家内がトイレの便器を洗浄剤と紙やすりでこすり落とした際に陥った「急性記憶障害」の顛末。
心配なので念のために脳神経外科を受診し、脳のCTスキャンをしてもらったが、脳自体に異常は認められなかった。
受診後に下された家内の突然の記憶障害についての病名は「一過性全健忘症」(いっかせい・ぜん・けんぼうしょう)ということだった。
「一過性」と「健忘症」は分かるが「全」が付いている。
その意味は数時間の間の記憶がすっぽり、つまり全部が抜け落ちているということだそうだ。
たしかに家内がトイレ掃除をしている間はおろかトイレ掃除に着手したことさえ忘れていたのだから、トイレ掃除に関わる全行動がすっかり記憶から抜け落ちていたのだ。
おぼろげに、例えば「紙やすり」を何枚使ったかとか、洗浄剤の量はどのくらいだったかなどを覚えていればまだしも、それらのことは全く覚えていないのだから不思議である。
まして私が「休憩したらどうだ」と言ったことも覚えていない。こちらの呼びかけに「何時になったの」という頓珍漢な返事をしているのだが、そのことも記憶から抜けている。
まるで夢遊病者だが、ちゃんとトイレ掃除を継続しているのだから単なる夢遊病ではないだろう。
いわゆる漂白系と塩素系の混合使用による塩素ガス中毒ではないので、原因は不明とされたそうだが、やはり揮発性は高くないにしても何らかのガスを吸い込み、それが血中に溶け込んで意識障害を起こしたのではないかと思う。
本人は当日の午前中、庭掃除をしていて「熱中症」に罹っていたのではというようなことを言っているが、そこまで気温が高かったわけではないし、もしそうだとしたらトイレ掃除に取り掛かることはできなかったはずだ。
いずれにしても現在は何ら不審を感じさせない元通りの意識と行動に戻っているので一安心である。