共 結 来 縁 ~ あるヴァイオリン&ヴィオラ講師の戯言 ~

山川異域、風月同天、寄諸仏子、共結来縁…山川の域異れど、風月は同天にあり、諸仏の縁に寄りたる者、来たれる縁を共に結ばむ

源氏物語に登場する音楽 《想夫恋》

2016年07月20日 21時58分51秒 | 音楽
前回、愛川町在住のシンガソングライターみらいあいこさんに向けて作詞作曲作業をしていることを書きました。

昨年提供した『マカロニグラタン』という曲は、例えて言うならNHKの『みんなのうた』に出てくるような雰囲気をイメージして作ったのですが、今回の曲は小野小町の和歌をベースにしていることもあって、結構和テイストな感じに仕上がっています。ただ、和風な感じというだけでは面白くないので、伴奏にはメジャーセヴンスを多用して浮遊感を出してみたりしました。ちゃんと弾けるかどうか、今から若干不安です…。

ところで小町の生きた平安時代には、有名どころの管弦《越天楽》や舞楽の《蘭陵王》《青海波》《萬歳楽》を始めとした今日の雅楽の曲目がかなり確立されていたようです。当時の文学作品の中にもいろいろな音楽作品が登場しています。

とりわけ有名なのは源氏物語でしょう。若き日の光源氏が頭中将と一緒に御前で《青海波》を踊るシーンは有名ですが、それと並び立つほど有名な場面に、源氏の息子夕霧が、夫である柏木を亡くして間もない女二宮の元を訪ねて和琴を爪弾くよう促し、自身も琵琶を構えて《想夫恋(そうふれん)》を弾き始める…というところです。男に恋する女の歌である《想夫恋》を弾かれた女二宮は、何だか自分の心の内を見透かされたような気持ちになって気まずくなってしまうのですが、最終的には曲のおしまいのフレーズをちょっとだけ弾いて夕霧に答えます。

この《想夫恋》という曲、源氏物語の中に都合4回も登場します。当時の上流社会の中でいかに人気のあった音楽であったかということを物語るものですが、今日伝わっている楽譜は平安期のものと違っているようなのです。

当時は音楽作品を文字化、若しくは記号化するということは行われず、全て唱歌(しょうが)、つまり歌って覚える「口伝え」で広まっていました。それが、時代の変遷の中で少しずつ形が変わって伝わっているようなのですが、何しろ可視化した情報源が無いため確認のしようがありませんでした。

ところが最近になって平安末期~鎌倉時代に作られた雅楽譜が見つかったようで、それを基にして新たに再現した演奏も聴けるようになったようです。《想夫恋》もその一つのようで、再現譜を使った演奏の動画もアップされていたので転載してみました。聞いて見て下さい。

因みに、私が今作っている曲は全くこんな感じではありません。ただ、この風雅なイメージは参考にしている…とだけ言っておきます。

雅楽 想夫恋(全体二返)~平安時代末期・鎌倉時代の雅楽譜にもとづく再現~
コメント
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