鴨着く島

大隅の風土と歴史を紹介していきます

大麻問題と「神宮大麻」

2023-08-03 19:27:44 | 日本の時事風景

昨日から報道されている日本大学のアメリカンフットボール部の学生寮での「大麻問題」では、ついに今日、警察が大麻違法所持と覚せい剤違法使用の疑いで選手が住む寮に家宅捜査に入った。

これと時を同じくして、今度は岐阜県瑞穂市にある朝日大学のラグビー部員の数人が、大麻を所持しかつ販売した疑いで書類送検された。

夕方のテレビ報道によると、昨年、大麻の違法所持・使用で検挙された人数は5000人を超えており、その内、約70パーセントは20歳台以下だそうだ。

若者の検挙数が増えているのは、おそらく新型コロナによる孤立閉塞感とスマホを通じて違法薬物へのアプローチが容易になったことによるのだろう。

上の二つの例は違法薬物の大麻が学生にまで広がってきたことを端的に示すもので、改めて危機感が浮上して来る。取り締まり当局の活躍を願う。

さて、ここで話はガラッと変わる。

毎年初詣に出かけた際に、神社の社務所で「神宮大麻」と白い封筒のような袋に赤い字で印字された御札を購入して帰るのだが、この印字の「大麻」が気になって来た。

今年の初詣で購入した「神宮大麻」。今年は特に神宮大麻が伊勢神宮から全国へ頒布されるようになってから150周年ということで長い印字になっている。

私自身は常に「神宮の御札(おふだ)」と言い慣わしているのだが、この正式名「神宮大麻」の意味を調べると「大麻」は「おおぬさ」と読むべきらしい。

大麻(おおぬさ)は神に捧げる「幣帛」(へいはく)のことで、「幣(へい)」はもともと植物の麻を意味し、「帛(はく)」は絹か綿の布のことだそうである。

神前で祈る際にはこれらの供物を捧げてから祈るのだが、時代の変遷でいつのころからか榊に紙製の紙垂(しで=和紙を折り畳んで途中途中にカットを入れ、階段状にひらひらさせた物)を付けるのが主流となった。

今日では神官が祈祷に訪れた氏子などに対して一寸くらいの太さの丸棒に撚った麻糸を多数垂らし、さらに棒の先に長めの紙垂を取り付けた物を祈禱者の頭上で左右に振る所作を行うが、これは「ぬさ」と言っている。

「おおぬさ」も「ぬさ」もどちらもそこに神が宿るという意味では変わらないが、「ぬさ」は祓いの神が宿り、「おおぬさ」は祈祷の対象の神が宿るという違いがあるようだ。

初詣の時に神社の社務所で頂く「神宮大麻」は伊勢神宮の至高神アマテラス大神が宿り、我々のその年の日常を見守ってくれ、またこちらから至誠を込めて祈れば通じる可能性があるいわば「相互受信装置」というアイテムである。

その極めて大切な装置である「御札」の名称が「大麻」となると、たいていの人は「タイマ」と読み、例の違法薬物の大麻と読みを重ねてしまうのが現状である。うーんとうなってしまうのは私だけではあるまい。

そこで「神宮大麻」の名称そのものを変えるか、もしそれはできないとあらば「じんぐうおおぬさ」というルビを施してもらいたいと思うのであるが、どうだろうか。

今日では諸外国からの旅行者が多く日本を訪れ、そのうち少なからぬ人たちが伊勢神宮を訪れると思うのだが、お土産にこの「御札」を買って帰る場合もあるに違いない。

そうした際に「大麻問題」がマスコミをにぎわしている現状を知り、土産の御札の白い袋に赤く「神宮大麻」と印字してあるのを見てぎょっとしはしまいか。

やはり「神宮大麻」という名称そのものを変えるのが良いのではないだろうか。例えば「神宮御幣(ごへい)」のように。