鏡花水月紀。

日々の言の葉、よしなしごと。

初めての芝居噺。

2007-09-19 | 日々のこと。
落語のジャンルに、「芝居噺」というものがあることを、
先日初めて知りました。
9月17日に石川県立音楽堂内邦楽ホールで開かれた、
「にほんご万華鏡―芸能三題を覗くー」のなかでのことです。

芸能三題の1つ目は、江戸のアニメ、江戸写し絵と江戸写し絵×説教節。
2つ目は泉鏡花の「木の仔説法」の朗読と話中にでてくる狂言「魚説法」。
3つ目がその芝居噺で林家正雀による「怪談累草紙 親不知の場」。

芝居噺とは、歌舞伎人気にあやかって、
噺のなかに歌舞伎の芝居が入ったものだそうです。
その芝居噺もまた2種に分れ、私が聞いたのは「正本芝居噺」という方。
それは高座の後ろに黒幕で隠された道具が飾られ、
噺家はその前で素噺をまず語り始め、
噺のクライマックスになると、黒幕が外され道具が現れるものです。

正雀語る「怪談累草紙 親不知の場」では、
噺の佳境に入ると衣裳の早変り、
後見(黒子)が親不知の海岸を描かれた背景をさっと引き出す、
拍子木で床を鳴らして切りつける様を表すなどの音響もあり、
ぐいっと噺の世界に引き込まれ、
四衛門にお磯の指が落とされる陰惨な場面では、
ゾクゾク肌寒くなる熱演でした。

八代目林家正蔵師匠ゆずりの「てに恐ろしき・・・・という」〆の文句で、
高座が一旦しめられたあと、
「怪談っていうのは陰気で湿っぽくていけね~からって、
必ず最期に座を明るくするよう踊るのがうちの伝統で」と正雀。

豆絞りの手拭を鉢に巻くと、お囃子にあわせ奴さんを披露。
師匠の口真似とその身振りにどっと笑いがおこり、
先ほどまでの空気が一気に霧散し、たちまち会場には陽の気配。
いい加減な踊りにみえるが、きちんと要が押さえらた踊りで、
魅せてくれました。いよっ!

素噺は昨今、この田舎でも聞く機会は増えていますが、
芝居噺なんていうものはなかなか聞く、見ることのできないもの。
いい時間でした。