★しろうと作家のオリジナル小説★

三文作家を夢見る田舎者です。
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義腕の男2(24)

2014年07月09日 | 短編小説「義腕の男2」
 当然、イスランの兵士達は信じない。銃を構え直して問い詰める。
「そんな話は聞いていない。博士を移送するのは我々だけのはずだ。誰だ貴様ら!」
 できれば、穏便に博士を救出したいと思っていたが、どうやらそうも行かないらしい。頼りの右腕は既に戦闘モードになっている。いつ事を起こすかタイミングを測っていると・・
 突然、身体に衝撃が走った。
 何が起きたのか全く理解できないまま、胸に致命的な痛みが走ると同時に、白衣姿のクリス博士がものすごい勢いで身体ごとぶつかってきた。
 俺とクリス博士は、巨大な神の鉄槌を食らったかのようにまとめて吹き飛ばされ、数メートル離れた反対側の壁に激突した。
 俺が、飛ばされながら、コマ送りのように見た映像は、Mr.Jの傍らに立っていた博士そっくりの子供が、銃をこちらに構えたままにしている姿だった。
 その銃口からは発射したばかりの証である煙が上がっている。
 俺は、吹き飛ばされながら、この娘が俺とクリス博士を撃ったのだということだけは確信した。
 銃声が響いた廊下には、一瞬にして緊張が走り、物品の運搬に勤しんでいた人々も自身の安全を確保するためしゃがみこんだりして、固まっている。
 その隙をついて、Mr.Jは銃を持ったままの女の子を抱きかかえ、人間とは思えないような跳躍力で人々の上をジャンプし、猛スピードで出口に向かって走り出した。
 銃を構えたイスラン兵は、多分何が起きたのか頭の整理がつかないのだろう。呆然と立ち尽くしている。


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