(画像はイメージ 無関係)
以前、此処(警察署、マッポ、管)で厄介になった時。取り調べ室では手錠ナンか嵌められなかった。
ズボンのベルトも取り上げられなかったし、況して今回みたいに足枷なんぞされなかった。
昔の取り調べ、今みたいにナニ(犯罪者の人権)やらの権利なんて無視されるのが当たり前だった。
だから足枷は被疑者の心を萎えさせ、管にたいして少しの反抗心も持たせないためなんだろう。
だけど自分が捕まった時、前みたいに手を焼かせたりせずナンの抵抗もしなかった。
タブン、目の前の取り調べ官の、個人的悪趣味なんだろうと想うことにした。
脚を組むこともできない前下がり座面の椅子に腰かけ、躯を動かせもできない不自由な身。
固まった躯じゅうの関節とゆぅ関節を微かに軋ませることしかできない。
小便がしたい。 今にも漏れそうだった。
眼の前の刑事、燻らす煙草の紫煙。何度も自分に向けて吹きかけてきた。
「スマンケド漏れますわ 」
「ナンがや 」
「ショウベン 」
「しょぉもないな、ホナ終わったる 」
吸いかけの煙草が飛んできた。避けることもできず胸に当たった。
クッソがぁ! 自分、胸で想うたけど情けなかった。
取り調べ初日が漸く終わった。
疵塗れの古いリノリウム貼りの廊下、黄色っぽい裸電灯で照らされていた。
今までに大勢の人が歩いたからだろう、所々捲れ汚く禿げてた。
自分、一目散に便所目がけ走り出したかった。
後ろからワイの腰に打たれた縛紐を掴ん歩く刑事。ワザとな感じでユックリと歩いた。
縄紐、振り切って走り出したかった。
焦る気持ちを見透かすように、「急がんでも(トイレは)逃げへんがな 」
ボケっ!クソダボ・・・・・・・
ナンとか男便器の前に辿り着く。
バンド締めていないのでチャック降ろさんでも手を放せばズボンが勝手に下がる。
落ちたズボン、足枷で引っ掛かり足首辺りで纏まった。
小便が切れ目もなく長々とぉ・・・・・
漸く間に合った安堵感から、想う存分に垂れ流せた。
コン時、垂れ流す自分の小便が、躯の中に僅かに残っていた肝心な温もり。
全部一緒に持って逝ってると感じていた。便器見下ろす視界に自然と涙が滲んだ。
フト、垂れる小便、泪とオンナジなんやろかぁ。
想う情けなさは、情けなさでしかなかった。
辛抱にも、慰めにもならないもんやった。
【店の妓ツネ嬢】(10)