6月2日(日)5時半に秋田駒ケ岳を目指して出発したが、晴れという天気予報と裏腹に青空は見えず岩手山も雲隠れしており正面に秋田駒ケ岳がみえる個所からは、辛うじて残雪が見える程度。
この日はマイカー規制のため路線バスを利用して7時半頃8合目に到着したがガス、歩くのに支障はない程度なので予報通りの青空を期待して歩き始めると早くも残雪と遭遇。
登山口
最初の残雪
大したことがないだろうと進むほどにその規模は大きくなり、とんでもない急勾配の雪渓を横切ることになるが、歩き易いようにカットされた巾50cmほどのステップを無事通過。
下は良く見えないが30°以上の急斜面 滑ったら止まらないだろう。
途中片倉展望台では何も見えないまま阿弥陀池に到着したのがコースタイムどおり1時間後の8時40分頃、これは視界なしと花が少なく写真を写す機会が少なかったためだが、それでもショウジョウバカマ、サンカヨウ、イワテハタザオ、ミネズオウを見ることが出来た。
阿弥陀池が何とか見える
そのまま最高峰の男女岳(おなめだけ 1637.4ⅿ)に向かうが風が強くて、半袖と長袖の二枚では寒いのでレインウエアを重ね着して耐えることが出来たが、手が冷たくて手袋を忘れてきたことが悔やまれた。
山頂ではときどき青空がのぞくものの展望は得られないため9時過ぎから20分以上粘ったところ、雲の動きが早くて青空の範囲が広がってきたので下山して男岳(おだけ 1623.0m)に向かうことにした。
山頂
青空が見え始めた
振り返れば男女岳と青空
ここで出会った花は、ミヤマキンバイ、キバナノコマノツメ、イワカガミ、チングルマ、コメバツガザクラと少なめだったが、青空はどんどん広がり男岳も姿を現した。
男岳に向かう前に阿弥陀池の畔で腰を下ろして小休止しおにぎり2個を食べたのが10時20分頃、これは一度に食べないで少しずつ何回かに分けて食べるのが良い、と聞いたのでやってみた。
男岳に向かう
男女岳と違い段差が大きく狭いところもある変化に富んだ登山道を歩くこと30分ほどで山頂に到着、眼下の田沢湖は勿論北の方には岩手山、烏帽子岳(乳頭山)、八幡平、森吉山から八甲田連峰まで綺麗に見え、南の方は和賀岳までははっきり見えたが、姫神山、焼石連峰は辛うじて見える程度で鳥海山と早池峰山は見えなかった。
山頂は雪渓の上
山頂が見える
山頂
田沢湖 水深423.4mは日本一
朝のガスを思えば大変満足できる展望で、風も無くて居心地がいいのでまた腰を下ろしておにぎり2個食べ、10時55分から11時20分まで滞在し下山開始。
男女岳よりもミヤマキンバイが見事なので何枚も写真を写しゆっくりと歩いたためか、登山道わきの見えにくいところにシラネアオイを数輪発見したが、こちらを向いていたのは一輪だけ。
再び阿弥陀池に戻り12時半頃登山口に向かって下山を始めるが、花も山も良く見えるので足取りがいい意味で重いが、暖かくなり半袖+長袖2枚ですこぶる快適に歩き、片倉展望台に13時頃到着してまたおにぎり2個食べたが、どうも食べすぎのような気がする。
阿弥陀池
下山開始 歩きながら振り返る
朝は見えなかった展望を楽しみあとはひたすら歩き、雪渓の横断個所に差し掛かるとこんな感じで
足を踏み外したら止まらないな、と怖くなり、またこのカットしたところから雪渓が滑り落ちはしまいかと
心配しながら無事登山口に到着したのが14時5分過ぎで、運よく発車が遅れていたバスに滑り込み駐車場まで乗ること約25分。
240台収容という広い駐車場に隣接するアルパこまくさという施設の温泉で汗を流し、17時半頃帰宅してからは恒例の居酒屋自宅、これではおにぎり計6個も加えると消費カロリー以上の供給となり痩せそうもないが、健康状態は維持されており良しとすることにしよう。
駐車場から振り返る
田沢湖も見える
百花繚乱には程遠く感じたがそれでもこれだけの花を見ることが出来た秋田駒ケ岳は男女岳、男岳、女岳、小岳などの総称で、深田久弥氏は著書日本百名山のあとがきで、この山も入れるべきであったかもしれないと記している。
自宅から1時間半ほどで登山バスの乗り場までたどり着くことの出来る地の利を生かし、毎週のように通えば様々の花の旬に出会うことが出来ると思うが、早池峰山、須川岳(栗駒山)も呼んでおり、今年は自分の限界に近い岩手山、焼石岳にも挑戦したいし7月には加賀の霊峰白山も控えており忙しくなりそうだ。
この日写真でもはっきりと確認出来た山をご覧いただくと
岩手山(2038.2m)は「南部片富士」の異名とはかけ離れた、岩手県民にとって馴染みの薄い変な形。
先週歩いた八幡平(1613.3m)は左側の残雪が見える平らな部分の何処か、右側の突起は茶臼岳(1578.3ⅿ)でここからの展望は素晴らしい。
森吉山(1452.4ⅿ)はスキー場のゴンドラを利用すれば2時間足らずで登ることが出来、高山植物も豊富なので私好みであるがゴンドラ乗り場まで約130kmを一般道で往復するのはしんどい。
八甲田連峰の右端が綺麗な三角錐で分かりやすい高田大岳(1552ⅿ)だが、最高峰の八甲田大岳(1584ⅿ)はどれだろう、一番大きな雪渓の右奥なだらかな部分と思われる。
右のピークがこの山域の最高峰和賀岳(1440ⅿ)、標高の割に高山植物が豊富で展望も期待できるが、登山道までの道路状況が悪いのと歩行距離が長いので未踏の山。
烏帽子岳(1478ⅿ)も高山植物に恵まれ登山口には温泉もあるので、何時か行ってみたい山の一つだ。
男岳から見た男女岳(1637.4ⅿの)の全景、岩手山から左に続く山なみと、その奥には八幡平も見える。
男女岳の麓から見た男岳(1623ⅿ)の山頂は左の雪渓の上。
男岳から見た女岳(1543ⅿ)昭和45年に噴火した時の溶岩流と噴気を見れば、噴火の兆候は認められないとされるが活火山であることには変わりない。
最後は小岳(1409ⅿ)母(女岳)に甘えている子供に見えるような気がする。
この一帯はのどかな牧歌的な風景からムーミン谷と呼ばれ、雪解け後はチングルマが咲き乱れる素晴らしい景観を呈することになる、と言っても伝えきれない、百聞は一見に如かずなのである。
小岳の向こう側にはこれから咲くのであろうコマクサ、オオバキスミレ、キバナノコマノツメなどが黒地に映える火山砂礫の大焼け砂だ。
次に花の写真にお付き合い願いたい。
ミヤマキンバイがこの日の主役で特に男岳が見頃だったが、登る時視界不良で見えなかったものが標高1400mくらいの箇所で確認出来た。
ショウジョウバカマとミネザクラは登山口付近から山頂付近まで、広範囲で確認できたので準主役と言ったところだろうか。
主役を張るにはまだ早かったヒナザクラは東北地方限定の白いサクラソウで、今後の活躍に期待したい。
思いがけなく好演したのが岩手山と秋田駒ケ岳特産であるイワテハタザオ、フジハタザオの変異種の一つで花柱が短いことが他と違うというが、他のハタザオは見たことがない。
ここからは脇役を務めた花たち
サンカヨウは白い花の集まりが綺麗だ。
ミネズオウはツツジ科の5㎜ほどの小さな花だが、動かずにいてくれて写り具合はまずまず。
ヒメイチゲは何カ所かで見かけたが、カメラが嫌いなのか写真写りは今一。
これはミヤマキスミレでキバナノコマノツメとは葉が違う。
黄色のスミレは分かりやすいのだが、濃淡があるこのスミレは悩ましくタチツボスミレかな。
思いがけなく出くわした男女岳のチングルマとキバナノコマノツメ、男岳のシラネアオイは飛び入りみたいなもの。
こっちを向いてくれないシラネアオイ
これもカメラ目線ではない
イワカガミ、ツバメオモト、コミヤマカタバミも見つけたのはこれだけで、貴重な役を演じていた。
コメバツガザクラは旬を過ぎたものが多くて、最近まで主役を張っていたようだ。
ミヤマキンバイを主役と書きだしたので役者の紹介みたいになったがこれにて完結、最後までご覧いただき深く感謝申し上げたい。