【此の侭ぁ・・・ 】
二人の靴音響く舗道は、冷たい夜の暗さ幕で 一面覆われていました。
「迷惑かけたねぇ かんにんしてなぁ 」
「めッ迷惑なんかぁないです 」
「 ・・・ぅん、ありがとうぉ 」
後はお互いに、何かの為にの無言歩き
ボンにとっては駐輪場までの、懐かし短き逢瀬歩き
しました。 っと
女一人を此処(警察署)から連れ出すのに、なんで其処まで っと
思うほど、寄って集って色々聞かれ捲くったと 後からボンが言いました。
まるで今夜の騒動の黒幕がお前やろ っな感じやったと。
知ってって知らんフリをしてるんかぁあっ っと。
大声で言いたかったそうです
「自分は此処に来い言われたから着た。 自分は唯、身請けに着ただけやっ! 」
たぶん、聞き届けてくれないやろぉ・・・・っで、
だから「知らんっ」 っと、「解らんっ」 っの二点張り
「色々きつい事ぉ聞かれましたやろぉ 」
「・・・聞かれたよぉ 」
「 なんて 」
「 なにぃ 」
「どないな事ぉ聞かれたんかぁって 」
「いっぱいやったから 忘れたんよぉ・・・」
ぁ~!こん人ぉ ヤッパリなぁ!
「すいませんけどぉ 車とちゃいますねん 」
「ぇ、じゃぁ何処にいってますんやろぉ 」
「そこの国立(病院)です 」
「病院? 」
「はい、単車ぁ停めてますねん 」
警察署を出るとき入り口受付待合場所辺りで、昨日の日刊新聞が何誌か
それを頂き丸めて脇に挟んでいました。
「姐さん、此れに着替えてくれへんやろかぁ 」
門番詰め所の老守衛に預けていたスポーツバックから、
革のツナギを取りし、眼を逸らしもって清美に渡しながら
ボン 済まなさそうに云いました。
「おっちゃん起こしてごめんなぁ チョット部屋ぁ借りるで 」
「ええわいなぁ、こないな綺麗な方が着替えるんならなぁ 何時でもえぇでぇ 」
守衛のおっちゃん 気を利かせてくれ部屋から出てきて言います。
「わしぃ、チョット一回りしてくるなぁ 」 っと
「そぉかぁ、悪いなっ! また一本(達磨)持って着とくわぁ 」
「ぉ!そらぁ嬉しいなぁ 」
閉じられたドアに向かって
「着方ぁ解りますやろかぁ? 」
暫く耳を澄ましても 応える返事は無かった。
「姐ハン どないかなぁ? 」
「うん、久保君 ナントカなってるからぁ 」
「さよかぁ 」
単車ぁ跨ぐときの革の繋ぎ服なんか、滅多と女が着ぃひんからなぁ
時間は掛かるかぁ・・・?
「久保君・・・此処ぉ破れ掛けてるねぇ? 」
チッ! やはりなぁ
「姐さん、済いませんけどなぁそれなぁ、我慢して着てくれてないやろかぁ 」
「うん、もぉ少しやから待っててなぁ 」
「済いませんなぁ 」
清美が出てきました。
ボン デジャブウ(既視感)っ!
幾ら忘れ様としても 絶対出来ひん想い出感覚
胸の其処から爆発湧き上がり 昇って頭で映像化ぁ・・・!
黒革の 夜目に艶やか 死に衣装
想いも遠い昔 あの日に近しぃ同僚が通夜の席で
逝った女へと情けで 別離の為にっと、
声を詰まらせもって 詠んでくれた詩でした。
ボン 頭の痺れ堪えて言います。
黒革姿を 真っ直ぐに観れなくって泳がし視線で
「姐さん、破れのとこなぁ内側から此れ 当ててんかぁ 」
清美 畳んだ新聞紙を受け取りツナギのジッパー下ろします。
ボン、慌てて背中を見せました。
「ぁ!カンニン。 ごめんなぁ 」
清美ぃ クルッテ回ってお互いに背中合わせでした。
ボン、もぉ堪忍してぇなぁ・・・・! っと
心でイッパイ、いっぱいぃ!