世界はキラキラおもちゃ箱・第3館

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ウルトラマン・キオ⑨

2016-09-01 04:16:39 | 夢幻詩語

   9

そこは楽園だった。文明を営む前の、原始の段階の人間がたくさんいた。リープの人間と似ている。だが、異様に小さい。この星の人間は、わたしの手のひらに乗るほど、小さいのだ。だが愛らしい。まるで泥団子のように黒っぽいが、目がかわいい。なんていいものが、ここにはあるのだろう。

森も豊かだった。水は無尽蔵にあった。空は青く、太陽は明るく、大地は美しい命の声にあふれていた。大気は澄み渡り、甘い香りに満ちていた。あらゆる生き物がいた。これはすばらしい創造だ。この星の神は、リープの神よりも高いことをしている。

わたしは父に感謝した。星の神も、わたしを拒否しない。ということは、わたしはここで生きていけるのだ。

わたしはしばらくの間、この星のあちこちを旅してまわった。どこに行っても、すばらしい生き物がいた。わたしは驚きを禁じ得なかった。リープの生き物たちとは違う。わたしの故郷にいた生き物たちは、もっととげとげしく派手な形をしていた。だがこの星の生き物たちは、どれもやわらかな形をしていて、ほどよい機能を持っていて、色もおとなしく、それゆえに美しい。ここの神は、リープの神とは違うことをしているのだ。

そのように旅をしているうちに、わたしはとうとう、ある島にたどりついた。驚いた。そこの人間は、ほかのところの人間たちとは違い、そこそこの文明を築いていたからだ。

そこは、わたしが覚えている故郷の国を、一回り小さくしたような島だった。緑と灰色の大地の上に、石を組み合わせて作った町があった。道があり、家があり、奇妙な人々が住んでいた。ザクロの実のように赤い肌をしている。髪は黒かった。男と女がいるらしい。男は女より幾分大きく、女は男より髪が長かった。

わたしは彼らを見て驚いたが、彼らもわたしを見て驚いていた。それはそうだろう。彼らにとっては、わたしは小山よりも大きいのだ。わたしは、不用意に自分の姿を彼らに見せてしまったことを少し後悔したが、もう遅い。彼らはわたしを見て、最初は逃げたが、騒ぎが収まってからしばらくして、代表者らしいひげを生やした大きな男が進み出てきて、わたしに声をかけてきた。

アレア、カラ。

意味がわからない。何を言っているのだろう。わたしは、彼を見つめながら、手を振って、わからない、という心を伝えてみた。すると男は、わたしを指さし、一層声を高くして、言った。

アレア、カラ、タ!

わたしは、ふとわかった。これは、わたしの名前を聞いているのではないだろうか。それでわたしは、できるだけ彼らを驚かさないように、声を柔らかくして、言ってみた。

わたしは、キオという。あなたは、だれなのか。

すると彼らは、驚いた目でわたしを見上げながら、キオ、と言った。そしてしばらくざわめいた後、代表者がまた一歩進み出て、今度は自分を指さしながら、わたしに言ったのだ。

エミ、アトランティス。

(つづく)





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