★しろうと作家のオリジナル小説★

三文作家を夢見る田舎者です。
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俺は殺し屋

2011年01月22日 | SS「俺は殺し屋」
ダークスーツに身を包んだ俺は、ライフルの銃床を肩に当てた。使い込んだその形状は俺の肩にしっくりとフィットする。
 そのまま一連の動作で、今夜の獲物を確認するためにスコープを覗き込んだ。
 レンズの向こうには、男の後姿が見える。男は金髪の女性と歓談しているのか、時折、肩を揺らして笑っているようだ。今から起こる悲劇を全く予想もしていないことだろう。
 そう、俺は殺し屋。それも一流の腕前だ。今夜のターゲットはあの男。こんな何十メートルも離れた場所から命を狙われているなんて思ってもいないはずだ。
 あの男が殺される理由は知らない。俺は依頼された仕事を淡々とこなすだけ。それが一流というものだ。
 俺は、スコープを覗いたまま引き金に指をかけた。狙いは男の後頭部。スコープの中の十字マークはピタリと的の上に止まった。後はこのまま静かにトリガーを引くだけ。それで今夜の仕事は終わる。
 俺は、右手の人差し指に力を込めた。と、その時、男が突然振り向き、スコープ越しに俺の視線を捕らえた。明らかに俺が狙っていることを知っている。
 なぜだ。
 その疑問に答えが出ないうちに、男は金色の拳銃を構え俺に狙いを定めた。そして何のためらいもなくぶっ放し始めた。
 「うおお、、」
 俺は喚きながら、ぶれるスコープを覗き引き金を絞った。鈍い音がトリガーを引くたびに肩に響く。・・・当たらない。揺れる照準器のせいか、あせる心のせいなのか。やばい、、汗が一筋こめかみを流れるのが判った。。その時、、目の前が真っ赤に染まった。
「ビーーーー」
 後ろから声が聞こえた。天使の声なのか・・
「おじちゃん、負けたんなら早く替わっておくれよ。さっきから待ってんだよ」
スコープ越しの赤い画面には、「GAME OVER」の文字が大きく点滅していた。


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