【 rare metal 】

此処 【 rare metal 】の物語や私的お喋りの全部がね、作者の勝手な妄想ですよ。誤解が御座いませんように。

【ジマワリ:関わりたくない者】

2011年06月16日 15時33分03秒 | 店の妓 ツネ嬢
 
 
 
【狼藉】
 
 
薬(シャブ)中女と、宵の口から魚町中をグルグル周るドライブ。
 
其の最後の一周。後部座席の○○さんと女との会話。
自分の耳にはナニも聴こえてはこなかった。
恐ろしいほどの、息の詰まる静かさだった。
 
 
薬中女がアメ車で魚町ドライブする前に、若い衆と車に乗り込んだ場所。
コノ地域の飲み屋街で、一番繁華な通りの舗道まで戻ってきた。
 
 
夜の街。魚町通りは派手な色合いで瞬き輝く電飾看板(ネオン)で照らされていた。
妄想な一夜の出来事などをと、叶わぬ熱情を掻き立てる、赤や緑などの原色。
妖しげな艶めかしさの桃色な瞬き輝きは、舗道をウロツク男達に酒以外のナニかをと期待させる。
 
 
アメ車を運転する若い衆。
ユッタリとした穏やかな感じで車を舗道の縁石に乗り上げさせた。
車体が斜めに傾きながら停車した。
 
微かにモーター音唸り、運転席と助手席ドアの窓ガラス少し降りた。
自分。窓の隙間からの冷たい空気、入ってくるのが嬉しかった。
車内に渦巻き漂うモクの煙じゃぁない、新鮮な外気が吸いたかった。
 
静かに吸いこんだ空気、濁ったニコチン臭い厭な匂いがした。
鼻腔の粘膜が紫煙に燻られ続けたからだろぅ。
口の中と喉の奥。もぉぅ唾液も出ない程のイガラッポサ。
 
 
○○さん車から降りようとする女に 「ホナ。ここでえぇんやなぁ?」 
物言い、何時もの優しげな喋り方に戻っていた。
 
女が無言でドアを開けようとしたら若い衆、後ろを振り向きもせず
「頭(カシラ)ぁ。来よりますわ」
 
夕方。若い衆が薬中女を連れてきた町角から、極悪顔の男達数人。
肩を怒らせ急ぎ足で向かって来る。
 
ワイの耳の後ろ辺りで○○さんの チッ! 舌打ち音。
 
「ナンか訊かれてもなぁ、ナンも知らん言うときんかぁ」
○○さん。ドアを開け降りかける女の背に。
 
蒼白な面(ツラ)ぁし降りた女。ナニも言わずドアを叩きつけるように閉めた。
  
「出せやぁ」
○○さん。疲れた感じの呟きみたいな物言いぃやった。
 
 
喚きながら車に近づいた男達。キッツイ罵り言葉で吠えまくった。
発進しようとしたアメ車の前に、知らぬ若い男が立ち塞がった。
他の男らは慣れた感じで車道に降り車を取り囲んだ。
通りかかったタクシーのタイヤ、悲鳴みたいな急ブレーキ。
大声で怒鳴り吠える若いヤツ、車のボンネット叩きながら喚いてた。
 
「ナニぃホザいてるんや!糞ダボがぁ!轢き殺っそッ!」
若い衆。ハンドル掴んで口を歪めながらやった。
 
滑らかだったエンジン音。急高速回転な図太い咆哮になった。
ボンネット叩き続ける男の眼ん玉。眼孔から零れるかとな剥き具合。
自分、若い衆が踏むブレーキペダル、小刻みに緩む振動ケツで感じていた。
幾度もドアが蹴られ続け、窓ガラス叩き割られるかと。
 
陽が落ちた魚町通り。暫くはエンジンが咆哮する音と怒声が渦巻いていた。
 
 
「停(ト)めやぁ、チィフ持っててかぁ」
 
運転席と助手席の背もたれの間から、モクを指に挟んだ○○さんの手。
ワイ。モクを自分の指に挟んで預かりましたわ。
 
「チィフ、アンタ。外に出たらアカンでぇ。おい、ロック開けんかぁ」
 
ット言い終わらないうちにドアのロック解除音。○○さん肩で突くようにドア開けた。
輩どもの緊迫した怒声。車内に雪崩こんだ。
 
自分。預かったモクを一服し、ヤッパしぃ、タダでは済まんかぁ。やった。
 
車のドア。○○さんが中から勢いよく開けたら、ドア蹴った男の脚を押し返した。
後ろにヨロメキながら転がされた男の背、飲み屋店先の置き看板倒した。
寝転んだ男が起き上がろうとしたら○○さん。男の股間を潰す勢いで踏みつけた。
潰された男。悲鳴を上げる間もなく、白目剥いて舗道に後頭部打ち付けた。
 
「ニイサン!頼むわッ!」
ハンドル叩きながらドアを開ける若い衆、ワイに言う。
 
直ぐに自分。コンソール跨ぎ運転席に坐った。
助手席ドアが急に開き、別の男が鉤爪開きの手をワイに伸ばしてくる。
指に挟んでいた吸いかけの煙草を掌の中に押し付けた。
聴きたくもない悲鳴を上げながら、手が引かれた。
上半身をイッパイに伸ばし助手席ドア閉め、全てのドアをロックした。
 
若い衆が加わった車外の派手な喧嘩騒動ぉ。
滅多と拝めない揉め事モンやった。
 
 
ワイ。外の騒動を眺めながらやった。ツクヅクと想いましたでぇ。
自分の渡っていく世間がコレでまた、狭くなるなぁ。ット
 
 
ホンマニぃ。ツクヅクやった。
 
 
 
【赤い髪の女ツネ嬢】(18)
 
  

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