鏡花水月紀。

日々の言の葉、よしなしごと。

金沢秋天・21美鑑賞メモ。

2010-10-18 | 日々のこと。
高くつき抜けるような秋晴れの土曜日、翌日行われるマイ醤油作りに参加するために尼崎からやってきたしらこちゃんと21美へ出かけた。

この日のお目当てはおしゃれメッセ2010かなざわごのみの「生活工芸展」だったが、せっかくだし企画展も視ようと、まず「ぺーター フィッシュリ ダヴィッド・ヴァイス」へ。・・・・・・が、これはしらこちゃん曰く「私を拒否している」。同じく私も拒否されたようなので(苦笑)、2人でさっさと会場を後にしてしまう。
ちょうど金沢市民は無料デーだったので私はよかったが、しらこちゃんは「千円返してよ~」と立腹する。

それを補うべく面白かったのが、高嶺格(たかみねただす)のインスタレーション「Good House,Nice Body」。現代住宅に潜む「インチキ臭」への嫌悪を出発点とし、メンバーや来場者とともに「ひとが住む場所とは何なのだろう」ということを自分の身体を使って、作り、感じて、考え、発信するものというコンセプト。プロジェクト工房の土嚢で作られた家は、どこか秘密基地の趣きもあって楽しめた。

そしてお目当てだった「生活工芸展」。
なんだと肩透かしをくらう。〔生活〕なんて冠につける必要もないし、〔工芸〕に当てはまらないような雑貨やら何やらも。雑誌の特集「私のお気に入り」といったページで見れば十分。うすっぺらで意図がわからなく。

それでも眼福だったのは、ユキ パリスさんの品々。和洋を問わず一本筋の通った高い美意識が流れて別格。あの中に置いておくのは申し訳ないくらい。同じく筋の通ったセレクトということでは、高橋みどりさんと鉄の工業系アンティークを並べた人のも筋が良い。
あとは目が甘かったり、ぶれていたりで、もう、いい。
物には人格が現われる。出した人は自分をみられていることを知っているのだろうかしら。
恥ずかし。

最後、ついでにと入った「創作セレクト展」。
これが意外に楽しくてじっくりと視た。プロダクトデザインの用と美。
いいね。


と、まあ、あなた何様といった毒たっぷりメモ。失礼。

町家にヒンメリ!

2010-10-15 | ぐるぐる町家巡遊
明後日17日(日)は町家巡遊2010 金石・大野エリアのプレイベント
「マイ醤油作り」がいよいよ行われます。

会場は直源醤油さんの母屋と研究室。
その開催に先がけて直源さんの母屋のオエの間吹き抜けに、
ヒンメリが飾られました。
これはクラフト作家TOKOさんを中心にした「ヒンメリの会」が作ったものです。

ヒンメリとはフィンランドで収穫祭や誕生祭のときに飾られる、幾何学文のモビール。
材料は麦わらです。
今回TOKOさんは石川県産のものを入手され、麦わらの余分な部分を外したり、
使う長さにカットするなど、コツコツ二ヶ月以上準備をされてきました。

こちらが飾られているヒンメリの一部
町家の格子とヒンメリが、とてもマッチしていますね!!

ヒンメリは今日からクリスマスまで、
直江家のオエの間に飾られます。
どうぞ皆さま、ご覧になってください。


かなざわ散歩道。

2010-10-14 | 日々のこと。
先だって、金沢市の広報広聴課から
市の広報番組「かなざわ散歩道」の取材依頼を受け、
取材していただきました。

金沢市が推進するレンタサイクルのPRと、
10月23日・24日に開かれる金石・大野エリアの町家巡遊2010、
醤油サミットを絡めた内容のようです。

自分もかつては取材をする側でしたが、
それは紙の上、二次元の世界。
シナリオに添って作られていく「三次元の世界」を、
珍しく思いながら体験させていただきました。

私はこそばゆくて視ることはないと思いますが、
放送は10月17日(日)朝7時半、テレビ金沢。
写真の横田アナがリポーターです。


秋風に吹かれて、坂のまち。

2010-10-11 | 八尾だより。
今年で15回目を迎えた「坂のまちアート」。
アートといっても各地で行われている現代アートのそれらと比べると、
坂のまちアートは地元作家主体でとってもスローな空気感が流れ、
住んでいる町の皆さんも玄関先に「野の花アート」として花を活け、
この催しを楽しんでいます。



2日目の10日に、町家巡遊でもお世話になっている金沢大学講師のKさんが、
ご家族で遊びに来られました。
Kさんは町家の研究をされているので八尾にも何度かいらっしゃっているのですが、
この坂のまちアートは初めてとのこと。
色んなアート体験が気軽にできることや、町の方々もアートも催しを楽しむ空気ができていることに、
感銘をうけていらっしゃいました。
金沢で今開催されている「町家巡遊」も、そのような空気が生まれ育っていくことを想います。


(人形作家・松本昌子さん)

そして秋風に吹かれながらぐるっと回っていると、
アート鑑賞だけでなく、色んなお店に惹かれてついついお買いものも。
うちの八尾の店もそういったなかの一つで、柳の下のドジョウ商法(苦笑)。
まあ、そういうお買いものの楽しみも、この催しが長く続いてきた理由の一つでしょうか。

私も店番の合間に八尾の町をぐるっと回っているうち、
つい買いものしたのは、むかごと棗の実。
いずれも食べものですが・・・・、あ、なにか?
むかごはむかご飯にしてもう頂きましたよ、ふふ。

棗は茶色く色づいたものは生でも美味しく、ちょうど青リンゴのような味です。
それでも一遍には食べられませんから、今甘露煮に仕立てているところ。
棗は腸を温めてくれるので、体にもいいのです。
お茶道具の棗もこの棗の形から~。
午前中、「町家で一服、お茶時間」を助けて頂く紫陽花さんと文緒さんにも少しお裾わけ。
今度お会いする時は、甘露煮をお渡ししますね。



坂のまちアート inやつお2010

2010-10-07 | 八尾だより。
今週末の3連休、富山市八尾町で
「坂のまちアートinやつお2010」が開かれます。
今年で15回目を迎えるこの催しは、
すっかり町の行事として愛され定着しています。

ふだんは公開されない一般の町家で、
絵画、陶芸、彫刻、インスタレーション、
書、写真、人形などさまざまなジャンルの作品が展示されます。

今年は以前、富山の堅香子でつまみ細工の帯留を教えて頂いたりした
人形作家の佳乃さんも出展されているので、
私としてはいっそう楽しみ。

美味しいお蕎麦屋さん、お料理屋さん、お豆腐屋さんなども
八尾に増えました。
趣きある町並みを散策がてら、
どうぞお越しください。
坂のまちアートにあわせ、上新町なりひら通りの
八尾の店も開けています。
(私は9日と10日、八尾の店にいます)


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坂のまちアートinやつお2010
2010年10月9日(土)~11日(祝)
10時~17時

*9日は上新町なりひら通りで
特産物などが並ぶ「風の市」も開催されます。

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ゆらゆら。

2010-10-06 | 日々のこと。
放射状に伸びる地震雲らしきものをみたのは9月30日。
高岡で仕事を終えた夕方、万葉線に乗り込んだころ。
以来、日本列島各地で地震報道が続いて各地の揺れ。
なんだか不安です。

揺れといえば、
今大野町のあちらこちらのお家の軒先にゆらゆら、
みかけることができる写真のオーナメント。

お醤油瓶をモチーフにクラフト作家TOKOさんがデザインし、
金石の木工屋さんが製作しました。
先日来、10月23日・24日の町家巡遊をご案内していますが、
同日に第4回全国醤油サミットも開かれる大野町。
そのためのものです。
下げている家の方がこのオーナメントに独自に飾りをつけたりして
ほほえましいものもあちこちに。

ゆらゆら、地面が揺れるのはごめんですが、
こちらは風に吹かれてゆらゆら。
大野の町並みを彩っています。


追記)
先だってご案内しました「お醤油スィーツレシピコンテスト」。
50ものレシピが集まり関係者一同嬉しい悲鳴をあげました。
ありがとうございました。
10月24日4時からはもろみ蔵でトークショー&試食会も行われます。
新しい醤油スィーツの誕生に立ちあいませんか。
参加お申し込み、お待ちしています。こちら



矢田のジロザミさ。

2010-10-04 | サワサワ茅葺き
邑知潟をはさんで東往来、西往来と呼ばれる旧道沿いには、トタンをかぶってはいますが今も茅葺き民家が数軒残っています。
そば処上杉をあとにして七尾へ向かうのに、西往来を通っていくことにしました。私はおいで祭りや旧道にある小田中親王塚の取材で何度も来たことのある道ですが、意外にも金沢工大で建築を教えているNKさんが初めて。町の風情や屋並にいたく感心していました。

お訪ねするMさんのお宅は城山のふもと、すこしわかりにくい場所にあるため、地図をコピーして持っていきました。が、茅文研のSさんが「この道おもしろそう」と脇道へハンドルを切るものだから、そこから道に迷うこと30分・・・・・・。そして「オレ、方向音痴なんや」。そんな人がなぜ脇道に行こうって言うのだ!? 
疲れ果てたころに見覚えのある景色が広がってきたので、ここは右、ここはそのまままっすぐ、左へ曲がってと後部座席からウムを言わさず指示を飛ばして、ようやく到着です。

門の前に植えられたシイや桜が、茅葺き屋根を隠すくらいに育っています。母屋の脇の家からお嫁さんが出てこられ、ご挨拶をしてご当主をお呼びいただきました。
まもなく横の畑からご当主。三年前と変らずお元気そうで安心しました。
挨拶もそこそこにさっそく家の前で屋根のお話。「見てもらうとわかると思うけど、桐が生えてきたり、穴があいて茅が凹んできたんや」見上げると平入りの正面右ににょきっと50センチくらいに育った植物が確かに。そこから1メートルほど左には10センチほどに丸く茅が凹んでもいます。

初めは七尾市教育委員会に相談してみたようですが、けっきょくいつも屋根を修理してもらっている柳田のKさんにご当主が修理を依頼し、10月半ばに挿し茅で直すことに決めたそうです。屋根全体を見るために、家の周りをまわって蚊の猛襲を受けながら(涙)、一通り確認。七尾湾に向いた屋根が潮風のせいか劣化が大きいように見えました。

SさんとNKさんがご当主と話している間、私はお嫁さんとお話。お父さんも今は元気だけどもし何かあったらこの屋根を私が維持して行かなくちゃいけないので・・・と。石川には茅葺き職人の方ももういないに等しいからとおっしゃるので、確かに石川はそうですがと前置きし、先般の五箇山であった茅葺きフォーラム、全国では新しい考えをもった若い職人さんが増え活動しているのですよとお話するととても驚かれたご様子でした。

以前のヒアリングの時、文禄から続く家とおっしゃっていました。今回私たちが訪ねた意図の一つに、このお宅を地域の財産として七尾市の文化財指定に持ち込めないものかということがありました。
文化財には国指定と市町村の指定するものがありますが、実は国は指定だけでほとんど補助がつかず、市町村の指定だと修理存続の補助がいくばくか出るのです。その指定を受けるのに何か実証できる文献はないかとお尋ねしたのですが、残念ながら特別なものはないらしく、とりあえずと持ち出してこられたのは過去帳。
見せていただくと明治時代に調べたものに現在まで追記してあり、その書き出しの最初が文禄でした。その元になったお寺の過去帳の写真もあり、それは見る限りかなり古い。

文献の確証というところではまだ弱いですが、一般の農家よりもかなり裕福で、格のあったことを家自体の造りが物語っています。
例えば玄関。これが3つもあります。1つは土間に続くもので家の方や小作の方が出入りしたのでしょう。2つ目はオエの間に直接上がれる玄関。そして3つ目は僧侶と神主用の仏間の前、前の間に上がる玄関。この仏間、前の間の畳の敷き方も独特です。庭も今は荒れていますがシイと柊の古木、庭石もなかなか。
ご当主のお話によると七尾の日吉神社に頼まれて庭の五葉松を寄進したこともあったとか。
「『矢田のジロザミさ』と言ったら、知らない人はおらんかった」そう懐かしむご当主。代々の当主が名乗られた治良左エ門という名前を、土地の方々はそう親しみをもって呼んでいたそうです。



まだこのほかにも色々なお話を伺えたのは収穫でした。
文献やこの家と関わりのあった神社やお寺を調べれば、外堀からもう少し確かな情報を集められ、申請にも弾みをつけられそうです。
またそれ以上の大きな収穫は、この茅葺き屋根を守っていこうという気持ちをお嫁さんからお聞きできたこと。ご主人が生きていらっしゃるときに、この家での想い出話もされていたのでしょうね。
ゆくゆくは今、熊本で循環型農業の活動をされている息子さんに受け継がせたいとおっしゃるので、茅葺きは農の営みの一つであるから、ぜひともそうしてくださいとお伝えしました。

またご当主にはこの家の語り部としてご活躍いただきたい旨や、お宅を茅葺きのワークショップ、茅葺き職人の育成などの拠点にできればといったお話もさせていただいたところ、お許しをいただけました。
まだ入り口に立ったばかりですが、「地域の財産」としてこの家を活かし、守っていくお手伝いを微力ながらなし遂げていきたいと思います。


そば処上杉にて夏蕎麦!

2010-10-02 | 日々のこと。
七尾の茅葺き民家へ向かう前に腹ごしらえをということで、
宝達志水町麦生にある「そば処上杉」へ行きました。

能登有料道路今浜ICをおりて3分。
ここのお蕎麦を頂くのは2年ぶりくらいになるかもしれません。
ご主人の上杉さんと茅文研のSさんとは20年来のお付き合いで
「おいしい蕎麦が手に入ったから」とお声がかかって、
折よく七尾へいく用事と重なり寄りました。

夏蕎麦とあるのは夏に採れた蕎麦の実なんだそうで、
ご主人いわく甘くて、香りもいいとのこと。
ざるは冷水のみで打つ十割蕎麦。
細く美しく、そしてもちろん旨い。
美味しくな~れ、そんな気持ちをこめて、
いつも蕎麦を打つのだそうですよ。

奥さんの揚げる天ぷらは衣がひたすら薄くパリッパリで天下逸品。
来る度なのですが今日も天ざるをお願いしました。
ツユにつけて食べる前に蕎麦だけを食べてみましたが、本当に甘い。
蕎麦を堪能し、蕎麦粥、上杉名物水ようかんも食べて満足満足。



庭の向こうに見える宝達山を眺めて一服していると、
そこへ、つつっとお店の方がお出でて
「今からかけも出しますから、まだ蕎麦湯は飲まないでね」とおっしゃって去っていく。
どういうことだろうと思っていると
「ははぁ、ざるとかけを、食べ比べろってことかいな」とSさん。
それはてっきりSさんだけに運ばれてくるものと思っていたところ、
金沢工大のNKさん、そして私の前にもしっかり一人前のかけ蕎麦が運ばれてくる。
ウ~~ン、ハイラン。

それでもかけそばは山芋をつなぎにいれた二八というので食べてみると、
これは山芋の香りと蕎麦の食感がいきた
ざるとはまた異なる美味しい蕎麦。
化学調味料を一切使わない出汁は、すっきり澄んだ味。
ご主人のせっかくの計らい、がんばって頂きました。
アレ~~、ハイルモノダ。

厨房の仕事を終えてご主人が座敷にお出でてしばしお話。
蕎麦にかける思いを色々とお聞かせいただきました。
そのなかで「同じ産地でも土地の味=地味がある。
その土地ならではの味は動かし難いものだ」という言葉に、
茅葺きの家もそうだなあと重ね合わせ聴いていました。



満腹というよりぽんぽんに破裂しそうなお腹とあいなり、
当初の目的を忘れそうになりましたが、いざいざ七尾へ。
続きはあした。果報は寝て待て。