられることもない」(碓井さん)

学生と向き合う中で碓井さんは、現在は恋愛よりも偏愛の時代なのでは、と感じるという。

「かつては好き=恋愛でしたが、今はそうは言い切れません。恋が終わったというわけではないのでしょうが、それだけにうつつを抜かすのはダサい、という空気は感じます。何かを好きになり極めていけば、知識も広まり深まり、さらには新しい付加価値が身につき、それが魅力となる。逆に言えば、ただルックスがいい、優しいだけではダメで、もう一つ“意外な才能”=何かを偏愛している、ということがないと、恋愛においても魅力的だと思われない時代になってきているのかもしれません。“何も好きじゃない人は、寂しい人”という価値観の広がりと言ってもいいでしょう」(碓井さん)


「“追求する力”“こだわって何かを成し遂げる力”を持つ人が評価され、成功する時代になってきたこともある。わかりやすい例で言えば、アップルの創業者であるスティーブ・ジョブズなどがそう。彼のアップルに対する強い愛、こだわりは、会社を成功させただけではなく、世界をも変えた。今の世の中においては、自分もそんな力を持ちたい、そういう人になりたい、という憧れを抱く人が多い。偏愛を語る人がたくさん登場するこの番組に支持が集まる理由は、そんなところにもあるような気がします」(塚越さん)


かぢ・りんぞう テレビ朝日社員。他に『金曜★ロンドンハーツ』や『チェンジ3』でゼネラルプロデューサーを務める。

うすい・ひろよし 制作会社「テレビマンユニオン」での番組制作を経て、’94年より教鞭を。好きな回は<ガンダム芸人>と<家電芸人>。

つかこし・ともこ 「東京中央カウンセリング」代表。雑誌やテレビなどで幅広く活躍中。<宅配芸人><ガラスの仮面芸人>の回が好き。

【取材、文・河野友紀】

(anan 2017年6月21日号)

あと数回となった“幸福な一人飯” 「孤独のグルメ」を味わい尽くしたい!?

2017年06月20日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム



今年上半期のテレビ界、あちこちで“食ドラマ”を目にしました。「ホクサイと飯さえあれば」(TBS系)、 「野武士のグルメ」(ネットフリックス)、 「ワカコ酒」(BSジャパン )、「幕末グルメ ブシメシ!」(NHK)などです。

しかし個人的には、あと数回を残すのみとなった「孤独のグルメ Season6」(テレビ東京系)が、最もフィットする食ドラマです。


定番の味「孤独のグルメ」

開始から5年。「孤独のグルメ」はシリーズも6を数え、すっかり深夜の人気定食、いえ人気の定番となりました。

何がいいかと言えば、「変わらないこと」ですね(笑)。主人公の井之頭五郎(松重豊)が、出かけた先の町で早々に仕事を済ませ、食べもの屋に入るというパターンは、ずっと変わっていません。

今期も、新宿は淀橋市場の豚バラ生姜焼き定食を、世田谷区太子堂の回転寿司を、また千葉県富津のアジフライ定食を、どれもうまそうに食べています。しかも、このドラマの名物である五郎のモノローグというか、心の中の声がよりパワーアップしているのです。

たとえば渋谷道玄坂の「長崎飯店」。皿うどんに入っていた、たくさんのイカやアサリに、五郎は心の中で「皿の中の有明海は、豊漁だあ~」と感激です。また春巻きのパリパリした食感について、「口の中で、スプリングトルネードが巻き起こる」と熱い実況中継を展開します。

さらに追加注文の特上ちゃんぽんに、長崎ソースをドバドバかけて食べながら、「胃ぶくろの中が『長崎くんち』だ。麺が蛇踊りし、特上の具材が舞い、スープが盛り上げる。最高のちゃんぽん祭りだ!」と、驚いちゃうほどの大絶賛です。

もしもこれを情報番組などで、若手の食リポーターが語っていたら噴飯ものでしょう。きっと「オーバーなこと言ってんじゃないよ!」と笑われてしまいます。

しかし、我らが五郎の言葉には、“一人飯(ひとりめし)のプロ”としての説得力があります。「食への好奇心」、「食への感謝の気持ち」、そして「食に対する遊び心」の3つが、過去のシリーズ以上に“増量”されているからです。


最近の「食ドラマ」

そういえば、「孤独のグルメ」をはじめ、最近の食ドラマは主役1人で成立させているものが多いですね。

かつて「一人飯」は「ぼっち飯」などとも言われ、マイナスイメージが強かった。でも、いまどきは未婚や晩婚に加え、離婚も増えたりして、個の自由を大切にする考えが広まり、「一人飯」が共感を呼ぶようになったのではないでしょうか。

しかも、最近の食ドラマに出てくるのは、高級店や高級食材ではなく、普通の食堂や食材が中心です。デフレが日常化する中で、無理をしなくても手が届く幸せを、じんわりと肯定してくれているのです。

あと数回の幸福な一人飯「孤独のグルメ」。その“定番の味”を、まさに味わい尽くしたいと思います。


ヤフー!ニュース「碓井広義のわからないことだらけ」
https://news.yahoo.co.jp/byline/usuihiroyoshi/


【気まぐれ写真館】 セミナーで、幕張 2017.06.19

2017年06月20日 | 気まぐれ写真館