★しろうと作家のオリジナル小説★

三文作家を夢見る田舎者です。
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彗星の時(19)

2011年10月23日 | 短編小説「彗星の時」
三人がシアークにたどり着いたのは、陽の出の少し前だった。
 まだ街は目覚めていなかったが、パン屋や早出客が多い宿屋等、朝が早い商売家の煙突からはすでに白い煙が上がっていた。道路には人影は見えず静まり返っている。
 ヤーコンは、町にはまだ入らず、ケインとシャインを町を一望できる小高い岩山に導いた。
 町の周りは人の背丈の倍ほどある壁でぐるりと囲んである。この辺りの町に多い造りで、野生動物や野党を防ぐためのものだ。入り口は東西南北に一箇所ずつ、門が設置されており、夜間は閉じられているが、日の出が近い今は開いたばかりだった。
「ケイン様、この町シアークでは、サルサから連絡を受けた『地の国』の兵士たちが私たちを待ち受けているでしょう。たぶん、あの門の辺りだと思います。サルサの力を持ってすれば、我々が今どこにいるか判っているはずです。ですので、ここで覇道を使います。兵士たちの目を少しだけ欺いて町にさえ入ってしまえば何とかなるでしょう」 
 そう言うと、ヤーコンは呪文を唱え、杖の輪を一回打ち鳴らした。