【 rare metal 】

此処 【 rare metal 】の物語や私的お喋りの全部がね、作者の勝手な妄想ですよ。誤解が御座いませんように。

Aoi Teshima - The Rose

2008年10月28日 01時27分27秒 | 無くした世界 




Aoi Teshima - The Rose



自分。ホンマニ不良なオッチャンやけど、コナイニ澄んだ綺麗な声にぃ心が、

酒の酔いじゃぁなく、滅多とやられました。


なんやぁ、泣きますわぁ。


 

研峰高原 (トノミネコウゲン)

2008年10月27日 11時02分00秒 | メタルのお話し 
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(想わぬ危機)






先々週の日曜日、研峰高原に無事に何事もなく往って帰ってきました。
日頃、怠惰で緩くてイケない自分の精進故にキット祟るかなぁット、心配しておりましたお天気にも恵まれて。

この日のお天気。 ≪素敵な秋の一日やで≫ ッテな、ケッコウな日和でした。
はたくしの普段の悪ふざけのかいもなくね。 ィヒッ!

道々ヤマ道ハンドル握りながらね、お空のお天道様にですね。

『ザマァ~みろッ!ぅッキキキキぃ~・・・・ 』

ッテなぁ感じでね、罰当たりにも胸内でね、ワタクシ悪態ついてました。
(まッ・・出発前には、何時もの如くに多少のチョットな出来事は御座いましたけどね。ハイ)

去年も此処、研峰(トノミネ)高原での 「ススキ祭り」 の催しは観てますけど生憎と午後の遅い時間だしたからね。
催しなんてタイシテ観れませんでしたが今年は、何としてでもと妻サンと前の晩に話しあい絶対昼までにと。
ッデ、高原までのアト一㌔少々の山道で、一時間以上の完全停止な渋滞にもかかわらず、
お昼前に漸く、満車の臨時駐車場にと到着することができました。


「ぉとぉさんぅ、動かないわねぇ?」
「ナンがや?」
「クルマぁ・・・・・?」

「上(駐車場)がイッパイなんとチャウんか 」

「ぉとぉさんぅ、金ちゃん絶対草むらぉ歩かせたらダメよぉ、分かってるぅ?」
「ゎッ判っとるがな、ナン遍も言わんでもえぇがな (ッチ!)」

実は、少し前に金ハンとふたりで下見に着た折。
金ハンと背高いススキの群生するのを掻き分け、一番上の展望台まで登って行きました。
細い獣道みたいな急な登りのね、地面がマッタク観えないくらに生い茂る叢の中をです。
ワテ、イノシシか熊でも出るんとチャウかぁ? っとチョット怖いくらいでした。

其の時に、タッパ(背丈)の低い金ハンの小さな体にね、
イッパイ天然のダニどもがギョウサンくっ付いてしまって大変な事にと。
高原に往ったあくる日にね金ハン。下半身に強力なモーターでも入ってるみたいにですね、
脚をフル回転させて躯じゅうを引っ掻きますねん。血ぃが出るのんもかまわずにっ!

ヨッポド痒かったんでしょうねぇ。 小さな赤い湿疹が体じゅうにイッパイっ!やったから。

ッデ、大慌てでお風呂場でシャンプーぉして、妻サンが体を拭いてあげてたら発見しますねん。
絨毯の上に落ちてる無数のダニの死骸や、まだ動いてるのを。妻サンが。
其れも数え切れないほどのダニのクソ野郎どもをね。

(ホンマニ百匹以上なんですよ。イッパイ!)

「ぉとぉさんッ!何処でこんなん貰ってきたんですかっ!」
(ボケッ!ァホ! ッテ、キット心で想うてましたな、あの目つきはぁ・・・・)

指先に乗っかってる小さな黒っぽい点をね、
ワテの目の前、眼ん玉を突き刺すくらいに近づけて詰問口調で言いますねん。
(キット、ワテの眼ん玉突き刺したかったんやと想うねん、コワァ~!)

「モッ モロオテってッテ、ナニぉ何処でワイが貰うねんっ!」
(ワイ変な遊びしてヘンがなっ!)

「ナニぉ虚ってますの、此れコレが見えませんのっ!」

ハイ。ワタクシ老眼なもんで、そないなもんが視えますかいな。
おまえは長いことワテと連れ添うとって判らんのかァホッ!
ッテ、口が裂けても絶対言えますかいな。ぅぅぅぅ~

「実はぁ、ススキの見頃はまだかいなぁッテ、下見にぃトノミネにぃ 」

「金ちゃんかぁいそおにぃ、あないにギョウサン蚤に喰われてしまってぇ!
 悪い病気にでも罹ったらどないしますの? 殺す気ぃですかぁあっ!」

「ココッ殺すぅッテそりゃぁあんさん、酷いぃがぁ・・・・ 」
 (情けなかったケド、言葉が完全尻すぼみやった)

なぁ ッテ言う隙も与えてもらえんかたその勢いで、

「全身湿疹だらけなんですよぉぅうっ!」 ッテ。

「ワワワッワイが悪かった。ホンマニぃワルカッタぁ~!」

まぁ、ウットコの生活は、金ハンを真ん中に置いて回ってますさかいにね、
嫁ッコの怒るのも仕方がないねん。

「金ハン、ゴメンネ。エライ目ぇに遭わせてかんにんやでぇ。とぉちゃんが悪かったなぁ 」

ッテ、チッコイ頭を撫でもって謝ったら、嫁の怒りも多少は・・・・・・ホンマニ怖かったぁ~!


ッデ、ふたりで金ハンの毛ぇ掻き分けてダニ退治しました。
シャンプーで弱ってましたけど、ホンマニギョウサン居りますねん。
体の向きを変えるときシャンプーしてるのにね、イッパイ死骸が降るように絨毯の上に落ちますねん。

ッデ、この時までわたしら、小さな黒っぽい点をね、蚤やと勘違いしてた。
動物病院に、金ハンの症状を診てもらいに行くまではね。


金ハンや、今までウットコの家で一緒にわたしらと暮らしてくれてた家族の仔らの、
再々の危機状態の折に、その度にお世話になってます馴染みの某ペットクリニックの診察室で。

≪白衣の正直者ドクター≫が、ワテが持っていってた小さな黒っぽい点の死骸を、
暫く顕微鏡で覗いていたセンセェが、顔を真っ赤にしてから言いますねん。

「ダニですね。」 ット。

「ダダッ ダニぃってセンセェ、痒ぅなるアレですんか?」
「ぅん。ダニ。 おとぉさん、ドッカ叢に行かんかったですか?」

「クサムラって、何処の?」

ドクトル。ジーット眼ん玉覗きこんできますねん。ワテの。

「ボクが訊いてるんですよ。オトォサン?」

ワテの背後から、ココの若いカァイィ看護師さんがね、笑いを堪える嗚咽みたいなぁ・・・・・バッカァ~!

「センセェ、山ぁ歩きましたんやけどぉ 」
「そん時やね、今回みたいにギョウサン貰ってルんは、そこらのクサムラやったらアナイニ居らん 」

「センセェ、ぁっあないにイッパイ居るんですか、山にぃ?」
「居る。一回で数百匹くらいは簡単にぃクッツクねぇ 」

「スッスススぅ 数百ぅ! デェッカッカ 」
「自然界にはモット居る 」
「イッパイ居るんですなぁ・・・・・!」

「イッパイ居る 」

「モットモ人にはくっつかん種やからね、ホイデ一週間もしたら勝手に落ちますよ。
 ワン仔の血ぃ吸うても繁殖はしませんコノ種のダニは、ぅん。」

ッデ、家に帰りまして、心配して待ってた妻さんに、診察と治療の内容をお知らせしました。
コン時にワテ、まともに嫁ッコの顔を見れんかった。情けなかった。ホンマニ。

「ぉとぉさん、ご自分が金ちゃんみたいな目ぇに遭えばどんなものかお解りになるんじゃぁないのぉぅ?」

「ぉッそっそやな、ぅん。これからは山にお出かけするときにわ、モット気ぃつけるなぁ 」


ットな出来事が御座いましたけど、先日。 満開(?)のススキの原を見物することができました。

ットさ。








此処までお付き合いしてくれはって、おぉきに。


 ホナ、バイバイ。




   

獏 (夢に喰われる)

2008年10月16日 12時31分08秒 | トカレフ 2 
獏 (夢に喰われる)


酒に呆(ホウ)けて迷い込みしは、異形な世界。


自分、気がついたら大草原の真ん中で、嵩高(カサタカ)い草に囲まれ、
土漠色した乾ききった地面に這い蹲っていた。
突然なにがおきたのかと、少し訝る気持ちが急に爆発的パニックとなり脳裏を駆け巡った。
何かに背中を抑えつけられ、其れが精神の乱れと重なり、張り詰めた緊張感で躯を動かそうとしても重かった。
呼吸を止め息を詰めていたので、息苦しさで胸が張り裂けそうになる。
苦しさで新鮮な空気をとの想いが募り、荒い息を始めると、
眼の前の乾いた地面から立ち昇るは埃っぽい泥煙。
其れを息で吸い込み続けると口腔内、砂を噛む感覚になり喉奥が粉塵で乾きイガラッポクなる。

幾度も土混じりの唾を吐くが、地面に唾以外の水滴が重なりながら滴り落ち続けていた。
其の滴が、自分の顎先や眉の辺りからの汗だとは、想いもしなかった。
慌てて辺りを見回すと、背中に大きな地雷を載せた人々が叢に潜んでいました。
服とは呼べない襤褸な軍服を纏った男や、まだ幼顔の女性や老人らも雑じっていた。
全員が、背中に地雷を載せ、蒼白な顔を引き攣るかと緊張させながら、叢で這い蹲っていた。
直ぐに自分、背中の重さは、同じように地雷を背負っているのだと、気がついた。

旧大日本帝国陸軍の、野戦用対戦車地雷を其のまま背負い、個人用特攻兵器にと転用し爆雷にと。
背中に負う重量は、人が駆けるのには重すぎて、敵が自分に向かってくるのを隠れ潜んで待つ重さ。
敵が此方にと来れば、自分が自分ではない兵器物に為り、確実に死ぬ物の重さ。
戦車の装甲は分厚くて、爆雷ぐらいでは破壊できないから、人が背負う地雷で壊しやすい無限軌道をと。
自分を踏みつぶす戦車の無限軌道を間近で見れば、キット恐怖以上の感情に為る筈。
そんな事には自分、絶対に耐えられない。


ナンでこないなトコに居るねんっ!


肘をつき起き上がろうとしたら、後方から叱声が飛んできた。

其処っ!動くなっ!


あんた、逃げるんかっ!

顔じゅう泥と汗に塗れ眼ん玉、此れ以上ないほどヒン剥きギラツカセタ隣の男に言われた。

おまはん男やろっ!泣くなっ!

言われ自分が泣いているのに気がついた。

アホっ!オナゴモ気張ってるんやで、自分だけエェ目するなっ!ドアホっ

別の男にも罵るように言われた。


突然、、周りから、幾つもの堪え切れずな、嗚咽みたいな啜り泣きがしてきた。


済まんけど、自分、ドナイなっとるか分かりませんねん。

誰もナンも解らんわいっ!そやけどなワイらが此処で踏ん張らんかったら助かるモンも助からんやろもっ!


突然遠方から馬のいななきが聴こえてきたので、首を持ち上げ観る。
雑多な銃器で武装した、大陸馬賊の騎馬の一団が、草原の草波を蹴散らし勢いよく疾駆っしてくる。
其の後から、大勢の民間人が走りながら追いかけてきていた。
其れらの人々の手には武器とは名ばかりの、棒キレや竹やり、良くて空き瓶製の即席火炎瓶が。

地面を微かに振動させながら近づいてくる騎馬群の先頭で一番を駆け、
馬賊衆団を率いていたのは、旧陸軍将校用乗馬服姿の、あの若い女だった。

騎馬団が目の前を横切り、暫くして追従していた民間人らが走り過ぎようとしたとき、
空気が擦られるような連続音が此方に近づくと想った瞬間突然、自分の目の前。
必死の形相で突っ走る民間人集団のど真ん中で、地面が沸騰した。

何処までもと、地平線まで続く緑の大草原は連続する爆発により、
見渡す限り、勃発し続ける泥土の噴流群で埋まり、人の群れと地面が破壊され空にと昇る。
自分、爆発の衝撃で大揺れする地面に鼻がつぶれるかと顔面を、此れ以上くっ付け様がないほど押し付けた。
全身に降り注ぐ、爆発した火薬滓の臭いと焼け焦げた泥の臭い混じりの土砂の中、頭を抱えていた。
頭上で無数の砲弾が、空気中を飛来し通過する擦過音がし、直後に連続した着弾の爆発。
そして遠くからの、長閑なほどの間延びした砲声音。

遠くからの砲声は、地面の爆発の後から届いてきた。
砲弾は、発射の音よりも速く大気中を突っ切りながら飛んでくる。

人の躯が爆発の衝撃で、バラバラで無数な破片状態にと分解され、
噴霧状の血糊とともに空高くと噴き揚げられる。
金切り声が辺りを駆け巡り、人の脅えと興奮した意識を抑えつける命令口調の号令が発しまくる。
自分、訳も分からず咄嗟で起き上がり、走ろうとしたら足首を掴まれた。

ドアホっ!立ったら見つかるやろ、ボケっ!

自分、馬賊の騎馬団が、地平線までもと埋め尽くす数える事も困難なほど莫大な数の重戦車の群れに、
其の赤い国の機甲軍にと、なんの躊躇もしないで喚声を挙げながら、馬を疾駆させ突貫するのに魅入ってた。
鋼鉄の小山のような重戦車の群れにと、全騎が怯むこともなく突っ込んで逝くのに。

転ばんかいっ!

此の時、上着の裾を掴まれ引き倒されそうになったとき、
周りの厳しい状況に我慢し耐えようとする自分の軟な根性も、此処までだった。

悲鳴を上げ抱え持っていた小銃を投げ出した。
背負った爆雷が外せ難くと雁字搦めに荒縄で縛られていたのを、銃剣で切り裂き爆雷を放り出した。
呼び戻そうとする怒声を背に、前線後方に向かって走り出し、逃げた。

躯の前後左右を銃弾が掠めながら奔り去る。
空気中を革鞭打つような唸りで飛び交う銃弾。
機銃の水平射撃の掃射で、辺りの草っ葉が何列にも渡って、刈られ、消え飛ぶ。

自分の走りながらの必死な喚き声は確かに発してるのに、己の耳に聴こえず。
息を喘がせ肩越しに振り返り観る、逃げて後にしてきた世界に音は消えていた。
何もかもが想いだしたくもないと、過去で過ぎ去り無音なで亡くなっていった。


随分走ってきたと想ったとき、露西亜兵のバラライカ(短機関銃)が連射される発射音が耳元で。
突然なことで如何仕様もなく、脚が縺れそうになり前のめりで地面に転がった。
咄嗟に頭を抱え、膝を引き寄せ胎児のように躯が丸まった。


「ダワイ、ダワイッ!」

顔面迷彩化粧で、露西亜軍の着古した野戦服の上にも雑草で迷彩を施した、
二名の凶暴そうな斥候兵が軍靴で、ワイの背中を蹴りながらやった。



夢なら、醒めろっ!

「ダワイ! ダワイッ!ダワイ!」


夢なら醒めろぉぅ!



自分再び、堕ちて逝きました。


  
  


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小説ブログ 実験小説

酔夢・獏

2008年10月15日 15時48分33秒 | トカレフ 2 
 


あの晩、誰もが喋るのを忘れていた。

誰かが何かを言えば、何かが壊れそうなほどの静謐な何かが
部屋の中に満ち溢れるように居座り続け、支配していた。


なんの物音ひとつしない静かな部屋の中は薄暗く、薄暗さの元の明りは庭に面した窓から斜めに降り注ぐ月光。
月の明かりは青白に近い白銀色だから、照らされた白っぽい影の部分っと、
窓下や床板の照らされない陰の部分、黒影色にとクッキリ切り分けられるように為っていた。

自分、黒い影の中で身動きもせず、静かに背中を壁にもたせかけ、闇に溶け込んでいればと。
聴きたくもなかった古い昔話から逃れられるかもと。
此の時、酔いが支配する、酩酊寸前の襤褸なお頭の中で、無邪気にもそぉ想っていた。
黒い影の中に、そぉっと紛れ込んでいたら、部屋の中の誰からも気づかれることもなく、潜んでいられると。


今に為ってあの時の出来事を色々と想い返せば、あの晩のバァさんの語り口調。
誰かに聞いて欲しい、言いたい、っと堪らなかったけど言えば如何なる事やらと想いながら、
随分と長い年月(トシツキ)、胸奥で我慢し続け、人に話すことも叶わぬことならば其の代わり、
永くと懊悩しながら反芻し続け溜めこんだもの、あの晩、あの医院の暗い部屋のあの場所でヤット人に喋れる。
だから早く喋ろうとして焦り逸る心を無理にと宥め鎮め、気持ちを抑えつけながら訥々と、静か語りしだしたんだと。

もぉぅ戻ることもできない今頃になって当時を振り返れば、漸くと気付くことばかりの、ダラケ心算。


自分、壁にもたれ繰り返し胸の中でゆうてました。
昔の終わってしもうた物事ぉ、ナンで今さら自分が聴かされなアカンねん。
バァさんの繰り言みたいになった言い方を、ナンで聴かなアカンねん。
ッテ想いながらコン時、ワイ顎を落とすように項垂れた首、小刻みに振ってたと想うねん。


ドッカ遠い所から聴こえるような、何回も自分を呼ぶ声がしたと想い顔あげた。

「チィフ、眠たいんかいな?」

医者が化けモンの寝転ぶベッドの向こうから話しかけてきたとき、
ロイド眼鏡の玉(レンズ)が月光を反射し、無機な白っぽさで閃くように瞬き輝いた。

「ワイ、帰るわ 」

自覚ない酔いは痺れた自分の脚を忘れさせ、途中までしか立ち上がれなかった。
その代わり、壁を背中で擦り伝いしながら床板にと、音発て真横に倒れてしまった。

音は刹那で止み自分が倒れても、誰も少しの身動きなどせず、無言で視線だけぉ注いできた。
為に部屋の空気は動かず、ユックリと棚引くように浮いてた煙草の煙。
斜め射す白銀色の月光の影の中、淡い静か銀色輝きで浮かんでいた。

暫く痛さを堪え横になっていたが、躯を動かした者はいなかった。
部屋の中でする音、自分の呻き呟きだけ。

自分、酩酊気分だけじゃぁなく、聴いてたバァさん語りのせいで気分は重くと滅入っていた。
呑み助の厭らしさで横に倒れても、咄嗟で両掌に掴んで庇ったグラスの中に残った酒。
首を持ち上げ喉の奥にと一息で流し込み嚥下させたら、露西亜の酒が喉で鳴る音がした。
自分では気にならないほどの微か音が、静か部屋内ではケッコウな音で鳴ったようで、
みんなの視線が改めて自分に突き刺さりながら集中してきたのが、酔いの肌でも粟立ち判った。
だから部屋の暗さな雰囲気は、瞼を閉じてても堪らないほど眩しかった。

部屋の中が真横に観える視界の目尻、上隅からバァさんが床板軋ませながら近づいてきた。
直ぐ傍らで立ち止まり佇んだバァさん、酔いの錯覚か、バァさんの若い頃なんか見たこともないのに、
屈託のない満面笑顔の若い娘姿で姿勢よく立ち、自分を見下ろしてくる。

旧大日本帝国陸軍将校の軍服を、華奢な細みの躯に纏い、乗馬ズボン姿で
銀の月の光を、艶を込めた輝きで反射させるほどに綺麗に磨きこまれた、
膝下までの革長靴を履いてた。

両手を腰に当て両肘を張り、右腰の手脂の滲み込んだバンド辺りには左肩から伸びた、
細い革帯に吊られた、デッカイ軍用拳銃の納まった蓋つきの革サックが装着されてるのが、
薄暗さの中でも窺えた。

艶な細い手指をしなやかに動かし、慣れた手つきで革サック蓋の留め金、微かに金属音響かせ外した。
ユックリとした動作で丸っこい軍用拳銃の銃床を握り、銃把に指を添えながら抜いた。
細い銃身の根元辺りから下に伸びた銃と一体型の弾倉が視え、銃後部の撃鉄に親指。

バァさん、 艶然と微笑みながら、革長靴の鞣(ナメシ)た皮革独特の音させながら、
爪先だけで両脚を相撲取りが蹲踞(ソンキョ)するように大きく開き、しゃがみ座りする


「ぁんたぁ知っとぅ、拳銃で人が撃たれるとぉなぁ、ホンマニな小さな穴がポッカリ空くんやでえ 」

誰かが含み笑いしながら、笑いを堪える断続的な息継ぐ音がした。

「知らんがな、ナンやねんっ!」
「小銃やったらなぁ、一発腹に喰ろうたらな、背中に柘榴みたいな肉割れすることもあるねん 」

「重機(重機関銃)なら、胴躯真っ二つになるなぁ 」 医者の嗄れ声やった。

「ダワイ、ダワイ、カバンッダワイッ!」 タドタドシイ大和言葉で露西亜の化けモンが。


自分キツク瞼を閉じ、奥歯を噛み締めていた。
我慢しようもなく、苦い汁が喉の奥から湧いて出てきそうやった。
瞼の裏が赤色輝きに染まると、若い女の声がした。

「なぁ、カッきゃん一服しぃな。 ホレ 」 

促され目蓋を開けると直ぐ眼の前に、軍用乗馬ズボンの膝を大きく割り開き、
しゃがんだ若い見知らぬ女が居た。
開いた左太股の膝辺りに肘をついた手指先には、消えかけた燐寸の軸。
もう片方の此方にと伸びている腕の指先、火が点いた細巻きの煙草。
吹口には、真紅の口紅がベットリっとな感じで付着していた。

「ホレ、吸いぃ 」

女が喋るとき口から煙が漏れるように吐かれ、ワイの唇に無理やり煙草が刺しこまれた。
煙草を前歯で銜えたら、酔いで味が解らぬ舌先に、濃い口紅の味がした。
鼻腔の奥で、化粧の匂いも嗅げていた。

あの晩の慰めは女の口紅の味と匂いやったけど、其の味を再び眼を瞑り味おうてると聴こえた。
乾いた金属音が。

「ぁんた、撃ったろかぁ 」

乾いた音は、撃鉄が起こされる音やった。


自分、今でもハッキリと憶えています。 瞼を開けるのが辛かったのを。
開けると、取り返しのつかない事が起こるかもと。


瞳にクッツクほどの目前に、視界を蔽うほどの真近くで。
今わの際の瀬戸際の、招かれても逝きたくもない深遠な世界を覗き込ませそうな、
深くと黒い色の穴、銃口が。


自分、途轍もない恐怖に駆られ、キッチリ小便漏らしズボンの前を黒く濡らしながらやった。
両眼(マナコ)が、開きっぱなしの引き攣る上瞼に隠されながらやった。


止め処となく逝きたくもない闇にと、深くと、堕ちて逝きました。





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嘘ナ道逝キ

2008年10月01日 15時22分04秒 | 異次元世界 
 

(嘘ナ漢詩)



想我秋他所余所事 心胸内寂感俯歩行 

在限再会望願望多 此世俄生急生逝達

夢貪瑠璃色緋色可 無念想象視望窺確


他畜生道 嗚呼 益々餓鬼道




希望もなき物事ぉ 懸命にお探しても

確かに叶へられることがあることなのでしょうか

唯独りでにと確かなことは 人の生き死にの死への旅立ちは生れし時から
 
秋の午後の澄みし陽射を浴びれば 者の心は哀れ以上には温もりもせず


其れ故に無常を友とするのならば なにも温かきものぉ お求め遣らずにと



人が漸くにと 独りが通れる踏みわけ路あるならば 其れは獣道

人が独りで逝く道は もぉ生きるなどとお忘れな

冷たき死人とお為りし仏が夜に歩く道



其の道 夜の暗闇を物の怪どもが彷徨う道

何方からも見つかることなども無けれど

誤りて道より踏み外せば 外道も悔やむ路導誘い



お気づけば片足が 墓場の泥に埋めたる箱の淵より中にと

無間地獄にへと 堕ちることかと


知りたくも無き 辻褄合わせしましょうかと

誰かゞ我にと問へば 充分にと解らねどもお教え致しましょう


もしも聞かれゝば 厭とは申しませぬ

問われゝば 賢くもなく無碍に申しましょう



 問われゝば 訊かれゝば
    








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