★しろうと作家のオリジナル小説★

三文作家を夢見る田舎者です。
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彗星の時(17)

2011年10月10日 | 短編小説「彗星の時」
 ヤーコンは、そのフードの奥を見透かすかのように言った。
「お互い、手の内を知りつくしているのですから、無駄な争いはやめて我々を無事『天の国』へ帰れるようにはしていただけぬものですか」
 サルサは、フードごと頭を左右に振り、地の底から響くような低い声で反論する。
「できればわしもそうしたいところじゃが、そうも行かぬ。そこな王族のご子息には今しばらく我が『地の国』に滞在していただかなくてはならぬ。そのことは貴殿も重々承知しておろう」
 ヤーコンは、サルサの言葉を聴きながら、ケインたちのそばに近づいた。
「人間を超えているといえば、その男。いったい何者じゃ」
サルサは、ヤーコンが近づいていった二人、特にシャインの方を見ながら言った。
「とても人間には思えぬ・・・・が、さりとて魔道の波力も感じられぬ。そのような者見たこともない」
ヤーコンは、一瞬困った様な感じに少しだけ唇を歪めたが、すぐにニヤリと笑みに変えて言った。
「このお方は、われらの用心棒、未知の力を使いこなす超戦士なり。サルサ殿とて重々ご用心めされよ」
 サルサはしばらくシャインを見つめていたが、見ているだけでは埒が明かないと思ったようで、
「多勢に無勢じゃな。ここはひとまず退散するとしよう」
と言うと、手に持った杖を地面に刺すように突いた。杖の上先端には、ヤーコンのそれと同じように金属の輪が付いて、地面を突いた拍子に「シャリーン」という音が響いた。土くれの兵士が出てきた時と同じ響きだった。
 だが今度は、土くれ兵士が出てくる代わりに、サルサの姿が徐々に薄くなっていき、やがてすっかり消えてしまった。