【弔い吐き】
清美をおかぁはんとこにぃ
おかぁはんの住居は、
おかぁはんの店から 15分くらい歩いた公園近くの
お菊神社の傍に在りました。
トイレの引き戸の向こうから、おかぁはんと清美のぉ声 聞こえてきます
「清美 ぁんた寒かったやろぉ! はよぉこれ飲みぃ 」
「 すいませぇんぅ・・・おかぁさん真ちゃん堪忍してやってぇ 」
「もぉ言わんでもぇえっ 判っとぉ、わかっとぉさかいにぃ早ぅ飲みぃ 」
返事は嗚咽ぅ・・・・ 嗚呼とぉ・・・・
耳を欹て聞いてるボン、便所のタイル土間にしゃがみ込んで
さっきから腰掛便座 抱えていました
清美を、おかぁはんに預けられたっ との想い、
其の安堵感が それまで堪えていた緊張感を緩和し
元々の酔いが激しく襲ってきた。
そしてぇ・・・今しか出来ない
吹っ切れる為の最後の足掻きぃ なんでしょぉ
ボン、嘔吐する度に胸の何かも一緒になって吐き出されます。
下顎首筋のぉ筋肉 引き攣る毎にぃ、ホンマは出したらアカンのや!っ
腹筋 内側に引っ込む度に、堪忍してくれぇ~!
喉が胃液で焼ける感覚 知ると、もっと焼けたらえぇ~!
舌がぁ喉の奥がぁ、自分がぁあ!ぁ・・・・っと
吐瀉物無くなって空吐きになっても ・・・!
便所の引き戸を開くと、玄関框の上に脱ぎ捨てられた革の繋ぎを
床にお膝して綺麗に畳んでる、清美が居ました。
「久保君、どんなんぅ! 」
「大丈夫です 」
「ホンマなんかぁ? 」
「全部出てもたさかいにぃ スッキリしましたわぁ 」
「そやったらぇぇねんけどぉ 」
「はい、 おぉきにです 」
「此処 穴ぁ空いてるぅねぇ 」
聞かれたくないことぅ聴かれました。 ボン
清美の膝の上の黒革には 激しく何かで擦れて、
周りがギザギザに擦り切れたような 穴がぁ・・・・!
「ぇ! ・・・ハァ 」
清美がさっきまで着ていた革繋ぎ服 昔の想い出が纏っていました。
あの日のあの時に、あの場所を通ってしまった自分が創った想い出がぁ・・・!
「姐はんそれなぁ 女が着てましたんやぁ 」
「ぇえ! 彼女ぅさん? 」
「・・・はぃ 」
「・・・・ぁ!ごめんねぇ! 」
ボン、眼ぇ逸らして薄暗い廊下の奥の
明かりが斜めに漏れる角まで、視線を泳がせた
角からはぁおかぁはんの 佇んでいるような影
綺麗に磨き込まれた床板にぃ映ってました。
「キエ君、あんたしっかりできるんかぁ? 」
「できます おかぁはん心配かけてぇすんません 」
「そやったらえぇ 」
「ホナ、往きますわぁ 」
「此れ持って往き 」
単車に再び跨ったボンの腕掴んで、
ボンの胸前にぃ 突き刺すようにぃお数珠
「ハァ? 」
「もしなぁ、真ちゃん見つかったらぁ渡したって 」
「マネ~ジャアにぃですんかぁ 」
「そぉや あの娘の亡くなったぁおかぁさんのんや 」
「! 」
「清美がぁ持って行てやって、ゆうねん・・・・ 」
「姐さんがぁですんか・・・・ぁ 」
玄関横の単車を置いてある狭い駐車場にも、
清美が お風呂を使う水の音 聴こえてきます。
「ホナ・・・」
単車ぁ排気音 近所迷惑にならんように押して 神社の鳥居の前にとっ
キチガイマッハ再び 夜を駆けます
目指す方向は 自分が調べて
「ちぃふうぅ」 に教えた場所ぉ目差して
ボン、冷たい夜風に眼を瞬きながら 単車に跨っていました。
弔い吐きしたボンのスッキリした顔 風の冷たさがぶつかって来ても
瞳は濡れてきませんでした。 唯ね、他の何かがぁ・・・・
姿勢低くの背中に載っているようなぁ・・・・