俳句日記/高橋正子

俳句雑誌「花冠」代表

3月16日(日)

2014-03-16 07:36:35 | Weblog
★花すもも散るや夜道の片側に   正子
夜の静けさに、らんまんと咲いたすももの花の、雪のようにはらはらと散るさまが美しいかぎりです。夜道の片側にこぼれる、花すもものひそやかな情景に、春の夜の淡く柔らかな空気感も伝わってまいります。(藤田洋子)

○今日の俳句
桃の花馴染みの声の店先に/藤田洋子
桃の花が店に活けてある。店先に馴染みの声が聞こえて、「あら」と思う。桃の花には、気取らない、明るい雰囲気があるので、「馴染みの声の店先に」言ってみるのだ。日常の一こま。(高橋正子)

○辛夷(こぶし)

[辛夷/横浜都筑区緑道ふじやとの道]

★風搏つや辛夷もろとも雜木山/石田波郷
★晴ればれと亡きひとはいま辛夷の芽/友岡子郷
★風の日の記憶ばかりの花辛夷/千代田葛彦
★烈風の辛夷の白を旗じるし/殿村莵絲子
★夕辛夷ドガの少女は絵に戻る/河村信子
★朝のはじめ辛夷の空をみていたり/酒井弘司
★ライオンの柵の中なる花辛夷/小西鷹王
★花こぶし汽笛はムンクの叫びかな/大木あまり

★風に吹かれててんでんばらばら辛夷咲く/高橋信之
★青空の一画を占め辛夷の白/高橋信之
★花辛夷風のあらしに揉まれつつ/高橋正子
★辛夷の花枝ごと揺れて揺るる空/高橋正子

○辛夷の花が咲き始めた。もう、かなり咲いている。近くでは、高田町の丘の畑に立つ大きな辛夷の木が素晴らしい。その丘をバスが走り、バスの窓からその辛夷の木が眺められる。広く、霞に濁る空に、白い辛夷の花が小説の中の世界のように咲いている。
小説や詩を読めば、「辛夷の花」がよく出てくる。しかし、私が生まれた瀬戸内でも、長く住んだ四国でも辛夷の花を見たことはなかった。あるとすれば、松山で最後に住んだ住まいの近くの総合公園にあったぐらいだ。もともとあったのか、植樹されたのかは知らないが。ところが、横浜に引っ越して、白木蓮を見ることは、ごくごく稀になった。辛夷、辛夷と庭にも丘にも、咲いている。私には、堀辰雄のイメージに重なる花だが、夢に見た辛夷の花を、こうも身近に見られるとは。

 コブシ(辛夷、学名:Magnolia kobus)はモクレン科モクレン属の落葉広葉樹の高木。早春に他の木々に先駆けて白い花を梢いっぱいに咲かせる。別名「田打ち桜」。

 白木蓮とこぶしはこの2、3年(2003年~2005年)、デジカメで写真を撮るようになってからその違いに興味を持つようにになリました。はじめは白木蓮とこぶしの区別さえできなかったのですが、観察するようになってから段々にそれぞれの特徴がわかるようになり、そしてその違いを見つけることが面白くなりました。専門家ではないので、植物学的にはおかしなところがあるやもしれませんが、ご容赦ください。またもしアドヴァイス頂けたら嬉しいです。
 個人的な印象を言えば、白木蓮の花は上向きで天に向かって咲き、大きく、上品で優雅で孤高的な感じがします。一方こぶしは横向きに花が咲き、見る人の方に顔を向けてくれているようで、親しみやすく思えます。どちらが好きとか美しいとかいうことは言えないのでは・・・。どちらも冬の終わり(或いは早春)に、まず白木蓮そして次にこぶしが白い花を咲かせて、もうすぐそこに春が来ていることを知らせてくれます。でもその白い花のバックとなる空はまだ冬の真っ青な空で、花の白と空の青がとても美しいコントラストとなって忘れがたいものです。白木蓮とこぶしが咲き終わり、しばらくすると桜が咲きます。その咲く順番がまた絶妙です。桜の花のバックの空はもう春の空そのもので霞がかっていて、真冬の青い空とは違い暖かな印象を与えます。([ゆたかの部屋」より)


◇生活する花たち「シナマンサク・マンサク・猫柳」(東大・小石川植物園)
コメント (1)
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