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電波防護指針 備忘録 その5(俯角減衰量) End

2007年07月23日 20時47分52秒 | License
私の場合、次の対策でクリアできたので、これで最後になります。
いろいろと不透明感の多い俯角減衰量の適合です。

まず俯角減衰とは、指向性のあるアンテナにおいてビームパターンによって水平面で前方は利得が高く、サイドは
利得が低いのは常日頃体感することです。これを垂直面で考えると、指向性アンテナと同じ高さの前方と、真下の位置では
真下は利得が低くなることは容易に想像できます。この垂直面での利得の減衰を俯角減衰と言います。

では、何故俯角減衰量が何となく不透明なのか?

理論がどこまで証明されているのか私は突き止めることが出来ませんでしたので、専門家にお任せするとして
 アンテナメーカー自体が垂直面のパターンデータをしっかり持っていないメーカーが多い
為であると感じました。

どのメーカーもカタログにも記載されているように水平面のビームパターンは持っています。しかし垂直面となると
満足にデーターが出せる会社は極一部でした。
このことは総合通信局も認識しているようですが、実態は「データが無いなら、俯角減衰は1で計算(減衰無し)」と
されています。JARLの電波防護指針…自局の電波環境を知っておこうにも「判らない方は1で計算」と記載されています!
(PLCでもそうですが、業界を牽引、指導すべき連盟がサジを投げている姿勢は大いに批判されるべきと感じます)

どのメーカーがデータ持っており、持っていないメーカーがどこかは、ここでは記載いたしません。義務でない以上
メーカーの利害に抵触する恐れがありますので。
このblogを最初から隅々まで見るとヒントは載っています(笑)。

実情はさておき、データが無いから1とせよ、では基準のクリアができませんので、総合通信局の担当と相談した結果
「公的な文書等(書籍、文献、論文など)で俯角減衰について理論だって説明されているものがあれば申請時に合わせて
提出してください」となりました。

いろいろ検索しましたが結果、私には見つける力も時間もありませんでした(Googleの検索条件設定はうまくなりました。笑)

再度、総合通信局に相談し「同等性能の他メーカーの類似品で俯角減衰データーが整備されているが、これを添付ではダメか?」
とこちらから問合せたところ、「多分いいと思われるので一度それで申請書を出してみてください」の回答でした。

最初の図面で示すとおり、最近接場所は隣家のアンテナから見て下向き60度前後となりますので、水平面から下向き60度
地点での利得値をパターンデータから拾いますと、-10dB(5eleの場合)となります。4elだともっとブロードになります。

これを反映して完成したのが上記の自己点検表です。

最初はRDPと八木は位置関係が逆でしたが、保険で位置の入れ替えをして数値を稼ぎました。


こうして電波防護指針の自己点検表を添付して無線局変更申請を提出し、無事申請は受理されました。
モノツクリでもそうですが、製造(工事)の前の設計の重要性は変わりません。
あくまで電波防護指針は机上の理論であり、現実これをクリアしたからと言ってインターフェアが出ないわけではありません。

しかし制度として決められていることですので避けて通ることも出来ず、業界全体でも積極的に取組まれていないために
いざ申請しようとした際に相当悩むことが懸念されますので、紹介がてら記事に致しました。

忘れると嫌なので1日で一気に書いてしまいました・・・・ツカレタ。
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電波防護指針 備忘録 その4(同軸減衰量)

2007年07月23日 19時58分08秒 | License
ここまでの値算出はいわゆるどこの管轄の総合通信局でも同じかと思われます。

が、不幸にして電波防護指針の基準値をクリアできなかった場合(私はそうでした・・・)あらゆる合法的手段を
模索することになります。よって、ここから先は各管轄の総合通信局のご担当と意見交換しながら進めていくことを
お勧めします。
(私の場合は東海総合通信局でしたが、下記の方法で申請は受理されました)

まず同軸ケーブルの伝送損失を適応します。このやり方はJARLの電波防護指針…自局の電波環境を知っておこうには
一切記載がありませんが
九州総合通信局のサイトの算出方法(EXCELのツールがダウンロードできます)を見た際に見つけた方法です。

同軸メーカーによってロス率は微妙に異なりますが(フジクラは評判いいだけあって低損失の値が公開されてます)
おおむね、8D2Vなら30MHzで-30dB/kmくらい、5D2Vなら-44dB/kmくらい、5DFBなら-33dB/kmくらいが相場のようです。

自分の給電線の長さを最初に作成した図面+室内でトグロ巻いた分で割合を比例計算します。
比例計算でいいか若干疑問もありますが、そこまで誤差を厳密にするものでもないので比例計算で良いと
思われます。細かく言い出せばフィルターの挿入損失だのコネクタの損失だのキリがありません。
自分の場合、トップの八木は8D2Vで20m(-0.60dB)、下のRDPは8D2Vで17m(-0.51dB)、スローパーは16m(-0.48dB)でした。

前にやった対数計算で、それぞれ減衰の倍数は、0.87、0.89、0.90となりますので、アンテナ利得の倍数に対して
その倍数を掛け算します。

上記を反映した自己点検表が上記の表です。

微々たるものですので、後に記述する俯角減衰量だけでクリアできるなら同軸減衰量を適応すべきか否かは
その申請者の判断になるかと思います。
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電波防護指針 備忘録 その3(利得)

2007年07月23日 18時07分23秒 | License
続いてアンテナのゲイン(利得)です。

アンテナの種別によって計算が変わります。JARLの解説では3種類が設定されており
 1)半波長ダイポールアンテナ
 2)短縮型垂直アンテナ
 3)八木アンテナ
の3つです。
変わったアンテナで申請される場合は、都度総合通信局に問合せ、確認された方が良いかと思います。
私は当たり前のアンテナだったので特段悩みませんでしたが、スローパーは半波長ダイポールで、HB9CVは八木で
算出して問題ありませんでした。1素子のループアンテナとかって何に分類するんでしょう(ダイポール?)。
接地型のロングワイヤーとか(これもダイポール?)パラボラアンテナってどうなるんでしょう?

既製品であれば大抵のメーカーは利得値を公表するはずです。が、メーカーによってはカタログや取扱説明書に
利得が明記していないケースが見られます。その場合は直接メーカーへ問合せになります。その際に、dBなのか
dBiなのかを確認必要です。(dBiと明記ない場合は大抵dB値です)dBiはdB値に2.15dBi加えた値です。

某社に問合せた際に「防護指針が通らないので利得下げた資料を作ってくれ」と頼んだ方が昔いた話を
聞きました。いろんなニーズがあるようです(笑)。ある意味メーカーが公表する数値を実測で計って確認した
わけではないので盲目的に信じているわけですが、製造元責任として改ざんは論外で、へんな細工せず公正な
データで検討すべきですね、とメーカーの方とお話したことがありました。

さて、ここらで文系人間が判らなくなるのが対数計算です(判る人は問題ありません・・・)。

デシベル(dB)という単位は、ある電力に対する比率の常用対数の値(ベル)を10(デシ)で割った数値、です。
(元々はベル(Bell)という単位が大きすぎて通常使用に便利なように10分の1したデシベルが使われる)
電力Aに対する電力BのdB値は10log(B/A)となりますが
別に数学の勉強をするわけではなく、ndBだと何倍すりゃいいの?が知りたいだけなので(笑)
EXCEL関数なら
 =POWER(10,a1/10) ※a1セルにdBi値が数値で入っていること
で倍数が出ます。
つまり「今よりプラス3dB」は電力比で2倍、「今よりプラス20dB」は電力比で100倍ということです。

あとは計算機で計算あるのみです。

半波長ダイポールなら、14.03×平均電力の平方根を距離で割り算、等々JARLの電波防護指針…自局の電波環境を知っておこうに従って算出します。
説明が無いパターン(短縮型垂直アンテナで1.9MHzに出る、とか八木型アンテナで3.8MHzに出る)などの場合は判りません・・・
ご自分で総通にお問い合わせください。

ここまでのデータを整理して点検表に入れてみたのが上記表です。
これでクリアできれば問題ありません。
(見てお判りの通り私の場合、21MHz当りからこれだけではクリアしません)

クリアできない場合(周波数によってクリアしない)は更に知恵を絞ることになります。
俯角減衰量の適応と同軸減衰量の適応を行い、「いや実はそんな強力な電波は出ていないんです」を証明する
労力が必要になります。

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電波防護指針 備忘録 その2(平均電力率)

2007年07月23日 17時54分10秒 | License
距離が把握できたら続いてやるのは、モードの決定です。
これはJARLの電波防護指針…自局の電波環境を知っておこうでも判りやすく書かれています。

平均電力で出力を計算するので、
CWなら0.5、SSBなら0.16、FM/RTTY/SSTVなら1.0の乗数をリニア出力電力に掛けて算出します。
申請する人はいないでしょうがA3(AM)は1.0です。
私は何も考えずにリグの諸元どおりA3含めて申請書に記載して総通から指摘受けました(笑)。
「こちらから言うのも変な話ですが、ホントにA3の波なんか出すんですか?」
慌てて訂正書類を出してA3は除外させて頂きました・・・。

ちなみにCWの速度の規制は無いと思われますが、無限に遅いCWもしくは無限に早いCWなら連続キャリアに
なって平均電力率は限りなく1.0に近づくんじゃないかと思ったりもしましたが、いらん心配のようで
上記のルールで計算すればいいとのことです。

要するに、リニアが1000W出力でCWとSSBだけで申請するなら平均電力は500W、SSBだけで申請なら
160Wで計算するわけです。

なおJARLの電波防護指針…自局の電波環境を知っておこうにはFCC資料を参考として
SSB電話でコンプレッサー使用時に平均電力率が0.5まで増加する、と記載されていますが今のところ適応しなくて良いようです。

私は、将来に向けてRTTYなども申請で出したかったのですが、平均電力率1.0の壁がハイバンドで
クリアできず断念しました。
多分、モード混在(CW/SSBは1000Wで、RTTYは500Wとか)でも認可されると思うのですが、今回は
初めての変更申請で判らないことだらけであったのと、現実RTTYは殆どやっていないことから
将来の楽しみに取っておきました。
どなたか既に認可された方の情報が頂けると有り難いです。

電波防護指針の基準値については、検討の余地はありません。法的に決められています。
私の場合は、自己点検表の欄外注釈に
 ・基準値は、総務省東海総合通信局より公表の「http://www.tokai-bt.soumu.go.jp/musen/denpabougokijyun/eikyou.html」の
  内容に基づき算出いたしました。
の文言を記載しておきました。

周波数帯の巾で上と下では基準値が異なりますが、厳しいほうを選択します。
(周波数が低いほど基準値はクリアが楽な数値になります)

ここでも、例えば「私は特定の周波数帯で高い周波数は使わないから低い周波数で計算した」と
明確に根拠が記載できれば、認可されるようですが実態は判りません。
私の場合はこの件は興味なかったのでこれ以上は調べませんでした。
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電波防護指針 備忘録 その1(距離)

2007年07月23日 14時13分17秒 | License
JARLの電波防護指針…自局の電波環境を知っておこうをざっと読んだ後で
まず最初にやるべきなのは、自分の局周辺の図面をしっかり把握することです。

具体的にはサイズ(距離)の把握です。申請書を提出する際の図面の書式は決まっていないようですので
正確で判りやすければ何でもいいかと思います。私はEXCELで作成しました。もっと優れた図面作成
ツールをお持ちの方はそれでいいでしょう(電子ファイルの提出は無く、印刷できれば何でも良し)。

この図面で明確にするのは、
「空中線の最近接導体と自局を除く最近接の公衆空間との直線距離」
です。

最近接の公衆の空間には自局(大抵は自宅の敷地でしょう)は含みません。
自宅の住人の電波防護はどうなってるんだ?と指摘受けそうですが、含みません。
そんなに自分の電波から保護したいなら電波を出すな、ってことでしょうか?笑)

となると、隣の家や道路、広場、空き地などの自宅に隣接する空間が対象となります。

注目すべき判り難い点は、2点あります。
 1)人間は高さ2mで計算する
 2)水平距離でなく、垂直面も加味した3次元距離(斜め距離)とする
の2点です。

具体的に私が申請で作成して提出した垂直面図が上の図です。

四方八方を確認して最も近い近隣の場所(私の場合は隣家の2階の端の部屋が該当)を
確定し、直角三角形の斜辺の長さを算出します。

斜辺長の二乗=縦辺長の二乗+横辺長の二乗
ですのでルート計算のできる計算機があればすぐ算出できますネ。

間違えやすいのが1)の人間の背です。
JARLの説明には
「h : 周辺住民方向でアンテナの最近接導体部分の地上高をheとするとh=he-2(m)」
という記述がありますが、これでは何のことか全く理解できませんネ・・・。
要するに人間の頭部を基準に距離算出せよ、の考え方で、余裕見て2m見とけば
まず通常は大丈夫、の値設定です。

なお空中線側は、給電点ではなく、一番近くなる導体部分(大抵はエレメントの先端)
からの距離として計測します。水平面図で回転する円周を示して、どの位置が最近接と
なるか明示する必要があります。

従って当然ですが、アンテナは可能な限り高く、が非常に重要となります。

もちろん横辺長が離せる広大な敷地の局には関係の無い悩みです・・・(苦笑)

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電波防護指針 備忘録 その0(はじめに)

2007年07月23日 11時01分22秒 | License
ハイパワーの変更検査を合格して以来、それに関する本blogへの訪問者が増えている
と思われ、私自身手続きを進める中で試行錯誤しました。いろいろな方々に質問したり
調査したりし何とか形だけは申請を許可いただけましたので、忘れないうちに記録を
残しておこうと考え、Licenseカテゴリに追記していくことにします。
(DXも寂しいこの時期ですし・・・笑)

なお、私は法律の専門家ではありませんし、高周波技術の専門家でもありませんので
記載内容に誤りがあってもご容赦願います。

アマチュア局の電波防護指針については平成11年10月1日の電波法改正により
変更申請する際に、算出・確認・結果の報告が義務付けられました。

規制が除外されるのは以下の場合です。
1)平均電力が20mW以下の無線局の無線設備
2)移動する無線局の無線設備
3)地震や台風などの非常事態が発生、または発生するおそれのある場合において
  臨時に開設する無線局の無線設備

ここで疑問なのは、アマチュアの移動する局は出力50W以下ですが、ご存知の通り
200Wまでは落成・変更検査を必要としないで開局・変更ができます。つまり電波法では
防護指針の検証が義務付けられている51~200Wの局については検査できていない
のが実態ですので、法律的には矛盾かと推測されます。

さて難しい話はさておき具体的にアマチュア局が201W以上の出力に変更申請をしよ
うとした場合、
「アマチュア局変更申請(届出)書」を管轄の総合通信局に提出するわけですが
現在は同時に「電波防護のための基準値 自己点検表」の提出を求められます。
(出さないと別途提出を求める連絡が入るようです)

JARLにて電波防護指針…自局の電波環境を知っておこう
でその算出・確認の仕方が解説されていますが、非常に判り難い(笑)です。
はっきり言って(恥ずかしながら)門外漢の者にはチンプンカンプンです。
また法律自体が「べき論」ベースの考え方なので詳細を検討しようとすると非常に
曖昧です。更にアンテナ・リグメーカー始め業界も十分にフォロー体制ができて
いないと思われます。

数回に渡り、自分が悩んだ項目について実践的な紹介をしていきたいと思います。
(備忘録ですので、途中で途絶えたらご勘弁を・・・笑)
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