【 rare metal 】

此処 【 rare metal 】の物語や私的お喋りの全部がね、作者の勝手な妄想ですよ。誤解が御座いませんように。

創る物事(ツクルモノゴト)

2010年08月30日 03時22分47秒 | 夜の時代 【深夜倶楽部】 



(画像は勝手イメージ)

 

【老いの繰り言】

あの頃のボンと真二と自分のさんにん、随分と若かった。
その若さが故にそれぞれが、自分の身を、どぉぅしようもなく持て余していました。
 
だから、ナニもできなくなった今に為って想えばなぁ
ひとが望まなくとも老いるとゆぅことはなぁ、心も老いるんですよ。
 
そやさかいぃ ユックリと精神が参るし 残酷なモンやねんなぁ。
 
 
 
あの晩は、街中にこれでもかと、ギョウサンのパトが溢れていました。
 
あの騒動のとき。オレらの逃げ道を封鎖するために
緊急配備中のマッポが、道路に設置した検問所を突破したり
追いかけてくるパトを、如何にかして煙に巻こぉとして躍起になっていました。
 
逃げ回りながら考えてたんはぁ、コンナン何時までも続けばえぇんや。ッテ。
そないな時の状況をなぁ 頭の中で楽しんどる自分が居った。
毎日マイニチ退屈だけが日々繰り返す、ソナイナ普段の生活では決して味あえへんモンをっと。
若かったさんにんな ナンも知らずに訳も判らずに追い求めていたんやで。
 
 
老いた今になり、あの騒動を振り返り想いだしますと。
緊急配備中の警官からナントカ逃れようと、捕まらないようにと逃げまわっていたあのとき。
言葉ではナンとも言い難いけど、なんや気分がムチャクチャ高揚し充実したような
気持ちのえぇ快感に溺れていたのを憶えています。
 
けどなぁ そんなん長続きぃなんかしませんねん。
醒めるんも早いさかいな。
 
お楽しみのあとには、想いもせぇへん物事が始めりますんや。
簡単には済ましたり、終われん物事がなぁ。

 
そん時ぃ若さだけが っとでは済まされんかったんです。
 
 


バイバイ
 
   

【深夜倶楽部】 永い夜

2010年07月27日 14時10分38秒 | 夜の時代 【深夜倶楽部】 
(画像は勝手イメージ 無関係)
 
 
【永い夜】
 
平成の冬の とある夜更けた頃
 
 
あの日の晩、夜はユックリと終わろうとしていました。
だけど夜明けは、自分の焦る想いとは裏腹にぃ 
直ぐには巡ってきませんでした。 
 
だから今になって、あのときのことに想いを馳せるとき
自分が今現在 此処に居られるとは
あのときはマッタク想像もしていませんでした。
 
当時、自分が棲んでいた街は、幹線道路の国道や県道など主な道路以外
ご立派なアスファルド装などされていない路のほうが多かった。
 
 
車で何処かに物見有山にでもと ドライブに出かけると
大都会の街中なら兎も角、自分が住んでいた関西の田舎街じゃぁ
車で街外れの河に架かる橋を渡り、郊外にへと暫く走りますと
直ぐに路の両脇には、広々とした田圃の風景が眺められていました。
 
ッデ、国道から少し狭い脇道にと乗り入れますと、一応は簡易舗装だったけど
国道なんかの幹線道路のような、アスファルド装じゃぁなかったんですよ。
当時の軽自動車規格だった小さな車がですね、如何にかスレ違えるかどうかの
狭い隘路みたいな道の幅だったかと。
 
だけどなぁ その狭さな道幅が場合によっては 都合が宜しいこともありましたなぁ
 
 
 老いた今に為り、独り寝の布団の中でこの頃
よくあの物騒な晩にへと想いを巡らすことがございます。
そぉしますと、ナカナカ寝付けないもんやから布団からゴソゴソと這い出します。
 
ッデ暗い中を台所にへと。足の指や体の何処かを敷居や柱にブッツケながらね。
睡眠薬代わりの酒を求めて、台所まで家の中を漫ろ歩きします。
 
狭い台所は昼間でも薄暗く、夜の室内の灯りといえば
流し台向こう側の壁に穿ったような、小さな窓の磨り硝子越しに射しこむ
一晩中瞬く近所のラブホのネオンの輝きくらいしか、灯りがない部屋でした。
 
自分の老いた眼の視力では視え難いけど、酒が何処にあるかぁなんてのはぁ、
長年棲んでいますからね、慣れの感覚手探りで直ぐに探し当てます。
 
 流し台の洗い桶に洗いもせず突っ込んだまゝの湯呑みを手にとり
冷たい水気を手首の一振りで飛ばし、安酒な日本酒の紙パックを傾け
滴を垂れる濡れた茶碗に注ぎます。
 
茶碗の中の酒は表面が注ぎ揺れし
窓越しに射し込むネオンの点滅灯りで仄かに輝くネオン色。
その舐めるような仄かな輝き、独り者の眼には優しさな感じで映ります。
 
流し台の前に立ち、先ずはと茶碗を口元に。
 
一気で飲み干しました。 ッデ直ぐに紙パック傾け再び注ぎます。
その時、一気で堪えていた息を吐き出すと
握りしめていた茶碗の酒が、縁を超え素足の上に滴りおちました。
 
寒さでカジカンダ足の指を濡らしました。
 
そんなコトを無視しながら、茶碗酒ぉ幾度もと重ねます。
だけど指を濡らす酒の冷たさは、老いの胸の心の中を責め始めます。
 
 
頭の中では、物事を突きつめ判ったつもり、終わったつもりの物事がイッパイ。
胸の中の心の中じゃぁ、その突きつめ重なった物事が
忘れもせずに幾度もかと、限りなくと酒を呼び戻します。
 
茶碗ぉナン杯呷っても、頭の中は痺れて判断を迷わせてもなぁ。
胸の中の心がなぁ、終わった筈の物事なんやろぉけどもなぁ
苦しさで、悲しさでと責めながらやねん。
 
 
心が醒めながら、自分の心ぉ攻めるんや。
 
 
早くぅ 朝が来ないんやろかぁ。
アン時ぃみたいにぃ。
 

 
ッテ想いながら、永い夜が続きますんやぁ。
 
 


 バイバイ

     

血ヶ匂って 騒ぎますッ!

2007年05月29日 15時05分52秒 | 夜の時代 【深夜倶楽部】 
  



「ボンッ!なんでお前が居るんやッ! 」 

ボンの胸倉摑んで引きよせ真二、ボンの顔面寸前で怒鳴りました。

「怒鳴ったかてドナイもならんッ!」

っと自分。 静か喋りな怒り言葉で。

窓に分厚い毛布を吊り、声が外に漏れないようにしてある
暗い裸電燈だけの、部屋の中には、血の匂いが満ちていました。
ボンが、ナニかを求めて遣った、怖気ナ嵐が過ぎ去った跡だから。

「シッ真二さん、クック苦しいがなッ! 」

真二、暫くボンの眼の奥を観てから、突き放した。
ボン、後ろにヨロケたら、畳の上の男に躓いて、尻モチを着いた。
上に乗られてしまった男、苦しそうな小さな呻き漏らした。

「ナンでボンがここに居るんや? 」
「ちぃふぅ、ナンでってゆうても、つねさんがコンナン自分独りで如何にかなるさかいにぃって 」

「つねッ!・・・・・ぁのぅアホッがあぁ! 」 真二が



つねが、公衆電話ボックスから、別に慌てる様子もなく、普通な感じで出てきた。 
ボン、其れ、惚れ惚れと観て、こぉぅ思いました。

≪つねさん噂どうりに、肝(ハラ)が据わってるなぁ!≫ っと

つね、一晩の騒動にでも、何事もなかったような綺麗な化粧顔してた。
赤い髪が歩く度に、優美にぃフワフワとぉ・・・・!

ボン、つねがドアを閉めるのを待って、車を発進させようとして、フトッ!
フトッぅ、何かがぁ・・・・っで、車を出すのを止め、ボン聞きます。

「どないですか ? 」
「ぅん、チャンと教えたさかい、直ぐに着よるわぁ 」
「・・・・・チャンとって? 」

ボン、ナンとなく問いました。
つねの言葉尻に、なにかがぁ・・・・?

「はようぅ(早く)出しぃ来るよぉ 」

走り出すと直ぐに、遠くの、アッチコッチの何処かで、パトの悲鳴がぁ!
其れ、次第に自分たちが走ってる方に、近づいてました。
ボン、窓をすべて全開にし、箱のセダン≪510SSS≫
アクセル床まで踏むと、車内は激しく舞う風でッ!
互いの会話がぁ! し難くなる。

「ボン、コンナンうち独りで十分、大丈夫やぁ、アンタ逃げりぃ 」
「ジュウブンってッ! ナニ言うてますねん頼まれたん自分ですよッ! 」
「ァホッ! 大のおとッ・・・ぉガァ・・ッ! 二人もいらへんッ! 」
「いやや! 」
「チョット停めてッ 」
「アカンって! 」

つねボン、怒鳴り喋りの喧嘩腰ッ!
助手席からつね、赤い爪の手伸ばしハンドル摑んだ。

「ナにするねんッ! 」
「そこで止まりッ! 」

ボン、左手で振り払おうとッ! 
3S(スリーエス)ケツ振って蛇行ッ!

「止めッってッ! 」

ボン、意地でもと、アクセル踏みッパナシッ!
ボン、左手の裏拳ッ!飛ばしたッ!
ヒットッ! つねの何処かに当たったッ!

つね、一声呻いてハンドルから離れた。
ボン、ハンドルを元に戻すと怒鳴ります

「ボケッ!ナニ訳判らんコトさらすんやッ! 」

返事の代わりに、つねの黒いストッキングに包まれた
綺麗な細い右脚、ボンの方に伸びたッ!
真ん中のコンソール乗り越え、ブレーキペダル踏もうとッ!

っで、此処で流石にボン・・・・

捲くれ上がったスカートから伸びている、つねの右脚の太腿の
チョット粗めの黒いストッキング吊ってる、ガーターベルトの黒紐ぅ視たら
止めようとする気力、何処かにと失せました。

つね、これ以上ないほどナ感じで右脚
ボンに見せびらかすように、ユックリトヒールの先でブレーキ踏むッ!
ボン、剥き出しの其の脚、視たくは無かったので、ナにもしなかった。
クラッチも踏まなかったので、車体がギクシャクしながら路肩に停車した。


「真ちゃんと、ちぃふぅにぃ、よぉぅゆうといてなッ! 」
「なんやって? 」
「何時までも、待っといてッテ 」
「アホッ!直ぐに釈放されるがな 」
「ぅん、アンタみたいな前モチ(前科)ちゃうもんね 」

つね、車の窓硝子閉めるとき、物凄い嬉しそうな艶然顔ッ!
遠のく3S見送りながら、ボン心で。

「アホゥガッ!コッチにウインクしながら、前方を観もしないで
 タイヤに悲鳴上げさせ急発進やぁってッ!・・・馬鹿タレ目ぇ~! 」

ボン、ゴムタイヤが焼け焦げる青い煙の匂い、アンマシィ香しくはないなぁ!



ボンとつね、後から此の時のコト、こぅ言います。

「つねさんなぁ、もぉ!無茶しますんやでッ! 」
「アホ言わんときぃ、あのときなぁアンタは前モチやし、ちぃふかてなぁ・・・・」
「ワイ、ナにもないッ、綺麗な体やったでぇ 」
「真ちゃんは面倒みなアカンあの娘がいたしぃ
 そやからウチしか居らん思ぉてやったんやでぇ! 」
「そやけど、事故ったらどないするねん 」

「ぁ!ウチぃ傷モンに為ったら、ボンにもろうてもろたらぁ・・・! 」
「要らんッ! 」




三人、黙り込んだら、其れを待っていたようにぃ呻き言葉が、下から湧いてきました。

「お前らぁ・・・・タッ唯で済むと想うなよぉぅ!絶対ぃみぃ 」

気絶してると思ってた、畳に転んでた血塗れ男がぁ・・・・!
ボン、男が言い終わらないウチに、横っ腹に蹴りぃ入れました。

部屋の中、三人分の煙草の紫煙が、静かに漂っていましたけど
ボンの動きで、渦巻くようになってました。

自分、其の渦眺めながら想いました。
こぅやってぇ物事は、益々複雑に為ってゆき
ドンドンッドンドン 悪い方に転がって逝きますんやなぁ・・・・!


喉の奥乾ききりッ! 潤す酒ぇ・・・・!
欲しがっていました。
潤すだけじゃぁ無かったんやけどぅ。





   

止の心算がぁ ・ ・ ・ ・ ッ!

2007年02月03日 13時54分24秒 | 夜の時代 【深夜倶楽部】 
  



 【 なんでやぁ~! 】


夕方が近づくと 逃げ回る者の心は
漫ろ(ソゾロ)に為ってきます。

何時か 終わる時が来るかもぅ っと
想いながら眺める 沈みかけの太陽
暗い赤さで魅せながら 人の心を遣っ付けます。

此れでもか と



周りの キチガイマッハと並んで走る車の騒音
自分の中の 心細さを隠してくれていました。
キチガイマッハ 自分の股下で車体を小刻みに震わせ

 モット! アクセル回さんかぁ~! 

っと 人の言葉が話せるなら そぉ喋るかもなぁ
自分、そないに思いながらでした。

自分も、強く握ったアクセルは、こんな半端な開きじゃぁなく
捻り過ぎて、回らんくらいにしてやりたかった。
そしたら、今の行き詰った状況から抜け出せる

   ・ ・ ・ ・ っかもなぁ


「コウジ、もぉソロソロやで 」
「ぅん、そやな 」

肩越しに言われたので、肩越しに返事した。
進む道の先の方に、ボンから教えられた
縁取りのペンキも剥げかけた 古ぼけた看板が見えてきた。

「コウジ、あれ違うんかぁ? 」
「あれやな 」
「何処ぞにぃ トイレないかなぁ 」
「ナンや ビビッタんか 」
「アホッ! チョット冷えたさかいにや 」

マッハを惰性で走らせ、看板を遣り過ごした。
次の角に在る、ホームセンターの駐車場に
単車ぁ 突っ込ませた。


「なぁコウジ、居るやろかなぁ 」
「解からん、行ってみんと 」
「 ・ ・ ・ ・ 居ったらえぇんやけどなぁ 」
「そぉぅやな 」

自分、居ったらドナイする心算やねん っと
言わずもがななコトを、聞きそうやった。
自分の小便、濃い目の水割みたいな
烏龍茶のような 濃いぃ色やった。


路地の入り口辺りで、古い木の看板を見上げると
【 新和壮 】 っと 書いてあった。
看板、電信柱に勝手に括り付けたような感じヤッタ。

縁周りの赤も色褪せた 縦長木造看板
前もって、ボンが教えてくれてたから 自分らには判ったけど
書かれた文字は 長年の雨風に遣られていたので
ヨッポド気をつけて 睨んで視ない事には
何と書いてあるのか 判断できずに
タブン、通り過ぎてしまっていた。 

アパートの出入り口には 扉もなかった。
中を覗くと、通路には明り取りの窓もなく
傘もない裸電球の通路灯が 大きな間を開けて灯っていた。
通路の両側に、部屋の扉。 並んでる。
入って直ぐにの右手に、二階への階段。

二階にと、木の階段を ゆっくりと気をつけて踏んでも
枯れ木が擦れ合うよな 軋んだ音を発てる。
二階の廊下も、歩くと床板が靴の下で撓んで軋んだ。

「此処や 」
「・・・・ぅん 」

自分、部屋の扉の上の番号を見つけ
後ろの真二に 聞こえるくらいの小声で喋りました。
真二、ワイの背中を突っつきながら、微か言葉で耳元囁き

「なんや聴こえるやろ ! 」 っと。

「ぇ!・・・・・ 」
「なっ! 」

暫く部屋の中の様子を見てました。
二人で扉に、片方の耳をソバダテテでした。
誰かが何かを話したら 静かになり、同じ者が再び喋ったら静かに。
それが何回か繰り返されました。
静かさの合間に、何か鈍い音が混ざってる。

「なんや? 思う 」 っと問われて
「わからんわ 」 って返事して

振り返り見ると、真二、上着の懐に腕を突っ込んでいた。
ヤッパシぃ、遣るつもりかぁ ! 真二ぃ。
じゃぁ仕方ないかぁ! ・ ・ ・ ・ ・ 自分がぁ !
先にぃい! えぇえ~ぃい! いかんかぁあ~!!
っと、本気の覚悟を下腹でして 扉を叩いた。

中の話し声が止んだ。

「ワイが先や 」 っと

真二が後ろから 自分の肩を強く摑んだので
身を揺すって 真二の手を振り解いた。

「何方さんや? 」 中から

その声聞いたら わ!ッ っと驚いた。
自分の中でナンデや? って。
っで、直ぐに口から出た言葉が

「ボケ!ナニサラスねん 」
「ぇ?・・・・・! 」
「はよう (早く) 開けさらさんかい! 」

扉が少し開いたので、ノブを摑んで肩で押し開いた。
中に押し入ると、真っ暗やった。 部屋の中

「電気点けんか 」
「ハイぃ チョとまってんかぁ 」

明かりが点いたら、部屋の窓には
カーテンの代わりに毛布が吊られていた。

その下の、畳の上には、赤い血染めのパジャマ姿で
顔中を腫らして血だらけの男が 転がっていました。
部屋の中には、生臭な血の匂い、赤錆びた鉄の匂いが充満してた。
その中には、小便の匂いも混ざっていました。

っで、部屋の真ん中の暗い電燈の下で
右手に 特製匕首を持ち提げた 見習い若ボンが!
背筋を伸ばして姿勢もいい、綺麗な立ち姿で
お立ちに為ってました。


「二人ともぅ 遅すぎやぁ~! 」


ボンが何かに酩酊寸前のような、感じの声で!
自分、思わずに右の平手で ボンの頬を打ちました。

「痛ぁ~! なんでやねん! 」 血の匂いに酔ってるボンが
「アホッ! 勝手なことしくさってからに 」 ボンの目を覚ませる為に自分が
「お前!ッ ナンで此処に居るんや 」

っと真二が、おかぁハンから頂いてた、切っ先鋭い得物を握り締め
此の場に出遅れて、腹立たしげに言うた。


自分、此れで何度目の

「なんでや?」

って 聞いたんかなぁ? 想ぅたっ!





夜の時代 番外編 【確信犯】 

2006年11月14日 15時29分27秒 | 夜の時代 【深夜倶楽部】 
 
 


【昨夜のボン っと 赤い髪の女】
っの、お話しの心算がぁ 番外です。


ボン最初、夜更けに清美の身柄を貰い受けに 此処(H警察署)に来た時は
未だ、騒ぎの始まりで、署内の様子は騒然として苛立ち雰囲気が在った。 っと
次の一晩で二回目の強制御訪問時(警察署に連行された時)は、
初回時よりも、所内は殺気立っていました。 っと
だけど不思議と、取り調べ担当の刑事(縄澤)の態度は、妙に優しかった っと。
ボン、随分後になって事件が凡て片付き落ち着いてから、そぉ話してくれました。

話してくれた其の飲み会、あの時の騒動の関係者一同で集まり、
昔ぃのぅ其の当時の 想い出話を話し合っていました。


飲み交わす酒の酔い、想い出に耽って懐かしむ仲間たちの口を滑らかにします。
場所は知り合いが当時遣っていました、路地裏場末に在った 「某」スナック。
其の晩、路地裏入り口付近に置いてます、店は此処よと案内の行灯看板
今夜はハナから明かり消し、少し路地奥にと引き込んでいました。
店は普段、夜の水化粧を落とすと能面顔! っのママと、
ママの娘と同い年な感じの若い女二人、の、三人で遣っていました。

其の飲み会のあった夜 此の店、何時もなら、夜晩くまで、薄暗い路地奥の店の扉の上で
ネオン蛍光管が古くなって消えかかっている、かのように瞬いていた、
扇形に形取ったネオンのピンク色蛍光管 宵の口から消されてました。

ケバイネオンや看板が、派手に光った飲み屋が軒を連ねる
酔眼には 殊更明るかった魚町通りから狭い路地に踏み入ると、
其処、街灯照明など在る筈もない暗がり。
夕方に、縁起担ぎの水打った狭い歩き道、乾きかけてます。
此処ならもぉ自分、目を瞑ってもっと表通りの明かりを背に、
地面に浮かんだ長い自分の影 追いながら歩いて突き当たり。
手探りでっと、ドアの取っ手を掴み引き開けばぁ・・・・!

薄暗い普段よりも 随分と明るく照明を点した中は、
此の辺りの界隈で家業(水仕事)で巣食う、古狸ぃらの貸し切り状態。
有線チャンネル、音楽ジャンル設定ダイヤルは、ドッ演歌止め合わせ。
聞こえるかどうか程度に音量落とし、微かに流れ聞こえる曲
騒動当時の 流行り演歌。 啼きのでした。
  

全員で廻し呑みいたしまする、可也な量の酒が満たされた大きな硝子の器。
化けモンみたいにぃ怖ろしくデッカくて重い、物騒なブランデーグラス。
呑口口径、直径一尺余り、中には麦酒の中瓶ぅ、七ぃ八、九ぅ、十っ本んぅくらいは軽くぅ
難なく真にナンナク 注げ込めましたでしょうぉか っと。

此れぇ以前は、色々な種類の綺麗な乾き花束ぁ っが飾り盛られていました。
その次は、店のマッチが山盛りっで、マッチが減るにしたがって、
店に勤める女の娘らが、ポーチや財布等の私物入れにと、成り果てます。


「なぁ、イチイチ注ぐんも邪魔臭ぁないかぁ? 」 誰かが
「そぉぅやなぁ、べつにぃ気ぃ使う相手もおらんしぃなぁ 」 ヨッパライが
「ここられでなぁ、一服したってぇナンかせぇへんかぁ? 」 多少ましなヤツが 
「飲む以外にぃなにやぁ? 」 飲み足らんお人がぁ
「ぁ!そぉや、此の前なぁゲ~ムしたわぁ 」 店のママが
「なにぃ? 」 カウンターで腕を枕にぃお眠りしていた、もぉ可也なヨッパライがぁ
「アンタぁ寝とったらえぇねん、あんなぁチョッドってんかぁ 」

っで、店の奥の着替え室ケン厨房ケン仲間内でのヒソヒソ謀議室ケン・・・・
から、持ち出したのが デッカイブランデーグラス。

「ホナ、ワイからいくで~ 」
「ハイハイやったらんかぃ 」
「ホンマニ参ったゆうたヤツがやなぁ 罰金なんやからなぁ 」
「分かっとぉ! 早にぃせんかい 」

っで、栄誉ある一番目ぇジャンケンでぇボンやった。
(この時にはもぉ 「若ボン」 じゃぁなかった。 けど、全員がボンゆうてた。) 

「おぃ、ナンボも減らんで 」 
「ムゥフフムゥぅぅぅぅ・・・・ぅ! 」 ボン、飲みながらの返事ぃ
「ぁ! 離したれ、溺れよる !! 」
「ホンマかぁ! 」

まぁ、最初からの遭難者一号やった。

其れぇ 両腕で抱え込むようにして持ち上げ、両脇のお方ラにお手伝いして貰い、
口をつける時に、前歯の二三本も欠けるくらいの覚悟を決めまして、
そぉっと唇を近づけますと、顔がっ!グラスの中にぃ!
目前には真っ白き微粒子たる細かき泡がぁ~!
チョイ目線を上げれば、泡の上の硝子越し、夜の店内世界が、望めました。
泡立ち琥珀色液体、啜るコとなく喉へと・・・・自然とな、流れ込みかと!
息継ぎは、出来ませぬ。 すれば肺にと琥珀泡立ち液体自然とぉ・・・・!
溺れる覚悟で、時間の遅しな感覚世界。
口の端より、多少は零れる儘にぃ・・・・!死ぬ

逝きつく先は、トッテモなぁ酩酊村までかぁ!
酔いどれ村かのぅ村長はぁ、俺様かぁ!
何処じゃ此処どこじゃぁ~!

一口三口呑むだけじゃぁ
満々と注がれましたる琥珀色液体表面の泡の、上限赤色マジックペン印から、
殆どと言っていい程 マッタク下がりません。
一口三口ぃじゃぁ・・・・・途中で数を数えるのが無駄なコトぉ・・・・・っで、
何回目かは、もぉ数がイッパイやぁ~!・・・・ っとしかぁ

ゴクンッ、ゴクゴクゴックン!
喉の動きに合わせて、胃袋がどぉにかぁ!
腹が今まで考えた事無いほどにぃ、無茶苦茶張り出します。
徐々に酩酊気分真っ盛りにぃなるのが 自分でもハッきりっと、解かって来ます。
す~っと、ドッカに逝きますなぁ・・・・スゥット!


「今となってはあの時にぃ ナニが善くって、どうやったらモット巧く遣れたか。
     今更なぁ・・・・との感慨だけで、ものノ言いようがぁ・・・・ 」

自分、ついヨッパラッテ喋って、即、「しまったっ!」 っと遅い感づきやった。
くの字のカウンターに腰据えたみんなの 咎める眼差し視線 
全部、お引き受け致しておりました。

「場持ちの解からんヤッチャデ! 」

誰が言ったかは解かります。 けど、何も言い返せませんでした。
麦酒グラスから生還し、場を見かねたボン話し出しました。
あの夜の出来事をぉ 店の中に再びのぉ静かな演歌の流れがぁ!



ボン、取調室から嫌いな男と一緒に出て来がけに
その嫌いなサッギで部屋の中の机の向こうに座り続けてた、デカ(古強者)が
出口のドアを開け、妙に馴れ馴れしく肩を組んできた。

縄澤が厳つい顔に似合わぬ 猫撫で声、耳元近くでぇ!
「ボォゥン 話したらんかいぃ、なぁ? 」 嘗めつけるような口振りでぇ!!

若ボン 無理矢理肩組んだまま俯いて歩き、無言で応じます、
心で 「クソがぁ!・・・・ケッ!! 」 っと。
それから、ボンの顔を下から覗き込むように近づいてる不細工な顔に
思いっクソ 唾棄したかった。 とも
けどっ歩きながらの目線、
リノリュームがアッチコッチと剥げている汚い床から外しませんでした。

「君ぃなぁ、何時までも黙っててえぇねんで、出るんが遅ぅなるだけや 」

言い終わると、ボンの耳元で ジュルジュルジュルっと何かを啜る音がっ!
音に釣られ見ました。 間近のクソ刑事(デカ)を。

サッキの取調室の備品、プラスチックの湯飲茶碗を
アポたいにクソ大きな掌で包み込んで、歩いてた。
中の白湯を喉を湿らす程度に啜り 唇ピチャっと鳴らして嘗めまた。

ボン、後から此の時のコトを散々喋った挙句
「縄澤の遣り口なぁちぃふぅ、厭らしくってイチイチ癇に障るんよぉ
  もぉ背筋に怖気が這い上がるねん、寒疣がなぁザザザって来るで~! 」


店の中の雰囲気ぃ あの夜になぁ、戻りますねん。
みんなの眼ぇ、酔い以外のなぁナニヤラナなぁ
目尻が吊るされたようなぁ酔眼にぃ なりましたぁ!



   
 

 【旧友】 

2006年11月05日 01時31分14秒 | 夜の時代 【深夜倶楽部】 
  

 
 【想い籠もる新聞包み】


自分、目を覚ますともぅ夕暮れ近かった。

この地方独特の屋台、
造りは雅な華やかさで多人数で担ぎ上げる大きな祭り屋台。
っの、眠る収納蔵で 目覚めた。
蔵内板壁の屋根裏野地板剥きだしの天井近く 明り取り窓開いてました。
其処から夕焼け光が 水平に差し込んで 反対側の天井と板壁
紅く染まっていました。

自分、翌朝まで眠って起きたと、錯覚勘違いしました。


播州地方秋の名物祭り 灘の喧嘩祭りほど知名度はぁ じゃぁなくっても、
此の地域の人々にとっては 同じくらいの想い入れが籠もった祭です。
其の溜め息が漏れるような 見事な彫り物飾りが施された屋台が納められている
古さを趣にし隠せない 由緒が香る屋台蔵 っで、目覚めました。

天井に届くかとの 嵩高い屋台と内壁の間の土間に、
祭りの後に近くの広場で 華やか賑やかしの名残を惜しんで催されます
打ち揚げの宴を催す時 地面に敷きます畳茣蓙を数枚重ねて敷き
上掛け代わりに蔵の奥の物入れ櫃から 赤白の祭り幔幕を引っ張り出し
身体に掛け 眠っていました。

真二と自分、二人とも殺されたように眠り扱けてた。
眠りの中の 夢の中は、何もかも消えたように、何も無かった。
多分、真二も同じだったろぅ


昨夜、もぉぅ明け方近くに公衆(電話)から 此処の地元の人に連絡した。
「済まんけどな、ドッカ寝れるとこぉないやろかぁ? 」 っと

此の連絡を入れた奴、古い友人で同い歳、昔は自分と同じ職業(水仕事)でした。
今は普通の堅気のお嬢さんを娶って 普通に家の跡を継いでいます。
家業は土建屋さん致しておりましたから、当然一端の「親方社長」 です。

最初、女性の綺麗な声の方が電話を受けてくれました、眠そうでしたけど。
自分、名前を名乗り旦那さんをと願うと 「暫くお待ちくださいな 」 っと。
受話器耳に当て続けてますと受話器の向こう、廊下を慌しくな足音迫り来て

「なんやねんもぉ!今ぁ何時ぃ思うてるんや!なぁんもぉ電話の一本もせんといて!」

っと、可也な勢い言葉でした。
けれど自分、耳から心に懐かしさがぁ~!

「スマン済まんチョット訳ありやねん、倉庫でも何処でもえぇさかいにぃ無いか? 」
「・・・・なんや?なんぞあったんか! 」
「聞かんほぉが えぇおもうけどな 」
「なら、聞かん 」
「ドッカぁ ないかぁ 」
「一人か? 」
「・・・・・えっとなぁ 」
「解かった言うな、倉庫はアカン!今 建て替え中や 」
「何処やったらえぇんや 」
「チョット待ってくれるか、小便しながら考えるさかいにぃ掛け直(電話)してくれるか? 」
  

っで、東の空に紅い霞みたいな朝焼けが懸かりだした頃
屋台蔵前で 久しぶりの再開をぅ・ ・ ・ ・!

真二は単車と共に 蔵から少しぃ離れた森
八幡様が祀られてる社が在る 鎮守の森入り口の鳥居の所にぃ。
懐かしいぃ友人親方、ニッカポッカ姿で足元は 職人足袋履いてた。
以前は可也太っていましたけど、今見ますと随分と引き締まった肉体です。
キツク使う筋肉だけ 身に纏ってるなぁ~! っと、自分感心しました。
八幡様の森の傍の 田圃の向こうから、堂々とした感じで屋台蔵の近くまで歩いて来ました。 

親方、真二と単車に気づくと軽く会釈してた。
真二も、同じ仕草やった。

「カっきゃん どないしたんかわぁ聞きとぉないけどなぁ、テレビぃ騒いどるなぁ!」
「そぉかぁ? なんて? 」
「相手な重症や、言うてるで 」
「ほぉ~! 」

「ホレ、此れっ 」

帆布のズックで作った 職人の道具袋から 
新聞紙で包んだものを自分にぃ、取れといってきた。

「嫁が、昔ぃ世話になったゆうたら急いで拵えよったわ 」
「わるかったな、よばれるなぁ 」

掌に載せた新聞紙の包みからは 暖かさがぁ~!
胸にナニヤラがなぁ 込み上げ掛けたさかいにぃ
懸命にぃ我慢しましたぁ。

「それとぉ此れもや 」 古い魔法瓶も取り出して、寄越してきた。
「ぅん、済まんな! 」
「それは、反さんでえぇさかいにな どぉせホカソウ思うてたさかいにな」

「ホンデ、此れもや 」

ニッカポッカのポケットから 小瓶を取り出した。
「嫁がな、要らんゆうても持って行けちゅうねん 」

新しい封も切ってない、総合ビタミン剤の小瓶やった。 

「チョットぉ細かいけど、わいにわなぁえぇ嫁やったで~! 」
「そぉかあ! 」
「カっきゃんに 相談してぇ良かったんやで、おおきにやったなぁ! 」
「違うがな、勢いがよかったんやでぇ 」
「・・・・ぅん、かもなぁ 」

「なんでなぁ?こんかったんや 」
「ぇ!・・・なにがや? 」
「式にぃや! 」
「あ!、ぅん、悪かったな、カンニンやぁ ・ ・ ・ 」

言葉に遣られて、言葉に詰まってました。 暫くぅ
遠くから、時報を告げるサイレンが流れ聞こえてきた。

「時間やさかいにぃ行くわ 」
「ぅん、済まんかった 」
「カっきゃん、あの人にも宜しゅう言うたってなぁ 」
 
細かく目と顎が動き示した 真二をぉ

「なぁ、よぉ電話ぁくれたなぁ、嬉しかったで~! 」
「あぁ、此れ以上はぁ迷惑 懸からんようにするさかいにな 」
「懸かってもえぇがな、大した事ない 」
「奥さんにな、ホンマニありがとうってな! 頼むなぁ 」
「わかった 」
「ホナなぁ 」

「巧い事ぉしいやぁ 」

鎮守の森影の向こうに消えるまで 一度も振り返らんかった。
けどなぁ、遠のく広い肩幅がぁ物凄くなぁ
語ってましたよぉ~!

キッと、ナンでや?ナンでこんな形なんや~!

 って!っ



  

突破!

2006年10月03日 12時47分19秒 | 夜の時代 【深夜倶楽部】 
  


後二時間もすれば 夜が明けるはずだった
だけどあの時 もっと長い時間が かかった気がした
それでも、夜は明けようとしていた

自分にとっての夜だけが 明けた



 【遮二無二】


河川敷堤防国道の行き交う車の流れが切れたとき
道路に先に飛び出したのは 、真二と自分の乗った無灯火の単車だった。
直ぐに振動で震えるバックミラーに、迫り来る眩しいヘッドライト照明!


真横で並んで併走るスリーS助手席窓からつね、身を乗り出し箱乗り
ルーフ越しに風に負けまいとして喚き言葉で言ってきた。

「ちぃふぅ、捕まったらあかんよぉ! 」

 自分 前方睨みつけ大声で 「アホ! 」 

出した声は、速度を上げたキチガイマッハの排気音で掻き消された。
夜の冷たい烈風は つねの色つき髪を気が狂ったみたいに舞わす。
直ぐ横運転席窓のボン 助手席向いて怒鳴った!

「つねさん 窓ぉ閉めてください! 」

同時にボン、フロアミッション シンクロお構いなしで叩き込んで落とす
激しくミッションギアの金属同士が噛み合う音 荒む風の音に負けずに聴こえました。
車のフロント持ち上がり怒涛の加速! つねルーフの向こうに消えた。
直ぐに後ろの窓に、赤い髪になりきった女の白い顔 張りつく。
顔中 赤い髪が纏つき 両手で撫でると表情は 目尻が引き攣るように固まっていた。

 赤い唇の口だけ 開いたり閉じたりした

自分、掴んでいたアクセルバー限界まで捻った。
跳ね上がるフロントホーク、耳の後ろで真二が喚いた。 意味不明!
自分大声返事、「もっと前に座れぇ!ケツが重たいからやあ~! 」

 風と排気音に負けじと怒鳴り会話

「あほぉ! 男にくっつくかぁ! 」
「落ちても知らんで! 」
「わかっとお! 」

真二、自分の肩掴んでた掌 一段と力入れやがった

「!・・・」 堪えた

直ぐに迫って来る 橋の袂の黄色点滅信号交差点、
急激減速しながら右に曲がって 街角舗道縁石ギリギリ加速しながら凌いだ。
肩越しに後ろを視ると 真二も同じようにして振り返っている。
自分等が曲がってきた交差点から反対側へ橋を渡ったスリーS
橋から可也な向こで赤色ブレーキランプ瞬いたかと思ったら、
街中信号辺りで直ぐに消えた。

無灯火キチガイマッハ 裏街道突っ走り
男二人の鉄の馬 一夜限りの精一杯の駆動力 
無いもの強請りの逃げ道探し でした。



真二と自分。 暗がりでタバコの火を掌で覆って吸い
ボンが事を起こすのを待ちかねていた。

新しいバイパス道路に面した某郊外型パチンコ店
其の店の横手裏側の デッカイ駐車場の奥の暗がりで待機した。
暫くすると遠くで パトのサイレンが鳴くのが聞こえてきた。
直ぐに、数が増えた。 違う方向からも聞こえ始めた。
パチンコ屋表のバイパス道路を 何台ものパトが
サイレン吼えもって猛然と走り去っていった

「ボン、やってくれてるなぁ 」
「そぉやな 」
「・・・・ありがたいこっちゃで! 」
「そぅやねんなぁ 」
「さっきの電話が利いたんやで 」

此処に滑り込む前に、公衆電話から警察に一報した
『タブン騒ぎの元の男と思うんが土漠色した車で走ってた 場所はぁ・・・
  助手席には 女が・・・・ 』


「いくか 」 
っの真二の声 煙草のヤニで喉が遣られたのか、掠れていた。
「そぉやな 」

駐車場を出て何回か角を曲がると、停車したパトと鉢合わせ!
思わず、単車の速度が落ちかり 停車しかけたが、何かが違った感じ? 
検問の後始末をしていたのだろう、パトの後ろトランクに荷物を積んでいた。
他にも機動隊バスや数人の警察官が居たが、疲れているのか此方を見様ともしない。
コッチは無灯火だから、尚更かも。

 オモイッキリ加速した! 
 パトの傍を脇見もせずに突っ走った!!

暫く後先考えもしないで、突っ走りました。

気分が高揚してきます! 何かが可笑しくてぇ~!
真二が掴んでたワイの両肩を、
両掌で何度も打ちながら、高笑っています。
痛かったですけど、可笑しさの方が上ですねん!
腹の底からですねん。 
胸の何処かっから、何かが湧き揚がってきますねん。
余りにも笑い過ぎ、走る風圧のセイじゃない涙が
風で眼から耳まで伝わり流れます。


真二言いました
「久しぶりにぃ ワロウタで!っ 」
自分、単車の速度を落とし、ゆるゆると流しながら言います
「ぅん わろうたなぁ~! 」

最後に真二 ワイの背中を一発ド突き言いました

「此れで検問 突破やな 」

声は、真面目腐った声やった


 突破しました
 悔やむ夜を





夜に集う 男たち

2006年10月01日 01時27分50秒 | 夜の時代 【深夜倶楽部】 
   

 【集合】


今夜起こった大騒動のせいで
深夜の賑やかし 催し会場みたいになった魚町界隈
其処から可也離れた街外れの 二つ目の河を渡った
隣の市街との境目みたいな場所

 河川敷運動公園


少し上流に在る、河川の流れを調整する為の、
小さなダムのようなコンクリートの堰。
河は流れを堰で塞き止められ、其処から南の河口近くまで
淀んだような緩やかな流れとなっていた。 
淀みは夜空の星の輝きを映し出し、長い湖畔みたいになった両岸には

 広大な面積の 河川敷広場

西側が市の名前が謳われた 何々市民運動公園
東が傍の町の名前を冠した・・・・某町民運動広場


堪え切れないほどの 騒音降り注ぐ頭上仰げば、
真夜中過ぎの逢引のように、東西に仲良く並んだ新幹線の大きな鉄橋と
両面四車線の高速道路高架橋 っの二つの黒い影。 覆っています。
時折、その下を通る河川堤防上の国道を 深夜便の運輸トラックが連なって 
消音し切れないジーゼルエンジンの唸りと、無数のタイヤ転がる轟音も高々に
猛然とふっ飛ばし 通り過ぎて行きます。


堤防国道を通りかかる大型運送トラックの 眩しすぎるライトの明かり 
橋下橋脚間の暗がりに潜む 土漠色セダンの屋根の艶影
暗闇に朧と 浮き上がらせ続けます。

時々暗がり奥では、小さな蛍の様な三つの赤い点 瞬き輝き
煙草吹かす者たちです。 暗がり一服です。


三人無言で一本づつ 煙草を吸い終えたから
今度は自分が 真二がもぉ随分前に言ったのを聴いたようなぁ・・・
っなぁ気分な感じの言葉で ボンに聞きました。

「なんでや なんで此処にボンがぁや? 」 っと

 心で此の雰囲気ぃデジャブウやなっ! っとも。

「清美姐さん、おかぁはんの所におります 」
「ぇ!っ なんでお前が清美さんをやっ? 」
「なんでって、姐さんから身元引受人にと、指名されましたさかいにぃ 」
「・・・そぉかぁ 」

「ボン 車もやけど、色々迷惑ぅ掛けて済まんなぁ! 」 

真二が横から手を伸ばし ボンが新しく銜えた煙草に
ジッポで火を点けてやりながら 言いました。

「ぁ、スンマセン・・・・ォオキニ、そないにぃ気ぃつこうて言わんといて下さい 」
「車ぁ大事に使わせて貰ぅてるさかいになぁ 」
「えぇです、幾らでも乗って貰ってえぇです 」

ボンの顔 此の時、 煙草の先の赤く瞬く火光でぇ面ぁ、
疲れた様子も無く、なんかぁ・・・・スッキリしてました。

「ぁ!・・・・此れ、姐さんがぁ 」

「なんや?数珠ちゃうんか! 」
「はぃ 姐さんがぁおかぁはんにぃ託けてぇ、自分がおかぁはんの家出がけにぃ 」
「・・・・誰にや? 」
「誰って、マネェ~ジャァですねん 」
「わいにかぁ? 」

真二受け取るとぉ良く視ようとして、星明りに翳しました。

「ナンで数珠なんや? 」
「姐さんのぉ おかあさんのんやそぉです 」
「!・・・・かぁあさんぅ!っ 」

「おかん!っ てかぁ? 」

自分直ぐに、こんな言葉ぁ吐いてしまったのを後悔しました。

 ホンマのぉ阿保でした。


顎上げて数珠を、暗闇窺いみたいにしていた真二
言葉ぁ続かず 絶句いたしました。


今まで人前で泣いた事が無い男真二が、初めて人前ででっせ、
夜目にも判るほどの大粒の涙をぉ顎から 滴り落ちる雫ぅ・・・!
ぽたぽたと、聴こえる筈無い哀しみぃ雫ぅ落下音
自分のぉ胸の中で ず~っとぉ聴こえ続けていました。


どんな状況でもね、況してぇこないなぁ夜にぃやったら
もぉぅ! 堪らんこともぉありますねん!


自分、ボンとつね連れて、真二から離れて遣りました。
あいつなぁ、離れる俺らの背中でなぁ、もぉ! 凄い男啼きぃしますねん!
どぉぅしようも無かったですからね、自分も啼きますねん。

 ボンとつね? 

タブン、啼いてましたやろかねぇ





託すは数珠

2006年09月30日 13時49分54秒 | 夜の時代 【深夜倶楽部】 
  



【弔い吐き】

清美をおかぁはんとこにぃ

おかぁはんの住居は、
おかぁはんの店から 15分くらい歩いた公園近くの
お菊神社の傍に在りました。


トイレの引き戸の向こうから、おかぁはんと清美のぉ声 聞こえてきます

「清美 ぁんた寒かったやろぉ! はよぉこれ飲みぃ 」
「 すいませぇんぅ・・・おかぁさん真ちゃん堪忍してやってぇ 」
「もぉ言わんでもぇえっ 判っとぉ、わかっとぉさかいにぃ早ぅ飲みぃ 」 
 
 返事は嗚咽ぅ・・・・ 嗚呼とぉ・・・・ 


耳を欹て聞いてるボン、便所のタイル土間にしゃがみ込んで 
さっきから腰掛便座 抱えていました 

清美を、おかぁはんに預けられたっ との想い、
其の安堵感が それまで堪えていた緊張感を緩和し 
元々の酔いが激しく襲ってきた。

そしてぇ・・・今しか出来ない 
吹っ切れる為の最後の足掻きぃ なんでしょぉ


ボン、嘔吐する度に胸の何かも一緒になって吐き出されます。

下顎首筋のぉ筋肉 引き攣る毎にぃ、ホンマは出したらアカンのや!っ
腹筋 内側に引っ込む度に、堪忍してくれぇ~!
喉が胃液で焼ける感覚 知ると、もっと焼けたらえぇ~!
舌がぁ喉の奥がぁ、自分がぁあ!ぁ・・・・っと

 吐瀉物無くなって空吐きになっても ・・・!


便所の引き戸を開くと、玄関框の上に脱ぎ捨てられた革の繋ぎを
床にお膝して綺麗に畳んでる、清美が居ました。

「久保君、どんなんぅ! 」
「大丈夫です 」
「ホンマなんかぁ? 」
「全部出てもたさかいにぃ スッキリしましたわぁ 」
「そやったらぇぇねんけどぉ 」
「はい、 おぉきにです 」

「此処 穴ぁ空いてるぅねぇ 」

聞かれたくないことぅ聴かれました。 ボン
清美の膝の上の黒革には 激しく何かで擦れて、
周りがギザギザに擦り切れたような 穴がぁ・・・・!

「ぇ! ・・・ハァ 」

清美がさっきまで着ていた革繋ぎ服 昔の想い出が纏っていました。
あの日のあの時に、あの場所を通ってしまった自分が創った想い出がぁ・・・!

「姐はんそれなぁ 女が着てましたんやぁ 」
「ぇえ! 彼女ぅさん? 」
「・・・はぃ 」

「・・・・ぁ!ごめんねぇ! 」

ボン、眼ぇ逸らして薄暗い廊下の奥の
明かりが斜めに漏れる角まで、視線を泳がせた
角からはぁおかぁはんの 佇んでいるような影 
綺麗に磨き込まれた床板にぃ映ってました。


「キエ君、あんたしっかりできるんかぁ? 」
「できます おかぁはん心配かけてぇすんません 」
「そやったらえぇ 」
「ホナ、往きますわぁ 」
「此れ持って往き 」

単車に再び跨ったボンの腕掴んで、
ボンの胸前にぃ 突き刺すようにぃお数珠
 
「ハァ? 」
「もしなぁ、真ちゃん見つかったらぁ渡したって 」
「マネ~ジャアにぃですんかぁ 」
「そぉや あの娘の亡くなったぁおかぁさんのんや 」
「! 」
「清美がぁ持って行てやって、ゆうねん・・・・ 」
「姐さんがぁですんか・・・・ぁ 」

玄関横の単車を置いてある狭い駐車場にも、
清美が お風呂を使う水の音 聴こえてきます。

「ホナ・・・」

単車ぁ排気音 近所迷惑にならんように押して 神社の鳥居の前にとっ


キチガイマッハ再び 夜を駆けます
目指す方向は 自分が調べて 
「ちぃふうぅ」 に教えた場所ぉ目差して
ボン、冷たい夜風に眼を瞬きながら 単車に跨っていました。
弔い吐きしたボンのスッキリした顔 風の冷たさがぶつかって来ても
瞳は濡れてきませんでした。 唯ね、他の何かがぁ・・・・

 姿勢低くの背中に載っているようなぁ・・・・




   
  

ブラウスマフラー 

2006年09月28日 22時26分38秒 | 夜の時代 【深夜倶楽部】 
  


 【暗闇回想世界】


「久保君、此れぇ首に巻いときぃ 」

差し出されたのは、清美がさっきまで纏っていたブラウスでした。

「ぇ、なんで? 」
「夜に、そんな革ジャンだけやったら首が寒いことないんかなぁ 」
「ぇ、ハァ そぉですかぁ ・・・・」
「遠慮したらぁ アカンよぉ 」
「ホンナラ お借りします 」

着ていた黒色革ジャン脱いで ブラウス絞るようにして首に巻きました
それから改めて革ジャン着て、前身ごろのジッパー引き上げるとき
窮屈さで胸の息ぃ全部吐き出しました。
 ケッコウナ締め付け感覚がぁ! 
だけど再び脱ぎたいとは 思いませんでした。
女の匂いが 首の辺りからしてましたからね !

忘れた心算の懐かしさの匂いが、胸にこみ上げてましたぁ!


ボン、キチガイマッハのアクセル 手首イッパイまで回し切っていました
清美、振り落とされまいとボンの背中に 必死で抱きついています。
ボン背中で、女の温もりを憶えたのは 随分前のぉ・・・っと


無理にと忘れ 心の奥で眠っていた懐かしさが、
2サイクル3気筒発動機の黒色艶消し塗装が施された 
胃袋みたいな三本のカスタムマフラーから
強烈な甲高い音と共に吐き出される排気音で脳裏が覚醒され、
目覚めて来始めました。


二人の乗る単車が、夜を切り裂き 奔り去った痕には
青い排気瓦斯 星明りを映し旋風のように路上に舞っていました。


深夜の市街地、喧騒な昼間の顔を暗闇に潜めさせます。
時折、遠くのビルとビルの谷間を過ぎゆくパトカーの
赤色回転灯の瞬く明かりが望め、暗闇から夜の顔を覗かせられるのは、
突っ走る二人乗り単車の、流れる様なヘッドライト上目の明かり。 

ライトに照らされ闇に浮き上がるは
見えないものを追いかける 

 暗闇回想世界


暗闇に流れるライトに照らされる狭い範囲で 
暗い闇夜から浮き上がっていた





夏の太陽 木陰で微睡みたいほどでした。 

気がついたとき ボン
おかしな感じで舗道の縁石に 後ろ首を押し付け顎を胸に
右腕は 躯の下になって感覚が無かった
右脚、気がつかされた痛みが 太腿の付け根から次第に腰全体に
背骨と胸 なんとか騙して 大丈夫なようなぁ・・・
右鎖骨は 鎖骨骨折の覚えある痛みぃ

 自分でも知らないで 呻いていました

頭の中 真っ赤な絶望感覚 広がり始めてます

・・・ぁぁ あいつぅ・・・大丈夫ぅ・・・・!

太陽の光を透かして視える、真っ赤な血色目蓋を開けると 
視野にぃ世界が横向きでぇ・・・目イッパイに縦に道路が!
路の向こう端で 陽炎が地面からぁ ゆらゆらぁ・・・ 
顔の左半面 夏の陽が熱く焼き付けるように照らしてぇ・・・
右半身 夏の日差しで焼けたアスファルトの表面でぇ・・・!

ボンの彼女 道路の向こうで、ズタ袋のように力なく転がっていました
さっきまで被っていたヘルメット 何処かに
長い黒髪 アスファルトに広がり 生暖かな風で毛先がぁ・・・

無理に顎を上げ捜すと、随分な距離を飛んでいったホンダのCB
完全スクラップ状態で 道路の向こうでぇ・・・!
事故った衝撃で潰れたタンク そこから漏れ出たハイオクガソリン
流れ広がっていました。 ゆっくりと道路の熱で揮発する陽炎がぁ! 

蒸し暑い空気に燃料の刺激臭漂い 遠くの此処まで 


残骸CB 小さな爆発音して道路と共に燃え上がりました
焔が、流れた燃料を追って奔ります
太く濃密に揚がる黒煙柱 太陽に陰を差しました

ボン、痛みとは違う涙がぁ 自然にぃ

彼女を再び視ると 涙で滲んで視えるのとは違った
夏の午後の日差しの逃げ水現象で、骸姿が揺らいでました



「久保くん! 飛ばすんやねえっ! 」 清美が大声で耳元!

ボン、無意識にアクセルを捻る手首の力を緩めます
急なエンジンブレーキ! 前にと身体が! 
腕を突っ張り 上半身起こして堪えます
清美の重さが 背中にぃ!


もっと、もっと! 心で何回も念じたそうです ボン。

「姐サン 落ちんようしてんかぁ! 」 肩越しに夜に響きそうな声で!

もっと、もっと早くにぃ! ナンで想い出弔いしてやらんかったんやぁ~!
自分、アホちゃうんかぁ!

 もっと、もっとぉ・・・!


アクセル全開しましたそうな



随分後でね 清美が言いよりました。 

「ちぃふぅ久保君ぅ あんときなぁ啼いとったみたいやったぁ 」
「なんでや・・・? 」
「ぅぅん わからんよぉ けど、肩越しに見たらぁ
    目尻からなぁ 耳までなぁ 濡れてたんよぉ・・・・ 」

「そぉかぁ ボンなぁ・・・ 」


閉店後の店で有志だけの、
「今日も一日ご苦労さん打ち上げ酒盛りぃ」
ヨッパラッテ酔い潰れて 店のダンスフロアー
其処の奥のボックス席の絨毯に だらしなく寝転んだ姿の若ボン
誰かが、コートを掛けて遣っていました


「ちぃふぅ 起こさんでいぃのぉ 」
「えぇで、暖房切らんといてやるさかいになぁ 」


店内全部の 照明スイッチ落とすと
真っ暗闇にぃなりました。





   

 夢想邂逅 ・ 夜の新人君

2006年09月14日 00時46分12秒 | 夜の時代 【深夜倶楽部】 
  


 【 まっまさかっ!】


通称 「若ボン 」君 本当の名は
「久保 喜重 : クボ キエ 」 っといいます。

名前の読みは多分ぅ・・・「キエ」 じゃぁないでしょうかと。



何処の世界でも、通称や渾名で呼ばれる奴はいることでしょう。
其れと同様な事で、わたしら夜のお仕事世界では 
初日の見た目印象で付けられた愛称・・・?っで、大概呼ばれてしまいます。

 例えば・・・


「あんたぁ名前わぁ ? 」 古株の調理人 仮に兄ぃと呼びましょう

この方、厨房名主と言いますか、
此の道 (コック、板前、賄い・・・色々) ぅん十年の実績ある
偉大なるお方です。 其の兄ぃっが訊いています。

「ハッ?・・・ナニナニ言います 」 戸惑いながらも新人君っが 

此の新人君、キット此の世に生まれたばかりの子羊チャンよりも、
モット頼りない存在の 「赤仔」 みたいなもんですねん。
っで此の新人さん 兄ぃの質問に、お心毒づき致します
『殺気ぃマスターが紹介したろぉもん、アホカッ! 』 って

「・・・・っで、 」
「ぇ、! 」
「今までドナイに言われてたんやっ? 」 っと

兄ぃ悪魔でも、物静かに問い質す様に訊いて来ます。
此方に背を向け、仕上げ砥石で一尺余りの牛刀ぅ研ぎながらです。
其の砥石の上で包丁の、硬質鋼刃が磨れる規則正しいリズム音、
まるで兄ぃの背中から、漏れ聴こえて来る様でした。
 
「・・・?別にぃ 」
「ほぉぅか、やったらボンやナ 」
「ぼん?  どぉしてですかぁ 」

暫く二人しかいない厨房 兄ぃが包丁を研ぐ音と
水道の蛇口から流れ落ちる水音以外にはぁ・・・!


自分厨房の、開け放たれていたドアの外から
中の様子を盗み見していました。
何時もの名主様の眼力検査ですからね、誰も口出し無用です。
だから、物音を立てない様にして、覗いていました。


希薄な空気に為ってしまい、息詰まる感じだった厨房に漸く変化がっ!

規則正しかった兄ぃの、前屈みの肩の動きが止まった。
小声で 「ヨッシャ !」 っと兄ぃが。

っで、背の向こうの側で水が賑やかハシャグ音して 
金属ボールに溜め置いていた研ぎ洗い水 一気に排水溝に吸い込み落ちる音


主様ぁ此方にゆっくり振り向き、右手に牛刀掴み持ち左手の親指の爪を 
剃刀みたいに仕上げた刃で チョンチョン って叩きます。 
其れから包丁の刃を上に向け鼻先に。 片目つぶって覗きます、刃を。
次に指腹で鋼刃を微かに撫でました。

っで此処で初めて新人君と眼が遭いますねん。 

 視線がぁ !


「若ボンでえぇやろ! 」
「スッ、すぅいませんけどなぁなんで 若ボンですねん? 」
「鏡っあるか? 」
「カッ鏡ですか? 」
「・・・そぉや 」
「何処にぃ? 」 っと、厨房内に視線を巡らします。

助かったぁ! っと、
視線を外したいけど必死で堪えていたから、
此れで視線を外して、逃がせられるから!

「違うがなお前の家にやっ 」
「ハッはい おます 」
「ホナ毎朝覗いてるやろ 」
「のぞいてるぅ? 」
「顔ぉをや、お前なぁ朝は顔ぉ洗いよらへんのんかっ! 」
「洗ってますっ 欠かさずアロウテますがな 」

兄ぃ、無言で随分長い間を持たせ 新人君見続けました。

「コラ、ちぃふ コイツに教育したってくれ 」 

っで、くるっと回って 再び別の包丁研ぎだします。
っで、お鉢が回ってくる頃やなぁっな感じで 次にぃ



先程の厨房名主様の御宣託で、スッカリ落ち目気分の新人君

「なぁボンお前な さっきはお試しされたんや 」

っと、近くの喫茶店で。 わたしに言われます。

「○○っ、なんやねん試すって 」 

ボン、気忙しげに小さな珈琲カップに小さな匙で砂糖を入れ
金の匙ぃカチャカチャ鳴らして握り手把握し持ち上げかけて

 っでした。

「先ずゆうとくでっ 今日から○○っじゃないねん 」 っと
「ぁ! ハッはい。 ちぃふさんお試しってぇ 」 カップをお皿に戻します。 

「さんはいらん、言うな。ちぃふでぇぇ 」
「・・・はい、ちぃふ 」 膝を揃えて背をキリリッと伸ばします。
「えぇか、さっきなあの人が言いたかったのはやな 早く一人前になりぃっや! 」
「ハァ?・・・・カッ○ぃぁ!・・・チッちぃふ 解らんけどなぁ 」



要はこうですねん

此の新人君。 わたしの古くからの知り合いです。
歳は私よりも上 ですが顔は関西で俗に言い呼びます

「おぼこ顔 おぼこいヤッチャ! 」 ちゅうやつです

意味は、「可愛いお顔してはりますなぁ」 っとか
「世間知らずなお坊チャマぁ 」 っとか
「うぃ奴やのぉ 」 っも、アンガイ近いかもぉ です。

歳よりも若く観える。 見た目でしょぅ。


此れが若ボンが、わたしと同じ世界で遣って往く嵌めに為った
元々のお話の 始まりです。

いつか話さななぁ・・・やったから
丁度えぇ機会やしぃ 言いましょうかと
っで、お話しは続きますねん。 
「夜の逃亡ドライブ」 からは随分逸脱致しますけどなぁ
少しぃ 寄り道したかてなぁ・・・っと。

 ですねん




         

 深まる暗闇逢瀬

2006年09月12日 00時56分59秒 | 夜の時代 【深夜倶楽部】 
 


 【此の侭ぁ・・・ 】


二人の靴音響く舗道は、冷たい夜の暗さ幕で 一面覆われていました。


「迷惑かけたねぇ かんにんしてなぁ 」
「めッ迷惑なんかぁないです 」
「 ・・・ぅん、ありがとうぉ 」

後はお互いに、何かの為にの無言歩き
ボンにとっては駐輪場までの、懐かし短き逢瀬歩き 
しました。 っと 


女一人を此処(警察署)から連れ出すのに、なんで其処まで っと
思うほど、寄って集って色々聞かれ捲くったと 後からボンが言いました。
まるで今夜の騒動の黒幕がお前やろ っな感じやったと。
知ってって知らんフリをしてるんかぁあっ っと。

 大声で言いたかったそうです

「自分は此処に来い言われたから着た。 自分は唯、身請けに着ただけやっ! 」

たぶん、聞き届けてくれないやろぉ・・・・っで、
だから「知らんっ」 っと、「解らんっ」 っの二点張り


「色々きつい事ぉ聞かれましたやろぉ 」
「・・・聞かれたよぉ 」
「 なんて 」
「 なにぃ 」
「どないな事ぉ聞かれたんかぁって 」
「いっぱいやったから 忘れたんよぉ・・・」

 ぁ~!こん人ぉ ヤッパリなぁ!

「すいませんけどぉ 車とちゃいますねん 」
「ぇ、じゃぁ何処にいってますんやろぉ 」
「そこの国立(病院)です 」
「病院? 」
「はい、単車ぁ停めてますねん 」


警察署を出るとき入り口受付待合場所辺りで、昨日の日刊新聞が何誌か
それを頂き丸めて脇に挟んでいました。

「姐さん、此れに着替えてくれへんやろかぁ 」

門番詰め所の老守衛に預けていたスポーツバックから、
革のツナギを取りし、眼を逸らしもって清美に渡しながら
ボン 済まなさそうに云いました。

「おっちゃん起こしてごめんなぁ チョット部屋ぁ借りるで 」
「ええわいなぁ、こないな綺麗な方が着替えるんならなぁ 何時でもえぇでぇ 」

守衛のおっちゃん 気を利かせてくれ部屋から出てきて言います。

「わしぃ、チョット一回りしてくるなぁ 」 っと
「そぉかぁ、悪いなっ! また一本(達磨)持って着とくわぁ 」
「ぉ!そらぁ嬉しいなぁ 」


閉じられたドアに向かって

「着方ぁ解りますやろかぁ? 」

暫く耳を澄ましても 応える返事は無かった。

「姐ハン どないかなぁ? 」
「うん、久保君 ナントカなってるからぁ 」
「さよかぁ 」

単車ぁ跨ぐときの革の繋ぎ服なんか、滅多と女が着ぃひんからなぁ
時間は掛かるかぁ・・・?

「久保君・・・此処ぉ破れ掛けてるねぇ? 」

 チッ! やはりなぁ

「姐さん、済いませんけどなぁそれなぁ、我慢して着てくれてないやろかぁ 」
「うん、もぉ少しやから待っててなぁ 」
「済いませんなぁ 」


清美が出てきました。
ボン デジャブウ(既視感)っ!
幾ら忘れ様としても 絶対出来ひん想い出感覚 
胸の其処から爆発湧き上がり 昇って頭で映像化ぁ・・・!

 黒革の 夜目に艶やか 死に衣装

想いも遠い昔 あの日に近しぃ同僚が通夜の席で 
逝った女へと情けで 別離の為にっと、
声を詰まらせもって 詠んでくれた詩でした。


ボン 頭の痺れ堪えて言います。
黒革姿を 真っ直ぐに観れなくって泳がし視線で

「姐さん、破れのとこなぁ内側から此れ 当ててんかぁ 」

清美 畳んだ新聞紙を受け取りツナギのジッパー下ろします。
ボン、慌てて背中を見せました。

「ぁ!カンニン。 ごめんなぁ 」

清美ぃ クルッテ回ってお互いに背中合わせでした。


ボン、もぉ堪忍してぇなぁ・・・・! っと
 心でイッパイ、いっぱいぃ!


 

               

 薄暗い部屋っで女の覚悟

2006年09月09日 01時34分31秒 | 夜の時代 【深夜倶楽部】 
  


 【Gentleness of a wild beast】


ボンが 明かりも灯してない暗い部屋で 清美を見た時

『此の人 こんなんだったんかぁ? 』 っと

其処は応接部屋とは名ばかりの 物置みたいな部屋でした。



二階に上がる階段の途中で、毒蝮の様な縄澤からキッチリ脅され
やっとっの思いで辿り着いた気分の場所が 此れが警察署か? 
っな想いの 乱雑極まりない大部屋でした。

確かに今は、此の古過ぎる建物を建て替える為に、
仮設の官舎に移る引越し準備中。
だから、机と机の間の通路には、嵩高く束ねられたバインダー類や
細紐で結ばれた何かの黒表紙の書類綴じ束・・・・他にも在りとあらゆる物がぁ!
壁際には大小の段ボール箱がぁ 

 アッチコッチにお積み上げ。

ッ『此処ぉ 引越し万博会場ぅかぁ? 』 っと。
通路は人がやっと通れるだけの 『まるで屋内獣道かぁ! 』

奥の壁には、三部屋の取調室の扉が並んでいた。
其々、ドアは開いたままでした。
その壁の角向かいが、入り口ドアは可也以前に
茶色のニスが剥げ落ちたり白っぽく曇っている 応接間のドア。

 此処も開け放たれていました。

近づくと、塗料が剥げ落ちた木肌には、何箇所もの叩き付けられた様な痕が。
『拳での、出来事でもかぁ? 』

 っが、ボンの観た感想やったそうです。


此処まで来る間 縄澤の背中を観て、踏み分け道を着いてきたが、
横を通ってきた机に座っていた警察官たち、
何かの仕事をしている様でしたけど、警官たちの尖がり意識が
自分の背中に幾つも刺さって来るのが 感じられた。


「すまんな、今は此の部屋しか儂らの班は使わしてもらわれへんねん 」
 
以外にも、口調は優しかった。 
蛇の口にもなぁ 似合わん口調やったなぁ ・・・ッケ!


部屋の応接セットのソファ。 
スプリングが草臥れ ズッポリ抜けてるのはアリアリだった。
項垂れて座っていた清美さん、腰が長椅子に喰い込んでる様に観えるし
隣に座った大柄な若い婦警は、清美よりも喰い込み、まるで小学生がグランドで
体操の時間に膝を抱えて 座っている様だった。

入ってきた縄澤と自分に気づき 婦警が慌てて立ち上がろうとしたけど
どうにも、立ち上がり難そうだった。


「えぇがな、座っとれ 」 蛇
「清美さん、大丈夫なんかぁ 」 ボン

「ぁ!ッ 久保君 」

此の時ボン 胸の中でドカンって爆発したそうです。
自分の過去がぁ・・・・! 再びかぁ・・・っと。

「大丈夫かあぁ? コラなに言うねん! 」 腐れ蝮
「気遣っただけですやんかっ! 」 虚勢なボン
「縄さん、此の方がぁ身請けですかぁ ? 」 助け舟ぇ!
「あぁ、コイツや 」 仕方なくぅ

「うちぃドナイも無いよぉ! 」
「ほんまにっ? 」
「うんっ 」


ボンの心、もぉ何っ処かに持って逝かれ相ヤッタと
此れなら、キチガイマッハ飛ばして飾磨港に飛び込んだ方がぁ・・・!

 っでしたそうです。


蝮ぃ キッチリ此のボンの態度、目聡くぅ・・・でした。

ボンっ 此方を見上げる清美の瞳の奥で
たぶん在れわぁ、覚悟ぉ決めたなぁ・・・・って

 やったそうですねん



         

 古強者 【刑事:デカ】

2006年09月08日 01時19分42秒 | 夜の時代 【深夜倶楽部】 
  


 【誤魔化し】


勢いつけて舗道に乗り上げ、単車のエンジンを切り押し歩いてると 
先程まで熱持つ金切り声を上げ続け 高温溶解してしまう
 っかとの、2サイクル三気筒発動機

高速運転時の熱で膨張していた発動機の金属 冷たい夜気で冷却され、 
急激収縮し金属同士が軋みあう、弾くような金属音 時折発した。  



単車は警察署近くの国立病院裏手 夜間の緊急車両進入口から入って行って直ぐの
切れかけた一灯式蛍光灯が瞬く 薄暗い二輪車 駐輪場に置いた。
病院の警備員や守衛の初老の老人とは 以前から顔見知りでしたから。

時々店で客がヨッパラッテ(急性アルコール中毒)担ぎ込まれたことが、シバシバだった。 
ボンはタイガイ付き添いで、運ばれる客と一緒に救急車に乗せられた。
行く度に、お礼方々達磨(某社ウイスキー)を幾本か持参して、守衛や其の日の担当医に。

 それで、覚えが宜しかろうかとっ

っで、一声掛けて駐輪場に 愛する単車を放置プレイ



若ボンが、もう直ぐ建て替えられる為に取り壊される予定の
可也な古さの木造三階建警察署前 っまで歩いて来ると
広かった駐車場は、今夜の騒動を嗅ぎつけた報道各社の多数の車と 
覆面や正規パトから交機のなどの各種警察車両が 

 所狭しと入り乱れていた。 そぅです


人の出入りが激しい署の表玄関入り口から入って、軋む廊下を渉り
深夜の警察署内部に入ると、緊急配備の応援に駆けつけようとする者や
其処此処で何時までも鳴り止まない電話のベル音、其れに対応して大声で対処する者
制服私服が入り乱れての、修羅場やったと。 可也な立て込み状態やった。 っと

 後から、ボンが・・・酒の肴に想い出語り



受付で男の警官に出頭して来た理由を告げると、暫く待てと。
っで、暫くどころか何時までもぉ!・・・・チッ! っと静かに舌打った。
仕方なくボンヤリと 出入りする警察官達を眺めていたら

 睡魔が、堪えきれない眠気がぁ・・・

受付の直ぐ近くで 畳まれて壁に凭れて並べられていたパイプ椅子
一つ掴んで邪魔にならない様にして、廊下の壁際に広げて座った。

 欠伸が繰り返しにぃ・・・

知らずに投げ出した足に 誰かが躓いたのだろう
コイツをドッカに連れてけっ っと、罵声交じりの声が
薄っすら覚醒意識の向こうからぁ・・・!




睡魔にナニヤラ左肩を揺すられて「遅かったな 」 
項垂れていたから、頭の後ろ上から濁声が降ってきた。
眼を開けると、自分の薄汚れたジーンズと、その上に
だらしなく投げ出してた、汚れが視えない手の甲が見えた。

 黒革の艶と輝きをとっくに失った、官給品の靴も


寝惚け頭でも心の中でボンが
『あぁ? ・・・・なにがぁ遅いんやっ! 』 っと 
っで、堪えて「タクシーが来なかったんですわぁ 」 
っと、手の甲で眼を擦る振りして 心の表情を誤魔化した。


「なんや、車とちゃうんかっ 」
「  ・・・・ 」 ・・・・『クソがっ! 』

「まぁ、えぇわっ こっちや 」

『気安く肩に手ぇ置くなっ ボケッ! 』
 って、ボンは心でこの時 そないに想ったそうです。


署内の威圧感溢れる雰囲気に背中を押され、前を歩いてる縄澤の後から
臭さが匂う便所の横の木造階段っで二階へと 

階段を上がって最初の踊り場を過ぎ、再び階段を踏むっと同時にでした。

「なぁボンっ あんたんとこのちぃふ今何処や? 」 縄澤が背中で言います
「何処って? 」 男の皺くちゃのズボンのケツを視ながら
「惚けんでもえぇがな ・・・・なっ! 」

身体は前向きで背中を反らし 首だけを此方に回し向け
充血して血走った二つの細眼で ジッと見透かす様に見詰めて
縄澤が聞いて来ました。


毒蛇に睨まれた小さな蛙の気分 
ボン、よぉ~っく理解したそうです。

 ついでに

『こいつぅ、やっぱしぃ喰えんやっちゃで、可也な古強者やっ! 』

っても、だったそうです。





    

 真夜中のフェチ!【Fetishism】

2006年09月05日 00時09分05秒 | 夜の時代 【深夜倶楽部】 
      
 

 【若ボンくん夜のFetishism!】


部屋の灯りは、音を消した深夜放送のテレビ画面だけ。

其の薄明かり瞬く暗い部屋の中 随分前から電話のベル音鳴り止まず 
酔いを 兎も角早く醒まそうとしていたボンには 
癇に障るほどシツコカッタ。 ベル音が

 
緊急配備の検問で賑わう街中から、車で時間にして少々の郊外。 
中流世帯の小さな建売住宅が、無理矢理軒を重ねる様に集まった新興住宅街
その外れ辺りの中古住宅で 男の若ボン一人だけの小さな住まい。
閉め切った窓には、男所帯には似つかわしくない派手な桃色レースカーテン。

早く酔い覚ましに冷たい風がと、木枠窓を開ける
吹き込んだ風 カーテンを内側に大きく膨らました。

 
今夜は色んな事があり過ぎて、真夜中のこんな時間
甲高いベルが鳴ると キットロクな事じゃぁない・・・っと。
だから無理矢理気分で受話器、 決して取るものかと。

キットロクでもない事っの 筈だと、キットッ


 二度切れて、間も無く再びベルの音


「チッ!・・っ 」


受話気を握り耳に運ぶ途中から 濁声が

「儂や っ 」
聴きたくも無い 声がっ

汚染されるかもっと強く握った受話器、 少し耳から話して聴きました。
「ぁ! 縄澤さんですかっ 」


「ああっ お前んとこのちぃふな、クラブ雅雨(ミヤビアメ)の真二の連れやろ 」
「あっ はい 」 ・・・・!
「女が お前をご指名やでっ 来いやっ 」
「はぁ!っあぁ? ぇ! どなたさんがぁ? 」
「ぁぁ・・・っと、○○ゆうとる 」
「・・・っ縄澤さん、そんな名前の女ぁ 知りませんけどっ 」
「知らんっ! ふざけん時やぁ、ボン
  お前かてなぁ今夜の騒動!知らん訳無いやろぉ!眠たいんかぁお前っ! 」
「幾ら縄澤ハンでも、知らんもんは知らんのやけどなぁあっ 」
「!・・・・ほぉ、お前も偉ぉなったもんやなっ コラ!ッ 」
「・・ぁ!。・・・縄澤さん、女ぁホンマニ名前はそないに言うてますんかぁ? 」
「なんやとぉ!コラッ!出て来い、なんやったらタクシィつけたろかっ ええっ! 」
「ナに言うてますねん、無茶言うたら!・・・っ縄澤ハン、清美言うてませんかったやろか? 」

「清美は源氏名やろ、嘗めとんのぉ・・!・そや、それや 」
「ほな、今から行きますさかいに 」

 「ぁぁ・・・ 」 

話し終え受話器を降ろしかけたら キッチリ微かな舌打ちの音聴こえました。
 受話器 叩きつけました。 
睨みつけました、おぞましい物を観る様に
 黒色ダイヤル式電話機を。
煙草に火を点け大きく吸って、静かに吐き出します。

 清美さんかぁ、何でボクかなぁ?


二階に駆け上がり押入れから 古いタイプのジェットヘルっと、
ミンク油をタップリ染み混ませた 女物の革のツナギ服、引っ張り出した。
それらを 大きなスポーツバックに無理矢理突っ込む様にして詰めた。
右肩から左腰辺りに斜めにバッグを吊るし提げ 階段再び駆け下りた。
玄関で下駄箱に載ってる愛用の 建設現場用ドカチンヘルを被り
クロス壁のコート掛けに吊り下げた 落下傘兵が使用する様なゴーグル掴んだ。


暗がり手探りで裸電燈を点けると 閉め切ったガレージの中は、
ハコの510セダンが出払ってたので、広々な感じで静まってた。
ドアを静かに閉じ 奥の壁際作業台手前まで歩いた。

埃が薄く積もった帆布製のバイクカバーを捲り外した。
車庫では いつも差し込んだままのキーをONに。

アクセル握って三度手首を捻り回し、キックを蹴飛ばした。 
冷たい三気筒2サイクル発動機 叩きつける様な咳をし、不連続爆裂音 
空冷発動機の青色排気瓦斯 車庫の中で濃厚に漂い始めます。
閉じられた空間に騒がしい発動機音 満ちてました。

 暖機運転の開始 です。

身を屈め エアークリーナーボックスを取っ払い
レーシングファンネルだけのキャブに耳を近づけた。 
空気を貪る高周波吸気音 心地良げに発してました。

 最、尤っと、空気をっと・・・! 


人が剥き出しの身体で乗って操る 
人の為だけにと 機能を磨き込まれた機械。
人が獰猛になって、ただただ突っ走るっ為だけの道具っ!
其のカスタムされた砲弾型のヘッドライトカバーとマフラーに施された

金属の冷たく硬い薄肌 クローム鍍金幕
天井からの黄色い裸電燈の光 

 秘めやかそうに
 艶めかしそうに 
悩ましげそうに反射して 
反射光に意識があるかもぉぅと 輝かしてました。


 ハンドルは、セパハン。 
其れが、低く身構えた妖獣の雰囲気醸し出し
 凄みがぁ!やった。

『夜が明けるまで観てても 見飽きへんやろぉなぁ・・・! 
 今夜みたいな糞みたいな夜にぃ コイツに跨るんも可哀想やけどなぁ・・・ケッ!
      ・・・・縄澤がぁ! 』


リムの曇りを目聡く見つけたボンっ 洗い油を染み込ませた襤褸切れで
丁寧に曇りを拭き取ります。 優しく丁寧にっ!
っで、ワックス。 磨きました。
マフラーを触ると、生暖かくなっています。
其の触った箇所の手垢も丁寧に拭いてました。
何度も繰り返し擦り拭いてました。

エンジンが暖まる間に、二本の煙草を好きな排気瓦斯の匂いと共に吸い 
粘つく口蓋を、幾度か酔い覚ましのコークを含んで漱ぎ飲んで、スッキリさせた。
暖機が仕上がるのは キチガイマッハを眺めながら待った。

暖まった頃合を見計らって、一度エンジンを切った。
其れから車庫の三つ折扉を、単車を押して通り抜けられるだけ引き開けた。
バッグをもぅ一度肩から斜めに提げ、単車を外に押し出した。
其の儘近所の公園入り口の街灯の下まで。
家に駆け戻って戸締りをし、車庫も鍵をかけた。

 公園までは、歩いた。

 酔い覚め近い息がっ苦しかったから。


静かさの夜道で、エンジンの押しがけは 
 一発では決まらなかった。

チョイ前高速を飛ばしに往った時、キャブレターのニードル弁
っを弄った侭にしていたのが原因っか 其れとも、
暫く前からキャブのフロート弁の調子が悪かった。
それが原因で キャブ内に燃料が溢れ漏れ
点火プラグが湿った為だろうか?

幾度か、なんとか始動できない物かと押して試したが
駄目だった。・・・疲れただけ。 

どうにも仕方が無かったので諦め、近くの坂道まで
下りの勾配は緩く、距離も短かった。


首にぶら提げてた顎下のゴーグルを 眼の前に引っ張り上げた。
爪先弄りでギアがニュートラルなのを もぉ一度確かめた。
其れから大きく息を吸い込み、今からの運を試す気分で坂の少し手前から
必死で「キチガイマッハ」 を押して駆けだします。

 顎が砕けてもっと上下の歯 強烈噛み締めて!っ

坂にかかる直前で飛び乗ったっ! 暫く勢いがつくまで逸る心を我慢でっ!
強く握った侭のクラッチレバー放しっながら ギアペダルを爪先でっ!

 闇夜に鉄砲を一発発射したみたいな破裂音っ!
 静か街並みに澄んだ音 響き過ぎました。

っで、直ぐに咳き込んだ爆発音 続いて不連続排気音
慌ててクラッチ握って アクセル調整で三気筒発動機を宥め透かします。
心でボン、想います。  『カワイィ奴やぁ! 』 っと。


コーナーでは 提げたバッグで左右のバランスがぁ・・・!
首には何も巻かなかったので、革ジャンの襟から冷たい風がぁ!
ジーンズは先ほどの汗が染み込んでいたので、風でぇ!
途中っ、我慢できずに急停止。 道端のガードレール越しに立ちションっ!
っと、思ったが。 指が寒さで悴んでぇ! ジーンズの前を開けないっ!
兎も角 羞恥心因りも、小便の我慢出来無い気持ちの方がぁ!
っで、手っ取り早くジーンズ下げました。 パンツと共に。
そして、可也な時間、ケツ丸出しで小便しもって仰いでいました。

 冷たく冴えた眺めの 夜空を


『此の侭やったら、益々巻き込まれるんと違うんかなぁ? 』 っとか
『あの時も 済し崩しやったさかいになぁ 』 って。

腰を振ってジーパン引き上げ戻し 再び単車で爆走。
若ボン 「もぉ先の事はどないにでも成れ!クッソォ~ 」 っと諦めていました。 
其れと同時に、 引き返せないなら、トコトン逝くかぁ・・・!って。

『ちぃふや真二さんたち、どうなんやろかなぁ? 』


車も走っていない深夜の国道。 
時々遠くで、パトの赤色回転灯の光が 明滅してました。 

「キチガイマッハ」 っ!の発動機の激しい鼓動で震える燃料タンク
其のタンクを挟んだ両太腿から ナニヤラのぉ気分がぁ~!

『責めて警察までは 此の鼓動の感覚楽しんで遣るっ! 』

ボン、夜の国道独り突っ走りで そないに想いましたそうです
酔っ払っていた頭は トックニ醒め、透かした頭で健気にも。

 です。