【 rare metal 】

此処 【 rare metal 】の物語や私的お喋りの全部がね、作者の勝手な妄想ですよ。誤解が御座いませんように。

【アヤフヤナ物事の進め方】

2011年06月23日 01時49分50秒 | 店の妓 ツネ嬢
  
   
 
 
 
【赤い髪の女ツネ嬢】(19)
 
 
【魚町通り・トトマチトォリ】
 
微睡むような暖かな日差の真ッ昼間。
歩く人影もなく、閑散とした飲み屋街。昨夜の賑やかしが嘘みたいだった。
時折。ヨッパライどもが飲み散らした酒瓶を回収する、酒屋の軽トラックが通るだけ。
 
 
自分。家族の仔をお供に、久しぶりに此の通りを散策した。
 
通りの眺めは、昔馴染んだ昭和の風景じゃぁなく、見知らぬテナントビルで埋め尽くされていた。
若いころに見知った店の看板は何処にも見当たらず、知らない飲み屋の看板しか。
 
漫ろ歩きに連れ添う家族の仔。金ハンが歩みを止め、振り返りながら後ろ脚をあげた。
舗道並木の根元に少々のオシッコを垂れ、甘えた声でクゥ~ンと鳴く。
 
 
「キン。ドナイしたんや?」 傍に近寄り頭を撫でながら訊く。
 
キン。オシッコをし終えると、はたしの手指を小さな舌でなめる。
 
「喉。渇くんかぁ?」 辺りを見回す。
 
 
夜働きしてた若いころ世話になった、某倶楽部の仕込みに行く途中。
眠気覚ましに珈琲飲みによく通った、古い茶店が在った街角辺りに自販機があった。
そこまで歩き、ペットボトルの水を手に入れた。
 
 
しゃがんで掌に水を注いで溜めようとすると、溜まる前からキンは舐めはじめる。
 
「そぉか喉渇いてたんか。オトン気づかんかったなぁ。ゴメンやで。」
 
注ぐ間もなくキンは飲む。焦ってペットボトルの口を直接舐める。
 
囁く声で 「キン。オトンな。ココらで夜勤めしてたんやで。」
 
 
キン。水ぉ小さな舌で舐めるんに、必死コイてた。
 
 
水を飲むキンの小さな舌は優しかった。掌をクスグルように舐めまわす。
自分。心が和みます。心が穏やかになります。
 
 
再び歩こうとすると、フト!頭の中に昔馴染んだ光景が蘇った。
明るい昼間なのに、夜の昔の世界が目の前に浮かんでた。
 
空耳なんかじゃぁない、お互いを牽制しあう罵声混じりの怒声。
確かな感じで蘇り、ワイの耳の底を埋めるように聴こへてきた。
 
突然。自分の心。刹那さで堪らない程、キリキリト締めつけられた。
穏やかだった胸の心拍は激しい動悸となり、老いの心が苦しさで啼き喚きそだった。
 
 
眼ノ前の幻視な光景の眩しさで俯く。
見上げるキンと眼があった。 
 
キン。立ち止ったワイを不思議そうに見上げてた。
 
 
 
【あの時 :虚勢の浮かべ方】 
 
太陽が眩しい、明るさな真昼の風景の中。薄汚れた路地裏眺めれば。
大勢のヨッパライで繁華だった夜の世界が、マヤカシ嘘ゴト幻みたいな残滓風景。
 
街に漂う匂い嗅げば一抹の、寂しげ腐臭な陰り記憶。
ナニか満たされ損なった物憂げ香りが辺りに充満しています。
 
 
だけど陽が落ち宵の口過ぎれば、再び大勢のヨッパライ達で賑わう魚町。
其の通りの両側。繁華な舗道沿いには、数知れぬ雑多な飲み屋が詰まった街。 
派手色外壁でケバくデザインされた貸店舗ビル。昼に眺めれば。ケッシテ綺麗でもなく。
築歴の古さ、ドギツイ電飾の瞬き輝きでマヤカシ化粧された、嘘ゴト華やかな夜の街。
 
ビル壁角に沿うように連なり吊るされ、派手に瞬き輝く電飾看板光の下。
狭い舗道上では、怒り任せの怒声張り上げ、必死覚悟で躯ハッテ争う男達。
 
互いの躯肉を手荒く叩き遭い、ブッツケ遭う肉弾戦。
自分、舗道の縁石に片輪乗り上げ、斜めに傾いたアメ車の運転席から眺めていた。
知らぬ男達が命懸けて怒突き遭うん、❍○さんから預かったモクぅ吹かしもって。
 
ワイには、滅多と拝めぬ光景やった。シゲシゲと感慨深く眺めていましたわ。
 
 
多勢な凶悪顔の地廻りドモぉ相手に、○○さんと若い衆が奮闘してる様。
ワイの眼ぇには、お見事っ! っとしか言いようがなかった。
 
罵声ガラみな怒声吐き飛ばす、極悪顔な此処らアタリをショバにしてる地廻りらと。
○○さんと若い衆の掛け合う声。静かな車の中の自分の耳にはマッタク聴こえなかった。
 
 
ワイ。二本目の煙草燻らせもって外の乱闘騒ぎ眺めながら想いましたわ。
コノ始末。ドナイな風に終わるんやろぉ? ッテ。 
 
 
○○さんと配下の若い衆が争っている地廻りども。
 
此処ら辺りを縄張にしてる某団体の連中やった。
連中が所属する某団体が仕切っている島ウチで。
団体がメンドウみてる店(クラブ・バー・キャバレー・スタンド・他モロモロ)の妓(ホステス)に。
他店への引き抜きか、身請け話な粉掛けクサル❍○さんと若い衆。
 
(タブン。ワイも人数に入ってる!ゼッタイ。)
 
 
何処ゾノ馬の骨(ワイら三人)。コイツラ、此処らアタリに二度と再び顔ぉ見せんよぉ。
脚腰マトモニ立たんよぉ!キッチリ〆たる!
肋骨の一本や二本。腕の両方グライぃわぁ。ポッキリ!ヤッタロカイ!ドアホッ!
人相ボコボコにメンダロカァ!面(ツラ)の型ぁキッチリ変えたるわい!ボケッが!
船場川にぃ、簀巻きで浮かべたろかぁ!クソダボぉ~!
ドナイモコナイも出来クサランよぉ、魂(タマ)しぃイテもぉて抜くぞ!コラ!
 
キット。コナイに想うてくさる!
 
 
ワイはタダぁ。サッキの薬(シャブ)中毒女に納得づくで
此の前の出来事を無かったコトにして欲しいだけやった。
 
その為にぃ、ワイ。
 
イロイロと、周りに迷惑承知で小細工してるだけやった。
ソナイな心算やった。
だからコナイナ大事(オオゴト)になんかぁは、したくなかったんや。
 
そやけどな。タダぁ、為るようにしか為らんわい!
 
 
 
けどなぁ 嘘ゴト隠しな物事ぅ。巧いコトいきまヘンがな。
 
大概。巧いコトぉいきまヘンもんやがな。
 
 
 
大概なぁ・・・・・ッチ!
 
 
 
【赤い髪の女ツネ嬢】(19)
 
   
 
  

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【ジマワリ:関わりたくない者】

2011年06月16日 15時33分03秒 | 店の妓 ツネ嬢
 
 
 
【狼藉】
 
 
薬(シャブ)中女と、宵の口から魚町中をグルグル周るドライブ。
 
其の最後の一周。後部座席の○○さんと女との会話。
自分の耳にはナニも聴こえてはこなかった。
恐ろしいほどの、息の詰まる静かさだった。
 
 
薬中女がアメ車で魚町ドライブする前に、若い衆と車に乗り込んだ場所。
コノ地域の飲み屋街で、一番繁華な通りの舗道まで戻ってきた。
 
 
夜の街。魚町通りは派手な色合いで瞬き輝く電飾看板(ネオン)で照らされていた。
妄想な一夜の出来事などをと、叶わぬ熱情を掻き立てる、赤や緑などの原色。
妖しげな艶めかしさの桃色な瞬き輝きは、舗道をウロツク男達に酒以外のナニかをと期待させる。
 
 
アメ車を運転する若い衆。
ユッタリとした穏やかな感じで車を舗道の縁石に乗り上げさせた。
車体が斜めに傾きながら停車した。
 
微かにモーター音唸り、運転席と助手席ドアの窓ガラス少し降りた。
自分。窓の隙間からの冷たい空気、入ってくるのが嬉しかった。
車内に渦巻き漂うモクの煙じゃぁない、新鮮な外気が吸いたかった。
 
静かに吸いこんだ空気、濁ったニコチン臭い厭な匂いがした。
鼻腔の粘膜が紫煙に燻られ続けたからだろぅ。
口の中と喉の奥。もぉぅ唾液も出ない程のイガラッポサ。
 
 
○○さん車から降りようとする女に 「ホナ。ここでえぇんやなぁ?」 
物言い、何時もの優しげな喋り方に戻っていた。
 
女が無言でドアを開けようとしたら若い衆、後ろを振り向きもせず
「頭(カシラ)ぁ。来よりますわ」
 
夕方。若い衆が薬中女を連れてきた町角から、極悪顔の男達数人。
肩を怒らせ急ぎ足で向かって来る。
 
ワイの耳の後ろ辺りで○○さんの チッ! 舌打ち音。
 
「ナンか訊かれてもなぁ、ナンも知らん言うときんかぁ」
○○さん。ドアを開け降りかける女の背に。
 
蒼白な面(ツラ)ぁし降りた女。ナニも言わずドアを叩きつけるように閉めた。
  
「出せやぁ」
○○さん。疲れた感じの呟きみたいな物言いぃやった。
 
 
喚きながら車に近づいた男達。キッツイ罵り言葉で吠えまくった。
発進しようとしたアメ車の前に、知らぬ若い男が立ち塞がった。
他の男らは慣れた感じで車道に降り車を取り囲んだ。
通りかかったタクシーのタイヤ、悲鳴みたいな急ブレーキ。
大声で怒鳴り吠える若いヤツ、車のボンネット叩きながら喚いてた。
 
「ナニぃホザいてるんや!糞ダボがぁ!轢き殺っそッ!」
若い衆。ハンドル掴んで口を歪めながらやった。
 
滑らかだったエンジン音。急高速回転な図太い咆哮になった。
ボンネット叩き続ける男の眼ん玉。眼孔から零れるかとな剥き具合。
自分、若い衆が踏むブレーキペダル、小刻みに緩む振動ケツで感じていた。
幾度もドアが蹴られ続け、窓ガラス叩き割られるかと。
 
陽が落ちた魚町通り。暫くはエンジンが咆哮する音と怒声が渦巻いていた。
 
 
「停(ト)めやぁ、チィフ持っててかぁ」
 
運転席と助手席の背もたれの間から、モクを指に挟んだ○○さんの手。
ワイ。モクを自分の指に挟んで預かりましたわ。
 
「チィフ、アンタ。外に出たらアカンでぇ。おい、ロック開けんかぁ」
 
ット言い終わらないうちにドアのロック解除音。○○さん肩で突くようにドア開けた。
輩どもの緊迫した怒声。車内に雪崩こんだ。
 
自分。預かったモクを一服し、ヤッパしぃ、タダでは済まんかぁ。やった。
 
車のドア。○○さんが中から勢いよく開けたら、ドア蹴った男の脚を押し返した。
後ろにヨロメキながら転がされた男の背、飲み屋店先の置き看板倒した。
寝転んだ男が起き上がろうとしたら○○さん。男の股間を潰す勢いで踏みつけた。
潰された男。悲鳴を上げる間もなく、白目剥いて舗道に後頭部打ち付けた。
 
「ニイサン!頼むわッ!」
ハンドル叩きながらドアを開ける若い衆、ワイに言う。
 
直ぐに自分。コンソール跨ぎ運転席に坐った。
助手席ドアが急に開き、別の男が鉤爪開きの手をワイに伸ばしてくる。
指に挟んでいた吸いかけの煙草を掌の中に押し付けた。
聴きたくもない悲鳴を上げながら、手が引かれた。
上半身をイッパイに伸ばし助手席ドア閉め、全てのドアをロックした。
 
若い衆が加わった車外の派手な喧嘩騒動ぉ。
滅多と拝めない揉め事モンやった。
 
 
ワイ。外の騒動を眺めながらやった。ツクヅクと想いましたでぇ。
自分の渡っていく世間がコレでまた、狭くなるなぁ。ット
 
 
ホンマニぃ。ツクヅクやった。
 
 
 
【赤い髪の女ツネ嬢】(18)
 
  

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