「ボンッ!なんでお前が居るんやッ! 」
ボンの胸倉摑んで引きよせ真二、ボンの顔面寸前で怒鳴りました。
「怒鳴ったかてドナイもならんッ!」
っと自分。 静か喋りな怒り言葉で。
窓に分厚い毛布を吊り、声が外に漏れないようにしてある
暗い裸電燈だけの、部屋の中には、血の匂いが満ちていました。
ボンが、ナニかを求めて遣った、怖気ナ嵐が過ぎ去った跡だから。
「シッ真二さん、クック苦しいがなッ! 」
真二、暫くボンの眼の奥を観てから、突き放した。
ボン、後ろにヨロケたら、畳の上の男に躓いて、尻モチを着いた。
上に乗られてしまった男、苦しそうな小さな呻き漏らした。
「ナンでボンがここに居るんや? 」
「ちぃふぅ、ナンでってゆうても、つねさんがコンナン自分独りで如何にかなるさかいにぃって 」
「つねッ!・・・・・ぁのぅアホッがあぁ! 」 真二が
つねが、公衆電話ボックスから、別に慌てる様子もなく、普通な感じで出てきた。
ボン、其れ、惚れ惚れと観て、こぉぅ思いました。
≪つねさん噂どうりに、肝(ハラ)が据わってるなぁ!≫ っと
つね、一晩の騒動にでも、何事もなかったような綺麗な化粧顔してた。
赤い髪が歩く度に、優美にぃフワフワとぉ・・・・!
ボン、つねがドアを閉めるのを待って、車を発進させようとして、フトッ!
フトッぅ、何かがぁ・・・・っで、車を出すのを止め、ボン聞きます。
「どないですか ? 」
「ぅん、チャンと教えたさかい、直ぐに着よるわぁ 」
「・・・・・チャンとって? 」
ボン、ナンとなく問いました。
つねの言葉尻に、なにかがぁ・・・・?
「はようぅ(早く)出しぃ来るよぉ 」
走り出すと直ぐに、遠くの、アッチコッチの何処かで、パトの悲鳴がぁ!
其れ、次第に自分たちが走ってる方に、近づいてました。
ボン、窓をすべて全開にし、箱のセダン≪510SSS≫
アクセル床まで踏むと、車内は激しく舞う風でッ!
互いの会話がぁ! し難くなる。
「ボン、コンナンうち独りで十分、大丈夫やぁ、アンタ逃げりぃ 」
「ジュウブンってッ! ナニ言うてますねん頼まれたん自分ですよッ! 」
「ァホッ! 大のおとッ・・・ぉガァ・・ッ! 二人もいらへんッ! 」
「いやや! 」
「チョット停めてッ 」
「アカンって! 」
つねボン、怒鳴り喋りの喧嘩腰ッ!
助手席からつね、赤い爪の手伸ばしハンドル摑んだ。
「ナにするねんッ! 」
「そこで止まりッ! 」
ボン、左手で振り払おうとッ!
3S(スリーエス)ケツ振って蛇行ッ!
「止めッってッ! 」
ボン、意地でもと、アクセル踏みッパナシッ!
ボン、左手の裏拳ッ!飛ばしたッ!
ヒットッ! つねの何処かに当たったッ!
つね、一声呻いてハンドルから離れた。
ボン、ハンドルを元に戻すと怒鳴ります
「ボケッ!ナニ訳判らんコトさらすんやッ! 」
返事の代わりに、つねの黒いストッキングに包まれた
綺麗な細い右脚、ボンの方に伸びたッ!
真ん中のコンソール乗り越え、ブレーキペダル踏もうとッ!
っで、此処で流石にボン・・・・
捲くれ上がったスカートから伸びている、つねの右脚の太腿の
チョット粗めの黒いストッキング吊ってる、ガーターベルトの黒紐ぅ視たら
止めようとする気力、何処かにと失せました。
つね、これ以上ないほどナ感じで右脚
ボンに見せびらかすように、ユックリトヒールの先でブレーキ踏むッ!
ボン、剥き出しの其の脚、視たくは無かったので、ナにもしなかった。
クラッチも踏まなかったので、車体がギクシャクしながら路肩に停車した。
「真ちゃんと、ちぃふぅにぃ、よぉぅゆうといてなッ! 」
「なんやって? 」
「何時までも、待っといてッテ 」
「アホッ!直ぐに釈放されるがな 」
「ぅん、アンタみたいな前モチ(前科)ちゃうもんね 」
つね、車の窓硝子閉めるとき、物凄い嬉しそうな艶然顔ッ!
遠のく3S見送りながら、ボン心で。
「アホゥガッ!コッチにウインクしながら、前方を観もしないで
タイヤに悲鳴上げさせ急発進やぁってッ!・・・馬鹿タレ目ぇ~! 」
ボン、ゴムタイヤが焼け焦げる青い煙の匂い、アンマシィ香しくはないなぁ!
ボンとつね、後から此の時のコト、こぅ言います。
「つねさんなぁ、もぉ!無茶しますんやでッ! 」
「アホ言わんときぃ、あのときなぁアンタは前モチやし、ちぃふかてなぁ・・・・」
「ワイ、ナにもないッ、綺麗な体やったでぇ 」
「真ちゃんは面倒みなアカンあの娘がいたしぃ
そやからウチしか居らん思ぉてやったんやでぇ! 」
「そやけど、事故ったらどないするねん 」
「ぁ!ウチぃ傷モンに為ったら、ボンにもろうてもろたらぁ・・・! 」
「要らんッ! 」
三人、黙り込んだら、其れを待っていたようにぃ呻き言葉が、下から湧いてきました。
「お前らぁ・・・・タッ唯で済むと想うなよぉぅ!絶対ぃみぃ 」
気絶してると思ってた、畳に転んでた血塗れ男がぁ・・・・!
ボン、男が言い終わらないウチに、横っ腹に蹴りぃ入れました。
部屋の中、三人分の煙草の紫煙が、静かに漂っていましたけど
ボンの動きで、渦巻くようになってました。
自分、其の渦眺めながら想いました。
こぅやってぇ物事は、益々複雑に為ってゆき
ドンドンッドンドン 悪い方に転がって逝きますんやなぁ・・・・!
喉の奥乾ききりッ! 潤す酒ぇ・・・・!
欲しがっていました。
潤すだけじゃぁ無かったんやけどぅ。