【 rare metal 】

此処 【 rare metal 】の物語や私的お喋りの全部がね、作者の勝手な妄想ですよ。誤解が御座いませんように。

血ヶ匂って 騒ぎますッ!

2007年05月29日 15時05分52秒 | 夜の時代 【深夜倶楽部】 
  



「ボンッ!なんでお前が居るんやッ! 」 

ボンの胸倉摑んで引きよせ真二、ボンの顔面寸前で怒鳴りました。

「怒鳴ったかてドナイもならんッ!」

っと自分。 静か喋りな怒り言葉で。

窓に分厚い毛布を吊り、声が外に漏れないようにしてある
暗い裸電燈だけの、部屋の中には、血の匂いが満ちていました。
ボンが、ナニかを求めて遣った、怖気ナ嵐が過ぎ去った跡だから。

「シッ真二さん、クック苦しいがなッ! 」

真二、暫くボンの眼の奥を観てから、突き放した。
ボン、後ろにヨロケたら、畳の上の男に躓いて、尻モチを着いた。
上に乗られてしまった男、苦しそうな小さな呻き漏らした。

「ナンでボンがここに居るんや? 」
「ちぃふぅ、ナンでってゆうても、つねさんがコンナン自分独りで如何にかなるさかいにぃって 」

「つねッ!・・・・・ぁのぅアホッがあぁ! 」 真二が



つねが、公衆電話ボックスから、別に慌てる様子もなく、普通な感じで出てきた。 
ボン、其れ、惚れ惚れと観て、こぉぅ思いました。

≪つねさん噂どうりに、肝(ハラ)が据わってるなぁ!≫ っと

つね、一晩の騒動にでも、何事もなかったような綺麗な化粧顔してた。
赤い髪が歩く度に、優美にぃフワフワとぉ・・・・!

ボン、つねがドアを閉めるのを待って、車を発進させようとして、フトッ!
フトッぅ、何かがぁ・・・・っで、車を出すのを止め、ボン聞きます。

「どないですか ? 」
「ぅん、チャンと教えたさかい、直ぐに着よるわぁ 」
「・・・・・チャンとって? 」

ボン、ナンとなく問いました。
つねの言葉尻に、なにかがぁ・・・・?

「はようぅ(早く)出しぃ来るよぉ 」

走り出すと直ぐに、遠くの、アッチコッチの何処かで、パトの悲鳴がぁ!
其れ、次第に自分たちが走ってる方に、近づいてました。
ボン、窓をすべて全開にし、箱のセダン≪510SSS≫
アクセル床まで踏むと、車内は激しく舞う風でッ!
互いの会話がぁ! し難くなる。

「ボン、コンナンうち独りで十分、大丈夫やぁ、アンタ逃げりぃ 」
「ジュウブンってッ! ナニ言うてますねん頼まれたん自分ですよッ! 」
「ァホッ! 大のおとッ・・・ぉガァ・・ッ! 二人もいらへんッ! 」
「いやや! 」
「チョット停めてッ 」
「アカンって! 」

つねボン、怒鳴り喋りの喧嘩腰ッ!
助手席からつね、赤い爪の手伸ばしハンドル摑んだ。

「ナにするねんッ! 」
「そこで止まりッ! 」

ボン、左手で振り払おうとッ! 
3S(スリーエス)ケツ振って蛇行ッ!

「止めッってッ! 」

ボン、意地でもと、アクセル踏みッパナシッ!
ボン、左手の裏拳ッ!飛ばしたッ!
ヒットッ! つねの何処かに当たったッ!

つね、一声呻いてハンドルから離れた。
ボン、ハンドルを元に戻すと怒鳴ります

「ボケッ!ナニ訳判らんコトさらすんやッ! 」

返事の代わりに、つねの黒いストッキングに包まれた
綺麗な細い右脚、ボンの方に伸びたッ!
真ん中のコンソール乗り越え、ブレーキペダル踏もうとッ!

っで、此処で流石にボン・・・・

捲くれ上がったスカートから伸びている、つねの右脚の太腿の
チョット粗めの黒いストッキング吊ってる、ガーターベルトの黒紐ぅ視たら
止めようとする気力、何処かにと失せました。

つね、これ以上ないほどナ感じで右脚
ボンに見せびらかすように、ユックリトヒールの先でブレーキ踏むッ!
ボン、剥き出しの其の脚、視たくは無かったので、ナにもしなかった。
クラッチも踏まなかったので、車体がギクシャクしながら路肩に停車した。


「真ちゃんと、ちぃふぅにぃ、よぉぅゆうといてなッ! 」
「なんやって? 」
「何時までも、待っといてッテ 」
「アホッ!直ぐに釈放されるがな 」
「ぅん、アンタみたいな前モチ(前科)ちゃうもんね 」

つね、車の窓硝子閉めるとき、物凄い嬉しそうな艶然顔ッ!
遠のく3S見送りながら、ボン心で。

「アホゥガッ!コッチにウインクしながら、前方を観もしないで
 タイヤに悲鳴上げさせ急発進やぁってッ!・・・馬鹿タレ目ぇ~! 」

ボン、ゴムタイヤが焼け焦げる青い煙の匂い、アンマシィ香しくはないなぁ!



ボンとつね、後から此の時のコト、こぅ言います。

「つねさんなぁ、もぉ!無茶しますんやでッ! 」
「アホ言わんときぃ、あのときなぁアンタは前モチやし、ちぃふかてなぁ・・・・」
「ワイ、ナにもないッ、綺麗な体やったでぇ 」
「真ちゃんは面倒みなアカンあの娘がいたしぃ
 そやからウチしか居らん思ぉてやったんやでぇ! 」
「そやけど、事故ったらどないするねん 」

「ぁ!ウチぃ傷モンに為ったら、ボンにもろうてもろたらぁ・・・! 」
「要らんッ! 」




三人、黙り込んだら、其れを待っていたようにぃ呻き言葉が、下から湧いてきました。

「お前らぁ・・・・タッ唯で済むと想うなよぉぅ!絶対ぃみぃ 」

気絶してると思ってた、畳に転んでた血塗れ男がぁ・・・・!
ボン、男が言い終わらないウチに、横っ腹に蹴りぃ入れました。

部屋の中、三人分の煙草の紫煙が、静かに漂っていましたけど
ボンの動きで、渦巻くようになってました。

自分、其の渦眺めながら想いました。
こぅやってぇ物事は、益々複雑に為ってゆき
ドンドンッドンドン 悪い方に転がって逝きますんやなぁ・・・・!


喉の奥乾ききりッ! 潤す酒ぇ・・・・!
欲しがっていました。
潤すだけじゃぁ無かったんやけどぅ。





   

 逸れた 夜雲

2007年05月28日 09時43分29秒 | トカレフ 2 
  
【 ハグレタ ヨルクモ 】   



あの日の晩は頭上に、暗さな闇が覆いかぶさり、蓋をした夜だった。
だから、星の明りだけの暗さナ夜やった
暗い夜の向こうで、銀色に光輝いているはずの月はぁ

 今ぁ、何処にぃ・・・・

寒い夜は真っ黒で、冷たく深まっていました。
遥かな山、視えましょうかと、黒色を透かし視れば
動かぬ夜の向こうにぃ 仄かな黒い山影が。
其の山の峰に浮かんだ、月を隠した雲
背中の満月の光で、淵が灰銀色に輝き縁取り。
暫く眺め観れば、ユルリッとな動きで流れています。
闇の重さをナンだか感じさせ、夜の空中に浮かんで流れていました。

月、視えない冬の空、天イッパイに瞬く星々。
雲、暗さナ何かを覆い隠し、忍足で ユックリッ と流れすぎようと。
だから黒雲が浮かぶ天、其処だけが雲の形に模られ
星々消え去り、黒く穿った大穴の如くに為っていました

わたくしが、あの時に見上げた
真上の宙とは違って観えていました。


走り去った夜汽車見送れば 耳に轟音の余韻残ります
余韻消えれば 静かさなで寒さが在った踏切

 月はぁ・・・・

何処か遠くで鳴ってる、パトカーのサイレン聴き
静かさに為った踏み切りで、耳を欹てて立ち竦んでました。
今動けば、ナにかと聴こえるの音、何処かに逝ってしまうかと。




【 踏切 】

自分、踏切手前で女物の自転車に跨っていました。
夜汽車が走り去って遮断機揚がたけど
躯凍ったようになって、固まっていました。

ぇ~! 虫の鳴き声ぇ?今冬やでぇ・・・?
っと自分思いました。 何処で鳴いてるんやッ?とも。 

もしやッ! まさかぁ?

早くバイトにっ!と気が急いてましたけど
ナニがッ? っと強く興味を引く、冬の暗闇の向こうから
季節はずれなぁ・・・と、耳に微か聴こへし虫の鳴き声。
っの、聞こえてきたかなぁ?の方角を観ると、
線路の柵伝いに、外と内側から柵を挟むように
背高い、枯れた細い茎だけになって群がる、雑草が。

虫の鳴きぃ、あそこら辺りからかぁ?

自分 チッ! っと舌打。
それがキッカケでした、自転車押してました。

タブンココら辺りからぁ・・・・? 

未だ此の時までなら、今までの自分に戻れてました。
暗さナ線路間近には、ナにも視えませんでしたから。
だけどもぉぅ、人の中の好奇心、ヨカラヌ悪戯をします。
此の時も自分の心に、何事かと悪さをしました。


人が、タブン人がぁ・・・・

線路脇の、有刺鉄線柵の直ぐ内側の
草叢で、俯けになって転がっていた。

タブン、人がぁ・・・・!


 チッ!

軽く鳴らした心算の舌打ち
アンガイ、夜の中に響きました。



  
  

真夜中の 踏切 

2007年05月23日 11時09分15秒 | トカレフ 2 
  


あの店に、屋号なんか在ったか、どうなのかもぅ?
今じゃぁ憶えてなんかぁ
それにぃ忘れずに憶えていたって・・・・、ナンにもぅ。

如何してかぁ? っと


ツレと、その店で待ち合わせの約束するとき

「婆さんトコなぁ 」
「おぉ わかった 」

だから、【 ばぁさんの店 】
今想い出しても名前とゆうか唯ぁ バァさんの店 だったとしか。
人の記憶なんてね、自分の記憶なんて、時が過ぎて逝ってしまったら
頭の中に、忘れろと朧な霞が罹ったみたいになって
何もかもな想い出が、アヤフヤにぃなってくるみたいですよ。

だけどね自分、あの時の出来事は、未だに憶えてます。
タブン、自分が死ぬまでなんでしょうねぇ。
忘れるコトなんかぁできませんかなぁ・・・・タブン



深夜に夜勤(ヨルツトメ:某深夜倶楽部)が終わったら
そのまま寝グラのアパートに帰らず、次の ≪頼まれ早朝アルバイト≫先、青果市場にと
女物の通勤自転車 テレテレテレッ と漕ぎ、店での酔いを醒ましながら市場の在る駅裏へ。
っで、バイトに行くその前に、夜食を採ろうとして、市場に往く途中の
踏切近くに在る 「番外地」 目指しました。

冬の終わり頃の夜といっても、まだまだ肌に冷たい寒さ。
自分が羽織っているのは、カッコウだけで薄い、フアッションオーバー。
その下には、黒服(店着)を自分の服に着替えず、そのままで次のバイトにと。
(市場での仕事服は、バイト先の青果店が用意してくれてました)
だから、薄着での寒さな感覚、疲れた躯の芯まで突き通ってきてました。


店に着くと、隣の店との間の、小便臭い狭間に自転車を突っ込む。
かじかむ手先に息を吹きかけ、内側が結露で濡れた古い木枠の硝子の引き戸
力を入れて開けようとしたら、若い男が開けて出てきた。
男が店の明かりを背にしていたので、顔、ドンナ風だったかは憶えがぁ・・・
擦れ違いざまに、お互いの肩が触れたとき、男の身体から
ナニかぁ、鋭さナ感覚が伝わってきて自分、チョットぉぅ・・・・・!




何かがぁ匂うぅ・・・っな、雰囲気が漂う
【 ババァの店の中 】

若い男と入れ違いに、店に足を踏み入れても、歓迎の声などぉぅ
そんなもの望んでもいなかったけど、何かがあればなぁっとぉぅ
その代わりババアがいつもの 此方にチラリッ!っな、飛ばし視線だけ。

 コンナ店で、多くを望むまいッ!


自分が何時も座るのは、入り口から一番遠い奥の板壁沿い。
(くの字のカウンター、木造の席数七人分と予備の折りたたみパイプ椅子)
おババのチラリ視線を下を向いて避けたので、顔上げて店の奥を見たら

「化け物ッ!」 っと、心で。

大男が、猫背な感じで黒い影になって、板壁にくっ付くようにして、収まっていた。
座る。 じゃぁナク壁の一部みたいな感じで、据わっていましたッ!
だから板壁に並んで吊るし標された、御品書きの短冊、マッタク見得ませんでした。
自分、慌てて横目でおババを盗み見ると、細い顎先で反対側の板壁を指します。
自分、素直に従いました。 此処じゃぁ、ババァに文句を言う奴なんかぁ・・・・

注文もしないのに、眼の前に何時もの、大盛肉饂飩。
丼の底が割れるっかもなぁ!っな、感じで ドンッ! っと置かれます。
自分、丼から揚がる湯気を透かしながら反対側の怪物を見モッテ
割り箸を前歯で噛んで割り、熱い饂飩を啜りました。
冷めた躯の中に、熱いものが落ちていきます。
赤唐辛子の辛味がぁ~!

饂飩の味よりも、腹の太る感じと寒さ抑え、っが目的の唯の食い物。


白人男の眼の前のカウンター、男の背丈に比べるとアマリにも低すぎて
男の背中、猫背になっていた。
カウンター、煙草の焦げ痕や、なにかの染みで、イッパイでした。

汚れたカウンター の上に置かれた、余り清潔とは言い難い
汚くも手垢で油染みたように曇った硝子のコップ゜。
その中に入った冷酒(ヒヤザケ)を、水でも飲むような感じでした。
岩石みたいな顔の、頑丈そうな二つに割れた顎先を
上向きに突き上げるようにして、勢い良く何杯も呷っていた。
大きな掌で包まれ小さく見えるコップ゜、子供のママゴト遊びの玩具のコップみたいだった。

一息に呑む度に硝子コップ、勢いよくカウンターに叩き音発て、戻してた。

自分には解らない異国の言葉と、モット注げ っな手つき仕草で
女将のバァさんに、お代わり注ぎを強請ってさせていた。
だから真ッ更の一升瓶、中身の焼酎が直ぐに半分以上も無くなる。
自分、寒い処で生まれた者は、キッと強い酒に慣れているのだろう。
っと思いながら、外国人があたり前のように、何杯も重ね呑むのを眺めてた。

ぁりゃぁ、飲むじゃぁないなぁ・・・・溜めるやなぁ!ッ
自分、そぉ思った。


っで、大男。 幾らかは腹に溜まって満足したのか
握っていたコップを静かにカウンターに置き、カナリ大きな溜め息一つ。
それから大きく背中を反らして伸びをし顔を前に戻したら
金色毛虫のような眉毛の下、伏目がちに窪んだ眼孔でババァを視た。

そして此方をッ!

自分、ゲッ! っと。
眼がッ!男の眼がっ!! 瞬間観でも判ったッ!
凍えるように冷たく冴え冴えナ感じの青い瞳ッ!
自分咄嗟に目線を自分から逸らしました。
ヒタスラ丼の中の饂飩を見つめ、啜り喰いました。


タブン ≪電話は無いのか? ≫
っと、外国人が身振り手振りで。

「アンタの国ッ、こんな(場末)トコッ電話、あるか? 」

バァさん、見事なまでに青い眼に据えた自分の目線を逸らさず
モツ煮込みの鍋の蓋を閉じながら、半島訛りが混じった風な日本語で応じた。
異国人、雰囲気で理解できたのか 「ダァー 」 っと

今から思えば、タブンこんな風に短く喋ったかと。

此処ら辺りでは、外国人と言えば朝鮮半島人くらい。
此の男のような、蝋人形みたいな肌の白っぽい人間は、物珍しさがぁ・・・!


突然、表が騒がしくなった。
近くで、警官の呼子が吹かれてた。
その返事みたいな呼子が何処かで吹かれた。
結露した、店の引き戸が激しく一度叩かれ、誰かが駆け去る足音。
自分驚いて振り返って引き戸を見たけど、白人は何事もなかった様に呑み続けていた。

暫くしたら表の騒ぎ、段々と遠のいていきました。

「バァさん、何の騒ぎなんやろなぁ? 」
「・・・・・知らん 」

おババ、葱を包丁で刻みながら、顔も上げずに答えた。

白人、自分の眼の前に置かれた、新しい焼酎の一升瓶の首
軽々と摑んで傾け、コップに注いでいました。


兎も角この外国人、食い物でも酒でも、何でも出す店から出て行くとき
相当に覚束ない、怪しげなようすの足取りだった。
男の革靴の先が、店の引き戸の敷居に引っ掛かり
危うく倒れそうになりながら、表に出て行った。


「バァさん、ココらには珍しいぃ客やなッ! 」

自分、外国人が開けっ放しにした引き戸を閉めながら、感心しきって。

「そぉなんや、ウチじゃぁ初めてやで、あんなん。迷惑なんよぉ連れてくるわッ! 」

っと滑らかな、此処らの播州訛りでお話です。

「誰が、置いていったんッ? 」

・・・・ッ! 返事は戻ってきません。
カウンターの中、近いけど遠くに感じました。

けどぅ、外国人が店から出て行くのを見送ったら
なんとなくババぁっと目が合い、思いもかけずに
互いにぃ気恥ずかしさが!
自分照れ隠しで、何時も飲まない丼の汁、飲み干しました。


此の姥ぁ、決して年寄りじゃぁなかった、只ぁ此処に来る客は此の女の人を
「バァさん」 っと、呼んでいた。
此の女(ヒト)、噂では戦時中は大陸や南方方面で、旧日本兵相手にぃ色々とぉ・・・・・。


店の客筋、タイガイ深夜働きの、お水系の男や女。
自分が往ったときは男の客の方が、幾分か多かった。
それと、旧国鉄の線路保安職員らが、夜食を採りにきたり
駅裏の青果と乾物の卸し市場で、早朝働きの人が早めの朝飯前の飯を食いに来る。

此処「番外地」では、他にもこの店と似たり寄ったりな
同じような雰囲気の店屋が並び、此処ラで売りにしている食い物は

「あの肉うどんの肉なぁ、タブン犬か猫やないんかぁ? 」
「あっこの、おでんのスジなぁ、ナンのヤツのスジなんやろかなぁ? 」
「ヒヤ酒なぁ、なんぼ飲んでも酔わへんやろぉ、ナンやぁ混ざってるんかぁ? 」

 決して冗談じゃぁ・・・・・なぁ、所やった。

そんな、地元の者でも余り近寄りたがらない、場所だった。


その頃は自分、夜の世界で働いていました。
その日は、深夜に店が引けたので、其の侭アパートには帰らず
働いてる倶楽部の馴染みの客で、青果市場の大将が倶楽部のママァに

「なぁ手がないんやぁ!誰か若いんにぃ手伝ってくれんかぁ、頼むわぁ! 」

っと泣きついて、お陰で白羽の屋が刺さったのが、自分。

「アンタに、タっての頼み、行ったッてやりっ! 」

自分逆らわんと、素直に応じました。
ママぁには、この頃、チョット迷惑を掛けていましたので。
イヤイヤながらも、素直にでした。

っで、店がハネテから、一息おババのトコで休憩し
頼まれバイトっをしに、駅裏の卸し市場にと。 行く予定。


「バァさん、ホナいってくるでぇ 」
「タイソウやけどぅ、気張りんかぁ 」
「ぅん 」

後ろ手で、内側が曇ったガラスの引き戸を閉じたら、冷たい風が顔を嘗めた。
空を見上げたら、星が出て綺麗すぎたから、今日は晴れかぁ・・・・っと。
店と店の間の、小便臭い隙間みたいな所に突っ込んでいた自転車を引き出し、跨った。
横の有刺鉄線の柵の向こう側、暗い線路上を夜を吹き飛ばすかと
勢いよく蒸気の音発てて、夜行列車が駆けて往きます。
自分、汽車の煙の中の、石炭の燃える匂い嗅ぎながら
夜を暗さナ自転車灯で右に左にと、地面を舐め照らし、風切って走り始めたら
漸く温もっていた気分が、冷たく醒めゆくのが解かり、少し情けなさがぁ!

夜汽車が通り過ぎても、踏み切りの遮断機、降りたままでした。
カンカンッと、辺りに響き渡る、甲高い警鐘の連続で打たれ続け音ッ!
サッキ通り過ぎた列車の反対側の、線路の向こうから、段々と明かりが近づきました。
踏切の中が照らされたと思ったら、突然眼の前が風圧で圧せられました。
今度は、黒っぽい貨車が長く連なった、貨物列車が轟音を発てて通りすぎてゆきますッ!


辺りが静かになって、踏切の遮断機揚がりかけると
静かさな夜の中ぁ 微かに耳にぃ聴こえてきました。

自分、最初は虫の声かぁ? っと。
ですが、この寒さナ時季にぃかぁ? っと。
っで空耳やな。
右足で踏んでいる自転車のペダルに、力を入れかけたらぁ・・・・!


随分後から思いました。
自分、あの時にぃ、あのまま踏切ぃ
渡った方がぁ・・・・・!!


夜の暗さは 何の助けにも為りません
暗さな中の 視えないものを 無理にと覗いても


ロクな事にはぁ・・・・・・

っとその時には 自分 気づきませんでした

  



 番外地

2007年05月21日 01時23分18秒 | トカレフ 2 
 
 (昭和・バブル景気以前)   

冬の終わりごろ、午前二時過ぎ


あの時の深間ナ夜は 春にはまだ遠い暗闇で、隙間ナク満たされていました。
聴くと心落ち着かない、パトカーの緊急サイレンの音、遠く線路の向こう側
星ない空の下で夜が、悲鳴じみて啼いているように、微か聴こえしていました。

だから暗闇には、何かが潜んでてもぉぅ・・・・!ッ


その外国人 (タブン ソ連人)随分と酔っていた。

自分が住んでいた田舎街では、外国人など滅多と見ることがなかった。
だから自分、もの珍しさも手伝って失礼にも、随分ジロジロと見てしまった。

その白人、異国の映画の中で観る、垢抜けた俳優とは違う感じだった。
なにかぁ怖さな感じがです、自然と身体から滲み出ているような、白人男性でした。
男が座っている古ボケタ木の椅子、男の大きな躯で今にも押し潰されそうでした。

自分、此の場末の、遣れた感じの店に入ったとき
見たコトも無いような大男が、カウンターの隅に居たのを見て想いました。

 「化け物ッ! 」

 っと、失礼にも。



其処は通称 【番外地】  

太平洋戦争の敗戦後、此の先如何なる事かと混沌たる世相の中
そのドサクサで、旧国鉄の線路脇の国の土地を勝手に不法占拠し
何時の間にか幾つかの、建物とは名ばかりのバラックが建てられた
闇市の名残のような場所でした。

最初に建てられたものは、空襲の焼け跡の廃材でのバラック。
それが次第に、なんとか建物だろうな、ホッタテ小屋ナ飲み屋が軒を並べていった。

一時、戦後復興の区画整理や、強制立ち退き等で幾らかは軒数が減ってはいた。
だから未だに居座ってる店が、線路際の柵に凭れるように八軒。
夕方からとゆうか、夏でも冬でも、日が沈みかける頃になるとの営業開始時間。
だけど営業はしていても、店の入り口には暖簾なんて架かってはいません。
開け閉めがし難い入り口の、引き戸が明るかったら店が開いている印になってた。

衛生設備の下水も水道も無く、狭い店には便所も無かった。
午後の三時ごろから、各店の店主達、近くの駅からバケツで水を汲んで
自分の店まで、各自が運んでいました。 何回も、店と駅を往復しながら。


電気だけは通じておりました。
夜になると、建てつけが悪く隙間風が吹き込む店内に、裸電球が燈っていました。
今から想い出すと、飲み屋というか飯屋というか、屋台に毛が生えた程度ナ、店屋。
店の中は何時も、何かの匂いが漂っていた。
おでんの鍋から立ち昇る湯気の匂いじゃぁナク、何か他の匂いがしていた。

自分、其の匂い。 嫌いじゃぁなかったです。


音楽は、何も・・・・・。

宵の口の早い時間帯なら、携帯ラジオから何かの放送などが。
店主の気侭で、音楽番組がたまにはぁ・・・・タイガイ、流行の演歌がぁ
深夜十二時を過ぎると、サッサト、ラジオは消された。
ラジオの音が消されると、客が饂飩を啜る音、一際大きく聴こえてました。

店の直ぐ裏の線路上を、蒸気機関車の大きな鋼鉄の転輪が
細い線路を転がり過ぎ往く規則正しい、ガタンゴトン・・・・の音っと
機械の悲鳴みたいな甲高い汽笛の音や、機関車が走る時の震動が地面伝わってきます。
時折近くの踏み切りから、遮断機下りると鳴る警鐘が夜に響く音。
店の前の路上を、深夜タクシーが走り過ぎる音。
近くの歓楽街から流れてきた、ヨッパライがなにやら酔いに任せて、叫ぶ声。

夜は、静かさだけが在るのではなかったです。

他にも、色々と、色々な事が暗さで育まれて
何処かに逝ってる様な気がしていました。

若かった頃の自分 其の暗さナ中で
なにかをっと捜せもせずに、何時までも
意味もなく、足掻いていました。

あの出来事に遭遇するまでは


今の時代なら、一晩中営業しているコンビニなんかあたり前。
そんなものが滅多と無い、暗い夜があたり前にぃ夜らしぃかった時代。
深夜に独身の男が、腹が空いて目覚め、何かを食いたいと思っても
そんな夜中に営業してるのは、馴染みな客相手の飲み屋か
ボッタクリ専門の風俗系の、赤線路地裏店ぐらい。

繁華だった歓楽街の中も、ケバイ電飾看板も消え、街全体が薄暗さでイッパイでした。
況して、こんな鄙びた旧国鉄駅の操車場脇の直ぐ横で
何処にでも在るような、無人踏み切り周辺では、暗さは尚更な感じ。


その無人踏み切り近くの線路脇。
本当の意味で場末な、通称、番外地 。
戦後にぃ、地番も何も無い所に勝手に居ついてしまい
何時の間にかの、不法な無届営業。

だから、【 番外地 】



 そぉ言えば、あの頃、「高倉 健」さんの主演映画で
 
 【 網走番外地 】シリーズ

 って、在ったなぁ・・・・
 よぉぅ土曜日の深夜にぃ店がハネテから、オールナイトぉ観に行ってたはぁ!


   

   

≪エロス≫ ナ お話し

2007年05月15日 17時31分26秒 | メタルのお話し 
  


別に、声高に話すことジャァ無いんでしょうけど
此の頃 街中での厭らしさの氾濫はですね、チョット目のやり場に困る事も
女性の身嗜みがですね、私にはどうにもぉぅ・・・・

(ぁ!ッ 世間の女性の方々が、全部厭らしいって、コトじゃぁないんですよぉ~!)

此の歳に為りますと、若いお方がね、若さがね、目に眩しくってぇ・・・・
だけどぉ、昔はですね、モット風情が在ったかとぅ 。


今の世の中、普段の生活が豊かに為りすぎまして
人の心が求める物がですね、以前とは違い過ぎてるんでしょうかねぇ?

私の家でも、昔に比べますと、生活物資が、物が、余り過ぎるくらい在ります。
普段、使わない物がね。
ここ数年、使わずに仕舞いっぱなしナ物が。
今じゃぁ、何処にナニを仕舞ったかなんてぇ・・・・・ワカラン マッタク

家の押入れや、物置、乗ってる車の中や
仕事の上での道具や資材の 置き場。

置いとく場所が在ると、ナンデモカンデモ仕舞いこみ
それらを、何時使うんかなぁ・・・・なんてぇ・・・・

わたしね、思った事が。
今の時代、使わずにですよ、五年間も仕舞っていたら
これから先、一生使わんかもなぁ・・・っと


それと 心

心の中もですね、もぉぅこれ以上はどぉにもぉぅ・・・・イッパイイッパイッ!
心の余裕なんてぇ、何処にぃ?

っで、ナニがかと言いますとですよ
イロイロと詰め込み過ぎてるからなんですよ。

在るべき物を放り出し、後から色々とナンデモカンデモ詰め込んでッ!
要らない物でも、イッパイ詰め込んでッ!
そぉやって在れば、これから先の人生が、キット豊かな暮らしが出来ます≪見えない物≫を

惜しげもなく、イッパイ棄ててきたからですよ。


高級な物が在るから、それで豊かに為るんじゃぁない。
そりゃぁ、普段生活する上で、便利な物もケッコウ在ります。
それらを使えば、身体が楽になる物も、在ります。

でもねぇ、心がねぇ・・・・楽にはなるかなぁ・・・?

便利な物って、心が豊かに為るように為る物。 ナンですか?



「寝て半畳 おきて半畳」

それだけで、人さんはですね、生きていけるよぉ~!
っと、昔の偉大な 「普通の先達」 の方々が、仰ってます。

わたしぃ、物が豊かでの贅沢はするなとは言ってません。
するなら、心の贅沢をしたらぁ・・・・って。

まぁ、わたしぃみたいな、若輩者がナニを偉そうにねぇ・・・・カンニンデッセッ!


っで、≪エロス≫

エロスって本当は、トッテモ 芳しいぃものなんですよッ!

その為の条件は、先ず「品」が求められますかなぁ。
如何にもしようが無いほどの、格調高い品格。
上品にしろってコトじゃぁないんですよ。

心の中が、清らかにぃ・・・・って


優しさですねぇ。 次の条件は。
人が、嫌悪感を持つ様なものはですね、御法度ですよ。
そんなものは、唯「グロテスクな物」 なんですよ。


っで、美しいもの。
美しいからですね、触りたくなるし、眺めたくも為ります。
でもね、絵画のね、裸婦系じゃぁないかとぅ。
タイガイですね、手には入れたくても、手にはできない物ですよ。

≪エロス≫ はね

そんなもの、手にしたら、その刹那からね
それは唯の、俗物的な物に為ってしまいます。

≪エロス≫ はね、心でしか感じられませんからね。

だから、濁りの無い清らかなぁ・・・・ですよ


っで、想像を掻き立てるようなもの
此れが一番の、肝、なんじゃぁないかと。

人の中で普段、眠ってる何かを喚起し
それによって人の中でナニかが、歓喜になる。
目覚めさせ、人の中の精神の意識を喜ばせるものがですよ。

≪エロス≫ 

シカモね、とびっきりの上等なぁ ≪エロス≫


誤解が無いように言っときますけど 「性」 だけのコトを、お話してませんからね。
それよりもモットモットですよ、静謐で、犯しがたい心の中のものが在るんじゃぁないかと。
人の胸の中で、人の心がね、生きて往くのにですよ


情緒や風情 在った方がねぇ
日本人なら、心豊かに生きていけるんじゃぁ ないのかなぁ・・・・ねぇ?
どうでしょぉ、要らない何かを棄てて、知らずにぃ失くしたものをね
もぉ一度、お探しに為ってみてはぁ・・・・


アレアレぇ・・・爺ぃなわたしぃ ナニを戯言ぉ・・・・・!ッ


今日は、チョット言い過ぎました。
御勘弁くださいな。

    

寂しき心 【 大人の 挽歌 】

2007年05月14日 03時03分48秒 | 幻想世界(お伽噺) 
  


何がいけなかったのか 若かった頃の昔の僕には判らなかった。



あの日から、僕の意識は堂々巡り

暗黒な脳内妄想世界、其処の迷宮回廊にて
為す術も無い苦悶な、懊悩な、永久にかと
何時までもな、終わりなき堂々巡り。

もしも っと
もしか っの

無間地獄 堂々巡り。


未熟な青の時は、刹那で過ぎ去り、今振り返っても、未だに未だにぃ・・・・
あの時何故にと、限りなく、悔やむもの胸に迫りつつ
夜更けて明かり燈さぬ中、音量絞った深夜放送のラジオ聞き

毎晩酒に溺れて、想い出責め逝きました。

肉体は、大人へと爛熟せしも
育たぬ胸の中の心、幼さ心算の半端な未熟者。



夜明けて、寝乱れし枕元。
知らぬ女が共にの、翳も見得ない終わり芝居。

「あんたぁ、もぉすこしぃ寝てようよぉぅ 」

っと、無理にと聞き覚えなき声。 だと。

無理にと、見覚えなき女の冷たき白き手がと。
其れに優しく摑まれし、我が二の腕。
頭に、僅かばかり残りし酒精の残滓、夜の出来事へと戻します。
酔いがと、せいにした、悔やむ出来事。
脳を焼いて、直ぐに想い出させてくれました。

「もぉぅ明るい、お前ぇ帰ってくれ 」

明るい障子から顔逸らさずに、唇、僅か動かしで喋ります。

「ぇ!・・・・・そぅ、醒めたんやねぇ 」
「・・・ぅん、もぉ酔ぉてない・・・・わるいな、そやから帰ってくれ 」

玄関扉、音ナク静かに閉じました。
小股ナ踵で鳴らす靴音、煙草銜え、見つめる扉の向こう側
段々消えながら、遠のいてゆきます。

胸中、忸怩たる責めな物、広がり続けます。

心で 「迎え酒ぇ するかぁ 」 っと。


布団踏みしめ、立ち上がろうとしたら、靴音が。
アパートの鉄の階段踏む音、聴こえてきました。
今度は、段々とハッきりと聴こえて来ながらでした。
小股ナ踵で、古びた板敷きの廊下を、蹴る様に鳴らしながら。

靴音、玄関の外で消え、急にドアが外側にと開かれました。
サッキの女、怖い顔して玄関に入って着ました。
肩から提げてた、茶色い蜥蜴革のバック、自分目がけて投げてきます。
自分、ワザと避けませんでした。
左の耳元掠めて、背中の後ろの襖に当たる音。

「弱虫ッ! 泣き言しかないんかッ!阿保ッぅ 」
「ぇッ お前、ナニ言うんや 」
「うちは、アンタに慰めしたんと違うッ! 」

「・・・・! 」

「うちも、アンタと同じやっと想うさかいにや 」
「同じぃ? 」
「そぉや、うちかて忘れたいことイッパイあるぅ そやからやぁ 」

玄関の外、アパートの住民が歩く足音していました。
朝の普段の生活が、始まったから。


「コッこの味噌汁、旨いわ 」
「そぉかぁ・・・アリガト 」
「ぅん、ホンマニや 」
「・・・・・そぉ 」

朝から、味噌汁の匂い嗅ぐの、久しぶりでした。

「さっきぃ、キツイことして、ゴメンね 」
「ぇえよッ、ホンマのコトやし 」

「・・・・・! 」

「!ッなんで泣くんやぁ? 」
「・・・・泣いてない 」

「・・・・・そっか 」
「ぅん 」

二人、味噌汁啜る音。 静かに部屋の中でしてました。
二人、互いの顔伏せてました。

「アッツイ(熱い)けど、旨いなぁ 」
「ぉぉきに 」
「なぁ 」
「なにぃ 」
「すまんかったなぁ 」
「えぇわぁ 」

「ちがうねん、謝ってない 」

「ぇ! 」
「自分になぁ、ゆ(言)ぅてるんや 」
「ぇ? 」
「わぃ、何時までもなぁ、コンナンしていたいなぁ 」

「意味ぃ判らんよぉ 」

「もぉなぁ、忘れるねん・・・・・そやから、此処に居ったらえぇ 」
「・・・・ぅちがぁ 」
「そや、此処に居ったらえぇ 」

「ホンマニ言うてるん 」

「嘘ぉ言うてどないするんや、あかんかぁ? 」
「ぁかんって・・・・・」

「もぉ、泣かんといてかぁ 」

「なぁんもぅ、泣いてないぃ 」
「ほな、なんや? 」

「嬉しかったら、泣いたらアカンのんかぁ! 」



過去に在った出来事は、後から何かが生まれなかったら
心の中で、想い出には為らんようでした。

何かを忘れ去らなくても、新しく生まれしもので包んでしまい
何時の間にか、忘れたようにする事は、できるようだなぁ・・・・  



 後からそぉぅ思えるかなぁっと。