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【稲荷公園(ヨッパライ)】
午前零時もトックに過ぎ、あと数時間で夜明けを迎える夜更けた時刻。
大勢のヨッパラった男達が酔いの勢いに任せ、夜の化粧をした女たちと一夜の出来事などあるかも。
っと。不埒な期待を胸に抱き、ソゾロ歩いてた繁華な通りはケバイ点滅電飾看板も消え、
灯りと言えば通りの両脇に並びたつ行燈式街灯くらい。
人の歩く影も少なく、宵の口の賑やか華やかだった雰囲気、虚ろだったのかと。
家路に着く酔い客を捉まえ損ねた人待ちなタクシー数台、点滅赤信号の瞬く下。
街路樹、銀杏の黄色い葉ッパが木枯らしに舞う舗道に片輪乗り上げ、
車体を斜めに傾かせ停車している。
雑多な酒場が入居する貸しビル連なる繁華な飲み屋街。
ドギツイ輝きで瞬いていた電飾看板も消え通りには暗さが。
呑み足りなさそうなヨッパライ、足元も覚束なげにヨタヨタと背中丸め歩く姿がチラホラ。
繁華な魚町通りを西へと、ドン詰まりまで往き突き当りますと船場川にと。
あの頃、船場川には人と自転車だけが片道通行で通れるだけの狭い仮橋が架かっておりました。
橋の袂の直ぐ手前には、戦時中の空襲でも被災しなかった古い木造建築の群に囲まれた、
小さな鳥居とお稲荷さんの祠がある、猫の額ほどの神社公園。御座いました。
其処は、安宿の泊まり賃代も消えるほど、底抜けに意地汚くも酒を呑みまくり、
酔い潰れて帰りの最終電車の出発時刻に間に合わず、乗り遅れたァホぅな男たち、
冬の、遅い夜明けまでの数時間をと集い、時折野宿する稲荷公園やった。
木枯らしな寒さに震えあがり、躯の冷えに我慢できぬ者らが、無人な魚町通りを徘徊し、
何処で見つけたのか壊れかけた一升瓶六本用の木枠や、木作りの空のリンゴ箱などの廃材持ち寄り、
寒さに震えながら焚き火をしていました。
限られた燃やす材料を夜明けまで持たせる為、チロチロとしたショボイ炎の焚き火やった。
自分あのころ、店がハネルと表の看板しまうために、
照明が消えた暗い階段駆け上がり舗道まで登ってました。
ッで、「よぉぅまぁ、あないな所で寝よるわ。 ッタクぅ凍え死にしよるでぇ・・・・・・・」
ット。呟きながら店の置き看板抱え上げ、ツクヅク感心しながら枯れた藤棚の下で躯丸めて眠るヨッパライ。
闇を透かして眺めてた。
けどぅ・・・・、当時まだ青二才な若かった自分。
其処までかと、何処までもと酔っぱらえる者らが羨ましいこともありました。
自分。アンガイ普通の人よりも荒んだ生き方してましたさかいにぃ
ナンもカンも忘れるくらいヨッパラウんならぁ・・・・・・ って。
自分の棲み処の在った、駅裏の安アパードで女もんの買い物チャリ(無灯火自転車)漕いで帰ってました。
其の帰り路、半分以上の道程がまだ舗装されてなくて、木枯らしで土埃舞う泥の道やった。
真冬にはタイガイ、明け方前の夜露で濡れてた地面が凍てて、一面に霜柱が降りてました。
寒さしのぎで懐に忍ばせていた懐炉代わりの角(サントリー)のポケット瓶。
夜明け前の寒さに負け、時々自転車止めては中に入ってる、ワイの躯温で温もった名無しの芋焼酎。
眠いのを我慢しながら少しづつ啜っては、チャリふらつかせながら漕いでた。
夜明けて直ぐの眩しい、紅ッポイ金色陽に晒されると睡魔な脳でぇ、
稲荷公園の者らぁ、生きとるんやろかぁ・・・・・・・
ッチ!要らんモン想いだしてしもた、呑むっ!
【店の妓ツネ嬢】(1)